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年末調整のよくある質問トップ10について詳しく解説!

「年末調整」とは、「所得税の過不足を精算するための手続き」を言います。この年末調整は、毎年10月下旬から11月頃にスタートし、1月下旬までかけて実施するのが一般的です。

年末調整業務は、1年のうち特定の時期だけに発生する業務のため、この時期になると年末調整に関する質問をよく受けます。

そこで、今回は年末調整に関して、よくある質問を整理いたしましたので、年末調整担当者の方は、執務のご参考になさってください。

なお、当事務所の概要は以下のサイトをご参照ください。
当事務所について – 保田会計事務所|税務・コンサル・会計・その他経営に関わる全てを総合的にサポート

 

Q1.前職の源泉徴収の提出がない場合でも年末調整はできるか?

従業員が前職の源泉徴収票を紛失したとして、当社に未提出の場合に、当社で年末調整をしてもいいでしょうか。

 

A1.前職の源泉徴収の提出がない場合でも年末調整はできるか?

前職分の源泉徴収票が未提出である場合には、従業員の年間給与支払額が確定できないことから、現職の会社で年末調整をすることはできません

以下の国税庁の手引き(P33)においても、次のように記載されています。
令和4年分 年末調整のしかた|国税庁 (nta.go.jp)

 

前職分の給与とその徴収税額については、その人が前の給与の支払者から交付を受けた「給与所得の源泉徴収票」などで確認することになりますが、その確認ができるまではその人の年末調整は見合わせてください。

 

ただし、実務上は、会社の判断で、前職はないものとして、現職分の給与のみで年末調整を行い、従業員本人が現職の源泉徴収票と前職の源泉徴収票をもって確定申告をしているケースもあります。

なお、従業員は、確定申告期限である3月15日までの間に、前職へ源泉徴収票の再発行を依頼しておく必要があります。

 

 

Q2.前職の源泉徴収が乙欄の場合でも年末調整はできるか?

途中入社の従業員に提出してもらった前職の源泉徴収票が乙欄であった場合、当社で前職分の給与も含めて年末調整をしてもいいでしょうか。

 

A2.前職の源泉徴収が乙欄の場合でも年末調整はできるか?

前職分の給与は年末調整に含めることはできず、現職分の給与のみで年末調整を行います

ここで、年末調整の対象になるのは、次の給与等です。

✓年末調整を行う給与等の支払者がその年に支払った給与等
✓他の給与等の支払者が支払った甲欄給与等

そのため、前職の源泉徴収票が甲欄以外(乙欄、丙欄)の場合には、現職の会社から支払った給与のみで年末調整を行うことになります。

ただし、中途入社の従業員が提出した源泉徴収票が乙欄であった場合、その他に甲欄適用の給与があった可能性があることから、源泉徴収票提出分以外に給与等を受け取った事実がないか確認する必要があります。

 

 

Q3.扶養控除の判定はいつ時点で行いますか?

配偶者控除や扶養控除の適用は、給与収入額が103万までであれば適用ができると思いますが、この収入の判定はいつ時点で行えばいいでしょうか。年末調整を行う時点の見込み額でもいいでしょうか。

 

A3.扶養控除の判定はいつ時点に行いますか?

配偶者控除や扶養控除の適用はその年の12月31日時点で行います

通常、年末調整を行う時点ではその年の収入額は確定していないため、その時点の見込み額をもって判定を行いますが、12月31日時点の確定額が見込み額と相違し、扶養の有無や控除額が変わる場合には、翌年1月において年末調整をやり直します。

なお、子供の扶養控除適用の可否や控除額は年齢によって次の通り異なりますが、この年齢についてもその年の12月31日時点で判定します。

 

年齢 扶養控除の区分 控除額
16~18歳 一般の控除対象扶養親族 38万円
19~22歳 特定扶養親族 63万円
23~69歳 一般の控除対象扶養親族 38万円

 

 

Q4.国内で別居している親族を控除対象扶養親族にできますか?

国内で別居している親の生活の面倒を見ていますが、控除対象扶養親族にしてもいいでしょうか。

 

A4.国内で別居している親族を控除対象扶養親族にできますか?

