特定事業用宅地等として、小規模宅地等の特例の適用を受けた場合には、相続税の計算の基となる土地の評価額を最大80%も減額することができます。土地の評価額が下がると、相続税の金額も当然に小さくなることから、できる限り、この特例の適用を受けて、相続税の節税を図るべきです。
そのため、今回は特定事業用宅地等の要件などを中心に解説します。
なお、小規模宅地等の特例については、下記の記事でも解説していますので、こちらもご参照ください。
小規模宅地の特例で相続税を大幅に減額!!
Table of Contents
特定事業用宅地等とは(概要と要件)
特定事業用宅地等とは、被相続人が生前に事業をしていた建物などの敷地(事業の用に供されていた宅地等)のことです。
この特定事業用宅地等を相続する場合には、一定の要件を満たすことで、小規模宅地等の特例を適用でき、相続税評価額を大きく下げることがてきます。
具体的には次のいずれかのケースに応じて、要件等は次の通り定められています。
(1)被相続人が営んでいた事業を親族が相続するケース
このケースで特例を適用するためには、「被相続人の親族が、相続又は遺贈により取得し、被相続人の事業を申告期限までに引き継ぎ、その宅地等を相続税の申告期限まで保有し、当該事業を営んでいること」が必要です。
これらを整理すると、要件は次の通りとなります。
✓事業継続要件:被相続人から引き継いだ事業を申告期限まで営んでいること
✓保有継続要件:その宅地等を相続税の申告期限まで有していること |
(2)生計一親族が被相続人の宅地等で事業を営んでいたケース
このケースで特例を適用するためには、「被相続人と生計を一にしていた親族であって、相続又は遺贈により取得し、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の事業の用に供し、申告期限まで引き続きその宅地等を有していること」が必要です。
また、「被相続人と生計を一にしていた親族との間で、当該宅地等の地代や当該宅地等の上に建築されている建物の家賃の支払いがないこと」も必要です。
これらを整理すると、要件は次の通りとなります。
✓事業継続要件:相続開始の前から親族が営んでいる事業を申告期限まで営んでいること ✓保有継続要件:その宅地等を相続税の申告期限まで有していること ✓無償使用要件:被相続人と生計を一にしていた親族との間で地代又は家賃の支払いがないこと |
なお、その他の小規模宅地等の特例については、以下の記事もご参照ください。
特定居住用宅地等はこちら:
特定居住用宅地等とは?要件などを詳しく解説!!
特定同族会社事業用宅地等はこちら:
特定同族会社事業用宅地等とは?要件などを詳しく解説!!
貸付事業用宅地等はこちら:
貸付事業用宅地等とは?要件などを詳しく解説!
事業の範囲
ここでの事業の範囲からは、不動産貸付業、駐車場業、自転車駐輪場業および準事業(事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの)は除かれています。
なお、不動産貸付業、駐車場業、自転車駐輪場業および準事業に該当する場合には、貸付事業用宅地等としての検討を行うこととなります。
また、被相続人等の営む事業に従事する使用人の寄宿舎等(被相続人等の親族のみが使用していたものを除く。)の敷地は、被相続人等の事業用宅地等に該当するとされています。
特定事業用宅地等の留意点
特定事業用宅地等の留意点等は次の通りです。
(1)事業の廃業・宅地等の売却
事業を継ぐ気がないからと言って、すぐに廃業したり、相続した宅地等を売却したりすると原則として特例の適用は受けることができないことから、この特例の適用を受けるためには、少なくとも事業を申告期限までは続ける必要があります。
(2)3年以内の事業用宅地は適用除外
平成30年度税制改正により事業期間要件も要求されることとなり、相続開始前3年以内に新しく事業の敷地とした場合には、特定事業用宅地等から除外されています。
そのため特定事業用宅地等と認められるには、3年を超えて継続している事業用の敷地である必要があります。
なお、宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、宅地等の価額の15%以上の場合には、特定事業用宅地等として認められます。
(3)適用は持分割合に応じる部分のみ
それぞれの要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得した場合であっても、宅地等の全体が事業用宅地等として扱われるのではなく、この特例の適用は、あくまで持分の割合に応ずる部分に限られます。
特定事業用宅地等の要件表
特定事業用宅地等の要件表は次の通りです。
区分 | 適用要件 | |
被相続人の事業の用に供されていた宅地等 | 事業期間要件 | 相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等ではないこと ※ |
取得者要件 | 被相続人の親族であること | |
事業承継要件 | 被相続人の事業を相続税の申告期限までに承継し、かつ、申告期限まで当該事業を営んでいること | |
保有継続要件 | その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること | |
被相続人と生計を一にする親族の事業の用に供されていた宅地等 | 事業期間要件 | 相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等ではないこと ※ |
取得者要件 | その事業を行っていた生計一の親族であること | |
事業承継要件 | 相続前から行っていた自己の事業を申告期限まで継続すること | |
保有継続要件 | その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること | |
無償使用要件 | 被相続人に対して当該宅地等の地代や当該宅地等の上に建築されている建物の家賃の支払いがないこと |
※ 宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、宅地等の価額の15%以上のものは除きます。
まとめ
以上、今回は特定事業用宅地等の要件などを中心に解説させていただきました。
特定事業用宅地等として、小規模宅地等の特例の適用を受けた場合には、相続税の計算の基となる土地の評価額を最大80%も減額することができます。
この特例の適用を受けて、土地の評価額が下がると、相続税の金額も当然に小さくなり、簡単に相続税の節税が可能です。
ただし、特定事業用宅地等として、小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、認められるいくつかのケースごとの要件をしっかりと理解した上で、留意点などにも気を付ける必要があります。
そのため、税理士等の専門家に事前に相談することをお勧めします。
「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループでは、特定事業用宅地等として、小規模宅地の特例の適用が受けられるか否かのご相談もお受けしておりますので、お気軽にご連絡ください。
なお、小規模宅地等の特例と並んで、よく使われる制度である「配偶者控除」に概要等については、以下の記事をご参照ください。
配偶者控除の適用で相続財産1億6,000万円までなら無税(要件やデメリットなども)
また、相続対策で比較的に簡単にできる節税対策の1つである「養子縁組」の活用方法等については、以下の記事をご参照ください。
養子縁組で相続税を節税!!(節税効果や注意点も)