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【住宅ローン控除②】連帯債務型と連帯保証型の住宅ローンを詳しく解説!!(持分割合や贈与についても)

家を購入する際、多くの人が住宅ローンを借り入れます。住宅ローンは一般的に高額となることから、ローン契約の内容をどのようにするかを事前に検討しておくことが望ましいです。

そこで今回は、住宅ローンについて、「収入合算」や「持分割合」、「連帯債務型の概要」、「連帯保証型の概要」などを詳しく解説します。

 

住宅ローンの収入合算とは

住宅ローンの借入可能額は、契約者本人の勤務先や勤続年数・年収・家族構成・他での借入状況等を基に銀行が決定します。そのため、契約者の状況によっては、住宅ローンの借入可能額が想定よりも少なくなり、残りを自己資金で補えない場合には、マイホームの購入を諦めなければならないケースもあり得ます。

こうした場合に利用を検討できるのが「収入合算」による住宅ローンです。

収入合算は、夫婦や親子などで収入を合算し、住宅ローンを組む方法です。収入を合算し、世帯収入を増やすことで、1人で住宅ローンを組む場合と比較すると、借り入れができる金額を増やすことができるメリットがあります。

収入合算には「連帯債務型」と「連帯保証型」の2つの住宅ローンの種類が存在します。

なお、収入合算と似ている「ペアローン」についての概要やメリット・デメリットについては、以下の記事をご参照ください。
【住宅ローン控除③】ペアローンの住宅ローンを詳しく解説!!(収入合算との違いも)

 

 

持分割合等の基礎知識

ここでは、持分割合等の住宅ローン控除を受ける上での基礎知識を確認します。

なお、共有で住宅を購入する場合のメリット・デメリットについては、以下の記事もご参照ください。
【住宅ローン控除⑥】持分割合や共有不動産のメリット・デメリットを解説!

 

(1)持分割合とは各共有者の所有権の割合

持分割合とは、共有者が持つ所有権の割合のことを言います。

1人で購入した不動産は単独名義となり、購入した人が100%の所有権を持ちます。
一方で、複数人で購入した不動産は「共有不動産」となり、各共有者が不動産購入に関して支払った金額に応じた所有権(持分)を持つことになります。

 

(2)持分割合は「支払額」に応じて決める

住宅を購入すると、法務局で登記申請をする必要があります。登記申請とは、誰が所有している不動産なのかを登録するための手続きです。

収入合算(連帯債務型)の住宅ローンを夫婦で組むと、その住宅は夫婦の共有不動産となります。

共有不動産の登記申請では、持分割合を登録しなくてはなりません。この持分割合は原則として、次の算定式の通り、夫婦が住宅購入に関して支払った金額(住宅ローンを含める)に応じて決める必要があります。

持分割合 = 名人の支払った額(住宅ローン含む) ÷ 住宅購入代金

 

(3)持分割合は「支払額」を無視して決めると贈与とみなされる

持分割合は、上述の通り、自由に決められるのではなく、住宅購入に関して支払った金額に応じて決める必要があります。
これを無視して持分割合を決めると、贈与とみなされる可能性があります

例えば、4,000万円の住宅を夫婦で購入し、夫が3,000万円、妻が1,000万円を支払った場合、持分割合は夫3/4:妻1/4となります。

これを無視して、夫婦だからと安易に1/2ずつの持分割合に設定してしまうと、妻は1,000万円しか支払っていないにもかかわらず、2,000万円(=4000万円×1/2)の持分を持つことになることから、差額の1,000万円は夫から妻への贈与があったとみなされるリスクがあります。

そのため、無駄な税金を余計に支払わなくてもいいように、支払金額に応じて持分割合を決めることが一般的です。

 

 

収入合算である「連帯債務型」の住宅ローンの概要

持分割合等の住宅ローン控除を受ける上での基礎知識を確認したところで、まずは、収入合算である「連帯債務型」の住宅ローンから、その概要等を確認します。

なお、以下においては、夫婦で住宅ローンを組むことを前提として、解説をしています。

 

「連帯債務型」とは、夫婦のどちらかが主たる債務者となり、もう一方がその「連帯債務者」となる住宅ローンの借り方です。連帯債務型の場合は、夫婦のどちらも債務者となるため、夫婦それぞれに同等のローン返済義務が生じます

「連帯債務型」の住宅ローンについて、イメージ図は次のようになります。

 

