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【会社設立後の提出書類⑭】雇用保険被保険者資格取得届の概要と書き方(記入例あり)

会社を新たに設立し、従業員に給与を支払うこととなった場合には、労働基準監督署やハローワークに対して、提出しなければならない届出や申告書等がいくつかあります。

それらの中で、ハローワークに提出が必要な届出として「雇用保険被保険者資格取得届」があります。

そこで今回は、雇用保険の概要を確認した上で、「加入手続きの全体の流れ」や「雇用保険被保険者資格取得届の概要」、「雇用保険被保険者資格取得届の書き方」などを解説します。

 

雇用保険の概要

雇用保険とは労働保険の1つであり、労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進のための強制保険制度です。

雇用保険では、労働者の失業の予防、雇用機会の増大を目的とした「雇用安定事業」と、労働者の能力開発等を目的とした「能力開発事業」を「雇用保険二事業」とし、失業等給付金、介護休業手当、育児休業手当、職業訓練等に関する給付金などの給付を行っています。

雇用保険の保険料は、労働者と事業主の双方が負担します。

また、一般的な業種である一元適用事業では、雇用保険は労災保険の保険料とまとめて徴収等が行われます

 

 

労働保険加入手続きの全体の流れ

ここでは、一元適用事業(労災保険と雇用保険の保険料の申告・納付等を両保険一本として行う事業)を前提に労働保険全体の加入手続きの流れを確認します。

なお、二元適用事業(その事業の実態からして、労災保険と雇用保険の適用の仕方を区別する必要があるため、保険料の申告・納付等をそれぞれ別個に二元的に行う事業で、農林漁業・建設業等が該当)は、労働保険加入手続きの流れが異なることから、詳細は以下の記事をご参照ください。
労働保険に関するよくある質問(「一元適用事業と二元適用事業とは?」など)

 

STEP1:各種様式の入手

各種様式を次の方法で入手します。

①労働保険の保険関係成立届:
最寄りの労働局、労働基準監督署、ハローワーク(公共職業安定所)のいずれかから入手できます。直接取りに行ってもいいですが、ハローワーク(に電話で「初めて雇用をする」ことを伝えると資料一式を郵送してもらえます。②労働保険概算保険料申告書:同上③労働保険の保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書:
以下の厚生労働省のサイトから入手できます。
口座振替の申込について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)④雇用保険適用事務所設置届:
以下のハローワークインターネットサービスのサイトから入手できます。
雇用保険適用事業所設置届⑤雇用保険被保険者資格取得届:
以下のハローワークインターネットサービスのサイトから入手できます。
雇用保険被保険者資格取得届

 

STEP2:各種様式の記入

各種様式に記入を行います。⑤の書き方は、後述しますが、①②③④の書き方は、以下の記事をご参照ください。

①労働保険の保険関係成立届はこちら:
【会社設立後の提出書類⑩】労働保険の基本と保険関係成立届の書き方(記入例あり)

②労働保険概算保険料申告書はこちら:
【会社設立後の提出書類⑪】労働保険の概算保険料申告書の概要と書き方(記入例つき)

③労働保険の保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書はこちら:
【会社設立後の提出書類⑫】労働保険の口座振替依頼書の概要と書き方(記入例あり)

④雇用保険適用事務所設置届はこちら:
【会社設立後の提出書類⑬】雇用保険の基本と雇用保険適用事業所設置届の書き方(記入例あり)

 

STEP3:「労働保険の保険関係成立届」の提出

事業所が保険の適用対象となる従業員を1人でも雇用した場合には、両者の間で保険関係が成立した日の翌日から起算して、10日以内に所轄の労働基準監督署へ「保険関係成立届」を提出する必要があります。

この届出書は紙の場合、複写式の3枚綴りとなっており、所轄の労働基準監督署へと提出すると、「労働保険番号」と事業所控えが返却されます。

 

STEP4:「労働保険概算保険料申告書」の提出

保険関係の成立した日から50日以内に、当該年度分の概算の労働保険料を計算して、所轄の労働基準監督署、または所轄の都道府県労働局、金融機関(日本国内の銀行、信用金庫、郵便局など)のいずれかへ「労働保険概算保険料申告書」を提出する必要があります。

この申告書は紙の場合、複写式となっており、上部は申告書部分で2枚綴り、下部は納付者部分で3枚綴りとなっています。

「労働保険概算保険料申告書」を所轄の労働基準監督署、または所轄の都道府県労働局に提出すると、納付書部分と事業所控えが返却されます。

なお、STEP3の「保険関係成立届」と「労働保険概算保険料申告書」を併せて、所轄の労働基準監督署へ提出する方法が、納付書のチェックもしてもらえ、郵送回数も少なくなることから、お勧めの方法です。

