個人事業主として事業を行う際に、税理士を雇うべきかどうかは多くの人が抱える悩みです。税務処理や確定申告は複雑であり、事業規模が拡大すると事務作業の負担が増加します。
一方で、会計ソフトの普及により、簡単に申告を行える環境が整いつつあります。とはいえ、税理士の専門知識やアドバイスは、節税効果や正確な税務処理をするうえで必要です。
本記事では、税理士を利用するメリット・デメリットや具体的な必要性について詳しく解説します。
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個人事業主に税理士が必要なケース
税理士の必要性は、個人事業主の事業規模や経営状況に応じて異なります。ここでは、以下の内容に沿って、税理士を依頼すべき具体的なケースを解説します。
- 年間の売上が1,000万円を超えたとき
- 新規で開業をするとき
- 本業に追われて経理業務を行う時間がないとき
(1)年間の売上が1,000万円を超えたとき
年間売上が1,000万円を超えたとき、消費税の申告が必要になるため税理士のサポートを受けることがおすすめです。売上規模が1,000万円を超えると、取引数の増加にともなう経費や仕訳の複雑化が予測され、帳簿作成の難易度が上がります。
帳簿作成は税務申告に直結するため、正確な処理が求められます。税理士に依頼すれば消費税申告の正確性を確保しつつ、税務調査時のリスク軽減が可能です。
税金の計算や申告を経営者に代わって行い、税理士なら節税のアドバイスも行えます。経費の見落としや仕訳の誤りを発見できるため、結果、余計な税金の納付から回避できます。
(2)新規で開業をするとき
新規開業時には、各種届出や青色申告の承認申請手続きが必要です。手続きを怠ると、控除が受けられないなどデメリットが生じます。
税理士に相談すれば、スムーズに書類の準備ができ、事業開始時から税制面で有利な環境整備が可能です。例えば、青色申告特別控除(最大65万円)を受けるための要件である複式簿記の対応も問題なく進められます。
初めて開業する場合、税務に関する不安を解消し、事業主にとって効率的なスタートを切るための心強いパートナーとなります。
(3)本業に追われて経理業務を行う時間がないとき
事業主自ら経理業務に多くの時間を割いてしまうと、事業の成長に悪影響を及ぼす可能性があります。帳簿付けや税務書類の作成は時間を要し、ミスが発生すると修正申告が必要です。
例えば、日々の業務が忙しく、帳簿付けや申告準備に手が回らない状況が挙げられます。業務が忙しく、帳簿付けや申告準備に手が回らない状況なら、税理士と契約すれば効率化が図れます。
税理士が記帳や書類作成を代行すれば、事業主は業務に専念でき、収益向上が期待できるでしょう。
個人事業主に税理士が不要なケース
前述では、個人事業主に税理士が必要なケースについて解説しましたが、それ以外の場合では税理士のサポートが不要となることもあります。
特に事業規模が小さい場合や、税務処理が比較的シンプルな事業形態の場合は、自分で対応する方が良い場合もあります。
(1)個人事業主に税理士が不要と言われる理由
税理士が不要とされる理由として、以下のポイントが挙げられます。
①会計ソフトにより簡単に確定申告ができるようになった
市販されている会計ソフトの種類が豊富になったことにより、専門的な知識がなくても簡単に帳簿作成や確定申告ができる環境が整備されました。
例えば、銀行からのデータをインターネット経由で自動読み込み可能な経理ソフトも多く、簿記の知識が特になくても、帳簿作成が可能です。
そのため、小規模事業者や取引数が少ない事業者であれば、事業主が自分で申告書作成ができるようになりました。
②税務処理に関する内容をネットで調べられるようになった
インターネットの活用で、申告に必要な情報を容易に入手できます。
国税庁のサイトで信頼できる情報が容易に収集できるため、税理士が提供するアドバイスの一部を確認できるようになりました。
例えば、確定申告書の記載方法や控除に関する情報は、国税庁の電子申告システム「e-Tax」を利用すれば、手順付きで案内されています。また、動画コンテンツでは、税理士や会計専門家が具体的な事例を交えて説明しており、初心者でも分かりやすい形式で情報収集が可能です。
さらに、税務調査対応に関する事例や注意点も簡単に調べることができ、税務署に問い合わせることなく対策を取れるケースも増えています。情報の即時性と正確性が高まった結果、個人事業主にとって税理士の依頼が必須でない場面が増えてきているといえます。
個人事業主が税理士に依頼するメリット
個人事業主が税理士に依頼して得られるメリットは、単に業務の効率化だけでなく、事業全体の質を向上させる手段でもあります。
ここでは以下の内容に沿って、個人事業主が税理士に依頼するメリットについて解説します。
- 確定申告や帳簿付けが正確にできる
- 経理業務の手間が省けて本業に集中できる
(1)確定申告や帳簿付けが正確にできる
税理士は、税務に精通したプロフェッショナルであり、確定申告や帳簿付けにおけるミスを防止できます。
税務申告を念頭に置いた帳簿作成が可能で、早期申告にも役立ち、納税資金の準備時間も確保できます。
税務署からの指摘や追徴課税のリスクを回避するためには、正確な申告が必要です。
(2)経理業務の手間が省けて本業に集中できる
経理業務を税理士に任せることで、時間と労力を大幅に削減できます。その分、営業活動や商品開発といった業務に集中でき、事業の成長に役立ちます。