「連帯債務型」の持分割合

「連帯債務型」では、夫婦それぞれが住宅購入代金を支払ったとして、夫にも妻にも不動産の持分が与えられるため、持分割合を決める必要があります。

この点、金融機関からは、持分割合や返済割合は自由に決めていいと言われるケースもあり、持分割合をどうするか多くの人が頭を悩ませます。

一般的な夫婦では、1つの住宅ローンに対して、1つの家計から返済をすることになるので、夫と妻がいくらずつ支払っているか分からないというケースが多いです。

そこで、連帯債務型の住宅ローンでは、収入割合を基に持分割合を判断することが一般的です。

例えば夫600万円、妻400万円の収入だとしたら、収入割合は夫3/5、妻2/5となり、また、持分割合も夫3/5、妻2/5となります。

以下の国税庁サイトの個別通達では、共かせぎの夫婦の収入によって共同で住宅購入に関する支払いをしたと認められるものについては、その稼ぎ(所得)で按分するものとしています。
共かせぎ夫婦の間における住宅資金等の贈与の取扱について|国税庁 (nta.go.jp)

ただし、収入割合に基づかなくても、夫婦が住宅購入に関して支払った個別の金額が客観的に把握できる場合には、実際に支払った金額を基に持分割合を算定することも可能です。

 

 

「連帯債務型」のメリット・デメリット

「連帯債務型」のメリット・デメリットは次の通りです。

(1) 「連帯債務型」のメリット

①借入額の上限を引き上げられる

②夫婦ともに住宅ローン控除の適用を受けることができる

③契約は1つのため諸費用が単独ローンと変わらない

詳細は以下の通りです。

 

①借入額の上限を引き上げられる

連帯債務型は収入合算のため、1人で借入れるよりも借入額の上限を引き上げることができます

夫婦どちらかの収入だけでは希望する物件の住宅ローンが借りられなかったという場合でも、連帯債務型にすることで借りられることがあります。

 

②夫婦ともに住宅ローン控除の適用を受けることができる

住宅ローンを利用して、住宅を購入した人は、住宅ローン控除という制度を利用できます。住宅ローン控除とは、住宅を購入してから13年間、借入残高の0.7%(最大で35万円)が所得税や住民税から毎年控除される制度です。

連帯債務型は夫婦どちらもこの住宅ローン控除制度を利用できるため、夫婦合わせると最大控除額は70万円と、かなり大きな節税効果が期待できます。

住宅ローン控除についての詳細は以下の記事をご参照ください。
【住宅ローン控除①】制度概要や要件、最大控除額、申告手続、留意点などを網羅的に解説!

 

③契約は1つのため諸費用が単独ローンと変わらない

住宅ローン契約では、物件価格の5〜10%ほどの諸費用がかかると言われています。

住宅ローン契約が2つになると諸費用も2倍になりますが、連帯債務型は住宅ローン契約が1つのままで収入合算ができるため、諸費用が単独ローンと変わりません

 

(2) 「連帯債務型」のデメリット

①連帯債務者は原則、団信に加入できない

②離婚した場合でも連帯債務者の返済義務は続く

③離婚した場合でも住宅は共有名義のまま

詳細は以下の通りです。

 

①連帯債務者は原則、団信に加入できない

民間の金融機関の住宅ローンでは、団体信用生命保険(団信)の加入が義務付けられています。

この団体信用生命保険とは、住宅ローンの債務者が返済期間中に死亡または高度障害になったときに、保険金で住宅ローンを完済できる生命保険です。

連帯債務型の場合、1人が主債務者となり、もう1人は連帯債務者となりますが、民間の金融機関の住宅ローンでは、連帯債務者は原則として団信に加入することができません

例えば、夫が主債務者、妻が連帯債務者となる場合には、夫婦どちらも住宅購入代金を支払っているにもかかわらず、妻は団信には加入できないこととなります。

そのため、このケースで、妻が返済期間中に死亡したとしても、住宅ローンは保険金で完済されることはありません。

なお、住宅金融支援機構が提供しているフラット35では、夫婦の連帯債務者は、団信に加入することができます。詳細は以下の記事をご参照ください。
【住宅ローン控除⑤】連帯債務型の住宅ローンとしてのお勧めのフラット35とは?

