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会社の本店移転・住所変更した場合の手続き

会社の本店移転(住所変更)をした場合の代表的な手続きとして、法務局への「本店移転登記」が挙げられますが、その他にも、税務署・年金事務所などでの届出や、取引先・契約先などへの案内も必要となります。
そこで、今回はこれらの手続きが漏れないように、「会社の本店移転(住所変更)をした場合に一般的に必要とされる手続き」などを解説します。

なお、お問い合わせについては、以下のサイトから、フォーム入力やLINEでお気軽にご相談ください。
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会社の本店移転(住所変更)をした場合に必要となる役所等での手続き

会社の本店移転(住所変更)をした場合に必要となる主な役所(官公署・行政機関)等での手続きについて確認します。

①法務局

商業登記の関係で、移転日から2週間以内に、法務局で会社の本店所在地についての登記変更手続きが必要となります。
具体的には、旧所在地を管轄する法務局と新所在地を管轄する法務局にそれぞれ「本店移転登記申請書」を提出します。
添付書類として、「株主総会議事録」、「取締役会議事録」、「印鑑届書」などを添付します。

なお、法務局の管轄が変わらない場合には、一つの法務局で手続きが完了します。
また、新所在地を管轄する法務局で新しい印鑑カードを発行する手続きを忘れないように注意が必要です。

印鑑カードの取得方法については、以下の記事をご参照ください。
印鑑カードの3つの取得方法を詳しく解説!!

 

②税務署

国税の関係で、移転をしたら「速やかに」、異動後の税務署に異動に関する書類を提出する必要があります。
具体的には、「異動事項に関する届出」や「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」などを提出します。
なお、「消費税異動届出書」については、法人税や所得税に関する異動届出書を提出している場合には、提出を省略することができます。

「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の記載例については、以下の会社設立時に提出資料の記事をご参照ください。
【会社設立後の提出書類④】給与支払事務所等の開設届出の概要と書き方(記入例あり)

 

③都道府県事務所及び市長村

地方税の関係で、移転をしたら「速やかに」、各都道府県の県税事務所や市町村(変更前と変更後の両方)に、「異動届」または「法人異動届」を提出する必要があります。

 

④従業員が住んでいる市区町村への手続き

住民税の特別徴収の関係で、従業員の住民税は会社が給与から天引き(特別徴収)して市区町村へ納めているため、給与支払者(会社)の住所を変更した場合には、「速やかに」従業員の住んでいる市区町村へ「給与支払者(特別徴収義務者)の所在地・名称変更届出書」を提出する必要があります。
添付書類として、「登記事項証明書のコピー」を添付します。

なお、登記事項証明書(履歴事項証明書)の取得方法については、以下の記事をご参照ください。
登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の6つの取得方法を詳しく解説!!

 

⑤年金事務所

社会保険料の関係で、移転日から5日以内に、年金事務所に、「健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地名称・名称変更届」を提出する必要があります。
添付書類として「登記事項証明書のコピー」などを添付します。

なお、期日は5日以内となっていますが、法務局で登記が完了しないと登記事項証明書が取得できないことから、実務上は5日にこだわらず、速やかに手続きを行います。

 

⑥労働基準監督署

労災保険の関係で、移転した日から10日以内に異動後の労働基準監督署に、「名称、所在地等変更届」を提出する必要があります。
添付書類として、変更内容を確認できる資料(「商業登記簿謄本のコピー」や「賃貸契約書のコピー」など)を添付します。

ただし、事業所の所在地が他の都道府県へ移転する場合には、現在の保険料を納付している労働保険番号で労働保険料の確定清算を行った上で、移転した他都道府県で新たに「労働保険関係成立届」を提出し、「労働保険慨算保険申告書」において概算保険料の申告・納付を行う必要があります。

 

⑦公共職業安定所(ハローワーク)

