サラリーマンについては、年末調整により所得税等が精算されるため、原則として所得税の確定申告は不要です。
ただし、最近はサラリーマンであっても副業する人や、ダブルワークする人が増えてきており、ケースによっては確定申告が必要となります。
そこで今回は、所得税の確定申告について、「必要になる人」と「不要となる人」をケース別に詳しく解説します。
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所得税の確定申告の概要
はじめに所得税の確定申告について、その概要を確認します。
所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税等の額を計算して確定させる手続です。
給与や報酬などから事前に源泉徴収されている税金や予定納税額などがある場合には、この確定申告によってその過不足を精算することになります。
また、この所得税の確定申告は、原則として、その年の翌年2月16日から3月15日の間に提出する必要があります。
ただし、医療費控除などの還付申告については、1月から受け付けています。
所得税の確定申告については、以下の国税庁サイトもご参照ください。
No.2020 確定申告|国税庁 (nta.go.jp)
確定申告が必要になる人
ここでは、確定申告が必要になる人について、次の所得等がある人ごとに確認します。
(1)給与所得がある人で確定申告が必要になる人
(2)公的年金等の雑所得がある人で確定申告が必要になる人 (3)退職所得がある人で確定申告が必要になる人 (4)上記(1)~(3)以外の個人事業主やフリーランス等で確定申告が必要になる人 |
詳細は以下の通りです。
(1)給与所得がある人で確定申告が必要になる人
サラリーマン(会社員)、役員、公務員、パート・アルバイトなどの給与所得者の大部分の人は、年末調整により所得税等が精算されるため、確定申告は不要です。
ただし、次の3.の計算で算出した「差引所得税額」に残額がある人で、以下の①から⑤のいずれかに該当する場合には確定申告が必要となります。
1.「課税所得金額」=「所得金額の合計額」-「所得控除の合計額」
2.「所得税額」=「課税所得金額」×「所得税率」-「控除額」 3.「差引所得税額」=「所得税額」-「配当控除額」-「住宅借入金等特別控除額(年末調整で控除したもの)」 |
①役員等で給与収入の多い人
給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
②サラリーマン等で副業による所得が一定以上ある人
1ヵ所から給与の支払いを受けている人で、「副業による所得(給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額)」が20万円を超える人
③ダブルワークをしている人
2ヵ所以上から給与の支払いを受けている人で、「主たる給与以外の給与(年末調整されなかった給与)の収入金額」と「副業による所得(給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額)」が20万円を超える人
④同族会社と一定の取引がある役員
同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や不動産の賃貸料、機械・器具の使用料などを受け取っている人
⑤源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
家事使用人や在日外国公館の勤務者など、源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
なお、給与所得がある人で確定申告が必要になる人に詳細については、以下の国税庁タックスアンサーもご参考になさってください。
No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁 (nta.go.jp)
(2)公的年金等の雑所得がある人で確定申告が必要になる人
公的年金等の雑所得の金額から所得控除を差し引くと、残額がある人は原則として確定申告が必要となります。
ただし、以下のいずれにも該当する場合には、確定申告の必要はありません。
①公的年金等が源泉徴収の対象となる場合の収入金額が400万円以下(※)
②公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下 |
※ 一定の外国年金が国外で支払われる場合には、源泉徴収の対象とならないことから、400万円以下であっても確定申告は必要となります。
なお、詳細については以下の弊所の記事もご参考になさってください。
年金受給者の確定申告は必要か?
