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【住宅ローン控除④】控除を最大限受ける方法や連帯債務型の持分割合で損をする場合を解説!

住宅ローンは組み方にいくつかの種類があります。夫婦など複数人で家を買うときは「連帯債務型」の住宅ローンにすれば、借入額を増額できます。

また、連帯債務型で住宅ローンを組んだ場合には、住宅ローン控除を二重に受けることも可能です。

1人あたりの控除上限額は年35万円のため、夫婦2人で連帯債務型の住宅ローンを組んだ場合には、最大で70万円もの節税ができます。

そこで今回は、住宅ローン控除について、「概要」や「計算方法」、「控除額を最大にする方法」、「夫婦の持分割合によっては住宅ローン控除で損をする場合」などを分かりやすく解説します。

 

住宅ローン控除とは?

まずは、住宅ローン控除の基本について、「概要」や「要件」などを確認します。

住宅ローン控除の詳細については、以下の記事でもまとめていますので、ご参考になさってください。
【住宅ローン控除①】制度概要や要件、最大控除額、申告手続、留意点などを網羅的に解説!

 

(1)住宅ローン控除の概要

「住宅ローン控除」とは正式には「住宅借入金等特別控除」と言い、この住宅ローン控除の適用を受けることで、住宅ローンの年末残高の0.7%が所得税や住民税から13年間も毎年控除されます。

住宅ローンは組み方には3種類があり、それぞれの特徴は次の通りです。

①「連帯債務型」の住宅ローン

「連帯債務型」の住宅ローンとは、夫婦のどちらかが主たる債務者となり、もう一方がその「連帯債務者」となる住宅ローンの借り方を言います。

「連帯債務型」の住宅ローンでは、借入額の上限を引き上げられるだけでなく、夫婦2人で「連帯債務型」を組むと、夫婦で二重に住宅ローン控除の適用を受けることができます。

 

②「連帯保証型」の住宅ローン

「連帯保証型」の住宅ローンとは、夫婦のどちらかが債務者となり、もう一方が連帯保証人となる住宅ローンの借り方を言います。

「連帯保証型」の住宅ローンでは、借入額の上限を引き上げられますが、夫婦2人で「連帯保証型」を組んだとしても、夫婦で二重に住宅ローン控除の適用を受けることはできません。

 

③ペアローン

「ペアローン」とは、夫婦それぞれが別々の住宅ローンを組む借り方を言います。

「ペアローン」では、借入額の上限を引き上げられるだけでなく、夫婦2人で「ペアローン」を組むと、夫婦それぞれで住宅ローン控除の適用を受けることができます。

ただし、「ペアローン」は契約が2本になることから、諸費用も2倍かかってしまいます。

 

「連帯債務型」「連帯保証型」の住宅ローンの詳細は、以下の記事をご参照ください。
【住宅ローン控除②】連帯債務型と連帯保証型の住宅ローンを詳しく解説!!(持分割合や贈与についても)

また、「ペアローン」の詳細は、以下の記事をご参照ください。
【住宅ローン控除③】ペアローンの住宅ローンを詳しく解説!!(収入合算との違いも)

 

(2)住宅ローン控除の要件

住宅ローン控除の主な要件は次の通りです。

✓申請した本人が住宅に住んでいること

✓購入してから6カ月以内に入居すること

✓住宅ローンの返済期間が10年以上であること

✓特別控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること

✓住宅の床面積が50平方メートル以上で、床面積の2分の1以上が自己の居住用であること

✓耐震性能を有していること(中古住宅の場合)

✓工事費用が100万円以上であること(増改築の場合)

 

住宅ローン控除の要件を詳しく知りたい人は、以下の記事もご参考になさってください。
【住宅ローン控除①】制度概要や要件、最大控除額、申告手続、留意点などを網羅的に解説!

 

(3)夫婦2人分の住宅ローン控除を受けるには?

