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特定口座は確定申告が必要か?

特定口座で株式売買や配当を受け取った場合には、確定申告は不要だという話を聞いたことはないでしょうか?
結論から言うと、「源泉徴収ありの特定口座」の場合には、原則として確定申告は不要となります。
今回の記事では、特定口座と確定申告の必要性、特定口座の種類と各口座のメリット・デメリットについて解説させていただきます。

なお、個人における実践的な節税対策については、以下のサイトをご参照ください。
当事務所について – 保田会計事務所|税務・コンサル・会計・その他経営に関わる全てを総合的にサポート

 

特定口座は確定申告が必要か?

特定口座は株取引をする人の間では、よく耳にする言葉です。
この特定口座の利用の有無や、特定口座内の利益に対してかかる税金が源泉徴収される口座かどうかによって、確定申告が必要か、もしくは、すべきなのか等の判断が異なってきます。

そこで、今回の記事においては、特定口座を利用している人で、どんな場合に確定申告が必要になるのかを確認します。

なお、年金受給者において確定申告が必要な場合については、以下の記事をご参照ください。
年金受給者の確定申告は必要か?

 

特定口座とは

まず、特定口座とは、株や投資信託をはじめる方が証券会社などの金融商品取引業者等で開設する取引口座のことです。
特定口座内で発生した取引は、証券会社が本人に代わって売買内容の記録や損益の計算をしてくれるため、ほとんどの方がこの特定口座を選択しています。
また、特定口座を利用すると、1年間の取引内容や損益をとりまとめた「特定口座年間取引報告書」を証券会社が作成してくれることもあり、管理が非常に楽になります

株や投資信託をはじめる際に開設できる口座は、特定口座の他にも非課税口座(NISA)や一般口座があります。

非課税口座は一定期間内に得た売買益や配当金については税金がかからない点が特徴で、一般NISAやつみたてNISAが有名です。
一方で、一般口座は特定口座や非課税口座以外の口座を言い、特定口座のように証券会社が損益額の計算を行ってくれないため、自分で利益や損失額を計算しなくてはなりません。

特定口座は、税金が源泉徴収されているかどうかによって、確定申告の必要性が次のように変わります。

 

「源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収口座)」は基本的に確定申告が不要

特定口座には、「源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収口座とも言われます)」と「源泉徴収なしの特定口座」の2種類があり、口座開設時にどちらかの口座を選択します。
選択した口座によって確定申告の必要性の有無が変わるので注意が必要です。

「源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収口座)」を選択すれば、株式等の譲渡益に対して課される税金があらかじめ差し引かれた上で口座に振り込まれるため、確定申告は不要となります。

また、譲渡益以外の配当金や分配金についても、確定申告をせずともこの源泉徴収ありの特定口座内で得た譲渡益との損益通算が可能です。さらに、損益通算をした結果、源泉徴収額が過大になった場合には、自動的に還付の手続きが行われ、非常に管理や手続きの面で楽になります。

 

「源泉徴収なしの特定口座」は確定申告が必要

「源泉徴収なしの特定口座」を選択した場合には、譲渡益にかかる税額の計算を自分で行い、原則として確定申告が必要となります。
そのため、「源泉徴収ありの特定口座」で取引する場合と比べ、確定申告書の作成や納税手続きなどの手間がかかります。

ただし、譲渡損益の計算や特定口座年間取引報告書の作成は証券会社が行ってくれるので、一般口座よりは手間がかかりません
また、年間の取引実績がマイナスの場合には、税金は課せられないので、基本的には確定申告の必要はありません。

なお、この特定口座の「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」の変更は、その年の譲渡損益・配当金が発生する前であれば可能です。そのため、変更するのであれば1月・2月などの早めの時期に行う必要があります。

 

「源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収口座)」のメリット3つ

ここで「源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収口座)」のメリットを3つ確認します。

①確定申告の必要がない

詳細は上述の通りです。

なお、特定口座であっても、確定申告をした方が有利な場合の解説については、以外の記事をご参照ください。
特定口座で確定申告したほうがいい人とは?

 

②損益通算して譲渡損があれば還付

詳細は上述の通りです。

なお、外国上場株式の損益通算については、以下の記事をご参照ください。
外国株式を譲渡した場合の所得税の取扱い(外国上場株式の損益通算等)

 

③配偶者等の合計所得金額に合算されない

この口座にある株取引の利益は、配偶者控除や扶養控除等の適用を判定する際の所得基準に合算されません
例えば、専業主婦の取引で所得控除の枠を超える利益を得た場合でも、夫の「配偶者控除・配偶者特別控除」の適用に影響を与えません。
確定申告をすると合計所得金額に含まれてしまうため、この点は大きなメリットとなります。

 

