月次決算は、企業が経営状況を正確に把握し、戦略的な経営判断を下すための重要な業務です。
この作業には、収益や費用の適切な計上をはじめ、在庫や資金の管理、減価償却の処理など専門的な対応が求められます。
そのため、多くの企業が税理士の協力を得ることで、効率的かつ正確な進行を実現可能です。
本記事では、税理士に依頼する際のメリット、円滑に進めるポイント、信頼できる税理士事務所の選び方を詳しく解説します。
Table of Contents
月次決算を税理士に依頼するメリット
月次決算を税理士に依頼するメリットは、主に以下の2つが挙げられます。
・早く正確に節税対策できる
・経営業務に集中できる
上記2点は、企業にとって現預金の残高に直接的な影響を与えるため、以降で詳しく解説します。
早く正確に節税対策できる
税理士に月次決算を依頼すれば、迅速かつ正確な節税対策が可能です。税理士は税務に関する専門知識があり、最新の税制改正にも精通しています。そのため、自社で作業する場合よりも効率的に正確な申告や節税プランの策定が可能です。さらに、税理士の経験を活用することで、意図せず見落とされがちな節税の機会を逃すことがなくなります。
たとえば、中小企業の経営者が税理士に月次決算を依頼した場合、経費の適切な処理や最大限に控除を生かすアドバイスが受けられます。
また、事前に税負担の予測を立てられるため、資金繰りの計画が立てやすいこともメリットです。結果として、適切な節税対策によってキャッシュフローの改善にもつながるケースが多いといえます。
さらに、税理士は企業ごとの特性や業界ごとのルールを理解しているため、一般的な節税方法だけでなく、業界特化型の節税戦略も提案可能です。
たとえば、製造業においては減価償却資産の活用方法を見直し、飲食業では季節変動を考慮した収益予測に基づく節税案を提示するなど、個別対応が行われます。これにより、節税の精度が向上し、経営の安定性が高まります。
その他にも、税制改正に伴い適用される控除や減税措置を見落とさないだけでなく、これらを最大限に活用する方法を提案されることがあります。中小企業の場合、事業継続計画(BCP)に基づく税制優遇策を取り入れることで、災害対策費用の控除や減免措置を適用できる場合があります。こうした最新情報を常に把握する税理士の知識は、経営者にとって大きなメリットです。
経営業務に集中できる
月次決算を税理士に依頼すると、経営者は本来注力すべき業務に専念できます。経営者が月次決算業務に時間を割くと、本来の業務である事業計画の策定や新規事業の開拓に支障をきたす恐れは否定できません。税理士に依頼すれば、専門家が帳簿の記録や経費精算、税務処理を担うため、経営者は重要な意思決定に集中できます。
たとえば、製造業の中小企業経営者が月次決算を税理士に依頼した場合、売上分析や事業拡大の戦略立案に時間を割くことが可能です。
また、税理士のアドバイスを通じて、経営指標を正確に把握できるため、迅速な意思決定を行う助けにもなります。税理士に月次決算を依頼することで、経営者は重要な経営課題に集中でき、企業成長の基盤を築けます。
税理士に業務を依頼すれば、時間の余裕が生まれるだけでなく、心理的な負担も軽減されます。経営者が安心して経営業務に集中できる環境整備は、企業の生産性向上に役立ちます。
たとえば、経営者が税務や会計の煩雑さに気を取られず、従業員とのコミュニケーションや顧客対応に専念できる状況は、企業全体のモチベーションを高める効果も期待できます。
月次決算を税理士に依頼するデメリット
月次決算を税理士に依頼すれば、多くのメリットがある一方で、費用負担というデメリットがあります。企業の経営状態によるものの、顧問契約すれば費用は必ず発生するため、税理士報酬が経営コストに及ぼす影響を詳しく解説します。
費用が発生する