「連帯債務型」の住宅ローンと「ペアローン」のどちらかを選択すると、夫婦2人分の住宅ローン控除を受けることができます

 

 

住宅ローン控除の計算方法は?

次に、住宅ローン控除の「計算方法」として、「控除額の算定式」や「借入限度額」、「夫婦2人で住宅ローン控除を受ける場合の計算方法」などを確認します。

(1)住宅ローン控除額の算定式

住宅ローン控除額は、次の通り算定式で計算します。

✓連帯債務型:年末時点の住宅ローン残高 × 連帯債務割合 × 0.7%

✓ペアローン:自分の年末時点の住宅ローン残高 × 0.7%

 

(2)住宅ローン残高には借入限度額がある

控除額の計算に用いられる住宅ローン残高は、年末時点(12月31日)のものになります。ただし、住宅ローン残高には、住宅の種類や入居する年によって異なる限度額が定められています

例えば、長期優良住宅で2022年・2023年入居の場合の借入限度額は5,000万円、長期優良住宅で2024年・2025年入居の場合の借入限度額は4,500万円です。

この借入限度額で計算した控除額が年間の最大控除額となり、それぞれの最大控除額は35万円、31.5万円となります。

 

(3)夫婦2人で住宅ローン控除を受ける場合の計算方法

夫婦2人で住宅ローン控除を受ける場合には、住宅ローン残高の全額ではなく夫婦それぞれが実際に負担している金額で計算します。そのため、連帯債務型の場合には、住宅ローン残高に夫婦ごとの連帯債務割合を乗じて、それぞれの実際の負担額を算出します。

例えば、夫婦2人で4,000万円の住宅ローン残高があり、お互いに2,000万円を負担している場合、住宅ローン残高の全額である4,000万円で住宅ローン控除額を計算するのではなく、夫婦の実際の負担額である2,000万円で計算を行います。

 

(4)控除しきれなかった金額は住民税から控除される

住宅ローン控除の控除額が所得税を上回る場合、控除額が使い切れないこととなりますが、この場合には、控除しきれなかった差額が翌年の住民税から控除されます。

ただし、こちらも上限があり、最大9万7,500円(基本は前年総所得金額の5%)、夫婦では合計19万5,000円までしか控除されません。

 

 

住宅ローン控除額を最大にする方法(2倍の控除ができる)

借入限度額まで借り入れる又は連帯債務とすることで、控除額が最大になります。
そこで、夫婦2人で借入限度額まで借り入れ等を行う場合には、1人で住宅ローン控除を受けた場合の2倍の控除が可能となります。

例えば、長期優良住宅で2022年・2023年入居の場合、住宅ローン控除の控除額の限度額は35万円となります。

以下のように、夫が単独で住宅ローンを組んだ場合でも夫婦2人で住宅ローンを組んだ場合でも、限度額を超えない限りは、控除額は変わりません。

 

<夫単独で住宅ローン組んだ場合の控除額>
✓4,000万円×0.7%=28万円
✓控除額:夫28万円

 

<夫婦2人で住宅ローン組んだ場合の控除額>
✓4,000万円×1/2×0.7%=14万円
✓4,000万円×1/2×0.7=14万円
✓控除額:夫14万円+妻14万円=夫婦合計28万円

ただし、以下のように、夫婦ともに借入限度額まで借り入れ等を行い、限度額で控除される場合には、夫が単独で住宅ローンを組んだ場合と夫婦2人で住宅ローンを組んだ場合と比べて2倍も控除が受けることができます。

 

<夫単独で住宅ローン組んだ場合の控除額>
✓控除額:限度額の35万円

<夫婦2人で住宅ローン組んだ場合の控除額>
✓控除額:限度額35万円×2人分=70万円

 

