法務局での設立登記が済んだ後も、会社の設立作業として、やるべきことはまだあります。その一つが登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の取り寄せです。
そこで今回は、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)について、その「概要」や、「記載されている事項」、「必要となるケース」、「6つの取得方法」などを解説します。
なお、当事務所の概要は以下のサイトをご参照ください。
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登記簿謄本(履歴事項全部証明書)などの概要
まず初めに、「登記簿」や「登記簿謄本」、「登記事項証明書」の概要を確認します。
(1)登記簿とは?
登記簿とは法務局の登記簿台帳のことで、会社名や所在地、資本金などの情報が記載されています。
現在は、電子データ化されており、以前のように紙で管理されることはなくなっています。
(2)登記簿謄本(履歴事項全部証明書)とは?
登記簿謄本とは、登記簿台帳から記載事項の全てを複写したものを言います。現在は、登記内容は全てデータ化されており、厳密には登記簿謄本や登記簿抄本(登記簿に記載された一部を複写したもの)を取得することはできなくなっています。
(3)登記事項証明書とは?
電子データ化された登記簿は「登記事項証明書」として取得することができるようになっています。
登記事項証明には、次のように5つの種類があります。
✓履歴事項全部証明書 ✓現在事項全部証明書 ✓閉鎖事項全部証明書 ✓履歴事項一部証明書(抄本) ✓現在事項一部証明書(抄本) |
変更登記の履歴も含めて記載されているのが「履歴事項全部証明書」です。これらは、会社の情報を公的に証明するために使われるものです。
登記簿謄本を取得する必要があるときは、基本的に履歴事項全部証明書を取得することになります。
登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の記載事項やサンプルは?
履歴事項全部証明書には、次の事項が記載されています。
✓会社所在地 ✓会社名 ✓法人番号 ✓商号 / 内容変更年月日 / 登記年月日 ✓本店所在地 / 移転年月日 / 登記年月日 ✓公告方法 ✓会社設立の目的(事業内容) ✓発行可能株式総数 ✓発行済株式の総数並びに種類及び数 ✓株券を発行する旨の定め ✓資本金額 ✓株式の譲渡制限に関する規定 ✓役員に関する事項 / 役職 / 氏名 / 重任年月日 / 登記年月日 ✓取締役会設置会社に関する事項 ✓監査役設置会社に関する事項 ✓登記記録に関する事項 |
履歴事項全部証明書に記載されている内容は、3年前の1月1日から請求日までの内容で、それ以前の登記情報は、有効な情報とみなされないため、ここには記載されません。
3年より以前の情報が必要な場合には「閉鎖事項全部証明書」を請求して取得する必要があります。
登記簿謄本(履歴事項全部証明書)のサンプルは以下の画像の通りです。
登記簿謄本(履歴事項全部証明書)が必要となるケース
登記簿謄本(履歴事項全部証明書)が必要になるのは、次のようなケースです。
(1)会社設立時
提出先:都道府県税事務所、市区町村役場
(2)会社所在地の移転時
提出先:税務署(移動前の税務署のみ)
(3)社会保険の加入時
提出先:年金事務所
(4)従業員の雇用時
提出先:労働基準監督署、ハローワーク
(5)会社名義の口座開設時やクレジットカード契約時
提出先:金融機関、クレジットカード受付窓口
(6)賃貸契約時、携帯電話の契約時
提出先:不動産会社、携帯電話会社
(7)留意事項等
この他にも、金融機関から融資を受ける際や、自治体から補助金や助成金などの公的資金を受ける場合などにも必要となります。
これらの手続きで有効となる履歴事項全部証明書(登記簿謄本)は、通常、発行から3ヶ月以内のものとなることから、有効期間には注意が必要です。
また、提出先が複数箇所になる場合には、必要枚数が複数枚になることがありますので、こちらも取得前に注意が必要です。
登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の6つの取得方法
登記情報は、次の6つの方法で取得することができます。
(1)法務局の窓口で取得する方法
①法人印鑑カードを使って窓口で取得する方法 (2)法務局から郵送で取得する方法 ①申請書を使って郵送で取得する方法 (3)代行サービスを利用して取得する方法 |
取得の際には、法務局へ支払う手数料や、代行サービスでは利用料も必要になります。
それぞれの取得方法の詳細は以下で確認します。
(1)法務局の窓口で取得する方法
登記簿謄本(履歴事項全部証明書)をできるだけ早く取得したい場合には、法務局の窓口で取得することをお勧めします。
法務局の窓口で取得する方法として、次の3つの方法があります。
①法人印鑑カードを使って窓口で取得する方法
法人印鑑カードを使って窓口で取得する方法が最も簡単な方になります。
法人印鑑カードは、法務局で申請すれば交付してもらえます。会社設立の登記申請の際に、印鑑カードを発行してもらっている場が多いです。
このカードがあると、履歴事項証明書の全ての書類を簡単に取得することができるようになります。
具体的には、法務局にある証明書発行請求機にカードを通すと、登録された会社の登記情報を読み込んでくれ、取得したい書類(ここでは履歴事項証明書)を選択し、必要枚数を指定すると整理券が発券されます。
窓口から呼ばれるまで少し時間があるので、収入印紙600円(1通あたり)を準備していない場合には、収入印紙を法務局内で購入します。暫く待っていると、窓口から呼ばれ、履歴事項証明書が交付されます。
なお、法人印鑑カードについては、以下の記事も併せてご参照ください。
印鑑カードの3つの取得方法を詳しく解説!!