(3)退職所得がある人で確定申告が必要になる人
勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出した場合、通常は源泉徴収で課税が完結することになることから、原則として確定申告は不要です。
ただし、外国企業から受け取った退職金など、源泉徴収されないものがある場合には、確定申告が必要となります。
(4)上記(1)~(3)以外の個人事業主やフリーランス等で確定申告が必要になる人
個人事業主やフリーランス、不動産経営(大家さん)、投資家等は通常、確定申告が必要です。
正確には、次の3.の計算で算出した「差引所得税額」に残額がある人は、確定申告が必要となります。
1.「課税所得金額」=「所得金額の合計額」-「所得控除の合計額」
2.「所得税額」=「課税所得金額」×「所得税率」-「控除額」 3.「差引所得税額」=「所得税額」-「配当控除額」 |
確定申告が不要となる人
基本的に、上記2.の「確定申告が必要になる人」に該当しない人が、「確定申告が不要となる人」に該当します。
ここでは、「確定申告が不要となる人」をイメージしやすいように、次のような具体例を確認します。
(1)給与所得がある人で年末調整を受けている人
(2)給与所得がある人で副業による所得が20万円以下の人 (3)公的年金の収入が400万円以下で確定申告不要制度の対象者 (4)個人事業や不動産賃貸業等による所得が赤字の人や所得控除以下の人 |
詳細は以下の通りです。
(1)給与所得がある人で年末調整を受けている人
サラリーマン(会社員)、役員、公務員、パート・アルバイトなどの給与所得者は、通常、勤務先で年末調整を受けることから、確定申告は不要です。
ここで、年末調整とは、給与や賞与などから天引きされた源泉徴収の金額と、1年間の所得に対して実際に納付すべき所得税の額とを比較して、過不足があれば精算(給与の天引きや還付で調整)する仕組みです。
この年末調整は、原則として、「扶養控除等(異動)申告書」を提出している給与所得者全員に対して行われますが、「給与の年間収入金額が2,000万円を超える人」や「ダブルワークで他の勤務先で年末調整を受ける人」などは、年末調整の対象外となり、原則として確定申告が必要となります。
(2)給与所得がある人で副業による所得が20万円以下の人
< 1ヵ所から給与の支払いを受けている人>
1ヵ所から給与の支払いを受けている人で、副業による所得(給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額)が20万円以下の人は、確定申告は不要です。 |
<2ヵ所以上から給与の支払いを受けている人(ダブルワーク)>
2ヵ所以上から給与の支払いを受けている人は、「主たる給与以外の給与(年末調整されなかった給与)の収入金額」(※)と「副業による所得(給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額)」が20万円以下の人は、確定申告は不要です。 |
※ ダブルワークの給与については、所得ではなく収入で判断するため、注意が必要です。
例えば、サラリーマンが副業でウーバーイーツなどの配達業やYouTubeなどの動画配信業などを行う場合、仮に副業の収入が50万円あったとしても、経費が35万円ある場合には、副業による所得は15万円(=50万円-35万円)となり、副業による所得が20万円以下になるため、確定申告は不要となります。
(3)公的年金の収入が400万円以下で確定申告不要制度の対象者
上述の通り、公的年金の収入が400万円以下で、かつ公的年金等以外の所得が20万円以下の人は確定申告が不要となります。
(4)個人事業や不動産賃貸業等による所得が赤字の人や所得控除以下の人
個人事業主やフリーランス、不動産オーナー(大家さん)等は、通常、確定申告が必要となりますが、事業所得や不動産所得が赤字の人や、所得控除以下の人は、確定申告が不要となります。
つまり、事業自体が赤字の場合には、以下の「所得金額の合計額」はマイナス、「課税所得金額」はゼロとなり、結果として所得税額が生じないため、確定申告は不要です。
また、例え事業が黒字であっても、「所得金額の合計額」が基礎控除48万円とその他の控除(例えば、扶養控除、生命保険料控除など)の合計額を下回る場合には、「課税所得金額」はゼロとなり、結果として所得税額が生じないため、確定申告は不要です。
「課税所得金額」=「所得金額の合計額」-「所得控除の合計額」 |
なお、所得控除の詳細については、以下の弊所記事をご参照ください。
所得控除の全15種類を詳しく解説!!
(参考) 特定口座内で生じた上場株式等の譲渡による譲渡所得
所得税の確定申告が「必要になる人」「不要となる人」とは論点が異なりますが、参考として、「特定口座内で生じた上場株式等の譲渡による譲渡所得」の申告不要について確認します。
上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額については、特定口座内で生じる所得に対して源泉徴収することを選択した場合には、その特定口座における上場株式等の譲渡による所得は原則として、確定申告は不要です。
特定口座に関しては、以下の2つの記事で詳しく解説していますので、こちらもご参考になさってください。
まとめ
以上今回は、所得税の確定申告について、「必要になる人」と「不要となる人」をケース別に詳しく解説いたしました。
サラリーマンについては、年末調整により所得税等が精算されるため、原則として所得税の確定申告は不要です。
ただし、サラリーマンであっても副業する人や、ダブルワークする人の場合には、副業による所得等が20万円を超えると確定申告が必要となります。
一方で、個人事業主やフリーランス、不動産経営(大家さん)、投資家等は通常、確定申告が必要です。
ただし、個人事業や不動産賃貸業等による所得が赤字の人や所得控除以下の人は、確定申告が不要となります。
確定申告が必要にもかかわらず、申告をしていなかった場合にはいわゆる「無申告」の状態となります。
近年、この「無申告」に対しては、国税当局が課税を強化しており、税務調査によって重加算税などの重たいペナルティが課さられる可能性があります。
そのため、確定申告の提出が必要か否か、少しでも不安がある方は、一度、税理士などの専門家にご相談されることをお勧めします。
「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループでは、個人の申告業務も積極的にお受けしておりますので、ご興味等ございましたら、お気軽にご連絡ください。