雇用保険の関係で、移転した日から10日以内に異動後の公共職業安定所(ハローワーク)に、「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出するがあります。
添付書類として、「給与支払者(特別徴収義務者)の所在地・名称変更届出書」、変更内容を確認できる資料(「営業許可証」や「登記事項証明書」など)を添付します。

先に労働基準監督署に「労働保険名称・所在地等変更届」や「労働保険関係成立届」(都道府県をまたいだ移転の場合)を提出した後で行う点に注意が必要です。

 

⑧社用車の手続き(警察署・運輸支局)

社用車を保有している場合、まずは、移転先で車庫証明書を取得するために自動車保管場所証明申請書を警察署に提出する必要があります。
届け出の期限は特に定められていませんが、社用車は持つために、速やかに提出が必要です。

次に、管轄の運輸支局で、車検証にある自動車所有者の住所を変更する必要があります。
警察署で車庫証明書を取得後に、「車庫証明書」、「車検証」、「登記事項証明書」、「法人の印鑑」を持参して、手続きを行います。
なお、リースやローンの支払いが終わっていない場合の所有者はリース会社やローン会社となっていることから、「所有者からの委任状」が必要となります。

また、自賠責保険の住所変更の手続きも必要となります。

 

⑨郵便物の転送手続き(郵便局)

郵便局へ転居届を提出しておくことで、1年間は新住所に無料で郵便物を転送してくれるサービスを受けることができます。
移転後でも申し込みはできますが、提出日から転送サービスの開始までには数日かかるこことから、移転前に転居届を提出しておくと安心です。

 

会社の本店移転(住所変更)をした場合に必要となるその他の手続き

会社の本店移転(住所変更)をした場合に必要となるその他の手続きについて確認します。

⑩銀行等の金融機関やクレジット会社への手続き

金融機関については、基本的に取引店舗の窓口で手続きをする必要がありますが、インターネットバンキングを利用している場合は、オンライン上の手続きで完結できることが多いです。
また、クレジットカード会社によっても、オンライン上の手続きで完結できる場合があることから、各会社のホームページ等で事前の確認が必要です。

なお、金融機関やクレジット会社からの郵便物は、転送不要として新住所に転送されないこともありますので、注意が必要です。

法人口座をどこで開設するかについては、以下の記事をご参照ください。
法人口座はどこで開設?

 

⑪日本政策金融公庫への手続き

日本政策金融公庫から融資を受けている場合には、本店所在地を変更したときには公庫所定の変更届により報告が必要となります。

 

⑫不動産管理会社への手続き

店舗やテナントを賃貸契約している場合、不動産管理会社や家主に退去の連絡をした上で、賃貸の退去届(解約届)を提出する必要があります。
なお、賃貸借契約書の解約予告期限には注意が必要です。

 

⑬公共料金(電話、電気、ガス、水道)の手続き

公共料金(電話、電気、ガス、水道)の停止と開始の手続きを行います。
基本的に電話またはインターネットで移転手続きができますが、ガス開栓時には立会いが必要となります。
通常、移転する2週間前までに手続きを行えば、移転日当日から、電話、電気、ガス、水道が使える状態になります。

 

⑭電話番号変更・移転案内サービスの手続き

固定電話がある場合には、電話番号を変更することと合わせて電話移転(番号変更)の案内サービスの申し込みの検討も必要になります。旧電話番号に電話がかかると移転先の電話番号を案内するアナウンスが流れ、基本的に無料サービスであることから、よく使われるサービスです。

 

⑮通信関連の手続き

インターネットプロバイダ、携帯電話、IP電話の契約者情報を変更する必要があります。
各サービス提供事業者へ電話やインターネット、ショップ窓口で手続きが行えます。必要一般的に登記事項証明書、本人確認書類が必要になることが多いです。

 

⑯リース契約の手続き

複合機やコピー機などの設備をリース契約している場合には、リース会社へ連絡する必要があります。
リース物件の所有者はリース会社のため、設置場所を勝手に移動させることはできませんが、連絡をすると、移転先によってはリース会社が運んでくれる場合もあります。

