保田会計事務所|税務・コンサル・会計・その他経営に関わる全てを総合的にサポート

BLOG

ブログ

消費税の課税区分の判定(誤りやすい事例)

会社の税務調査が行われる場合、法人税申告だけでなく、消費税申告が正しく申告されているかどうかも調査されます。
通常は消費税計算書3期分の提出を求められ、課税区分の判定が正しく行われているかどうかが確認されます。
そのため、今回は「課税取引等の概要」や「消費税の課税区分の判定における誤りやすい事例」などを解説します。

なお、当事務所の概要については、以下のサイトをご参照ください。
当事務所について – 保田会計事務所|税務・コンサル・会計・その他経営に関わる全てを総合的にサポート

 

消費税の課税取引とは

消費税に世界において、取引は、消費税の課税対象となる「課税取引」と、消費税がかからない「不課税取引」「非課税取引」「免税取引」の4種類に分けられます。

ここでは、消費税の課税対象となる「課税取引」について、4つの要件を確認します。

要件 ポイント
国内で行う取引 海外で行われる取引は、原則として消費税の課税対象となりません。
対価を得て行うもの 「対価を得て行うもの」とは、下記④の資産の譲渡等に対する反対給付を受け取るものを言います。そのため、対価が発生しない無償取引は、原則として消費税の課税対象となりません。
③事業者が事業として行うもの 会社や個人事業者以外が行う取引は、消費税の課税対象となりません
④資産の譲渡、資産の貸し付け、役務の提供
資産の譲渡等と言います。)
実体のない取引は消費税の課税対象となりません。なお、資産の譲渡には商標権や特許権などの無形財産も含まれます。

 

なお、輸入取引に関する消費税の取り扱いについては、以下の記事をご参照ください。
輸入取引に伴う会計処理・消費税申告(弥生会計の消費税区分)

 

消費税の不課税取引とは

次に、消費税において、課税対象とならない「不課税取引」について確認します。
基本的に「課税取引」の4つの要件を満たさない、国外取引、事業者でない個人が行う取引、対価性のない取引などは不課税取引となります。

具体例は次の通りです。

給与・賃金:雇用契約であるため「事業」に該当しない

寄付金・祝金・補助金:「対価」として授受されるものではない

保険金:保険事故に対して支払われるものであって、「対価」ではない

配当:株主の地位に対して支払われるもので、「対価」ではない

損害賠償金:「対価を得て行うもの」ではない

盗難・減失:「資産の譲渡等」には該当しない

自家用車の売却:個人での車の売却は、「事業者が事業として行うもの」ではない

 

消費税の非課税取引とは

さらに、消費税において、課税対象となるものの特別に課税をしていない「非課税取引」について確認します。
「課税取引」の4つの要件を満たしたものであっても、広く公平な負担という消費税の性質になじまないものや、社会政策上の配慮によって、課税が適さない取引については、非課税取引となります。

「非課税取引」と「不課税取引」は消費税が課税されない点においては同じですが、どちらに該当するかによって、「課税売上割合」算定において取扱いが異なります。この点の詳細な説明は、今回は割愛します。

非課税取引の具体例は次のとおりです。

消費税の性質になじまないもの 社会政策上の配慮
土地の売買や貸付(一時的なものを除く) 社会保険医療
住宅の貸付 介護保険サービス・社会福祉事業など
株の売買(手数料は課税対象) の身体障害者用物品の譲渡など
支払手段(金銭、小切手、手形など)の譲渡 医師、助産師などによる助産
利子、保証料、保険料など 学校の授業料や入学金
郵便切手、印紙、証紙など(特定の場所のみ) 教科書の購入費用
商品券、プリペイドカード
行政サービス手数料
外国為替業務の手数料

 

 

消費税の課税区分の判定における誤りやすい事例

上述の内容を踏まえて、勘定科目や取引別に「課税区分の判定における誤りやすい事例やそのポイント」を解説します。

(1)役員報酬・給与・派遣料

役員報酬や給与などの労務費は、雇用契約に基づく労働の対価であって、「事業」として行う役務の提供には該当しないことから、消費税の課税取引とはなりません
一方で、派遣会社に支払う派遣料については、派遣会社と派遣先の会社との間の派遣契約が「事業」に該当することから、消費税の課税取引となります。

なお、役員報酬に関しては、以下の「役員報酬の損金算入について」の記事もご参考になさってください。
役員報酬の損金算入について詳しく解説!