 

STEP5:概算保険料の納付

申告書の提出と同時に保険料(労働関係成立時から3月までの分)の納付が必要となります。
所轄の労働基準監督署、または所轄の都道府県労働局から返却された納付書をもって、金融機関の窓口で納付ができます。

なお、STEP4で労働保険概算保険料申告書を金融機関に提出する場合には、提出と同時に納付を行うこととなります。

 

STEP6:「労働保険の保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書」の提出

口座振替を希望する場合には、「労働保険の保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書」を口座開設している金融機関の窓口に提出します。

なお、STEP5の納付と併せて手続きをすること効率的に手続きを進めることができます。

 

STEP7:「雇用保険適用事業所設置届」及び「雇用保険被保険者資格取得届」の提出

STEP3で、労働基準監督署から「労働保険番号」を受け取った後に所轄の公共職業安定所(ハローワーク)へ「雇用保険適用事業所設置届」及び「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する必要があります。

「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」は、「保険関係成立届」と同じように事業所を設置した日の翌日から起算して10日以内という提出期限がありますが、「労働保険番号」を受けた後に提出することが必要なため、実務においては10日を過ぎることもあります。

とは言え、なるべく早くに提出ができるよう、準備を事前に進めておくことが重要です。

 

 

雇用保険被保険者資格取得届の概要

雇用保険の適用事業所が、従業員を雇い入れた場合、一定の要件を満たしていれば規模や業種を問わず、雇用保険の被保険者になるため、資格取得の手続きをしなければなりません

その際にハローワークに提出する書類が「雇用保険被保険者資格取得届」です。

雇用保険は失業、自主的な教育訓練、雇用の継続、育児休業などに対して支援する公的保険です。資格取得手続きがなされていない場合には、従業員がこうした保険給付を受けることができないことになります。

従業員が不利益を受けないためにも、確実に資格取得の手続きをしておく必要があります。

 

 

雇用保険被保険者資格取得届の書き方・添付書類

ここでは、所轄のハローワークへ提出する「雇用保険被保険者資格取得届」の書き方や添付書類等を確認します。

(1)「雇用保険被保険者資格取得届」の記載イメージ

所轄のハローワークに提出する「雇用保険被保険者資格取得届」の記載イメージは以下の通りです。

 

(2)「雇用保険被保険者資格取得届」の記載ポイント

所轄のハローワークに提出する「雇用保険被保険者資格取得届」の記載ポイントは以下の通りです。

1.個人番号:

個人番号(マイナンバー)は、必ず番号確認と身元確認の本人確認を行った上で記入します。

 

2.被保険者番号:

被保険者番号に記載されている番号を「0」を省略せずに記入します。
新卒採用のように雇用保険の被保険者になったことがなく、被保険者証の交付を受けていない場合には記入不要です。

なお、番号が分からない場合には、「16.契約期間の定め」欄の下にある「備考欄」に直近の雇用保険加入会社名を以下のように記入します。
Ex)前職場:株式会社〇〇
このように記載すると、ハローワークが加入履歴から、被保険者番号を照会してくれます。

 

3.取得区分:

被保険者証の交付を受けていない場合及び被保険者でなくなった最後の日から7年以上経過している場合は「1」(新規)を記入し、転職など、すでに被保険者証の交付を受けている場合は「2」(再取得)を記入します。

 

4.被保険者氏名:

被保険者証の交付を受けている場合は被保険者証に記載されている通りに記入します。
フリガナ欄は、カタカナで姓と名の間を1枠空けて記入します。

 

5.変更後の氏名:

被保険者証の氏名と現在の氏名とが異なっている場合にのみ記入します。

 

6.性別:

性別が男性の場合は「1」(男)、女性の場合は「2」(女)を記入します。

 

7.生年月日:

年月日が1桁の場合はそれぞれ「0」を付加して2桁で表記し、7つの枠すべてを記入します。

 

8.事業所番号:

雇用保険適用事業所設置届の事業主控えに記載されている事業所番号を「0」を省略せず、11の枠すべてに記入します。
なお、雇用保険適用事業所設置届と同時に提出する場合には記入不要です。

 

9.被保険者となったことの原因:

被保険者になったことの原因について、以下の中から該当する番号を記入します。

1 新規雇用(新規学卒)

