個人事業主には3%~5%の個人事業税が課されます。
個人事業税の税率は業種によって変わり、また、非課税となる業種もあります。
そこで今回は、個人事業税について、「その概要」や「計算方法」、「法定業種と税率」、「納付期限」、「留意点」などを解説します。
なお、実践的な節税対策については、以下のサイトをご参照ください。
当事務所について – 保田会計事務所|税務・コンサル・会計・その他経営に関わる全てを総合的にサポート
Table of Contents
個人事業税とは
ここでは、個人事業税の概要や計算方法、税率、納付期限などを確認します。
(1)個人事業税の概要
法定業種を営む個人事業主には、地方税のひとつである個人事業税が賦課されます。
具体的には、開業2年目から毎年、8月ごろに「個人事業税」の支払通知書が都道府県から届き、その通知に基づき、納付することとなります。
この個人事業税は、会社に課される「法人税」に該当するものです。
個人事業主であれば全員が課税されるわけではなく、納税義務があるのは、70の法定業種を営む事業主です。
(2)個人事業税の計算方法
個人事業税の計算式は次の通りです。
個人事業税の税額 =( 収入 − 必要経費 − 専従者給与等 − 各種控除)× 税率 |
また、個人事業税の計算におけるポイントは次の通りです。
✓個人事業税では、所得税のように「青色申告特別控除」が適用されません
✓個人事業税の計算での「各種控除」は、所得控除とは異なり、以下の①「事業主控除」と②「繰越控除」のことを言います |
①事業主控除290万円
事業主控除は、年間290万円(営業期間が1年未満の場合は月割額)で全ての事業主に適用されます。
そのため、収入から必要経費を差し引いた後の金額が290万円以下の場合、個人事業税は課されません。言い換えると、少し黒字になった程度では、個人事業税を納める必要はないとも言えます。
②繰越控除
所得税、住民税、事業税のいずれかの申告を毎年期限内申告している場合には、次の繰越控除が適用されます。
✓損失の繰越控除: 青色申告者で、事業の所得が赤字(損失)となったときは、翌年以降3年間、繰越控除ができます。つまり、青色申告者は前3年内の赤字の繰越控除が可能です。 ✓被災事業用資産の損失の繰越控除: ✓譲渡損失の控除と繰越控除: |
(3)個人事業税の税率は業種により異なる
地方税法に定められた70業種(法定業種)を営む個人事業主であっても、全員が同じ税率を課されるわけではありません。
税率は、業種によって変わり、3%~5%の個人事業税が課されます。業種と税率については、後述します。
なお、70もの業種が定められているため、このうちの一つに該当することが多いですが、特殊な業種であれば、法定業種に該当しない可能性もあります。
その場合には、個人事業税は課されないこととなります。
(4)個人事業税の納付期限
個人事業税については、納付の必要があれば、毎年8月ごろに都道府県税事務所から納税通知書が送られてきます(納税額が出ない個人事業主には、通知書は送付されません)。
この納税通知書には、第1期分と第2期分の納付書が添付されています。
また、個人事業税の納付期限日は、原則として以下の通りです。
第1期分 | 第2期分 | |
納付期限日 | 8月31日 | 11月30日 |
このように、基本的には2回に分けて納税します。ただし、地域によっては、一括納税を選べるところもあるようです。
個人事業税の詳細については、東京都主税局の以下のサイトもご参照ください。
個人事業税 | 税金の種類 | 東京都主税局 (tokyo.lg.jp)
法定の70業種と税率
ここでは、70の法定業種と業種ごとの税率を確認します。
(1)課税対象の業種は大きく3つの事業に区分
法律に定められた70業種の中でも、さらに3つの事業に区分され、それぞれの区分によって税率が変わります。
3つの事業ごとの税率は以下のとおりです。
✓第1種事業:5% ✓第2種事業:4% ✓第3種事業:5% ※ |
※ 第3種事業の中でも、あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業のみ3%
第1種事業は37業種が該当し、物品販売業・保険業・製造業・運送業・出版業・飲食店業などが挙げられます。
第2種事業は畜産業(農業に付随しないもの)・水産業(小規模な事業を除く)・薪炭製造業(他から原木を仕入れる場合も含む)の3業種のみです。
第3種事業は30業種あり、医業・薬剤師業・弁護士など各種士業・コンサルタント業・デザイン業・イラストレーター業・美容業などが挙げられます。
フリーランスはこの第3種事業に当てはまることが多いです。