 

②離婚した場合でも連帯債務者の返済義務は続く

住宅ローンの契約は、離婚後も継続します。そのため、連帯債務型で契約した夫婦が離婚した場合には、離婚後もそれまでと同じように夫婦それぞれに同等のローン返済義務が生じます

仮に夫もしくは妻のどちらかの返済が滞るようになった場合には、もう一方は1人で返済を続ける必要があります。

 

③離婚した場合でも住宅は共有名義のまま

連帯債務型で住宅を購入すれば、その住宅は共有名義となり、夫婦それぞれが共有持分を持つことになります。そして、この住宅の共有名義は離婚した場合でも継続します

共有不動産の売却は、共有者全員の同意が必要ですが、自分の持分のみの売却であれば同意は必要ありません。そのため、知らない間に持分を売却されて第三者と共有することになるケースが想定されます。

このケースでは、住宅の売却やリフォームをする場合には、他の共有者の同意を得なければならず、トラブルになることが多いです。

 

 

「連帯債務型」が向いている人

連帯債務型は夫婦ともに住宅ローン控除の適用を受けられることが大きなメリットですが、収入があって所得税や住民税を納めている人でなければ、住宅ローン控除の節税効果を享受することができません。

そのため、共働きを続けるというライフプランを持つ夫婦に向いています

いずれどちらかが専業主婦(主夫)になる予定がある場合には、結局1人分の住宅ローン控除しか節税効果を享受できないため、連帯債務型を選ぶメリットは減ってしまいます。

 

 

収入合算である「連帯保証型」の住宅ローンの概要

次に収入合算である「連帯保証型」の住宅ローンについて、その概要等を確認します。

「連帯保証型」とは、夫婦のどちらかが債務者となり、もう一方が連帯保証人となる住宅ローンの借り方です。

連帯債務型では、債務者の単独名義のローン契約になります。返済義務は債務者のみにあり、債務者が返済できない場合に連帯保証人に返済義務が生じます。

「連帯保証型」の住宅ローンについて、イメージ図は次のようになります。

 

「連帯保証型」の持分割合

連帯保証人には持分が与えられないので、持分割合を決める必要はありません

例えば、夫が債務者、妻が連帯保証人である場合には、住宅は夫の単独所有になります。

 

 

「連帯保証型」のメリット・デメリット

「連帯保証型」のメリット・デメリットは次の通りです。

(1)「連帯保証型」のメリット

①借入額の上限を引き上げられる

②契約は1つのため諸費用が単独ローンと変わらない

詳細は以下の通りです。

 

①借入額の上限を引き上げられる

連帯債務型と同様に、収入合算ができるので単独ローンを組むよりも借入額の上限を引き上げることができます

 

②契約は1つのため諸費用が単独ローンと変わらない

こちらも連帯債務型と同様に、契約は1つのため諸費用も1つ分で済みます

 

(2)「連帯保証型」のデメリット

①連帯保証人は住宅ローン控除を受けることができない

②連帯保証人は団信に加入できない

詳細は以下の通りです。

 

①連帯保証人は住宅ローン控除を受けることができない

住宅ローン控除の適用を受けることができるのは債務者のみで、連帯保証人は住宅ローン控除の適用を受けることはできません

夫婦どちらとも住宅ローン控除の適用を受けることができる連帯債務型と比較すると、連帯保証型は債務者となった1人しか住宅ローン控除を受けることができない点がデメリットとなります。

 

②連帯保証人は団信に加入できない

連帯保証型の場合、1人が債務者となり、もう1人は連帯保証人となりますが、連帯保証人は団信に加入することができません

そのため、連帯保証人が返済期間中に死亡したとしても、住宅ローンは保険金で完済されることはありません。

 

 

「連帯保証型」が向いている人

連帯保証型は、単独名義よりも借入額の上限を増やしたいが、夫婦のどちらかの収入をメインにしている人に向いています

連帯保証型のデメリットの1つは、「連帯保証人は住宅ローン控除を受けられないこと」ですが、夫婦のどちらかに収入がない場合には、そもそも住宅ローン控除を受けられないため、直接的なデメリットとはならないからです。

また、住宅を共有名義にしたくなく、収入合算をしたい人にも連帯保証型が向いていると言えます。

 

 

「連帯債務型」と「連帯保証型」の違い

収入合算ができる「連帯債務型」と「連帯保証型」の違いをまとめると下表のようになります。

 

連帯債務型 連帯保証型
主債務者 連帯債務者 債務者 連帯保証人
所有権の有無 ×
住宅ローン控除適用の可否 ×
団信加入の要否

×

 民間の金融機関においては、原則として連帯債務者は団信へ加入できませんが、フラット35では、夫婦の連帯債務者は、団信に加入することができます。

 

 

まとめ

以上今回は、住宅ローンについて、「収入合算」や「持分割合」、「連帯債務型の概要」、「連帯保証型の概要」などを詳しく解説いたしました。

収入合算は夫婦や親子などで収入を合算して住宅ローンを組む方法で、「連帯債務型」と「連帯保証型」の2つの住宅ローンの種類が存在します。
また、収入合算と似ている「ペアローン」と呼ばれる住宅ローンもあります。

どの方法にもメリット・デメリットがあるため、自分たちに向いている方法を事前に検討する必要があります。

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