夫婦の持分割合によっては住宅ローン控除で損をする

夫婦2人で連帯債務型の住宅ローンを組むと、住宅は「共有名義不動産」となり、その所有権を夫婦2人で持つこととなります。
この共有名義不動産の所有権を「共有持分」と言い、「持分割合」については、夫婦間で自由に決めて登記することができます。

ただし、税務において、持分割合は支払金額に応じて決める必要があるとされており、支払金額を無視して決めると、贈与とみなされる可能性があります。

そのため、通常は支払金額に応じて持分割合を決めることが一般的です。

 

詳細は以下の記事の「持分割合等の基礎知識」の項目をご参照ください。
【住宅ローン控除②】連帯債務型と連帯保証型の住宅ローンを詳しく解説!!(持分割合や贈与についても)

 

この登記した「持分割合」と夫婦それぞれのローン返済額の負担割合と持分割合は同じ比率にすることが重要です。

なぜなら、夫婦それぞれの持分割合とローン返済の負担割合とが異なると「住宅ローン控除」と「贈与税」の2つで損をしてしまう可能性があるからです。

以下で詳細を確認します。

 

(1)持分割合と負担割合とが異なる場合に住宅ローン控除が少なくなる

持分割合とローン返済の負担割合とが異なる場合には、住宅ローン控除額が少なくなってしまいます

以下の事例で具体的な計算を確認します。

<持分割合とローン返済の負担割合が異なる事例>

✓持分割合は夫1/2:妻1/2
✓ローン返済の負担割合は夫3/5:妻2/5
✓住宅ローン残高は4,000万円

この事例では、夫が実際に負担しているローン残高は、2,400万円(4,000万円×3/5)、夫の持分割合に基づき負担すべき額は2,000万円(4,000万円×1/2)となります。

この場合、夫の住宅ローン控除の対象となるのは2,000万円となり、夫の住宅ローン控除額は14万円(2,000万円×0.7%)となります。

一方で、妻が実際に負担しているローン残高は、1,600万円(4,000万円×2/5)、妻の持分割合に基づき負担すべき額は2,000万円(4,000万円×1/2)となります。

この場合、妻の住宅ローン控除の対象となるのは1,600万円となり、妻の住宅ローン控除額は11.2万円(1,600万円×0.7%)となります。

この結果から分かる通り、持分割合に基づき負担すべき額と実際に負担している額の差額400万円は、住宅ローン控除の対象にできません。

また、後述しますが、この400万円は夫から妻への贈与として扱われてしまいます。

 

<持分割合とローン返済の負担割合が同じ事例>

✓持分割合は夫3/5:妻2/5
✓ローン返済の負担割合は夫3/5:妻2/5
✓住宅ローン残高は4,000万円

この事例では、夫が実際に負担しているローン残高も夫の持分割合に基づき負担すべき額も同じで、2,400万円(4,000万円×3/5)となります。
この場合、夫の住宅ローン控除額は16.8万円(2,400万円×0.7%)となります。

同様に、妻が実際に負担しているローン残高も妻の持分割合に基づき負担すべき額も同じで、1,600万円(4,000万円×2/5)となります。
この場合、夫の住宅ローン控除額は11.2万円(1,600万円×0.7%)となります。

この結果から分かる通り、持分割合と負担割合が異なる場合に比べて、夫の控除額が2.8万円多く控除できています。

つまり、夫婦それぞれの持分割合と住宅ローン負担額とが同じ比率であれば、より多く住宅ローン控除を受けることができるのです。

 

(2)持分割合と負担割合とが異なる場合に贈与税が発生する

持分割合とローン返済の負担割合とが異なる場合には贈与税が発生する可能性があります。

上記(1)の事例でも触れていますが、改めて、持分割合とローン返済の負担割合が異なる事例における、贈与と取り扱われる金額について、以下で確認します。

<持分割合とローン返済の負担割合が異なる事例>

✓持分割合は夫1/2:妻1/2

✓ローン返済の負担割合は夫3/5:妻2/5

✓住宅ローン残高は4,000万円

 

