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地震保険料控除による節税を詳しく説明!!

地震保険料を支払うと生命保険料と同様に税金から一定額を控除できるため、個人の節税につながりますが、あまり地震保険料控除については知られていません。
ただし、地震がいつ発生してもおかしくないこの日本においては、地震や津波に対する備えとして地震保険への加入は検討が必要と言えるでしょう。
そこで、今回は地震保険料控除について、その制度の概要や保険料控除額、注意すべき点などを中心に解説します。

なお、個人の実践的な節税対策については、以下のサイトをご参照ください。
当事務所について – 保田会計事務所|税務・コンサル・会計・その他経営に関わる全てを総合的にサポート

 

地震保険料控除制度

地震保険料控除制度とは、地震保険の保険料を支払った場合に、契約者の所得税及び住民税の計算上、所得から一定の額が控除できる制度です。
これにより地震や津波に対する備えをしつつ、所得税及び住民税を節税できます。
地震保険料控除の適用に当たって、会社員の場合には年末調整で、自営業者等の確定申告をする人の場合には確定申告で、それぞれ控除の手続を行います。

平成18年(2006年)の税制改正で、地震保険への加入を促進するため、以前からあった損害保険料控除が廃止され、控除額のより大きい地震保険料控除が新設されました。地震保険の加入を促進する目的で新設さらたにも関わらず、令和元年度の保険加入率は33.1%とあまり普及していないのが現状です。

ただし、税制改正後も一定の要件を満たす損害保険料については、経過措置により旧長期損害保険料として引き続き控除をすることが可能です。

なお、同様の保険料控除である社会保険料控除については、以下の記事をご参照ください。
社会保険料控除とは?控除証明書の提出が必要な社会保険料は?

 

地震保険料控除の対象は

地震保険料控除の対象は地震保険の契約者本人または生活を共にする配偶者やその他の親族が所有し使用している居住用家屋、家具や衣服などの生活用動産が対象になります。
店舗併用住宅の場合には、住宅に使用している面積で地震保険料を按分した額が控除額となります。
なお、住宅に使用している面積が90%以上あるときは地震保険料控除の全額を控除額とすることができます。

 

地震保険料控除額

地震保険の保険料控除額は1年間に支払った保険料額で決まります。
所得税からの控除額は年間の支払い保険料額が50,000円以下であれば支払額の全額が、50,000円超の場合には一律50,000円が控除されます。
また住民税からの控除額は年間の支払い保険料額が50,000円以下であれば、支払額の1/2が、50,000円超の場合には一律25,000円が控除されます。
地震保険料控除額と旧長期損害保険料控除額を表にまとめると下表のようになります。

 

<地震保険料の控除額>

年間の支払い
険料の合計
所得税の控除額 住民税の控除額
5万円以下 支払保険料全額 支払保険料×1/2
5万円超 5万円 2万5,000円

 

<旧長期損害保険料の控除額>

所得税 住民税
年間の支払い
保険料の合計
控除額 年間の支払い
保険料の合計
控除額
1万円以下 支払保険料全額 5,000円以下 支払保険料全額
1万円超
2万円以下
支払保険料×1/2
+5,000円
5,000円超
1万5,000円以下
支払保険料×1/2
+2,500円

 

地震保険料と旧長期損害保険料の両方を支払っている場合には、それぞれの控除額が合計されますが、控除対象額の上限は所得税5万円、住民税2万5,000円となります。

また、一つの契約で地震保険料控除と旧長期損害保険料控除の両方に該当する保険の場合、いずれか一方の保険料控除のみが適用されることから、控除額の大きい方を選択することになります。

 

地震保険料控除を受けるための手続(地震保険料控除証明書)

地震保険料控除を受けるためには、年末調整や確定申告の際に「地震保険料控除証明書」を添付して、保険料控除の申告を行うことが必要になります。
保険会社は、地震保険の契約者に対して、その年の1月1日から12月末日までに支払った保険料について「地震保険料控除証明書ハガキ」 を秋ごろに発行します。また、保険契約初年度である場合には、当初の保険証券(継続証など)に保険料控除証明書が添付されていることが多いです。

なお、年末調整については、以下のよくある質問の記事もご参考になさってください。
年末調整のよくある質問トップ10について詳しく解説!

