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【夫婦で会社設立④】夫婦の役員報酬・給与のシミュレーション結果を解説!

夫婦で会社設立する場合、配偶者は役員と従業員のどちらがいいかについては、以前の記事でメリット・デメリット等を解説しました。

 

そこで今回は、夫婦の役員報酬や給与をいくらに設定すれば最適なのか、所得1千万円を前提として、実際の数値でシミュレーションを行いましたので、その結果と、おすすめの支払いパターンを解説します。

 

 

1.役員報酬・給与のシミュレーションでは前提条件の設定が大切

 前提条件の設定次第で、シミュレーション結果は異なるため、役員報酬・給与のシミュレーションでは前提条件の設定が大切です。

 

今回は、次の内容をシミュレーションの前提とします。

✓役員報酬や給与を支払う前の会社の利益:1,000万円

✓法人住民税の均等割額:70,000円

✓夫婦個人の所得控除:基礎控除48万円、配偶者控除38万円(給与なしor 100万円以下の場合に適用)、社会保険料控除(各パターンごとに計算)

✓社会保険料:健康保険9.98%、介護保険1.6%、厚生年金18.3%、子ども・子育て拠出金(会社のみ負担)0.36%

✓役員報酬200万円 or 300万円の非常勤役員は国保加入として、国民健康保険と国民年金を負担

✓個人住民税の均等割額:少額のため考慮しない

✓労働保険:従業員給与であっても少額のため考慮しない

 

 

2.所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を1千万円とした場合の具体的なシミュレーション

役員報酬・給与を計上する前の所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を1千万円とした場合において、夫婦それぞれの役員報酬・給与をいくらに設定するかによって、個人・法人の手取額は以下のようになります。

 

①本人の役員報酬1,000万円

単位:千円

個人 立場 社保加入 報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 10,000 1358 1290 7,352
配偶者 なし 0 0 0 0
合計 10,000 1,358 1,290 7,352

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 10,000 1,318 70 ▲1,388

 

合算 手取額
個人+会社 5,964

 

②本人の役員報酬900万円 + 配偶者の役員報酬100万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 9,000 1071 1235 6,694
配偶者 役員 1,000 0 158 842
合計 10,000 1,071 1,393 7,536

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 10,000 1,424 70 ▲1,494

 

合算 手取額
個人+会社 6,042

 

③本人の役員報酬900万円 + 配偶者の給与100万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 9,000 1071 1235 6,694
配偶者 従業員 × 1,000 0 0 1,000
合計 10,000 1,071 1,235 7,694

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 10,000 1,262 70 ▲1,332

 

合算 手取額
個人+会社 6,362

 

④本人の役員報酬800万円 + 配偶者の役員報酬200万円

単位:千円

個人 立場 社保加入 報酬・給与 所得税
住民税
社会保険 個人手取額
本人 役員 8,000 912 1186 5,902
配偶者 役員 2,000 81 305 1,614
合計 10,000 993 1,491 7,516

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 10,000 1,526 70 ▲1,596

 

合算 手取額
個人+
会社
5,920

 

⑤本人の役員報酬800万円 + 配偶者の非常勤役員報酬200万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 8,000 912 1186 5,902
配偶者 役員 2,000 127 408 1,465
合計 10,000 1,039 1,594 7,367

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 10,000 1,214 70 ▲1,284

 

合算 手取額
個人+
会社
6,083

 

⑥本人の役員報酬700万円 + 配偶者の非常勤役員報酬300万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 7,000 678 1058 5,264
配偶者 非常勤
役員
× 3,000 233 505 2,262
合計 10,000 911 1,563 7,526

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 10,000 1,082 70 ▲1,152

 

合算 手取額
個人+
会社
6,374

 

⑦本人の役員報酬500万円 + 配偶者の役員報酬500万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 5,000 374 735 3,891
配偶者 役員 5,000 374 735 3,891
合計 10,000 748 1,470 7,782

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 10,000 1,506 70 ▲1,576

 

合算 手取額
個人+
会社
6,206

 

⑧所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を1千万円とした場合のポイント

1人で1,000万円をもらうよりも、配偶者と500万円ずつもらった方が所得税・住民税が61万円ほど少なくなります。

また、社会保険料の負担が大きいため、配偶者を従業員にして給与を100万円としたり、非常勤役員としたりして、社会保険の対象外とすることで、手取額を増やすことができます

