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不動産賃貸業は「空室・滞納・修繕・金利・災害」という5大リスクを常に抱えます。特に資金需要が大きく膨らむのが外壁・屋上防水・給排水等の大規模修繕工事です。
本記事では、不動産オーナーが“税負担をコントロールしつつ、修繕原資を計画的に確保する”ための切り札「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」の使い方を、税理士事務所の視点で解説します。
Table of Contents
1.経営セーフティー共済の概要
まずは制度の基本を確認します。経営セーフティ共済は不動産賃貸業でも活用が可能で、掛金の全額が損金・必要経費になることが最大の魅力です。
なお、経営セーフティ共済については、以下の記事もご参照ください。
加入資格などの詳細については、こちら:
返戻率などの詳細については、こちら:
(1) 経営セーフティ共済とは?
経営セーフティー共済は、中小企業基盤整備機構が運営する連鎖倒産防止と資金調達の安全網として昭和53年に創設された制度です。中小企業者・個人事業主が加入でき、毎月の掛金(5,000円~200,000円の範囲で5,000円単位、累計上限は800万円)を積み立てすることができます。
加入期間に応じて解約手当金を受け取ることができ、取引先倒産等の緊急時には所定の条件で貸付制度も利用可能です。
(2) 経営セーフティ共済のメリット
ここでは、経営セーフティー共済の主なメリットを5つ確認します。
①解約時に解約手当金を受け取れる
自己都合の解約でも、掛金を12カ月支払っていれば支払った掛金の8割以上、40か月(3年4か月)以上支払っていれば、支払った掛金と同額の解約手当金を受け取ることができます。
②掛金が経費にできる
支払った掛金は経費にすることができ、節税(課税の繰り延べ)につながります。また、掛金月額は5千円~20万円まで自由に選ぶことができ、1年以内の前納もできることから、期末に近い状況でも“着地税額”を最適化することができます。
③取引先が倒産した場合に借入れができる
取引先の倒産により売掛金等が回収困難になった場合、「積み立てた掛金の10 倍(限度額8,000万円)」と「回収困難となった売掛金等の額」とのいずれか少ない額を無担保、無保証で借りることができます。
ただし、借入額の10分の1が積み立てた掛金から控除される点には注意が必要です。(詳細は後述のデメリットを参照)
④取引先の倒産以外でも一時貸付金として借入れができる
臨時に事業資金が必要となった場合には、解約手当金95%を上限として、一時貸付金として借りることができます。
貸付期間は1年、一括償還、利率は0.9%(令和6年4月時点)で借りることができるため、資金繰りが一時的に苦しい場合で、契約を継続したいときには、活用することができます。
⑤解約手当金の用途は自由
経営セーフティ共済は積立型のため、自己都合で解約したとしても、解約手当金は自由に使うことができます。
例えば、不動産賃貸業を営んでいる場合には、修繕・空室対策・更新費用などの原資に柔軟に充てることができます。
(3) 経営セーフティー共済のデメリット
注意点も理解しておく必要があるため、ここでは、経営セーフティ共済の主なデメリットを4つ確認します。
①短期間で解約すると元本割れになる
加入後、短期間で解約すると解約手当金が元本割れとなるので、注意が必要です。
具体的には、加入後1年未満での解約の場合、解約手当金はゼロとなり、40か月(3年4か月)未満で解約の場合、解約手当金が100%を下回ります
②受け取った解約手当金は全額課税される
解約すると、解約手当金を一括で受け取ることとなり、その全額が収益として課税対象となります。解約手当金を受け取った年度は利益が増えてしまうため、解約のタイミングを誤ると大きな税負担が発生する可能性があります。
そのため解約する時期は、赤字決算が見込まれる年度や、大型の設備投資を行う年度など、他の経費と相殺できるタイミングにすることがお勧めです。
また、不動産オーナーなどの個人事業主の場合には、累進課税の影響にも注意が必要です。
③取引先倒産時の借入れは実質有利子となる
取引先が倒産等の場合には無担保、無保証で借りることができますが、借入額の10分の1が、積み立てた掛金から控除されます。
これが実質的な利子負担となるため、取引先倒産時の借入れを利用する場合には、注意が必要です。
④解約後に再加入制限がある
経営セーフティ共済は解約した後であっても再度加入することができますが、再加入時には、新規加入と同様の手続きが必要です。そのため、再加入時点において、税金を滞納している場合や事業実態が不明確な場合は加入が認められないことから注意が必要です。
また、令和6年(2024年)10月10月の制度改正により、令和6年10月1日以降に解約して再度加入する場合は、解約から2年経過するまでは損金・必要経費算入ができないという新たな制約も設けられています。
なお、税制改正の詳細については、以下の記事もご参考になさってください。
経営セーフティ共済の税制改正で解約後2年間は再加入しても経費にならない!
