近年、フリーランス(個人事業主)で働く人や、副業を行う人が増えています。そんな中で、よく受けるご質問の中に、「「白色+雑所得」と「青色+事業所得」はどちらが有利か?」があります。
そこで、今回は「白色+雑所得」と「青色+事業所得」に違いに着目して、それぞれの「メリット・デメリット」や「どちらが有利か」、「留意点」などを解説します。
なお、実践的な節税対策については、以下のサイトをご参照ください。
当事務所について – 保田会計事務所|税務・コンサル・会計・その他経営に関わる全てを総合的にサポート
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「白色+雑所得」と「青色+事業所得」のメリット・デメリット
雑所得については、青色申告ができないため、必然的に白色申告となります。一方で、事業所得については、青色申告か白色申告が自由に選択することができます。
ただし、今回は、白色申告となる雑所得との比較を行うため、事業所得は青色申告を前提とさせていただきます。
「白色+雑所得」と「青色+事業所得」には、下表の通り、それぞれメリット・デメリットがあります。
白色+雑所得 | 青色+事業所得 | |
個人事業税 | 〇
事業税の負担なし |
✕
事業税の負担あり |
65万円控除 | ✕
65万円控除の適用ができない |
〇
65万円控除の適用ができる |
上記の表の通り、「白色+雑所得」は事業税の負担がないというメリットがあるものの、65万円控除の適用ができないというデメリットがあります。
一方で、「青色+事業所得」は65万円控除の適用を受けられるというメリットがあるものの、個人事業税の負担が生じるというデメリットがあります。
なお、e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存を行っていない場合には、控除額が65万円から55万円に減額されることから注意が必要です。
なお、法人の青色申告の概要は以下の記事をご参照ください。
【会社設立後の提出書類③】青色申告承認申請の概要と書き方(記入例あり)
個人事業税の計算方法
ここでは、上記のメリット・デメリットの項目にある「個人事業税」の計算方法を確認します。
個人事業税は、個人事業主が営むさまざまな事業のうち、「法定業種」といわれる一定の職種のみにかかります。「法定業種」は、以下の東京主税局のサイトをご参照ください。
個人事業税 | 税金の種類 | 東京都主税局 (tokyo.lg.jp)
個人事業税の算定式は次の通りです。
個人事業税 = (売上 - 経費 - 事業専従者給与 - 各種控除 ※1 ) × 税率 ※2 |
※1:各種控除
各種控除には、次の2つがあります。
事業主控除:一律で290万円
繰越控除:青色申告者で赤字となった場合や、白色申告者で震災などにより損失があった場合、機械などの事業用資産を譲渡したことで損失が生じた場合に受けられる控除 |
個人事業税の各種控除と異なり、所得税の所得控除は全部で15種類もあります。所得控除15種類の詳細については、以下の記事をご覧ください。
所得控除の全15種類を詳しく解説!!
※2:税率
東京都では、法定業種は、「第1種(37業種)」「第2種(3業種)」「第3種(30業種)」の3つに区分され、第1種は5%、第2種は4%、第3種は3%の税率となります。東京都の税率は以下の東京主税局のサイトをご参照ください。
個人事業税 | 税金の種類 | 東京都主税局 (tokyo.lg.jp)
上記の個人事業税の算定式を簡単にすると「 ( 所得 - 290万円 ) × 5%(第1種)」となります。
そのため、個人事業税を大まかに税率5%の税金と考えると、無視できない存在になることから、所得税と事業税を考慮した税額シミュレーションが重要になってきます。
「白色+雑所得」と「青色+事業所得」はどちらが有利?
ここでは、事業に関する所得が500万円と1,200万円の場合で、「白色+雑所得」と「青色+事業所得」を採用したケースごとの税額シミュレーションを行います。
事例としては、単純な例を扱いますが、給与所得などで事業に関する所得以外に総合課税の適用を受ける所得がある場合等には、本事例とは異なるシミュレーション結果となることから注意が必要です。
(1)事業に関する所得が500万円の場合
<事例①>
所得:500万円(事業専従者給与はなし、65万円控除前) 所得税率:30%(住民税10%を含む) 概算の事業税算定式:( 所得 - 事業主控除 ) × 5% |
<白色+雑所得でかかる所得税と事業税>
所得税:500万円 × 30% = 150万円 事業税:0円 合計:150万円 |
<青色+事業所得でかかる所得税と事業税>
所得税:(500万円 - 65万円) × 30% = 130.5万円 事業税:(500万円 - 290万円) × 5% = 10.5万円 合計:141万円 |
同様の事例で計算すると、所得600万円ぐらいまでは、「青色+事業所得」の方が有利になります。
(2)事業に関する所得が1,200万円の場合
<事例>
所得:1,200万円(事業専従者給与はなし、65万円控除前) 所得税率:43%(住民税10%を含む) 概算の事業税算定式:( 所得 - 事業主控除 ) × 5% |
<白色+雑所得でかかる所得税と事業税>
所得税:1,200万円 × 43% = 516万円 事業税:0円 合計:516万円 |
<青色+事業所得でかかる所得税と事業税>
【初年度】
所得税:(1,200万円 - 65万円) × 43% = 488万円 【翌年度】 所得税:(1,200万円 - 65万円 - 45.5万円) × 43% = 468.4万円 |
このように、所得1,200万円の場合には、「白色+雑所得」の方が一見は有利に見えますが、事業税は翌年に「租税公課」として必要経費に計上できることから、翌年の節税額を考慮すると、「青色+事業所得」の方が有利となります。
