夫婦や親子など、2人以上で資金を出し合って住宅を取得することを検討する場合、持分割合はどのように決まるのか、共有名義不動産のメリット・デメリットは何か等が重要な検討ポイントとなります。
そこで今回は、住宅取得時における持分割合や、共有名義で住宅を購入した場合のメリット・デメリット等について、具体例を用いて分かりやすく解説します。
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持分割合の基礎知識
まずは、持分割合の基礎知識を確認します。
(1)持分割合とは各共有者の所有権の割合
持分割合とは、共有者が持つ所有権の割合のことを言います。
1人で購入した不動産は単独名義となり、購入した人が100%の所有権を持ちます。
一方で、複数人で購入した不動産は「共有不動産」となり、各共有者が不動産に対して所有権(持分)を持つことになります。
(2)持分割合は「支払額」に応じて決める
「共有不動産」の登記申請では、持分割合を登録しなくてはなりません。
この持分割合は原則として、次の算定式の通り、各人が住宅購入に関して支払った金額(住宅ローンを含める)に応じて決める必要があります。
持分割合 = 名人の支払った額(住宅ローン含む) ÷ 住宅購入代金 |
なお、これを無視して持分割合を自由に決めると、贈与とみなされる可能性があることから注意が必要です。
持分割合の具体例
ここでは、住宅取得時における持分割合について、具体例を3つ用いて確認します。
(1)持分割合の具体例①
例えば、5,000 万円の物件(土地3,000 万円、建物2,000 万円)について、夫婦の支払額が、それぞれ2,500 万円(住宅ローン)ずつだったケースの持分割合を確認します。
このケースにおける夫婦の持分割合は、次のように算定できます。
夫の持分割合:2,500 万円 ÷ 5,000万円 = 50%
妻の持分割合:2,500 万円 ÷ 5,000万円 = 50% |
この割合は、夫婦ともに同じぐらいの貯蓄または収入があり、2 人とも今後も働き続けることを想定している場合に、よく設定されます。
(2)持分割合の具体例②
例えば、5,000 万円の物件(土地3,000 万円、建物2,000 万円)について、夫婦の支払額が、夫は頭金1,000万円+2,000万円(住宅ローン)、妻は2,000万円(住宅ローン)だったケースの持分割合を確認します。
このケースにおける夫婦の持分割合は、次のように算定できます。
夫の持分割合:3,000 万円 ÷ 5,000万円 = 60%
妻の持分割合:2,000 万円 ÷ 5,000万円 = 40% |
持分割合は、頭金や住宅ローンの区別をせずに負担する金額で決めるところがポイントです。
(3)持分割合の具体例③
最後に妻が親から土地の贈与を受け、その土地に建物を建築した場合の事例を確認します。
例えば、妻が親から土地3,000 万円の贈与を受け、その土地に2,000 万円の建物を建築し、夫婦の建築費用の支払額が、夫婦で1,000万円(住宅ローン)ずつだったケースの持分割合を確認します。
このケースにおける夫婦の持分割合は、次のように算定できます。
夫の建物の持分割合:1,000 万円 ÷ 2,000万円 = 50%
妻の建物の持分割合:1,000 万円 ÷ 2,000万円 = 50% 妻の土地の持分割合:100% |
このように、贈与を受けた妻だけが土地の所有者となり、同額を出し合って(住宅ローン含む)購入した建物の持分は2分の1ずつとなります。
共有で住宅を購入する場合のメリット
ここでは、共有名義で住宅を購入する場合のメリットについて確認します。
(1)購入できる住宅の選択肢が増える
2人以上の共有名義で住宅を購入する場合には、それぞれが資金を拠出することから、1人で購入する場合に比べて、購入できる住宅の選択肢が増えます。
また、共有名義で住宅を購入する場合には、住宅ローンにペアローンや収入合算(連帯債務型)を利用することができ、これらを利用することで、住宅ローンで借りられる金額が大きくなることから、購入できる住宅の選択肢がさらに増えることとなります。
結果、1人では手の届かなかった物件でも購入しやすくなる傾向があります。
ペアローンや収入合算(連帯債務型)については、以下の記事もご参照ください。
ペアローンについてはこちら:
【住宅ローン控除③】ペアローンの住宅ローンを詳しく解説!!(収入合算との違いも)
収入合算(連帯債務型)についてはこちら:
【住宅ローン控除②】連帯債務型と連帯保証型の住宅ローンを詳しく解説!!(持分割合や贈与についても)
(2)共有者それぞれが住宅ローン控除の適用を受けられる
共働きの夫婦など収入のある2人が住宅ローンを利用して住宅を購入し、一定の要件を満たした場合には、それぞれ2人が住宅ローン控除の適用を受けることができます。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は住宅ローンの年末残高の0.7%が所得税(引ききれない場合は住民税からも)から13年間も控除されるという制度です。
住宅ローン控除の詳細は以下の記事をご確認ください。
【住宅ローン控除①】制度概要や要件、最大控除額、申告手続、留意点などを網羅的に解説!