✓新規学校卒業者のうち、資格取得年月日(上記の8.欄)が卒業年の3月1日から6月30日までの間にある者を雇用した場合

2 新規雇用(その他)

✓中途採用の場合

✓役員が身分変更により労働者となった場合

3 日雇からの切替

✓日雇労働や31日未満の有期雇用で雇用保険に未加入であった者を一般の労働者として雇用した場合

4 その他

✓4か月以内の期間を予定して行われる季節的事業に雇用されるため雇用保険未加入であった者が引き続き同じ会社で雇用されることになった場合

✓その被保険者の雇用される事業が新たに適用事業となった場合

✓船員と陸上勤務を本務とする労働者(船員でない労働者)との間の異動があった場合など

5 出向元への復帰等(65歳以上)

✓65歳以上であり、出向先から出向元に復帰し雇用保険の加入事業者が変わった場合

 

10.賃金:

賃金月額は、賞与その他臨時の賃金を除いた採用時に定められた賃金のうち、毎月決まって支払われるべき賃金の月額(支払総額)を千円単位(千円未満四捨五入)で記入します。

 

11.資格取得年月日:

原則として雇い入れた日(雇用関係に入った最初の日)を記入します。
なお、試用期間中、研修期間中等の労働者も被保険者となるため、試用期間、研修期間等として就労した最初の日を記入することとなります。

 

12.雇用形態:

雇用形態について、以下の中から該当する番号を記入します。なお、正社員は「7 その他」を選択します。

1 日雇

2 派遣

✓登録型の派遣労働者

3 パートタイム

✓週の所定労働時間が30時間未満の短時間労働者(上記の「2 派遣」以外)

4 有期雇用労働者

✓フルタイムで契約期間の定めのある労働者(上記の「2 派遣」「3 パートタイム」以外)

✓トライアル雇用の労働者

5 季節的雇用

6 船員

7 その他

✓正社員などの常用労働者(常用型派遣労働者を含む)

 

13.職種:

職種について、以下の中から該当する番号を記入します。

1 管理的職業

会社・団体等の役員及び管理職員(経営組織の課以上の長)を言います。

Ex)会社部長、課長、支店長、工場長、営業所長

 

2 専門的技術的職業

教育の仕事、医学の知識を必要とする専門的な仕事、芸術作品の創作・演奏・上演の仕事に従事するもの、その他研究者、法務従事者、公認会計士などの専門家及び技術者を言います。

Ex)機械技師、建築家、教員、看護師、デザイナー、俳優、物理学者、記者、カメラマン

 

3 事務的職業

現金の出納、帳簿、文書、記録などの作成・管理事務機械の操作調査などの経営管理の補助的な業務に従事するものを言います。

Ex)経理事務員、現金出納事務員、文書係事務員、人事係事務員、受付事務員、タイピスト、パンチャー、現場事務員

 

4 販売の職業

商品・不動産・有価証券などの売買、売買の仲介・代理、勧誘などの業務に従事するものを言います。

Ex)販売店員、販売外交員、サービス外交員、保険外交員

 

5 サービスの職業

家事に従事するもの、個人の身のまわり用務、娯楽などの接客サービスに従事するもの、料理、洗濯、職業スポーツなどその他のサービスの業務に従事するものを言います。

Ex)理容師、給仕人、旅館番頭、ドアマン、接客員、料理人、バーテンダー、洗濯工、清掃員、ガイド

 

6 保安の職業

個人・財産の保護、秩序の維持などに従事するものを言います。

Ex)守衛、監視人、警備員、消防員

 

7 農林漁業の職業

農業、林業及び漁業に従事するものを言います。

Ex)果実栽培労務者、園芸労務者、伐木人、漁師、養魚作業者

 

8 生産工程の職業

各種作品製造の工程作業に従事するもの言います。なお、建設・電気作業者、採鉱、技術補助工または選別・包装など短期間に習得でき、かつほとんど判断を要しない簡単な作業に従事するものも含めます。

Ex)機械工、溶接工、修理工、組立工、製鉄工、電気工、現図工、塗装工、紡績工、木工、印刷工、成型工、製菓工、科学工、大工、左官、選別、包装工、洗浄工、荷造り工、配達人、雑役

 