別居している親族であっても、所得者本人の扶養控除の対象とすることは可能です。

ただし、その場合には、別居している親族に対して常に生活費、療養費等の送金が行われているなど、所得者本人と生計を一にしている必要があります。

なお、以下の国税庁サイト(問3)では、扶養控除の計算を正しく行うため、会社側の作業として、銀行振込や現金書留により送金している事実を振込票や書留の写しなどの提示を受けて確認することをお勧めしますと記載されています。
令和4年分 年末調整Q&A|国税庁 (nta.go.jp)

 

 

Q5.国外に住む親族について、控除対象扶養親族にできますか?

国外に居住する親族についても、Q4.の国内で別居している親族と同様に控除対象扶養親族にしてもいいでしょうか。

 

A5.国外に住む親族について、控除対象扶養親族にできますか?

国外に住む親族(国外居住親族)であっても、Q4.の国内で別居している親族と同様に、所得者本人の扶養控除の対象とすることは可能です。

ただし、その場合には、別居している親族に対して常に生活費、療養費等の送金が行われているなど、所得者本人と生計を一にしている必要があります。

さらに、国内で別居している親族とは異なり、必ず国外居住親族についての「親族関係書類」や「送金関係書類」を会社に提出(または提示)する必要があります。

この「親族関係書類」としては、次のどちらかが必要とされています。

①日本国籍:戸籍の附表の写しと、国外居住親族のパスポートの写し

②外国国籍:外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類(親族の名前、生年月日、住所の記載があるもの)

外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類としては、例えば「出生証明書」や「婚姻証明書」などが挙げられます。会社はこれらの書類を確認して、年齢や親族関係をチェックすることになります。

次に、「送金証明書類」とは、納税者が国外居住親族の生活費や教育費に充てるためとして支払いをしたことを証明するもので、具体的には以下の書類が挙げられます。

金融機関に提出する送金証明書の控え

クレジットカード会社が発行する利用明細書

※ 書類が外国語で書かれている場合には翻訳文も必要

この送金証明書類は、扶養控除を適用させたい親族1人ごとにそれぞれ必要となります。そのため、例えば、両親に仕送りをしている場合でも、同一の口座に送金すると1人分の扶養とみなされてしまうことから、それぞれ別の口座を用意することが必要です。

また、本人から帰国時などに現金で渡した旨の申立書があったとしても、この申立書は送金証明書類には含まれないことから、必ず、銀行送金やクレジットカードの利用などによって生活費等を渡すように注意が必要です。

詳細は、以下の国税庁サイトをご参照ください。
国外居住親族に係る扶養控除等の適用について|国税庁 (nta.go.jp)

 

 

Q6.妻が契約者である生命保険の保険料を夫が支払っている場合にどちらの年末調整に含めますか?

妻が契約者である生命保険契約について、その生命保険料を夫が支払っている場合には、どちらの年末調整に含めればいいでしょうか?

 

A6.妻が契約者である生命保険の保険料を夫が支払っている場合にどちらの年末調整に含めますか?

生命保険料控除の適用を受けることができるのは、生命保険料の支払者となります。また、生命保険料控除の対象となる生命保険契約等は、その保険金の受取人の全てをその保険料の払込者またはその配偶者その他の親族とするものを言い、契約者が誰であるかは要件とされていません。

そのため、受取人等の要件が充たされている限り、生命保険料を支払った夫の生命保険料控除の対象となります。

なお、生命保険を活用した相続対策は、以下の記事をご参照ください。
個人契約の生命保険を活用した事業承継対策(相続対策)

 

 

Q7.別居する親が契約者である地震保険の保険料を支払っている場合に年末調整に含めていいですか?

別居する親が契約者である地震保険契約(対象物件は親が住んでいる建物)について、保険料を支払った場合に、私の年末調整に含めていいでしょうか。

 

A7.別居する親が契約者である地震保険の保険料を支払っている場合に年末調整に含めていいですか?