 

(2)通勤手当

通勤手当のうち通勤のために通常必要とする範囲内のものは消費税の課税取引となります。
なお、通勤手当については、所得税法上の非課税となる上限金額が定められていますが、この上限を超えていても、通常必要とする範囲内であれば消費税法上は課税取引となります。

 

(3)旅費交通費・出張手当

国内出張などでかかった交通費・宿泊費、出張手当・日当については、通常必要とする範囲内であれば、消費税の課税取引となります。
一方で、海外出張などにより海外で支払う交通費・宿泊費や出張手当・日当については、原則として消費税の課税取引とはなりません。ただし、国内空港の空港利用料などは消費税の課税取引となります。

 

(4)医療費、薬代、健康診断

健康保険などの保険が適用される医療費や薬代は非課税取引となります。
一方で、保険の適用外の医療(自由診療)は課税取引となります。
例えば、健康診断、インフルエンザワクチンの接種、先進的な治療、医療相談、美容整形、金歯などは自由診療で、課税取引となります。

 

(5)交際費・寄附金(祝い金やゴルフ場利用税)

祝い金や香典、見舞金、寄付金などについては、対価として支払われるものではないことから、消費税の課税取引とはなりません
また、商品券、ギフト券、旅行券などのプリペイドカードを購入したときも、非課税取引となり、消費税は課税されません。
さらに、ゴルフをしたときにプレー料金に含まれるゴルフ場利用税や、温泉施設で支払う入湯税は課税取引とはなりません

 

(6)支払報酬

税理士や司法書士などの専門家に支払った報酬は課税取引となります。
ただし、税理士等からの請求に、印紙代や登録免許税などの立替費用が含まれている場合、この印紙代や登録免許税は課税取引とはならないことから、区分して扱う必要があります。

 

(7)支払手数料(クレジットカード・電子マネー)

支払手数料は基本的に役務提供の対価に該当することから、課税取引となります。

ただし、クレジットカードの決済手数料等は、非課税取引となる場合が多いものの、下表の通り、契約等によっては、課税取引となる場合もあることから注意が必要です。

課非判定 支払先 具体例
非課税取引 クレジット会社 JCB、VISA、Mastercard、AMEX
決済代行会社 Square、JMS、全東信(課税部分以外)、
ゼウス(課税部分以外)
課税取引 決済代行会社 ゼウス(システム手数料部分)、
全東信(システム運営費部分)

 

また、電子マネーの手数料についても、下表の通り、支払方式が後払か前払かにによって、取扱いが異なることから注意が必要です。

課非判定 支払方式 具体例
非課税取引 後払方式 IDやQUICKPAY、交通系ICカード
課税取引 前払方式 交通系ICカード(Suicaなど)、PayPay、
LINE Pay、楽天ペイ

 

クレジットカードや電子マネーに関する消費税の取り扱いについての詳細は、以下の記事をご参照ください。
クレジットカードや電子マネーの手数料に消費税はかかる?