「源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収口座)」のデメリット2つ

次に、「源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収口座)」のデメリットを確認します。

①利益が20万円以下でも税金が引かれてしまう

「源泉徴収ありの特定口座」では、利益が20万円以下でも一律税金が引かれてしまいます。給与収入が2,000万円以下の給与所得者で、給与所得や退職所得以外の所得合計額が20万円以下の場合、所得税について確定申告の義務がありません。
その結果として、20万円以下の所得については所得税を納めなくてもよいことになります。

しかし、源泉徴収ありの特定口座の場合、確定申告が不要なケースであっても、自動的に税金が引かれることから、還付を受けることもできません
そのため、少額投資で毎年の利益が20万円以下の場合は「源泉徴収なしの特定口座」を選択することも考えられます。

 

②損失の繰越控除を受けるには確定申告が必要

「源泉徴収ありの特定口座」でも、損失の繰越控除を受ける場合は結局、確定申告をする必要があります。
また、損失が生じた年だけでなく、その後に取引がない年があっても、損失を繰り越しするためには申告をしなければなりません。

 

「源泉徴収なしの特定口座」のメリット2つ

ここでは「源泉徴収なしの特定口座」のメリットを確認します。

①利益が20万円以下なら確定申告不要

「源泉徴収なしの特定口座」の場合は確定申告が必要ですが、利益が20万円以下であった場合は確定申告が不要です。「源泉徴収ありの特定口座」の場合は20万円以下でも税金が引かれてしまうため、取引の数が少ない、少額で取引をしているなど利益が少なめと予測できる場合はこの「源泉徴収なしの特定口座」の選択がお勧めです。

また、「源泉徴収なしの特定口座」は税金を自動的に引かれないため、多くの資金を再投資に回せます。
例えば、100万円の利益が出た場合に、「源泉徴収ありの特定口座」からは税額の約20万円が自動的に引かれ、再投資の額は約80万円に減ってしまいます。
しかし、「源泉徴収なしの特定口座」であれば、その利益もすべて再投資に回せるため、資金の効率的な運用が可能となります。

 

②「年間取引報告書」で確定申告できる

詳細は上述の通りです。

 

「源泉徴収なしの特定口座」のデメリット2つ

次に、「源泉徴収なしの特定口座」のデメリットを整理します。

①配偶者等の合計所得金額に合算される

「源泉徴収なしの特定口座」の場合には確定申告により、配偶者控除や扶養控除等の適用を判定する際の合計所得金額に合算されます。
合計所得金額とは、配偶者控除など扶養控除を受ける際に基準とされる金額のことで、配偶者控除を受けるためには配偶者の合計所得金額が48万円以下でなければなりません。
例えば、専業主婦の株式利益が48万円を超えている場合、「源泉徴収なしの特定口座」では、確定申告をすることで扶養から外れ、配偶者控除や扶養控除が受けられないため、家族単位では税金が増える可能性があります

 

②国民健康保険料に影響する場合がある

「源泉徴収なしの特定口座」の場合には確定申告により、国民健康保険料に影響する場合があります
国民健康保険料は前年の総所得金額を基に、地方自治体ごとに定められるものです。そのため、株取引の利益を申告した場合は、翌年の国民健康保険料も増える可能性があります。

ただし、給与所得者の場合、会社の健康保険に加入しており、その健康保険料は給与を基に算定するため、取引の利益を確定申告しても健康保険料への影響はありません

 

「源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収口座)」がおすすめの方

上述のメリット・デメリットを踏まえ、次のような方に「源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収口座)」をお勧めします。

①取引金額や回数が多く、年間利益が20万円以上を超えてしまう方

②忙しくて確定申告を行うのが難しい方

③主婦や学生で配偶者控除、扶養控除の対象となっており、大きく利益が出る予定の方(扶養から外れることがありません)

 

「源泉徴収なしの特定口座」がおすすめの方

一方で、次のような方には「源泉徴収なしの特定口座」をお勧めします。

①少額投資で、年間の利益が20万円以下の方(税金がかかりません)
ただし、利益が20万円を超えてきそうな場合は確定申告をするか、「源泉徴収ありの特定口座」に切り替えることが必要です。②株式を売却して得た利益をそのまま再投資に充て、効率的に投資をしたい方
利益から源泉徴収はされないことから、利益のすべてを再投資に回せるため、資金の効率的な運用が可能となります。

 

まとめ

以上、今回は特定口座と確定申告の必要性、特定口座の種類と各口座のメリット・デメリットについての解説をさせていただきました。

「源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収口座)」は、確定申告の必要がないため、多くの人に利用されています。

一方で、「源泉徴収なしの特定口座」では、利益が20万円以下なら確定申告は不要となるため、上手く使うことで、利益に対する税金を払わなくてよくなることから、節税が可能となります。

なお、会社員の節税対策については、以外の記事をご参照ください。
会社員の節税対策6選!!

 

金融所得に関する税務上の取り扱いは、細かな論点でもありますので、専門家にご相談される場合には、金融所得に明かるい「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループに是非ご相談ください。