 

上記のシミュレーション上は、本人の役員報酬を700万円、配偶者を非常勤役員として報酬を300万円とすることで、個人と会社の合算手取額が一番大きくなります。

 

ただし、非常勤役員であっても、役員報酬を300万円(月額25万円)とする場合には、社会保険の加入が必要と判断されたり、税務上、過大報酬とされたりするリスクがあるため、注意が必要です。

 

 

3.所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を800万円とした場合の具体的なシミュレーション

役員報酬・給与を計上する前の所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を800万円とした場合において、夫婦それぞれの役員報酬・給与をいくらに設定するかによって、個人・法人の手取額は以下のようになります。

 

①本人の役員報酬800万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 8,000 796 1186 6,018
配偶者 なし 0 0 0 0
合計 8,000 796 1,186 6,018

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 8,000 1,214 237 549

 

合算 手取額
個人+
会社
6,567

 

②本人の役員報酬700万円 + 配偶者の役員報酬100万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 7,000 564 1058 5,378
配偶者 役員 1,000 0 158 842
合計 8,000 564 1,216 6,220

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 8,000 1,244 231 525

 

合算 手取額
個人+
会社
6,745

 

③本人の役員報酬700万円 + 配偶者の給与100万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 7,000 564 1058 5,378
配偶者 従業員 × 1,000 0 0 1,000
合計 8,000 564 1,058 6,378

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 8,000 1,082 265 653

 

合算 手取額
個人+
会社
7,031

 

④本人の役員報酬600万円 + 配偶者の役員報酬200万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 6,000 427 896 4,677
配偶者 役員 2,000 81 305 1,614
合計 8,000 508 1,201 6,291

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 8,000 1,229 234 537

 

合算 手取額
個人+
会社
6,828

 

⑤本人の役員報酬600万円 + 配偶者の非常勤役員報酬200万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 6,000 427 896 4,677
配偶者 非常勤
役員
× 2,000 127 408 1,465
合計 8,000 554 1,304 6,142

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 8,000 918 301 781

 

合算 手取額
個人+
会社
6,923

 

⑥本人の役員報酬500万円 + 配偶者の非常勤役員報酬300万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 5,000 297 735 3,968
配偶者 非常勤
役員
× 3,000 233 505 2,262
合計 8,000 530 1,240 6,230

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 8,000 753 336 911

 

合算 手取額
個人+
会社
7,141

 

⑦本人の役員報酬400万円 + 配偶者の役員報酬400万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 4,000 252 610 3,138
配偶者 役員 4,000 252 610 3,138
合計 8,000 504 1,220 6,276

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 8,000 1,247 230 523

 

合算 手取額
個人+
会社
6,799

 

⑧所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を800万円とした場合のポイント

1人で800万円をもらうよりも、配偶者と400万円ずつもらった方が所得税・住民税が29万円ほど少なくなります。

また、社会保険料の負担が大きいため、配偶者を従業員にして給与を100万円としたり、非常勤役員としたりして、社会保険の対象外とすることで、手取額を増やすことができます

 

上記のシミュレーション上は、本人の役員報酬500万円、配偶者を非常勤役員として報酬を300万円とすることで、個人と会社の合算手取額が一番大きくなります。

 

ただし、非常勤役員であっても、役員報酬を300万円(月額25万円)とする場合には、社会保険の加入が必要と判断されたり、税務上、過大報酬とされたりするリスクがあるため、注意が必要です。

 

 

4.所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を600万円とした場合の具体的なシミュレーション

役員報酬・給与を計上する前の所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を600万円とした場合において、夫婦それぞれの役員報酬・給与をいくらに設定するかによって、個人・法人の手取額は以下のようになります。

 

①本人の役員報酬600万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 6,000 427 896 4,677
配偶者 なし 0 0 0 0
合計 6,000 427 896 4,677

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 6,000 918 728 2,354

 

合算 手取額
個人+
会社
7,031

 

②本人の役員報酬500万円 + 配偶者の役員報酬100万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 5,000 297 735 3,968
配偶者 役員 1,000 0 158 842
合計 6,000 297 893 4,810

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 6,000 914 729 2,357

 

合算 手取額
個人+
会社
7,167

 

③本人の役員報酬500万円 + 配偶者の給与100万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 5,000 297 735 3,968
配偶者 従業員 × 1,000 0 0 1,000
合計 6,000 297 735 4,968