 

(8)諸会費・年間費

同業者団体や組合などに支払う会費や組合費、クレジットカードの年会費などについては、その会費等が団体から受ける役務の提供の対価である場合には課税取引となり、役務の提供の対価でない場合には課税取引となりません
請求書や領収証などに「消費税」の記載があれば分かりやすいですが、記載されていない場合には、その団体や組合に確認するか、自身で判断しなければなりません。

具体例としては、下表の通り整理できます。

課税取引となるもの 課税取引とならないもの
クレジットカード年会費 商工会議所の年会費
セミナーや講座などの会費 ロータリークラブ、ライオンズクラブの年会費
懇親会の会費 JAFの年会費
スポーツクラブ・ジム、レジャー施設等の会費、年会費
(返金されないもの)
法人会・納税協会の年会費
税理士会、弁護士会などの年会費
町内会費

 

なお、商工会議所やロータリークラブなどで、通常の年会費とは別に、懇親会やセミナー参加時に特別に徴収されるものは、明らかな対価関係があるため、「会費」といった名目になっていても課税取引になるので注意が必要です。

 

(9)車両費・燃料費

車を購入したときに支払った自動車取得税・自動車重量税、毎年支払う自動車税や車検時に支払う自動車重量税は課税取引となりません。また、軽油を購入した時に含まれる軽油引取税は、原則として課税取引となりませ

 

(10)損害賠償やキャンセル料

まず、損害賠償金や違約金は、上述の通り、「対価を得て行うもの」ではないことから、原則として、課税取引となりません
ただし、損害賠償金や違約金であっても、次のような場合には課税取引となります。

①損害を受けた商品が引き渡される場合において、その商品を少し修理することで使用することができる場合の損害賠償金や違約金
②特許権や商標権などの無体財産権の侵害を受けた場合の損害賠償金や違約金
③事務所の明渡しが遅れた場合に賃貸人が受け取る損害賠償金や違約金

次に、飛行機のチケット等のキャンセル料については、「資産の譲渡等の対価」に該当しないことから、課税取引となりません
一方で、キャンセル事務手数料は解約の手続き等の事務を行う役務の提供の対価であるため、課税取引となります。
なお、キャンセル料とキャンセル事務手数料を区分せずに一括で支払いをしている場合には、支払額全体をキャンセル料として、全額が課税取引となりません。

 

(11)不動産取引

まず、土地の販売代金は非課税取引、建物の販売代金は課税取引となります。
土地と建物を同時に売却または取得したときは、契約書に記載された金額等に基づいて土地と建物を区分して処理をする必要があります。
契約書に土地と建物の代金が区分されていないときは、固定資産税評価額などを基にして按分計算をします。

次に、土地や居住用住宅の貸付けについても、原則として非課税取引となります。ただし、土地や居住用住宅の賃貸期間が1カ月未満である場合は課税取引となります。

また、駐車場の貸付、事務所などの建物の賃貸料については、原則として課税取引となります。

 

(12)株式(有価証券)売却と事業譲渡

株式(有価証券)の販売代金は非課税取引となり、証券会社等に支払う売買手数料は課税取引となります。

また、「課税売上割合」の計算上は、「株式(有価証券)の販売代金 × 5%」を「非課税売上高」に含めることとなりますが、課税売上割合算定のの詳細な説明については、今回は割愛します。

一方で、事業譲渡については、代金のうち、棚卸資産・固定資産・営業権(のれん)に対する部分については課税取引となり、土地・株式(有価証券)・債権に対する部分については非課税取引となります。

なお、組織再編に関する消費税の取扱いについては、以下の自社株評価の引き下げ方法の記事もご参考になさってください。

合併はこちら:
合併を活用した自社株評価の引き下げ方法を詳しく解説!

株式交換はこちら:
株式交換を活用した自社株評価の引き下げ方法を詳しく解説!

会社分割はこちら:
会社分割を活用した自社株評価の引き下げ方法を詳しく解説

 

 

まとめ

以上、今回は「課税取引等の概要」や「消費税の課税区分の判定における誤りやすい事例」などを解説させていただきました。

会社の税務調査が行われる場合、通常は消費税申告が正しく申告されているかどうかも調査されます。
消費税については、課税区分の誤りを防ぐだけでも十分な税務調査対策となります。

そのため、上述の誤りやすい事例をご参考にしていただき、ご質問等があれば「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループにお気軽にご相談ください。