経理業務は、事業を営む方にとって重要な業務ではありますが、売上には直結しません。投下した時間が、場合によっては機会損失につながることもあります。
(3)節税対策のアドバイスがもらえる
税理士は、最新の税制に基づいて適切な節税方法を提案します。節税対策により、余計な税金を納めずに済み、資金を効果的に活用できるようになります。
節税方法は、単に経費を増やす方法だけではないため、最も効果の高い方法を採用することが必要です。
個人事業主が税理士に依頼するデメリット
税理士のサポートには多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。以下の内容に沿って、個人事業主が税理士に依頼するデメリットの具体例を挙げて解説します。
- 税理士に依頼する分の費用がかかる
- 依頼料が安い税理士は全ての経理業務を任せられない
(1)税理士に依頼する分の費用がかかる
税理士に業務を依頼する場合、顧問契約やスポット契約に応じた料金が発生します。
例えば、顧問契約では月額2~3万円、確定申告時には別途数万円が必要になることが一般的です。
特に事業規模が小さい場合は、税理士費用が経営を圧迫する可能性があるため、費用対効果を十分に検討する必要があります。
(2)依頼料が安い税理士は全ての経理業務を任せられない
安価な料金でサービスを提供する税理士事務所では、対応範囲が限られる場合があります。
例えば、会計ソフトのデータ入力のみや、簡易的な税務相談にとどまることもあります。
事業主が求める範囲やサービス内容を事前に確認しないと、思わぬ追加費用が発生する場合もあるため注意が必要です。
個人事業主が依頼したときに税理士が対応する業務内容
税理士が提供するサービスの種類は多くあります。
下記内容に沿って、主な業務内容を具体的に紹介します。
- 記帳代行
- 税務書類作成
- 税務代理
- 税務相談
(1)記帳代行
記帳代行とは、領収書や請求書などをもとに、税理士事務所が事業主に代わって帳簿を作成するサービスです。
記帳は経理業務の基本ですが、正確性を担保しつつ限られた時間で作業しなければならないため、専門家に依頼することでミス防止につながり、作業負担を軽減できます。
税理士による記帳代行では、財務データをもとにした経営分析や改善提案も受けられる場合があります。個人事業主では、経営状況の把握や事業計画の見直しに役立つサービスです。
(2)税務書類作成
税務署や市役所に提出する税務書類(確定申告書、消費税申告書など)の作成も、税理士が代行します。税理士に依頼して法律や規定に則った正確な書類を作成することで、申告漏れや記入ミスを防ぐことが可能です。
また、e-Taxによる電子申告を代理で行うことも可能です。電子証明書の取得が不要となるため、手続きの手間を減らせます。これにより、デジタル化された税務対応にも柔軟に対応することができるのです。
(3)税務代理
税務代理とは、税務署への申告や手続きを事業主に代わって行う業務です。
また、税務調査が行われる際に、税理士が立ち会って事業主の代弁ができるため、税務署との交渉を円滑に進める役割を果たします。
一般的に納税者は、税金のプロである税務職員と対等に渡り合うのは困難です。自分の意見をうまく伝えるためにも、税理士に依頼する方が良いでしょう。
税理士は税務調査での資料準備や対応アドバイスも提供します。これにより、不意の調査に対する不安を軽減し、スムーズな手続きが可能となります。
(4)税務相談
税務に関する質問や節税のアドバイスなど、事業運営に役立つ相談が可能です。
例えば、どの経費が税控除の対象になるか、どのタイミングで設備投資を行うべきかなど、税務全般に関する疑問を解消できます。
税務に関する相談は、税理士にしかできないため、何かあった場合の相談先としてチェックしておきましょう。
さらに、相続税や贈与税に関する長期的な節税対策の提案や、将来的な法人化のタイミングを含めた経営プランの相談も受けられます。
個人事業主が全ての経理業務を税理士に依頼したときの費用相場
個人事業主が経理業務全般を税理士に依頼する場合の費用相場は、年間30万~60万円程度が目安とされています。
実際に依頼できる業務の種類には、記帳代行、確定申告書作成、節税対策などが含まれていることが一般的です。加えて、特殊な業務が含まれる場合には、さらに費用が増加する傾向があります。
事業規模が大きいほど、帳簿処理の複雑さや取引数の多さにより、依頼コストが高くなることが一般的です。また、初めて税理士に依頼する場合には、事業内容を把握してもらうための初期費用が発生することもあります。
スポット契約では1回限りのサポートで数万円程度となり、顧問契約より費用を抑えられるケースもあります。例えば、確定申告のみの依頼であれば、10万~30万円程度が一般的な相場です。
一方で、顧問契約を結ぶ場合は、月額契約として毎月の記帳業務や税務相談が含まれるため、長期的なサポートが必要な場合には費用対効果が高くなることがあります。顧問契約の月額費用は2万円~5万円が相場ですが、年次決算や税務調査対応が発生した際には別途料金が加算されることもあります。
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まとめ
個人事業主が税理士を利用するかどうかは、事業規模や状況によって異なります。税理士の活用は、経理業務の負担を軽減し、正確な税務処理や節税を可能にします。
一方で、費用面の負担は避けられないため、自身の事業に適したサービス内容を検討することが重要です。税理士を活用すれば、効率的な事業運営が可能となり、長期的な成長が期待できます。