2.不動産賃貸業における経営セーフティ共済の活用方法
ここでは、不動産オーナー向けに“実務で使える”経営セーフティ共済の活用方法を確認します。
(1) 大規模修繕の原資づくり
外壁改修・屋上防水・配管更新などの大規模修繕は10~15年おきに数百万円~数千万円もかかってきます。
そこで、工事がない年に毎年掛金を拠出することで、毎年の税負担を抑え手取りを守りつつ、将来の修繕原資を積むことができます。
そして、工事がある年に解約手当金を受け取って、修繕費に資金を充てるとともに、解約手当金の収入を修繕費の経費と相殺することで、税負担を平準化することもできます。
<ポイント>
| ✓解約のタイミングは税額の試算を基に慎重に判断をする
✓修繕工事の「資本的支出 or 修繕費」の区分を事前に税理士に確認 |
(2) 期末の着地税額の最適化(前納・月額調整)
経営セーフティ共済の掛金を調整等することで、期末の着地税額を最適化することができます。
具体的には、期末の見込みで所得や税額が膨らむ場合には、掛金月額の引上げや前納で当期の税負担を圧縮し、所得や税額の見込みが低い場合には、無理な積み増しは避けるといった使い方をします。
<ポイント>
| ✓1年以内の前納は個人事業主でも法人でも経費にすることができる
✓銀行融資の返済や保険更新など、他の資金需要も加味して、掛金月額の引上げが可能かどうかを検討 |
(3) 空室・賃料下落期に一時貸付金を利用
退去集中やフリーレントの増加で一時的にキャッシュが不足する場面は珍しくはありません。このような時に条件に合致すれば一時貸付金制度で資金を確保し、解約を避けることで、積立を温存することもできます。
(4) 個人・法人の出口戦略
経営セーフティ共済の出口戦略は、個人と法人で描き方が次の通り、少し異なります。
| ✓個人(不動産オーナー)の出口戦略:
解約手当金は不動産所得の収入になるため、老朽化更新や売却前の改修に合わせると効果的 ✓法人の出口戦略: 解約手当金は特別利益等の収入になるため、老朽化更新や改修だけでなく、退職金に合わせることも効果的 |
3.経営セーフティ共済を活用する場合の注意点
経営セーフティ共済のデメリットも踏まえ、ここでは活用する場合の注意点を確認します。
(1) 「節税」ではなく“課税の繰り延べ”
経営セーフティ共済の掛金は当期の経費になりますが、解約手当金は将来の収入になることから、あくまで課税を繰り延べているに過ぎません。
黒字の年は積立、工事の年・赤字の年は解約といったように、山と谷を合わせることで税負担の平準化を狙うことになります。
(2) 元本割れ・解約制限
経営セーフティー共済を40か月未満で解約すると元本割れとなるため、すぐに解約することを想定している場合には、相性が良くありません。
そのため、40か月を超えて定期的に資金需要や大きな修繕費が発生する、不動産賃貸業で活用しやすい制度です。
(3) 貸付制度の位置づけ
経営セーフティ共済の貸付制度は種類により限度・利率等が異なるため、あくまで緊急時の補助的な役割と考えるほうが無難です。実際に貸付制度を利用している事業者もあまりいないのが現状です。
4.その他の修繕積立金を積み立てる方法
積立金を積み立てる方法として、「経営セーフティ共済」だけが正解ではありません。物件の築年・収益力・売却計画に応じて複数の方法を用意しておくことが重要です。
(1) 小規模企業共済(個人事業主の老後・退職金原資)
| ✓個人事業主向けの所得控除制度(上限月7万円)
✓主目的は退職金・廃業時の生活資金 ✓修繕原資としての機動性は限定的だが、長期の税負担軽減に寄与。 |
(2) 任意の別口座(定期/普通)の積立
| ✓シンプルで自由度が高い
✓積立時に経費にならないため、税効果はない ✓解約手当金の課税を避けたいケースや短期の資金需要が読めない時は有効 |
(3) 修繕積立ファンド/積立型保険の活用
| ✓利回りや解約控除、保険の経費性は要精査
✓解約が損益に与える影響を事前にシミュレーションすることが重要 |
5.まとめ
不動産賃貸業を営むオーナーにとって、空室や滞納、修繕、災害といったリスクは常に伴います。その中でも大規模修繕は数百万円から数千万円単位の出費となり、資金繰りや税負担に大きな影響を及ぼします。
こうした状況に備える有効な手段が「経営セーフティ共済」です。
本制度は掛金の全額が損金・必要経費として処理でき、節税効果を享受しながら計画的に修繕原資を積み立てられる点が最大の魅力です。さらに、解約手当金は自由に活用でき、空室対策や修繕費、資産の入れ替え資金として柔軟に対応することが可能です。
一方で、短期解約による元本割れや解約時の課税リスクといった注意点も存在します。
したがって、黒字・赤字のタイミングや大規模修繕の予定に合わせ、解約の時期を戦略的に選ぶことが重要です。
不動産オーナーが資産を守りながら安定した賃貸経営を続けるためには、税理士と連携し、長期的な資金計画と税務シミュレーションを行うことが不可欠です。特に解約や掛金調整の判断は専門的な知識が必要となるため、税理士に相談しながら導入や出口戦略を設計することで、安心して事業を継続することができます。
経営セーフティ共済を「将来の備え」として賢く活用し、賃貸経営のリスクヘッジと事業の安定を両立させていきましょう。
なお、「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループでは、不動産オーナーの経営セーフティ共済への加入を支援しておりますので、ご興味等ございましたら、お気軽にご連絡ください。