起業して間もない会社でも使いやすい補助金に「小規模事業者持続化補助金」があります。
この記事では、「小規模事業者持続化補助金」の概要を分かりやすく解説します。
なお、補助金・助成金のコンサルティングについては、以下のサイトをご参照ください。
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小規模事業者持続化補助金とは
「小規模事業者持続化補助金」は、小規模事業者が商工会議所等の助言を受けて経営計画を作成し、その計画に沿って販路開拓や生産性向上に取り組む場合に、その費用の3分の2が補助される国の制度になります。
この制度は平成26年から開始されており、他の補助金制度と比較すると補助額は小さくなりますが、汎用性が広く小規模会社や個人事業主にとっても使い勝手がいいと評判です。
過去の採択率はおおよそ30%~90%を推移しており、また申請に必要な計画書の枚数も平均して6~8ページと、補助金申請の難易度もあまり高くなく、起業して間もない事業者であっても非常にチャレンジしやすくなっています。
小規模事業者持続化補助金の詳細は、以下の小規模事業者持続化補助金事務局のWebサイトをご参照ください。
令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金(一般型)
(1)対象者となる小規模事業者とは
小規模事業者持続化補助金の対象者となる「小規模事業者」とは、業種ごとに常時使用する従業員数が次の人数以下である事業者を言います。
業種 | 常時使用する従業員数 |
商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
(2) 補助金額及び補助率
2024年時点での小規模事業者持続化補助金の補上限額と補助率は、次の通りです。
申請類型 | 補助金上限額 | 補助率 |
通常枠 | 50万円 | 3分の2 |
賃金上げ枠成長 | 200万円 | 3分の2(赤字事業者は3/4) |
卒業枠 | 200万円 | 3分の2 |
後継者支援枠 | 200万円 | 3分の2 |
創業枠 | 200万円 | 3分の2 |
インボイスの特例 | 50万円 | ー |
(3)補助対象となる経費とは
小規模事業者持続化補助金の対象経費の例示は次の通りです。
①機械装置等費:生産販売拡大のための厨房機器の購入、サービス提供のための製造・試作機械の購入など ②広報費:ウェブサイトの作成費用、販促用チラシ・DM・カタログの作成の作成費用など ③展示会等出展費:展示会や見本市への出展費用、商談会への参加費用など ④旅費:販路開拓などのための旅費 ⑤開発費:新商品の試作品に必要な経費 ⑥資料購入費:図書の購入など ⑦雑役務費:販促用チラシのポスティング等のために支払ったアルバイト代など ⑧借料:商品・サービスのPRイベント会場のレンタル料など ⑨専門家謝金:マーケティング・ブランディング等の専門家から受けた指導や助言に対する謝金など ⑩専門家旅費: ⑨の専門家に支払う旅費 ⑪設備処分費:販路開拓の取り組み等を目的にスペースを確保するための設備の廃棄・処分費用など(補助対象経費総額の2分の1が上限) ⑫委託費:市場調査や新商品開発に伴う成分分析の委託費用など ⑬外注費:飲食店の店舗改修、製造・生産強化のための内装工事など(不動産の取得に該当するものは不可) |
小規模事業者持続化補助金の特別枠・特例【2024年最新版】
令和4年度(2022年度)から、販路開拓や生産性向上の通常枠に加えて、新たに次の補助項目が設定されました。
(1)賃金引き上げ枠
賃金引上げ枠とは、賃金引上げの取り組みをしている小規模事業社に対して、補助上限額200万円に引き上げるという特別枠です。また、赤字事業者については、補助率を2/3から3/4に引き上げてくれる制度です。
賃金引き上げ枠の対象者は、販路を開拓する取り組みに加えて、事業場内の最低賃金が申請時の地域別最低賃金より+30円を達成している小規模事業者です。
(2)卒業枠
卒業枠とは、従業員の増加による事業規模拡大の取り組みに対して、補助上限額が200万円に引き上げられる特別枠です。
卒業枠の対象者は、販路開拓の取り組みに加えて、従業員数を増やし、小規模事業者の従業員数を超えて事業規模を拡大する計画がある小規模事業者です。
(3)後継者支援枠
後継者支援枠とは事業の後を継ぎ、後継者が実施する新たな取り組みに対して補助上限額が200万円に引き上げられる特別枠です。
後継者支援枠の対象者は、申請時に「アトツギ甲子園」のファイナリストもしくは準ファイナリストになった事業者事業者です。
(4)創業枠
創業枠とは、特定創業支援等事業による支援を受けて創業した小規模事業者に対して補助上限額が200万円に引き上げられる特別枠です。
創業枠は、以下の条件を満たす事業者が対象となります。
- 過去3年以内に開業していること
- 過去3年以内に、次のいずれかの機関から特定創業支援等事業による支援を受けていること
- 産業競争力強化法に基づく認定市区町村
- 認定市区町村と連携している認定連携創業支援等事業者
(5)インボイス特例
インボイスの特例とは、免税事業者から適格請求書(インボイス)発行事業者に変わるときに、小規模事業者への補助上限額が50万円増額されるという特例です。
インボイス特例は下記に該当する小規模事業者が対象となります。
2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で1度でも免税事業者であったもの又は免税事業者であることが見込まれるものが取り組む、インボイス(適格請求書)発行事業者への転換 |
小規模事業者持続化補助金の申請から受給までの流れ
他の補助金と同じように「小規模事業者持続化補助金」についても、採択されたからといってすぐに補助金を受領できるわけではありません。
ここでは下記順番で申請から受給までの流れを解説します。
- 必要書類の準備
- 申請手続き
- 申請内容の審査
- 採択・不採択の決定
- 申請をした補助事業の実施
- 補助事業実施の報告書を提出
- 補助金の交付
- 補助事業実施効果の報告
(1)必要書類の準備
まずは、必要な書類を集める必要があります。
(2)申請手続き
経営計画書や補助事業計画書を作成し、地域の商工会議所で確認を受けます。確認が終わって問題がなければ、支援機関確認書の交付を受けます。
(※ なお、地域の商工会議所に社外の代理人のみでの相談や支援機関確認書の交付依頼を行うことは好ましくないとされています。)
必要な書類が揃いましたら、補助金事務局である日本商工会議所へ申請書類一式を郵送するか、若しくはJグランツから電子で申請します。
(3)採択・不採択の決定
申請後、日本商工会議所から採択または不採択の通知がなされます。
採択の場合は次の手順に進みます。
①審査項目