多くの事業主がこの第1種事業もしくは第3種事業(あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業や装蹄師業以外)に当てはまることから、個人事業税の税率は5%であることがほとんどです。
(2)他の業種は非課税
上記に述べた3つの事業に含まれていない業種は、個人事業税の対象とはなりません。
具体的には次のような業種が非課税となります。
✓農業 ✓通訳翻訳業 ✓文筆業、漫画家、画家 ✓作詞家、作曲家 ✓芸能人 |
デザイン業やイラストレーター業は第3種事業に含まれているものの、多くの芸術系の事業が非課税となっています。
また、副業やフリーランスで多い、「ライター」や「システムエンジニア」、「プログラマー」などは法定業種に該当しないことから、非課税となります。
(3)該当事業の判断
都道府県税事務所での業種判定は、実際にどのような仕事をしているかによって決められます。そのため、開業届上には、「画家」と記載していた場合であっても、仕事の内容がイラストを描くものが多い場合には「イラストレーター」であると判定されます。
なお、画家には個人事業税は課せられませんが、イラストレーターは第3種事業に含まれるため5%の個人事業税がかかります。
業種や事業区分に関する留意点
ここでは、業種や事業区分に関するその他の留意点2つを確認します。
(1)複数の業種を兼業している場合
複数の業種を兼業している個人事業主の場合、開業届は主な業種を記入したうえで1枚だけ提出すれば問題ありませんが、個人事業税は税率の異なる業種に分けて、税額を決定する必要があります。
そのため、確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」欄に必要な事項を記載することとなります。
記載イメージは、以下の通りですが、詳細は次の記事の「申告書第二表」に関する項目をご参照ください。
個人事業主の複数事業は可能?屋号追加や青色申告の取扱いも詳しく解説!
(2)業種を変更する場合や事業を開始・廃止した場合の手続き
業種などを変更等したい場合であっても、特別の手続きは不要です。
ただし、事業の開始・廃止した場合には、その年度の確定申告書第二表の「事業税」の欄(上記のイメージ参照)に、「前年中の開始・廃止」という項目があるため、ここに事業の「開始日」や「廃止日」を記載する必要があります。
この欄の記載によって、事業主控除290万円の月割額が計算されることとなります。
(3)非課税業種でも仕事内容によっては請負業になる
法定業種に該当しない非課税業種であっても、次の要件をすべて満たす場合には、請負業と判断されてしまう場合があり、その場合には個人事業税が課税されてしまうことから留意が必要です。
✓仕事の完成を目的とした契約に基づき収入を得ていること ✓資本的経営を行っていること ✓仕事の計画及び遂行について独立性を有すること ✓危険負担を有すること |
なお、法定業種である運送業、印刷業、写真業、理容業、クリーニング業等はここにいう請負業には含まれません。
まとめ
以上今回は、個人事業税について、「その概要」や「計算方法」、「法定業種と税率」、「納付期限」、「留意点」などを解説いたしました。
法定業種を営む個人事業主には、地方税のひとつである個人事業税が課されます。
個人事業税は、収入から、「必要経費」や「専従者給与等」、「各種控除」を差し引いた額に税率を乗じて算定します。
また、各種控除として、290万円の事業主控除があるため、収入から必要経費等を差し引いた後の金額が290万円以下の場合には、個人事業税は課されません。
法律に定められた70業種(法定業種)を営む個人事業主であっても、全員が同じ税率を課されるわけではありません。
税率は、法定業種によって変わり、3%~5%の個人事業税が課されます。
個人事業税の税率は5%であることが多いですが、特殊な業種であれば、法定業種に該当しない可能性もあり、その場合には個人事業税は課されません。
そのため、新たに開業する際には、その営む事業が課税される法定業種に含まれるのか、もしくは非課税業種であるのかを確認することをお勧めします。
なお、「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループでは、個人事業主の税務顧問も積極的にお受けしています。ご興味がある方は、以下のサイトから、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ – 保田会計事務所|税務・コンサル・会計・その他経営に関わる全てを総合的にサポート