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 6,000 753 763 2,484

 

合算 手取額
個人+
会社
7,452

 

④本人の役員報酬400万円 + 配偶者の役員報酬200万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 4,000 252 610 3,138
配偶者 役員 2,000 81 305 1,614
合計 6,000 333 915 4,752

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 6,000 935 724 2,341

 

合算 手取額
個人+
会社
7,093

 

⑤本人の役員報酬400万円 + 配偶者の非常勤役員報酬200万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 4,000 252 610 3,138
配偶者 非常勤
役員
× 2,000 127 408 1,465
合計 6,000 379 1,018 4,603

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 6,000 623 791 2,586

 

合算 手取額
個人+
会社
7,189

 

⑥本人の役員報酬300万円 + 配偶者の役員報酬300万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 3,000 162 466 2,372
配偶者 役員 3,000 162 466 2,372
合計 6,000 324 932 4,744

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 6,000 953 720 2,327

 

合算 手取額
個人+
会社
7,071

 

⑦所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を600万円とした場合のポイント

1人で600万円をもらうよりも、配偶者と300万円ずつもらった方が所得税・住民税が10万円ほど少なくなります。

また、社会保険料の負担が大きいため、配偶者を従業員にして給与を100万円としたり、非常勤役員としたりして、社会保険の対象外とすることで、手取額を増やすことができます

 

上記のシミュレーション上は、本人の役員報酬500万円、配偶者を従業員として給与100万円とすることで、個人と会社の合算手取額が一番大きくなります。

 

 

5.所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を400万円とした場合の具体的なシミュレーション

役員報酬・給与を計上する前の所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を400万円とした場合において、夫婦それぞれの役員報酬・給与をいくらに設定するかによって、個人・法人の手取額は以下のようになります。

 

①本人の役員報酬400万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 4,000 195 609 3,196
配偶者 なし 0 0 0 0
合計 4,000 195 609 3,196

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 4,000 623 1,243 4,134

 

合算 手取額
個人+
会社
7,330

 

②本人の役員報酬300万円 + 配偶者の役員報酬100万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 3,000 105 466 2,429
配偶者 役員 1,000 0 158 842
合計 4,000 105 624 3,271

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 4,000 638 1,240 4,122

 

合算 手取額
個人+
会社
7,393

 

③本人の役員報酬300万円 + 配偶者の給与100万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 3,000 105 466 2,429
配偶者 従業員 × 1,000 0 0 1,000
合計 4,000 105 466 3,429

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 4,000 476 1,277 4,247

 

合算 手取額
個人+
会社
7,676

 

④本人の役員報酬250万円 + 配偶者の役員報酬150万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 2,500 126 359 2,015
配偶者 役員 1,500 37 226 1,237
合計 4,000 163 585 3,252

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 4,000 598 1,249 4,153

 

合算 手取額
個人+
会社
7,405

 

⑤本人の役員報酬250万円 + 配偶者の非常勤役員報酬150万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 2,500 126 359 2,015
配偶者 非常勤
役員
× 1,500 71 357 1,072
合計 4,000 197 716 3,087

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 4,000 367 1,302 4,331

 

合算 手取額
個人+
会社
7,418

 

⑥本人の役員報酬200万円 + 配偶者の役員報酬200万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 2,000 81 305 1,614
配偶者 役員 2,000 81 305 1,614
合計 4,000 162 610 3,228

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 4,000 623 1,243 4,134

 

合算 手取額
個人+
会社
7,362

 

⑦所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を400万円とした場合のポイント

1人で400万円をもらうよりも、配偶者と200万円ずつもらった方が所得の分散効果で所得税・住民税が3万円ほど少なくなります。

また、社会保険料の負担が大きいため、配偶者を従業員にして給与を100万円としたり、非常勤役員としたりして、社会保険の対象外とすることで、手取額を増やすことができます

 

上記のシミュレーション上は、本人の役員報酬300万円、配偶者を従業員として給与100万円とすることで、個人と会社の合算手取額が一番大きくなります。

 

 

6.所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を200万円とした場合の具体的なシミュレーション

役員報酬・給与を計上する前の所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を200万円とした場合において、夫婦それぞれの役員報酬・給与をいくらに設定するかによって、個人・法人の手取額は以下のようになります。

 

①本人の役員報酬200万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 2,000 23 305 1,672
配偶者 なし 0 0 0 0
合計 2,000 23 305 1,672

