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少額減価償却資産や一括償却資産等でお得な方法とは

パソコンや携帯などの少額の減価償却資産を購入することは事業上よくあることと思いますが、この場合の経理処理はどのようにしていますか?
中小の会社や個人事業主の場合には、税務上、一定の要件のもとで全額を経費にできる規定もあり、経理処理の方法はいくつか考えられます。
経理経験者の中では、30万円未満の資産は全額を費用処理できることは広く知られていますので、少額の資産を取得したら資産に計上せずに費用処理しているケースが多いと思われます。しかし、経理処理の方法がいくつかあるということは、事業の状況に応じて経理処理の方法を使い分けることで、上手く節税につなげることも可能なのです。

そこで、今回は、少額減価償却資産(措置法)・一括償却資産・少額の減価償却資産(法人税法)について、その特徴を整理すると共に、具体的に30万円未満・20万円未満・10万円未満に分けて経理処理の方法を確認し、使い分けのポイントも解説していきます。

なお、実践的な節税対策については、以下のサイトをご参照ください。
当事務所について – 保田会計事務所|税務・コンサル・会計・その他経営に関わる全てを総合的にサポート

 

少額減価償却資産(措置法)・一括償却資産・少額の減価償却資産(法人税法)の定義ついて

少額減価償却資産(措置法)・一括償却資産・少額の減価償却資産(法人税法)の定義は次の通りです。

✓少額減価償却資産(措置法)とは、中小企業等が取得した30万円未満の減価償却固定資産で、使用した事業年度に全額を損金にできる資産のことを言います。

✓一括償却資産とは、20万円未満の減価償却固定資産で、個別に固定資産を管理せずに3年にわたって均等に償却する資産のことを言います。

✓少額の減価償却資産(法人税法)とは、10万円未満または使用可能期間が1年未満の減価償却固定資産で、使用した事業年度に全額を損金にできる資産のことを言います。

 

なお、個人事業主における減価償却の概要については、以下の記事をご参照ください。
個人事業主の減価償却の概要や留意点(強制償却など)

 

少額減価償却資産(措置法)の特徴

少額減価償却資産(措置法)とは、中小企業者等が取得した取得価額30万円未満の減価償却資産を言います。
取得価額の全額を会計上、減価償却費や消耗品費として費用に計上し、税金上も取得価額の全額を当期の損金の額に算入します。

一度に損金算入できることから、当期においては節税効果(費用の先取り)が大きいと言えます。
この規定の適用を受けられるのは、青色申告をする中小企業等に限られています。また、一事業年度において、合計300万円までとなっています。

 

一括償却資産の特徴

一括償却資産とは、取得価額が20万円未満の減価償却資産を言います。
一般的な減価償却資産は、使い始めた時に固定資産台帳に一つずつ載せて、月割りで減価償却費を計算しますが、この一括償却資産は、個別管理は不要で、取得した年度ごとにまとめて管理を行い、3年で均等に減価償却を行います。

少額な固定資産も一つずつ固定資産台帳で管理して減価償却費を月割りで計算することは手間がかかることから、この一括償却資産が事務処理簡略化を目的として認められています。

 

少額の減価償却資産(法人税法)の特徴

少額の減価償却資産(法人税法)とは、10万円未満または使用可能期間が1年未満の減価償却固定資産を言います。
取得価額の全額を会計上、消耗品費として費用に計上し、税金上も取得価額の全額を当期の損金の額に算入することができます。

一度に損金算入できることから、当期においては節税効果(費用の先取り)が大きいと言えます。
この規定の適用は青色申告者や中小企業等に限られておらず、全ての会社で採用することができます。
また、一事業年度における適用上限額も特に定められていません

 

少額減価償却資産(措置法)・一括償却資産・少額の減価償却資産(法人税法)の違い

少額減価償却資産(措置法)、一括償却資産、少額の減価償却資産(法人税法)の違いについては、下表の通りです。

項目 少額減価償却資産(措置法) 一括償却資産 少額の減価償却資産(法人税法)
青色申告書 必要 不要 不要
適用できる法人 中小企業者等のみ 全法人OK 全法人OK
対象になる資産 10万円以上30万円未満 10万円以上20万円未満 10万円未満
事業年度ごとの上限 300万円まで なし なし
税務申告に明細書の添付  必要 必要 不要
償却資産税 (下記6に記載) 課税 非課税 非課税