税理士に月次決算を依頼すれば、サービスの対価として費用が発生します。税理士の業務は高度な専門知識を必要とするため、一般的にその報酬は高額になる傾向です。特に月次決算を依頼する場合、作業量が毎月発生するため、年間を通じて一定のコスト負担が求められます。
また、会社の規模や業務内容によっても、必要な作業内容が異なるため、費用が増加する可能性があります。帳簿作成時に会計ソフトへ入力する仕訳数や取引金額など、報酬を決める基準は税理士事務所により異なりますが、いずれも多ければ多いほど費用は高くなる傾向です。
たとえば、年商1億円の中小企業が税理士に月次決算を依頼する場合、毎月の報酬として5万円から10万円程度が発生するケースがあります。年間で計算すると60万円から120万円のコストがかかる計算です。これは、特に創業間もない企業や資金繰りに余裕がない企業にとって、負担に感じられる可能性があります。
また、月次顧問料と決算料が分かれているケースもあるため、単純に月額報酬の12倍とはならないでしょう。
一方で、この費用負担を軽減するために、税理士との契約内容を見直す方法もあります。たとえば、月次決算の中でも重要な業務だけを依頼し、比較的簡易な業務は社内で処理するなどの選択肢があります。
また、オンライン会計サービスを活用することで、従来の税理士報酬を抑えながら、質の高いサービスを受けることが可能になる場合もあります。こうした工夫を取り入れることで、費用対効果は高まります。
月次決算の進め方
月次決算の進め方は、以下の流れになります。
- 請求書等の締切り及び経費精算
- 決算整理
- 月次資料の作成
上記の中でも、決算整理の作業には特にポイントとなる部分があるため、詳しく解説します。
請求書等の締切り及び経費精算
月次決算の第一歩は、請求書や経費精算の締切りを適切に行うことです。請求書や経費精算は、収益と支出を正確に把握する基礎となります。締切日を明確に設定すれば、効率的な決算処理が可能です。
また、締切が守られない場合、帳簿や決算に誤りが生じ、最終的な数値に影響を与えるリスクがあります。
たとえば、経費精算を怠った場合、未処理の費用が決算に反映されず、後で追加修正が必要になることがあります。これは余計な手間や時間を引き起こし、効率性を損なうことになりかねません。また、タイミングによっては決算日との兼ね合いから「期ズレ」の原因ともなるため、注意が必要です。適切な締切管理を徹底することで、正確な決算を実現できます。
決算整理
決算整理とは、企業が月次や年度末において、正確な財務状況を把握し、適切な経営判断を行うために行う重要な会計処理です。具体的には、収益や費用を適切に計上するために、帳簿上の取引内容を精査し、必要な調整を行います。この作業により、財務諸表の正確性が確保され、信頼性のある経営情報が得られます。
一般的に実施する決算整理は、以下の5つです。
- 現金・預貯金の残高確認
- 月末時の在庫確認
- 減価償却費や引当金などの計上
- 未払費用や前払費用の計上
- 仮払金や仮受金の整理
現金・預貯金の残高確認
現金や預貯金の残高確認は、正確な決算書を作成するための重要な段階です。帳簿残高と実際の残高を一致させることで、不正やミスを早期に発見し修正できます。これにより、信頼性の高い財務報告が可能です。
また、預金残高は金融機関発行の残高証明書で決算日の残高が確認できるため、確実かつ信ぴょう性が高い数字といえます。そのため、この数字が確定しなければ、他の勘定科目残高の整合性が証明できません。
たとえば、ある企業では銀行口座の手数料が記録されておらず、帳簿残高とのズレが生じていました。これを早期に修正することで、翌月の決算に影響を及ぼすことを防止できます。
月末時の在庫確認
在庫確認は、正確な利益計算を行うための重要な作業です。売上原価や利益率に直接影響を与えるだけではなく、税務調査でも不審な点がないかチェックされます。月末時点で在庫の不足や過剰を正確に把握し、必要な調整を行えば、効率的な経営が可能です。