(3)共有者それぞれが売却時の特別控除の適用を受けられる
住宅売却時に利益が出た場合には、その利益に対して税金(所有期間5年超:所得税15%・住民税5%、所有期間5年以下:所得税30%・住民税9%)がかかります。
ただし、一定の要件を満たした居住用の住宅を売却する場合には、利益から3,000万円の特別控除をすることができます。
この特別控除は所有者それぞれに適用されるため、共有者2人で適用を受けられる場合には、利益が6,000万円(=3,000万円×2人)までは売却に伴う税金が発生しないこととなります。
共有で住宅を購入する場合のデメリット
ここでは、共有名義で住宅を購入する場合のデメリットについて確認します。
(1)売却するには共有者全員の承諾が必要になる
共有不動産を売却するためには、持分割合の大きさにかかわらず共有者全員の同意が必要となります。
そのため、共有者の1人が不動産を売却したいと思っても、他の共有者のうち誰か1人でも同意しなかった場合には、不動産を売却することができません。
その場合には、同意しない共有者の持ち分をいったん買い取ってから、まとめて売却するなどの対応が必要となります。
共有者が近しい間柄であれば交渉もしやすいですが、相続などで共有者が多く、疎遠の人がいる場合には、交渉が難しくなる可能性があります。
例えば、もとは夫婦2人の共有不動産であっても、夫が死亡し、妻と子供A・Bが相続し、その後さらにAが死亡し、その妻Cとその子供D・Eが相続した場合には、共有者が5人(妻、子供B、子供Aの妻C・孫D・E)にもなります。
(2)住宅購入時の諸費用が増えることがある
例えば、共有者2人がそれぞれ住宅ローンを利用するペアローンの場合等には、住宅ローンが2本立てとなることから、事務手数料や契約書印紙代、登記免許税などの諸費用も2倍に増えるため、注意が必要です。
(3)離婚時の対応が複雑になる
夫婦共有名義、特に夫婦ともに住宅ローンを利用している場合には、離婚に伴う住宅の処理は複雑になります。
住宅と住宅ローンに関して、離婚時に考えなければならないポイントは次の3点です。
✓住宅ローンの返済を誰が行うか?
✓不動産登記上の住宅の名義をどうするか? ✓その住宅に住み続けるのは誰か? |
夫婦でペアローンを利用して物件を共有している場合、上記の対応方法としては、下記の方法が考えられます。
対応方法①:2人ともそのまま住宅ローンを返済し続ける
この対応方法には、次のような問題があります。
・完済まで返済を続けられるのか不確定要素が大きい ・家を離れる人にとって、転居先の家賃と住宅ローン返済が共に必要となり負担が大きい ・住宅ローンを完済しても、2人とも不動産登記上の名義は残ったままになる |
対応方法②:家を離れる人が自分の住宅ローンのみを一括返済する
この対応方法には、次のような問題があります。
・一括で返済するための自己資金を準備しなければならない ・仮に親族などが完済のための資金を提供してくれたとしても、贈与税の対象となる可能性がある ・住宅ローンを完済しても、2人とも不動産登記上の名義は残ったままになる |
対応方法③:住宅を売却して2つの住宅ローンを完済する(不動産登記上の名義も残らない)
この対応方法には、次のような問題があります。
・売却に向けて共有者で合意しなければならず、夫婦どちらかがその住宅に住み続けることを希望する場合には難しい ・売却できたとしても、売却価格が低い場合には、住宅ローンを完済できないケースがある |
まとめ
以上今回は、住宅取得時における持分割合や、共有名義で住宅を購入した場合のメリット・デメリット等について、具体例を用いて分かりやすく解説いたしました。
持分割合とは、共有者が持つ所有権の割合のことを言います。複数人で購入した不動産は「共有不動産」となり、各共有者が不動産購入に対して所有権(持分)を持つことになります。
この持分の割合は原則として、各人が住宅購入に関して支払った金額に応じて決める必要があります。
共有で住宅を購入する場合には、「購入できる住宅の選択肢が増える」、「共有者それぞれが住宅ローン控除の適用を受けられる」と言ったメリットがあります。
一方で、共有名義で住宅を購入する場合にはデメリットもあることから注意が必要です。
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