会社設立の手続きは法人登記を行い、会社が設立したら終わりというわけではありません。
会社設立後も税務関係、社会保険関係、労働保険関係の手続きが残っています。
そこで、今回は会社設立後に必要となる税務関係手続、社会保険関係手続、労働保険関係手続について整理するとともに、提出期限や添付書類についても解説します。
Table of Contents
会社設立後に税務署に提出する4つの書類
会社を設立すると次の4つの書類を税務署に提出する必要があります。
・法人設立届出書(国税提出用) ・青色申告の承認申請書 ・給与支払事務所等の開設届出書 ・源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書 |
また、法定の方法と異なる方法を採用する場合には、次の2つの書類について、任意で提出することができますが、今回は説明は割愛します。
・棚卸資産の評価方法の届出書 ・減価償却資産の償却方法の届出書 |
法人設立届出書(国税提出用)
会社設立後2ヶ月以内に、「法人設立届出書」を税務署に提出する必要があります。
この法人設立届出書には、代表者氏名・住所のほか、事業目的や事業開始年月日などを記入します。
添付書類は、以前より簡略化され、現在は「定款の写し等」が必要です。
「法人設立届出書(国税提出用)」の書き方については、以下の記事をご覧ください。
【会社設立後の提出書類①】税務署への法人設立届の概要と書き方(記入例あり)
青色申告の承認申請書
青色申告を行うためには、会社設立後3ヶ月以内に、「青色申告の承認申請書」を税務署に提出する必要があります。
この青色申告の承認申請書には、申告時に提出する帳簿の種類(「総勘定元帳」「仕訳帳」)などを記入します。
法人税の申告には青色申告の他に事務負担の軽い「白色申告」もありますが、欠損金の繰越控除制度など節税面でのメリットが大きい青色申告を選択することが一般的です。
「青色申告の承認申請書」の書き方については、以下の記事をご覧ください。
【会社設立後の提出書類③】青色申告承認申請の概要と書き方(記入例あり)
なお、青色申告の承認にあわせて、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する場合には、以下の記事もご参照ください。
青色事業専従者給与を活用した節税対策とは?
給与支払事務所等の開設届出書
給与支払事務所(給与や役員報酬の支払を行う事務所)を開設してから1ヶ月以内に、「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出する必要があります。
この給与支払事務所等の開設届出書には、「開設年月日」「給与支払を開始する年月日」「届出の内容及び理由」などを記入します。
「給与支払事務所等の開設届出書」の書き方については、以下の記事をご覧ください。
【会社設立後の提出書類④】給与支払事務所等の開設届出の概要と書き方(記入例あり)
源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書
会社は給与を支給する度に源泉徴収を行い、その源泉所得税を原則として毎月税務署に納付することが必要です。
ただし、給与支給対象者が10人未満の会社においては、納付手続きの簡略化を目的として、源泉所得税の納付を年2回にできる特例があります。
この特例の適用を受けるためには「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出する必要があります。
この源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書には、「申請日前6カ月間の支給人員や支給額」などを記入します。
提出期限の定めはありませんが、申請書を提出した日の翌月支給分から適用されることから、当月支給分には適用がありませんので、注意が必要となります。
また、納期限について、原則は支給月の翌月10日まで、特例適用の場合には1~6月支給分が7月10日まで、7~12月支給分が翌年1月20日までとなります。
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の書き方については、以下の記事をご覧ください。
【会社設立後の提出書類⑤】納期の特例の承認申請の概要と書き方(記入例あり)
会社設立後に都道府県や市町村に提出する書類
会社を設立すると次の書類を都道府県や市町村に提出する必要があります。
・法人設立届出書(都道府県・市町村提出用) |
法人設立届書(都道府県・市町村提出用)
会社を設立すると「法人設立届出書」を都道府県や市町村に提出する必要があります。
提出期限は各自治体によって異なりますが、例えば、本社が船橋にある場合には、千葉県には会社設立後1ヶ月以内に、船橋市には会社設立後2ヶ月以内に、提出する必要があります。
なお、東京23区の場合には、都税事務所1か所へ提出することとなります。