小規模事業者持続化補助金は、必要な提出資料がすべて提出されているか等の基礎審査に加えて、次の項目に基づく加点審査が行われます。
①自社の経営状況を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みも適切に把握しているか。
②経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。 ③経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。 ④補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。 ⑤補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか。 ⑥補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴があるか。 ⑦補助事業計画には、ITを有効に活用する取り組みが見られるか。 ⑧助事業計画に合致した事業実施に必要なものとなっているか。 ⑨事業費の計上・積算が正確・明確で、真に必要な金額が計上されているか。 |
②加点項目
さらに次の加点項目を満たすと加点を受けることができ、審査得点を高くすることができます。
わずかな加点措置であったとしても、それが採否を決定することは十分にありえますので、加点項目を把握して、受けられる加点は確実に狙っていくことが重要です。
▼重点政策加点
①赤字賃上げ加点
賃金引上げ枠に申請する事業者のうち、赤字事業者に対して加点
②事業環境環境変化点
原油価格やLPガス、ウクライナ情勢などの影響による価格高騰で影響を受けている事業者に対して加点
③東日本大震災加点
東京電力福島第一原子力発電所の影響を受け、引き続き厳しい事業環境下にある事業者に対して加点
④くるみん・えるぼし加点
・次世代育成支援対策推進法(次世代法)における「くるみん認定」を受けている事業者
・女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)おける「えるぼし認定」を受けている事業者
※上記のどちらか
▼政策加点
⑤パワーアップ型加点
地域資源等を活用し、良いモノ・サービスを高く提供し、付加価値向上を図るため、地域外への販売や新規事業のたち上げ(地域資源型)を行うか、もしくは、地域の課題解決や暮らしの実需に応えるサービスを提供する小規模事業者による、地域内の需要喚起を目的とした取組等(地域コミュニティ型)を行う事業者に対して加点
⑥経営力向上計画加点
基準日までに中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けている場合に加点
⑦事業承継加点
代表者の年齢が満60歳以上の事業者で、かつ、後継者候補が補助事業を中心になって行う場合に加点
⑧過疎地域加点
過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法に定める過疎地域に所在し、地域経済の持続的発展につながる取り組みを行う事業者に対して加点
⑨一般事業主行動計画策定加点
・従業員が100人以下の事業者であることに加え、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を「女性の活躍推進企業データベース」に公表している事業者
・従業員が100人以下の事業者であることに加え、次世代法に基づく一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」に公表している事業者
(4)申請をした補助事業の実施
申請が無事に採択されたからといって、すぐに補助金が振り込まれるわけではありません。先に、申請をした内容に沿って補助事業を実施する必要があります。
手持ちの資金が不足する場合には、金融機関から一時的な借り入れ(「つなぎ融資」といいます)も検討する必要があります。
また、取り組みにも期限が設けられていますので、申請の際には取り組み期限についても確認しておく必要があります。
(5)補助事業実施の報告書を提出
事業の実施が完了したら、所定の期間内に実施の報告書を提出します。
この実施の報告には、支出を証明する書類など必要な資料を添付しなければなりません。
事前に必要資料を確認しておき、支払先から必要書類の受領を忘れないよう注意が必要です。
(6)補助金の交付
提出された報告書を日本商工会議所が確認して、問題なしと判断されれば、ようやく補助金を受領することができます
(7)補助事業実施効果の報告
補助金の交付が行われたら、補助事業は終わりというわけではありません。
補助事業終了から1年後の状況について、「補助事業実施による効果」や「賃金引上げ状況」等を国に報告する必要があります。
小規模事業者持続化補助金以外の補助金
小規模事業者持続化補助金以外の補助金についても、以下で確認します。
(1)ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、中小企業・小規模事業者などを対象に、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等に対して補助を受けることができる制度を言います。
詳細は以下の記事をご参照ください。
令和4年度(2022年度)のものづくり補助金を分かりやすく解説
(2)IT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者などが自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部に対して補助を受けることができる制度を言います。
詳細は以下の記事をご参照ください。
令和4年度(2022年度)のIT導入補助金を分かりやすく解説
まとめ
以上、今回は令和3年度(2021年度)補正予算で決定した令和4年度(2022年度)の「小規模事業者持続化補助金」の概要について解説させていただきました。
これまで補助金の申請をしたことがないという方でも、申請をすれば経費の一部が補助される可能性がありますので、この記事を参考にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
ただし、補助金の申請には多くの資料が必要な上に、不慣れな場合には、公募要領の読み込みや計画書の文書化など申請までに多くの時間を要します。
そのため、申請をご検討される場合には、「小規模事業者持続化補助金」を得意とする専門家に事前にご相談されることをお勧めします。
保田会計グループは創業時に実際に「小規模事業者持続化補助金」の交付を受ける等、補助金に強い事務所です。
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