たとえば、製造業で在庫確認を怠った結果、不良在庫が増加し、資金繰りに悪影響を及ぼしたケースがあります。これを防ぐためには、定期的な棚卸しが不可欠です。
在庫が確定しなければ、利益も確定しません。業種によって在庫評価に使用する計算方法も異なることから、自社にはどの計算方法が適切なのか、必ず確認をしておきましょう。
減価償却費や引当金などの計上
固定資産の減価償却費や引当金の計上は、企業の損益計算を左右する重要な処理です。これらの項目を正確に計上すれば、財務報告の信頼性が向上し、長期的な経営計画にも役立ちます。
また、減価償却費は決算時に作成するキャッシュフロー計算書において現金と同じ意味合いを持ちます。減価償却資産が多ければ、それだけ事業に必要な設備投資ができているとみなされ、企業にとってはプラスの評価です。
たとえば、大型機械の減価償却費を毎月計上すれば、設備の更新時期を予測し、適切な資金計画を立てられます。
また、金融機関から借入れをする場合でも、減価償却費を毎月計上しているか否かは評価のポイントになります。
未払費用や前払費用の計上
未払費用や前払費用の計上は、収益と費用を適切に一致させるために必要です。費用の計上タイミングを適切に管理することで、損益計算書が正確に作成され、経営判断の精度が向上します。
たとえば、当月使用している消耗品でも実際にお金が動くのは翌月以降といった場合に使用します。
また、前払費用は、5年分の保険料を一括で支払った場合、先に支払っている4年分の保険料に該当する現預金のことです。実際に支払っているため、現預金は減少し手元にはありません。この差額を正確に把握するために前払費用を活用します。
仮払金や仮受金の整理
仮払金や仮受金を適切に整理すれば、財務諸表の透明性を高めることが可能です。未整理の仮払金や仮受金は、財務状況の正確な把握を妨げる要因となります。整理を行うことで、経理作業が効率化されます。
ただし、決算期に仮払金や仮受金があると「使途がわからないもの」と認識される恐れもあるため、この勘定科目はできる限り使用せず、わからない内容はその場で解消するようにしましょう。
月次資料の作成
月次資料は、経営者が会社の現状を把握し、迅速な意思決定を行うために必要です。損益計算書や貸借対照表を含む月次資料を作成すれば、経営指標の可視化が可能となり、次月以降の計画策定にも役立ちます。
たとえば、月次資料を活用して収益性の低い商品を特定し、販売戦略を改善することで、業績を向上させた事例があります。
決算結果を待つことなく、月次決算を実施していれば問題点や課題などが早期に発見でき、すぐに解決策を講じることが可能です。市場動向の変化にも敏感に対応できるため、月次決算を実施し経営に役立つ資料を作成しましょう。
月次決算を税理士に依頼したい方は保田会計事務所がおすすめ
月次決算の依頼先には、保田会計事務所がおすすめです。保田会計事務所には、経験豊富な税理士が在籍し、企業の状況に応じた的確なアドバイスを提供しています。さらに、最新の会計システムを活用し、経理業務を効率化します。初めての月次決算でも安心して依頼できる、企業や経営者にとっての頼れるパートナーです。
また、近年では税理士が提供するサービスにデータ分析の要素が加わることも増えています。たとえば、企業の販売データを基に売上予測モデルを構築し、季節ごとの売上変動に応じた在庫管理や仕入れ計画を提案するケースがあります。このようなサービスを活用することで、月次決算の成果を経営戦略に直接結びつけることが可能です。
まとめ
月次決算は、企業が経営状況を把握し、成長基盤を築く重要な処理です。税理士の協力を得ることで、効率的で正確な処理が可能となり、経営者は戦略的な意思決定に集中できます。税理士からの迅速なアドバイスが受けられる環境整備が大切です。
費用負担はあるものの、専門的なサポートにより節税や資金繰りの改善が期待でき、企業が成長していくうえでの支援が得られます。信頼できるパートナーを選ぶことで、持続的な成長を実現できるでしょう。