この法人設立届出書は税務署に提出する法人設立届出書と概ね同じ内容で、代表者氏名・住所のほか、事業目的や事業開始年月日などを記入します。
添付書類として、「定款の写し等」「登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」が必要です。
「法人設立届出書(都道府県・市町村提出用)」の書き方については、以下の記事をご覧ください。
【会社設立後の提出書類②】地方自治体への法人設立届の概要と書き方(記入例あり)
会社設立後に年金事務所に提出する3つの書類
会社を設立すると次の3つの書類を年金事務所に提出する必要があります。
・健康保険・厚生年金保険新規適用届 ・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 ・健康保険 被扶養者(異動)届 |
また、社会保険料の納付について、指定口座からの振替を利用する場合には、「健康保険・厚生年金保険保険料口座振替納付申出書」を提出する必要がありますが、詳細を確認したい人は以下の記事をご参照ください。
【会社設立後の提出書類⑨】保険料口座振替納付申出書の概要と書き方(記入例あり)
健康保険・厚生年金保険新規適用届
会社設立後5日以内に、健康保険と厚生年金の加入するため、「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を年金事務所に提出する必要があります。
この新規適用届には、表と裏があり、表面では会社の所在地、業種などを記入し、裏面では給与の形態や締切日、支払日、社会保険に加入する従業員数などを記入します。
添付書類として、「法人登記簿謄本(原本)」「法人番号指定通知書(コピー)」が必要です。
なお、給与(役員報酬含む)がゼロ、もしくは保険料の天引きができないほど非常に少ない場合には、社会保険に加入することはできません。
「健康保険・厚生年金保険新規適用届」の書き方については、以下の記事をご覧ください。
【会社設立後の提出書類⑥】健康保険・厚生年金保険の基本と新規適用届の書き方(記入例あり)
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
従業員を雇用した場合等には、5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を年金事務所に提出する必要があります。
なお、被保険者となる者(従業員だけでなく役員についても)全員分を提出する必要があります。
この被保険者資格取得届には、事業所番号、取得区分、基礎年金番号などを記入します。
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」の書き方については、以下の記事をご覧ください。
【会社設立後の提出書類⑦】被保険者資格取得届の概要と書き方(記入例あり)
健康保険被扶養者(異動)届
役員・従業員に扶養家族(配偶者や子供、父母など)がいる場合には、被保険者資格取得届と一緒に「健康保険被扶養者(異動)届」を年金事務所に提出する必要があります。
この健康保険被扶養者届は、「健康保険被扶養者(異動)届」と被扶養配偶者「国民年金第3号被保険者関係届」が一体化した様式となっており、事業所整理記号、被保険者整理番号、保険者と被扶養者の年収見込額などを記入します。
添付書類は通常は必要ありませんが、届出日と資格取得年月日が60日以上違う場合には、添付書類として「賃金台帳」「出勤簿の写し」が必要です。
「健康保険被扶養者(異動)届」の書き方については、以下の記事をご覧ください。
【会社設立後の提出書類⑧】被扶養者届の概要と書き方(記入例あり)
会社設立後に労働局に提出する2つの書類
会社設立後に従業員を雇用した場合には、労働保険(労災保険、雇用保険)に加入する必要があります。
労災保険とは、従業員が業務上の災害や通勤による災害を受けたとき、被災した従業員や遺族を保護するために必要な保険給付を行うもので、パートやアルバイトなどの労働時間が短い従業員も対象となります。
労災保険の加入するためには、次の2つの書類を労働基準監督署に提出する必要があります。
・労働保険保険関係成立届 ・労働保険概算保険料申告書 |
また、労働保険料の納付について、指定口座からの振替を利用する場合には、「労働保険の保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書」を提出する必要がありますが、詳細を確認したい人は以下の記事をご参照ください。
【会社設立後の提出書類⑫】労働保険の口座振替依頼書の概要と書き方(記入例あり)
労働保険保険関係成立届
会社設立後に従業員を雇用した場合には、10日以内に「労働保険保険関係成立届」を労働基準監督署に提出する必要があります。
この労働保険保険関係成立届には、事務所の所在地・名称、事業の概要、事業の種類などを記入します。