地震保険料控除の適用を受けることができるのは、地震保険料の支払者となります。また、控除の対象となる保険や共済の契約は、自己若しくは自己と生計を一にする配偶者その他の親族が所有している家屋で常時その居住の用に供するもの又はこれらの者の有する生活用動産を保険や共済の目的とするものを言い、契約者が誰であるかは要件とされていません。

そのため、保険契約等の要件(両親と生計が一緒など)が充たされている限り、地震保険料を支払った者の地震保険料控除の対象となります。

なお、地震保険を活用した節税については、以下の記事もご参照ください。
地震保険料控除による節税を詳しく説明!!

 

Q8.生計を一とする親の社会保険料を支払った場合に年末調整に含めることができますか?

生計を一としている親の社会保険料(国民健康保険料)を支払った場合に、私の年末調整に含めていいでしょうか。

 

A8.生計を一とする親の社会保険料を支払った場合に年末調整に含めることができますか?

社会保険料控除は、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合に、その支払者が適用を受けることができます

そのため、生計を一とする親の社会保険料を支払った場合には、社会保険料控除の適用を受けることができます。

ここで、社会保険料とは次のようなものを言います。

✓健康保険、国民年金、厚生年金保険、船員保険の保険料

✓国民健康保険料、国民健康保険税

✓後期高齢者医療制度の保険料

✓介護保険料

✓雇用保険の被保険者として負担する労働保険料

✓国民年金基金の加入員として負担する掛金

 

なお、後期高齢者医療制度では、原則として、その保険料が年金から特別徴収の方法により徴収されています。この場合、その保険料を支払った者は年金の受給者自身であるため、その年金の受給者に社会保険料控除が適用されます。

一方、市区町村等へ一定の手続を行うことで、年金からの特別徴収に代えて、口座振替により保険料を支払うことも選択できますが、この場合には、口座振替によりその保険料を支払った者(被保険者または被保険者と生計を一にする配偶者その他の親族に限ります)に社会保険料控除が適用されます。

詳細は以下の記事や国税庁サイトを参照ください。

社会保険料控除に関する記事:
社会保険料控除とは?控除証明書の提出が必要な社会保険料は?

国税庁サイトのQ6:
No.1130 社会保険料控除|国税庁 (nta.go.jp)

 

 

Q9.寄付金控除や医療費控除を年末調整に含めることができますか?

ふるさと納税などの寄付金控除や医療費控除を年末調整に含めることはできますでしょうか。

 

A9.寄付金控除や医療費控除を年末調整に含めることができますか?

ふるさと納税などの寄付金控除や医療費控除は年末調整で適用することはできません。そのため、個人が確定申告を行って、適用を受ける必要があります。

なお、、ふるさと納税や医療費控除などの「会社員の節税対策」に関しては、以下の記事もご参考になさってください。
会社員の節税対策6選!!

 

 

Q10.今年家を購入しましたが、年末調整に含めることができますか?

今年家を購入しましたが、住宅ローン控除について年末調整に含めることができますか?

 

A10.今年家を購入しましたが、年末調整に含めることができますか?

住宅ローン控除を年末調整で行うことができるのは、購入の翌年からになります。購入した年については、翌年の3月15日までに個人で確定申告を行う必要があります。

なお、連帯債務がある場合の住宅ローン控除申告書の書き方については、以下の記事をご参照ください。
【年末調整】住宅ローン控除申告書の連帯債務の書き方を解説!!

 

 

まとめ

以上今回は、年末調整に関して、よくある質問を解説させていただきました。

確定申告業務をお手伝いしていると、別居している両親の扶養控除についての適用もれが散見されます。

両親の年齢が70歳以上の場合には、老人扶養控除として48万円の所得控除が漏れていることになることから、例えば、所得税率が33%の人が両親の老人扶養控除96万円を5年間適用もれしていた場合には、1,584,000円(=48万円×2人×33%×5年)の所得税をムダに納付していたことになります。さらに住民税でも老人扶養控除38万円の適用が受けられるため、所得税と同様に計算すると380,000円(=38万円×2人×10%×5年)の住民税も過大であったことが分かります。

このように思わぬところで、税金の無駄な支払いが発生していることがあることから、ご自身の年末調整や確定申告に少しでもご不安がある方は、一度、税理士などの専門家にご相談されることをお勧めします。

「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループでは、個人の申告業務も積極的にお受けしておりますので、ご興味等ございましたら、お気軽にご連絡ください。