なお、精密機械については、自社で運ぶ場合であっても、専門業者に任せることが一般的です。

 

⑰保険会社の手続き

経営者保険、団体保険、自動車保険、企業年金など会社で契約している保険がある場合には、契約内容を変更する必要があります。
一般的に登記事項証明書、本人確認書類が必要になることが多いです。

 

⑱許認可の手続き

許認可を受けている場合、変更届の提出や移転申請などを行う必要があります。

例えば会社が建設業の許可を受けている場合や、労働者派遣事業の許可を受けている場合には、移転後30日以内に変更届の提出が必要です。また、添付書類として「登記事項証明書」「営業所の写真」などを添付します。

許認可の種類によって、必要となる手続き、期限、添付書類、手数料がそれぞれ異なることから、予め許認可を受けた先の役所へ確認することが重要です。

なお、酒類販売業免許の移転申請については、以下のLink先からお気軽にご相談ください。
お酒の販売業免許の取得支援

 

⑲取引先への挨拶上の送付・連絡

取引先に「挨拶状」を郵送やFAXで送付することを検討します。
取引先側で請求書や納品書などの送付先を変更してもらう必要があるため、できるだけ早めに送付・連絡することが重要です。
また、Amazon、楽天、アスクルなどのネットショップの会員情報にある送付先等も変更が必要になります。

 

⑳契約先への連絡

本店移転・住所変更をしたからといって、契約書を再締結する必要はありませんが、一般的には契約先に連絡します。
特に契約条項として契約者情報に変更があった場合の通知義務が規定されている時には、必ず通知する必要があります。
また、契約内容によっては追加で覚書を交わす必要があるケースもあるため、事前に契約内容を確認します。

 

㉑自社での手続き

ホームページ、名刺、会社案内、各種パンフレット、社用封筒、取引書類(納品書、請求書、見積書、領収証など)や送付表などに記載されている会社住所を変更する必要があります。
また、会社のゴム印(社判)も新規に作成が必要です。

 

 

会社の本店移転や住所変更にかかる費用

会社の本店移転や住所変更にかかる費用として、例えば、次の費用が挙げられます。

①法務局での登録免許税

法務局の管轄が変わる場合には、移転前後の法務局へ、それぞれ3万円の登録免許税がかかり、合計6万円となります。
ただし、法務局の管轄が変わらない場合には、3万円の登録免許税のみとなります。

 

②オフィス移転にかかる費用

一般的に下記の費用がかかりますが、会社の規模や移転時期によっても大きく変動します。
概算費用がシュミレーションできるサイトがありますので、費用相場を調べて、計画的に進めることが重要です。

・退去費用(原状回復費用、日割り家賃、日割りの公共料金など)
・引越費用
・新オフィスにかかる費用(新オフィスの契約費用、レイアウト費用、インフラ導入費用)

 

会社の本店移転や住所変更の注意点

会社の本店移転や住所変更に際しての注意点は、主に次の通りです。

①移転先での商号調査

一つの住所に同一の商号(会社名)は使用できないことから、会社の本店移転や住所変更をする場合には、あらかじめ移転先の住所に同一の商号(会社名)が登記されていないかどうか商号調査をしておく必要があります。

特に移転先が大規模ビルの場合には注意が必要です。

 

②「許認可」手続きの確認

上述の「許認可」の手続きに記載した通り、許認可を受けている場合には、事前に許認可を受けた窓口へ会社の本店移転や住所変更に伴い発生する手続きがないかどうか確認しておく必要があります。

なお、許認可の種類によっては、事前手続きが必要な場合があります。

 

まとめ

以上今回は、「会社の本店移転(住所変更)をした場合に一般的に必要とされる手続き」などを解説させていただきました。
会社の本店移転(住所変更)にあたっては、許認可のように事前に検討が必要な項目があることから、時間的余裕をもって検討することが重要です。

なお、急な本店移転(住所変更)の場合や、本店移転(住所変更)の手続きについて、ご不明点等がある場合には、「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グルーブにご相談ください。