この事例では、夫が実際に負担しているローン残高は、2,400万円(4,000万円×3/5)、夫の持分割合に基づき負担すべき額は2,000万円(4,000万円×1/2)となります。

 

一方で、妻が実際に負担しているローン残高は、1,600万円(4,000万円×2/5)、妻の持分割合に基づき負担すべき額は2,000万円(4,000万円×1/2)となります。

つまり、妻は持分割合に基づくと負担するべきである2,000万円のうち400万円(2,000万円-1,600万円)を負担しておらず、夫がこの400万円(2,400万円-2,000万円)を代わりに負担しています。

この夫が代わりに負担した金額が受贈金として、「贈与」に該当すると扱われる可能性があります

実際に国税庁サイトの以下の質疑応答事例においても、受贈金という表現が使われています。
共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算|国税庁 (nta.go.jp)

そのため、夫婦それぞれの持分割合とローン返済の負担割合は同じ割合にしておくことをお勧めします。

 

 

共有持分の持分割合を変更できる

住宅ローン控除で損をしないように持分割合を変えたいという場合には、「所有権更正登記」によって、持分割合を修正することができます。

夫婦で住宅ローンを組む場合、均等になるように夫1/2:妻1/2としてしまうことが多いですが、こうしたケースでも実際の負担額に合わせた持分割合へ変更することが可能です。

ただし、ローンに抵当権がある場合の「所有権更正登記」については、金融機関の事前の承諾が必要になり、勝手に「所有権更正登記」を行うと、契約違反で住宅ローン残高の一括返済を要求される可能性があることから注意が必要です。

なお、「所有権更正登記」を用いれば、離婚などで住宅ローンを借換える場合においても、住宅を夫婦どちらかの単独名義に変更することもできます。

 

 

住宅ローン控除とあわせて経済的負担を抑える方法

住宅ローンにかかる負担を抑える方法は、住宅ローン控除だけではありません。

夫婦2人で連帯債務型の住宅ローンを組んだ際は「団体信用生命保険」(団信)という制度も利用できます。

ここまで解説した「住宅ローン控除」との併用も可能なことから、経済的負担の抑制を目的として活用することが一般的です(民間の金融機関の住宅ローンでは加入を求められます)。

具体的には、「団信」に加入すると、主債務者の死亡時に保険金として住宅ローン残高が全額支給されます。そのため、主債務者にもしものことがあっても住宅ローンを完済することが可能です。

夫婦の主債務者にもしものことがあると、残された人が1人で住宅ローンを返済していくことは非常に困難なため、心強い制度と言えます。

ただし、団信は夫婦どちらか一方しか加入できない金融機関がほとんどのため、連帯債務者の死亡時は保険金が支給されないことも多いことから注意が必要です。

なお、「フラット35」の場合には、夫婦どちらも団信に加入できます。

この「フラット35」についての詳細は、以下の記事もご参照ください。
【住宅ローン控除⑤】連帯債務型の住宅ローンとしてのお勧めのフラット35とは?

 

 

まとめ

以上今回は、住宅ローン控除について、「概要」や「計算方法」、「控除額を最大にする方法」、「夫婦の持分割合によっては住宅ローン控除で損をする場合」などを分かりやすく解説いたしました。

「連帯債務型」の住宅ローンと「ペアローン」のどちらかを選択することで、夫婦2人分の住宅ローン控除を受けることができます。

さらに、夫婦ともに借入限度額まで借り入れ等を行う場合には、夫が単独で住宅ローンを組んだ場合と夫婦2人で住宅ローンを組んだ場合と比べて2倍も控除が受けることができます。

夫婦それぞれの持分割合とローン返済の負担割合とが異なる場合には、「住宅ローン控除」と「贈与税」の2つで損をしてしまう可能性があることから注意が必要です。

「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループでは、住宅ローンの借り方や住宅ローン控除についてもご相談を受けております。

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