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 2,000 311 1,779 5,910

 

合算 手取額
個人+
会社
7,582

 

②本人の役員報酬100万円 + 配偶者の役員報酬100万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 1,000 0 158 842
配偶者 役員 1,000 0 158 842
合計 2,000 0 316 1,684

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 2,000 322 1,776 5,902

 

合算 手取額
個人+
会社
7,586

 

③本人の役員報酬100万円 + 配偶者の給与100万円

単位:千円

個人 立場 社保
加入
報酬・
給与
所得税
住民税
社会
保険
個人
手取額
本人 役員 1,000 0 158 842
配偶者 従業員 × 1,000 0 0 1,000
合計 2,000 0 158 1,842

 

法人 支給前
の所得
報酬・
給与
社保
負担
法人税等 法人
手取額
会社 10,000 2,000 161 1,814 6,025

 

合算 手取額
個人+
会社
7,867

 

④所得を1千万円、役員報酬・給与の支払総額を200万円とした場合のポイント

1人で200万円をもらうよりも、配偶者と100万円ずつもらった方が所得の分散効果で所得税・住民税が2万円ほど少なくなります。

また、社会保険料の負担が大きいため、配偶者を従業員にして給与を100万円としたり、非常勤役員としたりして、社会保険の対象外とすることで、手取額を増やすことができます

 

上記のシミュレーション上は、本人の役員報酬を100万円、配偶者を従業員として給与100万円とすることで、個人と会社の合算手取額が一番大きくなります。

 

 

7.所得1千万円における役員報酬・給与の手取額サマリー

役員報酬・給与を計上する前の所得を1千万円とした場合において、役員報酬・給与をいくらに設定したら、どれくらいの手取額になるか上記のシミュレーション結果を表に整理しました。

 

<所得1千万円における役員報酬・給与の手取額サマリー>

単位:千円

支払
総額
本人 配偶者 個人
手取額
法人
手取額
合算
手取額
立場 報酬・
給与
立場 報酬・
給与
10,000 役員 10,000 なし 0 7,352 -1,388 5,964
10,000 役員 9,000 役員 1,000 7,536 -1,494 6,042
10,000 役員 9,000 従業員 1,000 7,694 -1,332 6,362
10,000 役員 8,000 役員 2,000 7,516 -1,596 5,920
10,000 役員 8,000 非常勤
役員
2,000 7,367 -1,284 6,083
10,000 役員 7,000 非常勤
役員
3,000 7,526 -1,152 6,374
10,000 役員 5,000 役員 5,000 7,782 -1,576 6,206
8,000 役員 8,000 なし 0 6,018 549 6,567
8,000 役員 7,000 役員 1,000 6,220 525 6,745
8,000 役員 7,000 従業員 1,000 6,378 653 7,031
8,000 役員 6,000 役員 2,000 6,291 537 6,828
8,000 役員 6,000 非常勤
役員
2,000 6,142 781 6,923
8,000 役員 5,000 非常勤
役員
3,000 6,230 911 7,141
8,000 役員 4,000 役員 4,000 6,276 523 6,799
6,000 役員 6,000 なし 0 4,677 2,354 7,031
6,000 役員 5,000 役員 1,000 4,810 2,357 7,167
6,000 役員 5,000 従業員 1,000 4,968 2,484 7,452
6,000 役員 4,000 役員 2,000 4,752 2,341 7,093
6,000 役員 4,000 非常勤
役員
2,000 4,603 2,586 7,189
6,000 役員 3,000 役員 3,000 4,744 2,327 7,071
4,000 役員 4,000 なし 0 3,196 4,134 7,330
4,000 役員 3,000 役員 1,000 3,271 4,122 7,393
4,000 役員 3,000 従業員 1,000 3,429 4,247 7,676
4,000 役員 2,500 役員 1,500 3,252 4,153 7,405
4,000 役員 2,500 非常勤
役員
1,500 3,087 4,331 7,418
4,000 役員 2,000 役員 2,000 3,228 4,134 7,362
2,000 役員 2,000 なし 0 1,672 5,910 7,582
2,000 役員 1,000 役員 1,000 1,684 5,902 7,586
2,000 役員 1,000 従業員 1,000 1,842 6,025 7,867

 

 同じ支払総額の中で、最も合算手取額が大きくなるパターンをハイライトしています。

 

 