なお、同様の事例で計算すると、所得1,300万円程度を超えると、「白色+雑所得」の方が有利になります。
「白色+雑所得」と「青色+事業所得」の有利性を判断するための留意点
ここでは、「白色+雑所得」と「青色+事業所得」の有利性を判断するための留意点を3つ確認します。
(1)青色申告によるその他のメリット・デメリット
実際に「白色+雑所得」と「青色+事業所得」のどちらを採用する方が有利かを判断するにあたっては、次のような青色申告のメリットやデメリットも勘案することが重要です。
<青色申告の主なメリット>
①赤字が3年間も繰り越せる
青色申告であれば、純損失を3年にわたって全額繰り越すことが出来ます。損失を翌年に繰り越すことで、翌年の所得が下がり、節税につながります。 白色申告の場合には、繰り越せる損失が「変動所得の損失の金額」と「被災事業用資産の損失の金額」に限られてしまいます。
②専従者への給料を経費にできる 青色申告では、個人事業を手伝ってくれている家族(専従者)への給料全額を必要経費に計上できます。 白色申告の場合には、専従者への給料は経費にはできないものの、確定申告の時に最高86万円まで控除することができます。 なお、青色申告で専従者に給料を払ったり、白色申告で専従者控除を受けたりすると、 配偶者控除や扶養控除が受けるができないことから注意が必要です。
③30万円未満の固定資産は一括で経費にできる 10万円以上の固定資産を購入すると、減価償却によって必要経費を計算します。これが、青色申告であれば「少額減価償却資産の特例」を受けることができ、30万円未満の固定資産は、その年の必要経費として一括で計上できます。 なお、少額減価償却資産の特例については、以下の記事をご参照ください。 |
<青色申告の主なデメリット>
①複式簿記による記帳
青色申告で55万円か65万円の特別控除を受けるには「複式簿記」で記帳しなければならず、会計ソフトの導入も検討する必要があります。
②書類の保存期間が長い 作成した帳簿や領収書などは、最大7年間の保存義務があります。
③期限内の提出が必要 青色申告で55万円か65万円の控除を受けるためには、申告期限内に確定申告をすることが必要です。
④事前に申請書の提出が必要 青色申告をするためには、事前に税務署へ申請を出す必要があります。申請書の提出期限は、青色申告の対象にする年の確定申告期限日(通常3月15日)までです。 新規開業の場合は、開業してから2ヶ月以内です。 白色申告の場合には、このような事前の申請は不要です。 |
(2)雑所得に事業税は本当にかからないか?
雑所得に事業税がかからないことを前提に今まで解説を進めてきましたが、本当に雑所得に事業税はかからないのでしょうか。この点をここでは確認します。
その答えは、以下の東京都主税局のサイトに記載されています。
個人事業税 | 税金の種類 | 東京都主税局 (tokyo.lg.jp)
上記サイトに記載の通り、雑所得についても事業税の課税の対象となる場合があります。
ただし、雑所得は通常、収支内訳書等を添付しないことから、都税事務所や県税事務所において、事業税の対象となる所得か否かの判断は難しく、実務上、事業税の対象とされるケースは少ないと考えられます。
なお、税制改正により、令和4年分以降、業務に係る雑所得を有する場合で、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える人は、収支内訳書の添付が必要になることから、今後は雑所得であっても、事業税の対象となるケースが増えてくる可能性があることから注意が必要です。
事業税に関しては、以下の「個人事業税の法定業種と税率」に関する記事もご参照ください。
個人事業税の法定業種と税率を分かりやすく解説!!
(3)雑所得が認められず事業所得にされないか?
雑所得として申告したものが認められずに、事業所得とされることはないのでしょうか。この点をここでは確認します。
雑所得と事業所得の区分は最高裁判決によると以下の事項を勘案して分類されます。
①自己の計算と危険において独立して営まれている ②営利性 ③有償性 ④反復継続して遂行する意思 ⑤社会的地位 |
税務調査において、事業所得で申告したものを雑所得とするように指摘され、損益通算などができないケースはよくあります。
一方で、雑所得で申告したものを事業所得とするように指摘されることはほとんどありません。
ただし、雑所得は証憑等の保存義務がないことから、高所得にもかかわらず雑所得として申告している場合には、雑所得とすることで所得を故意に引き下げていることを怪しまれる等、税務署からマークされる可能性があります。
まとめ
以上、今回は「白色+雑所得」と「青色+事業所得」に違いに着目して、「それぞれのメリット・デメリット」や「どちらが有利か」、「留意点」などを解説いたしました。
「白色+雑所得」には、事業税の負担がないというメリットがあるものの、65万円控除の適用ができないというデメリットがあります。一方で、「青色+事業所得」には、65万円控除の適用を受けられるというメリットがあるものの、事業税の負担が生じるというデメリットがあります。
上記では、事業に関する所得が500万円と1,200万円の場合で、「白色+雑所得」と「青色+事業所得」を採用したケースごとの税額シミュレーションを行いました。
ただし、実際に「白色+雑所得」と「青色+事業所得」のどちらを採用するかを判断するにあたっては、給与所得などで事業に関する所得以外に総合課税の適用を受ける所得があるかどうかや、青色申告のメリット・デメリットも勘案することが必要となります。
「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループでは、個人事業主の事業に関する申告において、「白色+雑所得」と「青色+事業所得」のどちらが優位がシュミレーションを実施しております。
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