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相続税における「納税義務者の分類」と「課税対象」(制限納税義務者等)

相続税の納税義務者は4つに区分され、その区分ごとに課税される資産に違いがありあます。
今回は、「4つの納税義務者」について、その定義や課税対象、税額控除の適用有無などについて解説します。

なお、相続・事業承継コンサルティングについては、以下のサイトをご参照ください。
当事務所について – 保田会計事務所|税務・コンサル・会計・その他経営に関わる全てを総合的にサポート

 

相続税の4つの納税義務者(定義)

個人の相続税の納税義務者は、住所や国籍等で4種類に区分されます。
この区分によって相続税が課税される資産の範囲が異なります。

まずは、4つの納税義務者について、下表で確認します。なお、法人や人格のない社団等であっても、個人とみなされて相続税の納税義務者となる場合もあります。

区分 納税義務者の内容
居住無制限納税義務者 財産を取得したときに日本国内に住所がある人
非居住無制限納税義務者 財産を取得したときに日本国内に住所がない人で、下記のいずれかに該当する人
相続人が日本国籍あり:相続人と被相続人のどちらか一方が相続開始前10年以内に日本国内に住所がある人
相続人が日本国籍なし:被相続人が相続開始時に日本国内に住所がある人
制限納税義務者 下記のいずれかに該当する人
①財産を取得したときに日本国内に住所がある人で、居住無制限納税義務者でない人
②財産を取得したときに日本国内に住所がない人で、非居住無制限者納税義務者でない人
特定納税義務者

贈与により相続時精算課税の適用を受ける財産を取得した人(居住無制限納税義務者及び制限納税義務者を除く)

 

相続税法における住所とは

上記表に記載の通り、納税義務者の区分においては、日本国内に住所があるかどうかが重要なポイントです。
そこで、ここでは、相続税法における住所の考え方を確認します。

✓住所とは生活の本拠を言う

✓生活の本拠がどこにあるかについては、客観的事実によって判定する

✓日本国内において、同一人物の住所は一つのみ

つまり、相続税法においては、「客観的に生活の本拠として認められる場所」が住所となります。そのため、持ち家があったとしても、実際にそこに住んで生活をしていなければ、相続税法上の住所とは認められません。

なお、以下の者は日本に住所があるものとして扱われます。
①学術、技芸の習得のため留学している者で日本にいる者の扶養親族となっている者
②1年以内の海外出張者やその配偶者、生計一親族

 

納税義務者ごとの課税対象

納税義務者の区分によって相続税が課税される資産の範囲が異なります。ここでは、4つの納税義務者ごとの課税対象を下表で確認します。

納税義務の種類 課税対象
国内財産 国外財産 相続時精算課税適用財産
居住無制限納税義務者
非居住無制限納税義務者
制限納税義務者
特定制限納税義務者

 

居住無制限納税義務者居住無制限納税義務者は、「無制限納税義務者」という文字通りに、国内財産、国外財産、相続時精算課税適用財産のすべてが課税対象となります。

一方で、制限納税義務者については、国外財産が課税対象から外れ、課税対象となるのは国内財産、相続時精算課税適用財産のみとなります。

最後の特定納税義務者は、相続時精算課税適用財産のみが課税財産になります。

 

財産の所在

相続財産が国内財産になるか国外財産になるかについては、財産の種類に応じて、下表の通り判定します。

<財産の所在の判定表>

財産の種類 所在の判定
動産 その動産の所在による。
不動産又は不動産の上に存する権利
船舶又は航空機
その不動産の所在による。
船籍又は航空機の登録をした機関の所在による。
鉱業権、租鉱権、採石権 鉱区又は採石場の所在による。
漁業権又は入漁権 漁場に最も近い沿岸の属する市町村又はこれに相当する行政区画による。
預金、貯金、積金又は寄託金で次に掲げるもの
(1)銀行、無尽会社又は株式会社商工組合中央金庫に対する預金、貯金又は積金
(2)農業協同組合、農業協同組合連合会、水産業協同組合、信用協同組合、信用金庫又は労働金庫に対する預金、貯金又は積金
その受入れをした営業所又は事業所の所在による。
生命保険契約又は損害保険契約などの保険金 これらの契約を締結した保険会社の本店又は主たる事務所の所在による。
退職手当金等 退職手当金等を支払った者の住所又は本店若しくは主たる事務所の所在による。
貸付金債権 その債務者の住所又は本店若しくは主たる事務所の所在による。
社債、株式、法人に対する出資又は外国預託証券 その社債若しくは株式の発行法人、出資されている法人、又は外国預託証券に係る株式の発行法人の本店又は主たる事務所の所在による。
合同運用信託、投資信託及び外国投資信託、特定受益証券発行信託又は法人課税信託に関する権利 これらの信託の引受けをした営業所又は事業所の所在による。
特許権、実用新案権、意匠権、商標権等 その登録をした機関の所在による。
著作権、出版権、著作隣接権 これらの権利の目的物を発行する営業所または事業所の所在による。
上記財産以外の財産で、営業上または事業上の権利(売掛金等のほか営業権、電話加入権等) その営業所又は事業所の所在による。
国債、地方債 国債及び地方債は、法施行地(日本国内)に所在するものとする。外国又は外国の地方公共団体その他これに準ずるものの発行する公債は、その外国に所在するものとする。
その他の財産 その財産の権利者であった被相続人の住所による。

引用元:No.4138 相続人が外国に居住しているとき|国税庁 (nta.go.jp)

 

納税義務者ごとの税額控除等の適用

相続税の計算では、債務控除、配偶者の税額軽減(配偶者控除)、税額控除などの定めがありますが、納税義務者の種類によって適用の有無が異なる場合があります。

ここでは、納税義務者ごとの税額控除等の適用の有無を下表で確認します。

納税義務の種類 債務控除 配偶者控除 小規模宅地等の特例  未成年者控除 障害者控除 外国税額控除
居住無制限納税義務者
非居住無制限納税義務者
制限納税義務者 一部
特定制限納税義務者 一部

 小規模宅地等の特例は、制限納税義務者で日本国籍を有しない場合、適用できない場合があります。

各税額控除の概要や相続税の計算方法については、以下の記事をご参照ください。
相続税の計算方法をわかりやすく解説!(スケジュールや相続税がかかる遺産額も)

 

まとめ

以上、今回は「4つの納税義務者」について、その定義や課税対象、税額控除の適用有無などについて解説させていただきました。

相続税の納税義務者は、「居住無制限納税義務者」、「非住無制限納税義務者」、「制限納税義務者」、「特定納税義務者」の4つに区分され、区分ごとに課税対象が異なります。
納税義務者ごとの課税対象を検討する場合には、相続が発生した時の「住所」や「財産の所在」が国内か国外かどうかが、ポイントになります。

「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループでは、相続に力を入れておりますので、「納税義務者の課税対象」に関してお悩みの場合には、お気軽にご連絡ください。

なお、相続税が無税かどうか心配な方は、以下の「相続税の無税はいくらまで?」の記事もご覧ください。
相続税の無税はいくらまで?(相続税の早見表つき)