 

地震保険料控除における注意点

地震保険料控除を受けるにあたっては、次の通り、いくつかの注意点があります。

注意① 複数年分の地震保険料を一括で支払った場合

地震保険の契約では、複数年分の地震保険料を一括で支払うケースが多く、この場合には、「一括払保険料 ÷ 保険期間(年)」の計算式で1年分に換算した額が毎年の控除対象保険料となります。

地震保険料については、保険契約の初年度は、保険証券にその当年分の地震保険料の支払い額を証明する控除証明書が添付され、2年目以降はその当年分の地震保険料の支払い額は控除証明書ハガキで確認することができます。

この控除証明書は、その年の1月から12月までの間に支払った地震保険について発行され、その期間に支払った地震保険料の一定額が所得控除の対象となることから、特に次のような点に注意が必要です。

①保険期間が1年を超える契約の場合で、一時払、長期一括払の契約は、毎年の初日応当日に保険料を支払ったものとして取り扱うため、最後の年は保険料控除ができません。

②12月始期の契約の場合で、始期翌月の1月に初回保険料を支払う契約は、始期の翌年から保険料控除がされます。

なお、保険契約の初年度は、保険証券にその当年分の地震保険料の支払い額を証明する控除証明書が添付され、2年目以降はその当年分の地震保険料の支払い額は控除証明書ハガキで確認することができます。

 

注意② 火災保険は控除対象外

火災保険については、税制改正前は損害保険料控除の対象したが、改正後は所得控除を受けることができません。
ただし、上述の通り、税制改正後も一定の要件を満たす損害保険料については、経過措置により旧長期損害保険料として引き続き控除をすることができます

一定の要件とは、具体的には次の要件を言います。

①平成18年(2006年)12月31日までに締結した契約(保険期間あるいは共済期間の始期が平成19年1月1日以後のものは除く)

②満期返戻金等のあるもので保険期間または共済期間が10年以上の契約

③平成19年(2007年)1月1日以後にその損害保険契約を変更していないもの

したがって、保険期間が10年以上などの長期で、満期返戻金が支払われる火災保険に加入している人は、控除証明書が発行されているはずなので、控除の適用漏れがないように注意が必要です。

 

注意③ 賃貸物件の「地震保険」は控除対象にならない

不動産オーナーが所有する賃貸物件の場合には、火災保険だけでなく地震保険への加入であっても控除対象にすることはできません。
上述の通り、保険料控除の対象となるのは地震保険の契約者本人または生活を共にする配偶者やその他の親族が所有し使用している居住用家屋、家具や衣服などの生活用動産です。
そのため、オーナー自身や生活を共にする配偶者等が住宅として使用していない賃貸物件の場合には控除対象外となります。

 

注意④ 賃貸物件の「地震保険」であっても必要経費としての計上は可能

賃貸物件にかける火災保険や地震保険などの保険料は保険料控除の対象外となりますが、確定申告において不動産の必要経費として計上することは可能です。
必要経緯に計上することで不動産所得を圧縮できるため、結果として節税につながります。

なお、オーナーや生活を共にする配偶者等が使用している部屋がある場合には、延床面積などで按分して、「地震保険料控除の対象になる部分」と「必要経費として計上する部分」を計算します。
また、保険料を長期一括払いで支払う場合には、保険料控除と同様に、必要経費の算定上もその年分の保険料を計上することとなります。

 

注意⑤ 夫婦共有名義の場合は所得の多い人を契約者にする

夫婦共有名義の住宅であっても、地震保険で契約できる人は一人です。そのため夫婦で住宅を購入した場合でも、夫婦のどちらか一人を契約者に決める必要があります。
また、所得税は所得が高くなるほど税率が高くなる累進課税です。

そのため、一般的には所得の多い人を契約者にした方が、節税効果は高くなります

なお、共有不動産については、以下の住宅ローン控除の記事もご参照ください。
【住宅ローン控除⑥】持分割合や共有不動産のメリット・デメリットを解説!

 

まとめ

以上、今回は地震保険料控除について、その制度の概要や保険控除額額、注意すべき点などを中心に解説をさせていただきました。

地震がいつ発生してもおかしくないこの日本においては、地震保険に加入することで、安心を得られる上に地震保険料控除により節税することもできます。
地震保険への加入をご検討されている方だけでなく、賃貸物件のオーナー様も是非こちらの記事をご参考になさってください。

なお、個人の確定申告における所得控除については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、こちらもご参考になさってください。
所得控除の全15種類を詳しく解説!!