9 運送・機械運転の職業

電車・自動車・船舶・航空機の運転・操縦、定置機関・定置機械・建設機械の運転などの業務に従事するものを言います。

Ex)電車運転士、観光路線バス運転手、高速バス運転手、スクールバス運転手、マイクロバス運転手、役員車運転手、タクシードライバー、トラック運転手、トレーラートラック運転手、ごみ収集車運転手、タンカー船長、フェリー船長、機長、航空機関士、ヘリコプター操縦士、車掌、観光バスガイド、甲板手、甲板部員、フォークリフト運転手、発電員、変電員、ボイラー技士、ビル施設管理者

 

10 建設・採掘の職業

建設の作業、電気工事の作業、建設・土木工事現場における土砂の掘削などの作業、鉱物の採掘・採取の作業に従事するものを言います。

Ex)型枠大工、とび工、土木・建築鉄筋工、建築大工、ブロック積工、屋根ふき工、左官、畳工、配管工、内装工、送電線架線・敷設作業員、電気工事作業員、土木作業員、ダム・トンネル掘削作業員、採鉱員、石切出作業員

 

11 運送・機械運転の職業

貨物・資材・荷物の運搬、建物・道路・公園の清掃、品物の包装などの作業に従事するものを言います。

Ex)郵便集配員、港湾荷役作業員、運搬作業員、倉庫作業員、荷物配達員、新聞配達員、荷造作業員、ビル・建物清掃員、ハウスクリーニング作業員、ごみ収集作業員、産業廃棄物収集作業員、軽作業員

出典:雇用保険事務手続きの手引き(第16章 付録の「1 職業分類の説明」)

 

14.就職経路:

どのようなルートで就職したのか、以下の中から該当する番号を記入します。

1 安定所紹介
2 自己就職
3 民間紹介
4 把握していない

 

15.1週間の所定労働時間:

被保険者の種類を問わず、記入します。

 

16.契約期間の定め:

契約期間の定めが有る場合には「1」を記入し、契約期間の定めが無い場合には「2」を記入します。
また、契約期間の定めが有る場合には、その期間及び契約更新条項の有無(有の場合は「1」、無の場合は「2」)も記入します。

 

事業所名:

事業所の名前を正式名称で記入します。

 

備考:

「2.被保険者番号」で番号が分からない場合には、直近の雇用保険加入会社の名前を記入し、「9. 被保険者となったことの原因」で「4」を選んだ場合には、その説明を記入します。

 

その他

17.から23.の欄は被保険者が外国人の場合のみ、ローマ字による氏名や在留カード番号などを記入します。
24.から27.はハローワーク記載欄のため、記入不要です。

 

提出日:

届出日を記入します。

 

(3)「雇用保険被保険者資格取得届」の添付書類

所轄のハローワークに提出する「雇用保険被保険者資格取得届」に添付が必要となる書類はありません

 

 

「雇用保険被保険者資格取得届」が未提出の場合

事業主は、雇用保険法に基づき、適用基準を満たす労働者については、事業主や労働者の意思と関係なく、被保険者となった旨をハローワークに届け出る必要があります。

雇用保険被保険者資格取得届の届出が未提出と、なっている場合には、労働者が失業した場合などに支給される給付について、不利益を被る事態を生じることがあります

そのため、労働者を雇う際には、必ず「雇用保険被保険者資格取得届」を事業所の所在地を管轄するハローワークに提出する必要があります。

なお、過去に遡及して雇用保険の適用を受けることも可能ですが、保険料の消滅時効があることから、遡及期間は2年となります。

 

 

会社設立後に必要となるその他の手続き

会社設立後に必要となる税務関係手続や社会保険関係手続については、以下の記事をご参照ください。
会社設立後の税務関係手続・社会保険関係手続

また、健康保険・厚生年金保険の新規適用届については、以下の記事をご参照ください。
【会社設立後の提出書類⑥】健康保険・厚生年金保険の基本と新規適用届の書き方(記入例あり)

 

 

まとめ

以上今回は、雇用保険の概要を確認した上で、「加入手続きの流れ」や「雇用保険被保険者資格取得届の概要」、「雇用保険被保険者資格取得届の書き方」などを解説いたしました。

雇用保険の適用事業所が、従業員を雇い入れた場合、一定の要件を満たしていれば規模や業種を問わず、雇用保険の被保険者になるため、資格取得の手続きをする必要があります。

その際にハローワークに提出する書類が「雇用保険被保険者資格取得届」です。

雇用保険は失業などに対して支援する公的保険ですが、資格取得手続きがなされていない場合、こうした保険給付を従業員が受けることができないことになります。

いざとなった時に従業員が不利益を受けないためにも、確実に資格取得の手続きをしておく必要があります。

 

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