 

償却資産税の取扱い

償却資産税の対象となる資産は、固定資産台帳に載っている資産となりますが、少額減価償却資産(措置法)については注意が必要です。
少額減価償却資産(措置法)については、全額を費用処理するため、固定資産台帳に記載しないこともありますが、償却資産税の対象とされています。

一方で、一括償却資産を選択した場合には償却資産税の対象になりません

そのため、10万円以上20万円未満の資産については、法人税の節税の観点では少額減価償却資産(措置法)として処理した方が良いように思いますが、償却資産税のことを考えると、一括償却資産として処理した方が良い場合もあります。詳細は以下で改めて、まとめさせていただきます。

なお、償却資産税は「課税標準 × 1.4%」で計算し、その結果が免税点である150万円未満となる場合には、償却資産税は課税されませんので、免税となる会社は少額減価償却資産(措置法)として処理することのデメリットは生じません。

 

20万円以上30万円未満の資産の経理処理

上述の内容を踏まえて、以下においては、具体的な金額ケース別に経理処理の方法を確認し、使い分けのポイントを解説します。
取得価額が20万円以上30万円未満の場合には、「少額減価償却資産(措置法)としての費用処理」、「通常の資産計上」の2通りの経理処理を選択することができます。

一般的には、当期に一括で費用処理をすることで、法人税の節税になるため、少額減価償却資産(措置法)を選択することになります。
ただし、当期が赤字の場合で少しでも利益を増やしたい場合には、資産計上を選択して、費用を少なくすることも検討できます。

 

10万円以上20万円未満の資産の経理処理

取得価額が10万円以上20万円未満の場合には、「少額減価償却資産(措置法)としての費用処理」、「一括償却資産としての3年均等償却」、「通常の資産計上」の3通りの経理処理を選択することができます。

どの方法を選択すれば良いのか判断するためのポイントは、当期に法人税が生じるかどうかです。
当期が赤字の場合や過去に発生した繰越欠損金によって法人税が生じない場合には、「一括償却資産としての3年均等償却」か「通常の資産計上」を選択した方が有利になります。法人税が生じないのであれば、当期に全額経費にしてもメリットがないからです。実務上は、経理処理の手間がかからない「一括償却資産としての3年均等償却」を選択することが多いです。

一方で、当期が黒字で、発生する法人税を少しでも減らしたい場合には、「少額減価償却資産(措置法)としての費用処理」を選択します。ただし、前述したように、一括償却資産と少額減価償却資産(措置法)では、償却資産税の取扱いが異なり、「一括償却資産としての3年均等償却」を選択すれば償却資産税の節税になります。

実務上は、償却資産税の節税額を算定し、その節税額があまり大きくない場合には、「少額減価償却資産(措置法)としての費用処理」を選択することが多いです。

 

10万円未満の資産の経理処理

取得価額が10万円未満の場合、「少額減価償却資産(措置法)としての費用処理」、「一括償却資産としての3年均等償却」、「少額の減価償却資産(法人税法)としての費用処理」、「通常の資産計上」の4通りの経理処理を選択することができます。

通常は、費用処理した方が納税額を減らせて有利になるため、適用限度額等のない「少額の減価償却資産(法人税法)としての費用処理」を選択することになります。

当期が赤字の場合で少しでも利益を増やしたい場合には、資産計上を選択して、費用を少なくすることもしても検討できます。
ただし、資産計上すると管理の手間が増えるので、よほどのことがない限り、費用処理することが一般的です。

 

まとめ

以上今回は、少額減価償却資産(措置法)・一括償却資産・少額の減価償却資産(法人税法)について、その特徴や、具体的な場合分けでの採用すべき経理処理の方法を解説させていただきました。

これらを上手く活用した節税方法は他の節税方法に比べて比較的簡単に実施できますが、細かな論点もありますので、実施を検討される際には、固定資産の経理処理に明るい「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループ等の専門家にご相談することをお勧めします。

なお、減価償却の節税スキームとして、海外中古不動産を活用した方法が令和2年度税制改正前までは流行していました。このスキームなどの詳細については、以下の記事をご参照ください。
海外中古不動産を活用した節税(税務調査事例)