②申請書を使って窓口で取得する方法
申請書を使って窓口で取得する方法は法人印鑑カードがなくても取得できる方法になります。
法務局内に用意されている、または法務局のホームページに用意されている「登記事項証明書交付申請書」に必要事項を記入します。それに収入印紙600円(1通あたり)を貼付して、法務局の窓口に提出すれば、履歴事項証明書を取得することができます。
登記事項証明書交付申請書の書き方は、法務局が用意している以下の記入例を参考に申請人の住所や氏名、会社の商号や所在地、法人番号などの、必要記載事項を記入します。
③オンライン請求を行い窓口で取得する方法
オンライン請求を行い窓口で取得する方法は、待ち時間を削減してスムーズに受け取りたい場合にお勧めです。
事前に専用ソフト「申請総合ソフト(無料)」を法務局ホームページの登記・供託オンラインへアクセスして、ダウンロードすることが必要です。
この「申請総合ソフト」で、申請者登録を行った上で、取得したい書類の種類を選び、申請をおこないます。
手数料として、480円(郵送の場合には500円)がかかりますが、他の方法よりも安く取得できます。
この手数料は、窓口での受け取りであっても、インターネットバンキング(モバイルバンキング含む)や電子納付対応のATMで支払う必要があります。
なお、会社の電子証明書は必要ありません。
(2)法務局から郵送で取得する方法
時間に多少の余裕がある場合には、郵送で取得する方法が便利でお勧めです。郵送のため、わざわざ法務局へ出向く必要がなく、待ち時間で拘束されることもありません。
法務局から郵送で取得する方法として、次の2つの方法があります。
①申請書を使って郵送で取得する方法
登記事項証明書交付申請用紙は、法務局まで行かなくても以下の法務局サイトから、オンラインでダウンロードすることができます。
ここから、印刷して必要事項を記載し、収入印紙600円を貼って、返信用封筒(必要となる切手貼付)やレターパックを同封して郵送します。
法務省サイト:登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式 :法務局 (moj.go.jp)
宛先となる法務局に特に決まりはないため、近隣の法務局に送付します。
また、返信用封筒などの宛名は会社住所や代表者住所だけでなく、全国どこであっても指定した返送先に送られてきます。
急ぎの場合は速達を、郵便事故のリスク回避には書留や簡易書留を利用することも可能です。
②オンライン請求を行い郵送で取得する方法
申請総合ソフトを使って請求し、郵送で書類を受け取る場合は、こちらの方法を使います。
手数料として、500円(窓口の場合には480円)がかかりますが、他の方法よりも安く取得できます。
上記(1)③と同じように、必要事項を入力して、取得したい書類の種類を選択し、郵便での受け取りを指定します。
モバイルバンキングやインターネットバンキング、または電子納付対応のATMから支払いを行い、到着を待ちます。
(3)代行サービスを利用して取得する方法
最近では、民間事業者が提供する代行サービスを活用する方法もあります。この方法を活用すると、申請書の不備による不受理になるリスクを回避できます。
ただし、サービス利用料等が必要になりますので、コストパフォーマンスを考えて、利用するかどうかを検討することをお勧めします。
まとめ
以上今回は、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)について、その「概要」や、「記載されている事項」、「必要となるケース」、「6つの取得方法」などを解説させていただきました。
登記簿謄本を取得する必要があるときは、履歴事項全部証明書を取得すること基本となります。
この登記簿謄本(履歴事項全部証明書)が必要になるのは、例えば、会社設立時や会社所在地の移転時、社会保険の加入時、従業員の雇用時などです。
登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の取得方法には、次の6つの方法があります。
✓法人印鑑カードを使って窓口で取得する方法 ✓申請書を使って窓口で取得する方法 ✓オンライン請求を行い窓口で取得する方法 ✓申請書を使って郵送で取得する方法 ✓オンライン請求を行い郵送で取得する方法 ✓代行サービスを利用して取得する方法 |
できるだけ早く取得したい場合には、法務局の窓口で取得する方法が、時間に多少の余裕がある場合には、郵送で取得する方法がお勧めです。
「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループでは、会社設立や創業などのご相談を無料でお受けしています。登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の取得についても、もちろんアドバイスをできますので、お気軽にご相談ください。
なお、法人の印鑑証明書の取得方法を確認したい方は、以下の記事もご参照ください。
法人の印鑑証明書の6つの取得方法を詳しく解説!!