8.所得1千万円における夫婦の役員報酬・給与のおすすめの支払いパターン

最後に、役員報酬・給与を計上する前の所得1千万円を前提として、夫婦の役員報酬・給与のおすすめの支払いパターンを解説します。

 

(1)個人と法人を一体に捉え、個人側の手取額が少なくてもいいと考える場合

個人と法人を一体のものと捉えて、個人側の手取額が少なくてもいいと考える場合には、個人と法人の手取額の合計が最大になる、次のパターンが最適です。

 

本人:役員報酬100万円

配偶者:従業員給与100万円

 

基本的に個人の所得税率・住民税率と法人税率を比較すると、法人に利益を残した方が手取額は多くなります

ただし、以下のような問題もあります。

 

<問題点>

✓個人側の手取額を少ないと生活費や遊行費等を賄えきれない可能性がある

✓将来、法人から個人に所得を移転する際に結局税金がかかる(資金貸付であれば税金はかからないが利息をとる必要がある)

✓役員報酬や給与が少ないと将来もらえる退職金も少なくなる可能性がある

✓法人に利益を残しすぎると将来的に相続・自社株の問題に発展する可能性がある

 

(2)法人側であえて赤字にしたい場合

法人側で最終的な利益が赤字になれば、法人税等が住民税の均等割分しか発生しないため、計算の手間がかかりません。また、黒字の法人に比べて、税務調査にあたる確率が少し下がるとも言われています。

 

そのため、法人側であえて赤字にしたいと考える場合には、役員報酬等を十分に払うことが必要です。

その中でなるべく手取額が大きくするには、次のパターンが最適です。

本人:役員報酬700万円

配偶者:非常勤で役員報酬300万円

 

ただし、非常勤役員の立場で役員報酬を300万円(月額25万円)も支払う場合には、社会保険上、勤務実態次第では社会保険料算定の対象とされる可能性もあります。また。税務上は過大役員報酬として報酬の一部が否認されることもあり得ます

そのため、上記のパターンとあまり手取額の異ならない、次のパターンも考えられます。

本人:役員報酬900万円

配偶者:従業員給与100万円

 

(3)おすすめのパターン

夫婦の役員報酬・給与については、次のような考えで決めることをおすすめします。

①配偶者の従業員給与は、100万円とし、所得税・住民税、社会保険の扶養メリットを享受する

②本人の役員報酬は、個人・法人の合計手取り額が最大になる100万円をスタート時点とする

③本人がもらいたい額とその場合の手取り額に与えるマイナスの影響を勘案して、本人の役員報酬を決定する

 

上記の考え方のもと、次のパターンをおすすめします。

本人:役員報酬300万円~500万円

配偶者:従業員給与100万円

 

 

9.その他の参考情報

夫婦での会社設立にあたっては、次の記事もご参考になさってください。

 

個人事業主との違いや選ぶべき会社形態はこちら:

【夫婦で会社設立①】個人事業主との違いや選ぶべき会社形態等を網羅的に解説!

 

配偶者(妻)は役員と従業員のどちらがいいかについてはこちら:

【夫婦で会社設立③】配偶者(妻)は役員と従業員のどちらがいいか詳しく解説!

 

通常の会社において、役員報酬をいくらにすべきかについてはこちら:

役員報酬はいくらに設定すべき?

 

 

10.まとめ

以上今回は、夫婦の役員報酬や給与をいくらに設定すれば最適なのか、所得1千万円を前提とした実際の数値によるシミュレーション結果と、おすすめの支払いパターンを解説させていただきました。

 

夫婦で会社を設立した場合、役員報酬や給与の設定によって、個人と法人の手取額が大きく変わってきます。

 

今回のシミュレーションの結果からは、配偶者を従業員として年収100万円に抑え、本人の役員報酬も必要最小限とすることで、所得税や社会保険料の負担を抑えつつ、手取額を最大化できるケースが多いことが分かりました。

 

ただし、個人側の手取額が少ないと生活費や遊行費等を賄えきれない可能性があることや将来の退職金への影響を鑑み、本人の役員報酬は300万円~500万円ほどがおすすめです。

 

最適な役員報酬・給与の設定は、家族の生活設計や法人の利益配分、将来的な退職金や相続など、複合的な観点から検討する必要があります。本記事のシミュレーションを参考にしつつ、自社にとって最も合理的な報酬設計を見つけていきましょう。