添付書類として、「登記事項証明書」、自社ビルの場合は「不動産登記記載証明書又は公共料金請求書」、賃貸家屋の場合は「賃貸契約書」等が必要です。
保険関係成立届の様式は、最寄りの労働局、労働基準監督署、ハローワーク(公共職業安定所)のいずれかから入手できます。
直接取りに行ってもいいですが、ハローワーク(公共職業安定所)に電話で「初めて雇用をする」ことを伝えると資料一式を郵送してもらえることから、この方法が手間がかからず一番おすすめです。
「労働保険保険関係成立届」の書き方については、以下の記事をご覧ください。
【会社設立後の提出書類⑩】労働保険の基本と保険関係成立届の書き方(記入例あり)
労働保険概算保険料申告書
会社設立後に従業員を雇用した場合には、労働保険の概算保険料を申告・納付するため、50日以内に「労働保険概算保険料申告書」を労働基準監督署に提出する必要があります。
「労働保険保険関係成立届」と同時に提出する必要はなく、その場合には労働基準監督署だけでなく、労働局か金融機関でも提出することができます。
この概算保険料申告書には、労働保険番号、常時使用労働者数、保険料の算定内訳などを記入します。
概算保険料申告書の様式は、最寄りの労働局、労働基準監督署、ハローワーク(公共職業安定所)のいずれかから入手できます。
直接取りに行ってもいいですが、ハローワーク(公共職業安定所)に電話で「初めて雇用をする」ことを伝えると資料一式を郵送してもらえることから、この方法が手間がかからず一番おすすめです。
「労働保険概算保険料申告書」の書き方については、以下の記事をご覧ください。
【会社設立後の提出書類⑪】労働保険の概算保険料申告書の概要と書き方(記入例つき)
会社設立後にハローワークに提出する2つの書類
会社設立後に従業員を雇用した場合には、労働保険(労災保険、雇用保険)に加入する必要があります。
雇用保険とは、従業員が失業したり、育児や介護などで休業した場合などに、雇用と生活を守るために給付を行うものです。
雇用保険に加入するためには、次の2つの書類をハローワークに提出する必要があります。
・雇用保険適用事務所設置届 ・雇用保険被保険者資格取得届 |
なお、雇用保険の被保険者には、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある者が該当します。
この点、パートやアルバイトを含むすべての労働者が被保険者となる労災保険とは異なりますので注意が必要です。
雇用保険適用事務所設置届
会社設立後に雇用保険の加入要件を満たす従業員を雇用した場合には、10日以内に「雇用保険適用事務所設置届」をハローワークに提出する必要があります。
この雇用保険適用事務所設置届には、労働保険番号、事業の概要、常時使用労働者数などを記入します。
添付書類として、労働基準監督署で受理済みの「保険関係成立届の事業主控」、「登記事項証明書」、自社ビルの場合は「不動産登記記載証明書又は公共料金請求書」、賃貸家屋の場合は「賃貸契約書」、事業実態を確認できる書類として「営業許可証や 請負契約書、納品・請求・領収書(物とお金の出入りが確認できるもの) 」等が必要です。
「雇用保険適用事務所設置届」の書き方については、以下の記事をご覧ください。
【会社設立後の提出書類⑬】雇用保険の基本と雇用保険適用事業所設置届の書き方(記入例あり)
雇用保険被保険者資格取得届
会社設立後に雇用保険の加入要件を満たす従業員を雇用した場合には、「雇用保険適用事務所設置届」と合わせて、「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出する必要があります。
この雇用保険被保険者資格取得届には、マイナンバー、被保険者番号、所定労働時間、契約期間の定めなどを記入します。
添付書類として、「労働者名簿」、「賃金台帳」、雇用と資格取得日が確認できる「タイムカードや出勤簿」、有期労働者の場合には労働条件が確認できる「就業規則や雇用契約書」等が必要です。
「雇用保険被保険者資格取得届」の書き方については、以下の記事をご覧ください。
【会社設立後の提出書類⑭】雇用保険被保険者資格取得届の概要と書き方(記入例あり)
まとめ
以上、今回は「会社設立後に必要となる税務関係手続、社会保険関係手続、労働保険関係手続」について解説をさせていただきました。
創業・起業したばかりの時期は必要な手続きが多く忙しくなりますが、社会保険・労働保険関係の手続きは会社設立時だけでなく、従業員が増える度にも必要なものです。
そのため、本業に集中できる環境作りを目的として、バックオフィス業務等はできるだけ外注することをお勧めしています。
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なお、会社の設立後に本店を移転した場合の手続きについては、以下の記事をご参照ください。
会社の本店移転・住所変更した場合の手続き