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【会社設立後の提出書類⑬】雇用保険の基本と雇用保険適用事業所設置届の書き方(記入例あり)

会社を新たに設立し、従業員に給与を支払うこととなった場合には、労働基準監督署やハローワークに対して、提出しなければならない届出や申告書等がいくつかあります。

それらの中で、ハローワークに提出が必要な届出として「雇用保険適用事業所設置届」があります。

そこで今回は、雇用保険の基本を確認した上で、「雇用保険適用事業所設置届」について、その「概要」や「書き方」、「添付書類」などを解説します。

 

雇用保険の基本

ここでは、「雇用保険の概要」や「被保険者」、「加入条件」について、確認します。

(1)雇用保険の概要

雇用保険とは、労働保険の1つである、労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進のための強制保険制度です。

雇用保険では、労働者の失業の予防、雇用機会の増大を目的とした「雇用安定事業」と、労働者の能力開発等を目的とした「能力開発事業」を「雇用保険二事業」とし、失業等給付金、介護休業手当、育児休業手当、職業訓練等に関する給付金などの給付を行っています。

雇用保険の保険料は、労働者と事業主の双方が負担します。

 

(2)雇用保険の被保険者

雇用保険の被保険者は、会社の代表者以外の者で、適用事業所に雇用される一定の加入条件を満たした労働者です。

雇用保険の被保険者の種類は、下表の4種類があります。

類型 詳細
一般被保険者 高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、
日雇労働被保険者の3類型に該当しない正社員・パート・アルバイトの労働者
高年齢被保険者 65歳以上の高齢労働者
※ 継続雇用の有無にかかわらず、加入条件が満たされていれば、新規雇用保険も可
短期雇用特例被保険者 期間を限定して雇用され、雇用契約が4カ月を超え1年未満かつ週所定労働時間が30時間以上の労働者
日雇労働被保険者 日雇いで雇用される労働者や30日以内の期間を定めて雇用される労働者

 

(2)雇用保険の加入条件

雇用保険は次の3つの加入条件を満たした場合、事業主・労働者の意思に関係なく、また、正社員や契約社員、パート・アルバイトなど雇用形態に限らず、すべての労働者が雇用保険の加入対象者となります。

✓31日間以上働く見込みがあること

✓所定労働時間が週20時間以上であること

✓学生ではないこと(例外あり)

 

例えば、次の場合には、雇用契約期間が31日未満であっても、原則として、31日以上の雇用が見込まれるものとして、雇用保険の被保険者となります。

✓雇用契約に更新する場合がある旨の規定があり、31日未満での雇い止めの明示がないとき

✓雇用契約に更新規定はないが、同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績があるとき

 

 

労働保険加入手続きの全体の流れ

一般的な業種である一元適用事業では、雇用保険は労災保険の保険料とまとめて徴収等が行われます。ここでは、一元適用事業を前提に労働保険全体の加入手続きの全体の流れを確認します。

なお、二元適用事業(その事業の実態からして、労災保険と雇用保険の適用の仕方を区別する必要があるため、保険料の申告・納付等をそれぞれ別個に二元的に行う事業で、農林漁業・建設業等が該当)は、労働保険加入手続きの流れが異なることから、詳細は以下の記事をご参照ください。
労働保険に関するよくある質問(「一元適用事業と二元適用事業とは?」など)

 

 

STEP1:各種様式の入手

各種様式を次の方法で入手します。

①労働保険の保険関係成立届:最寄りの労働局、労働基準監督署、ハローワーク(公共職業安定所)のいずれかから入手できます。直接取りに行ってもいいですが、ハローワーク(に電話で「初めて雇用をする」ことを伝えると資料一式を郵送してもらえます。

②労働保険概算保険料申告書:同上

③労働保険の保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書:以下の厚生労働省のサイトから入手できます。
口座振替の申込について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

④雇用保険適用事務所設置届:以下のハローワークインターネットサービスのサイトから入手できます。
雇用保険適用事業所設置届

⑤雇用保険被保険者資格取得届:以下のハローワークインターネットサービスのサイトから入手できます。
雇用保険被保険者資格取得届

 

STEP2:各種様式の記入

各種様式に記入を行います。④の書き方は、後述しますが、①②③⑤の書き方は、以下の記事をご参照ください。

①労働保険の保険関係成立届はこちら:
【会社設立後の提出書類⑩】労働保険の基本と保険関係成立届の書き方(記入例あり)

②労働保険概算保険料申告書はこちら:
【会社設立後の提出書類⑪】労働保険の概算保険料申告書の概要と書き方(記入例つき)

③労働保険の保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書はこちら:
【会社設立後の提出書類⑫】労働保険の口座振替依頼書の概要と書き方(記入例あり)

⑤雇用保険被保険者資格取得届はこちら:
【会社設立後の提出書類⑭】雇用保険被保険者資格取得届の概要と書き方(記入例あり)

 

STEP3:「労働保険の保険関係成立届」の提出

事業所が保険の適用対象となる従業員を1人でも雇用した場合には、両者の間で保険関係が成立した日の翌日から起算して、10日以内に所轄の労働基準監督署へ「保険関係成立届」を提出する必要があります。

この届出書は紙の場合、複写式の3枚綴りとなっており、所轄の労働基準監督署へと提出すると、「労働保険番号」と事業所控えが返却されます。

 

STEP4:「労働保険概算保険料申告書」の提出

保険関係の成立した日から50日以内に、当該年度分の概算の労働保険料を計算して、所轄の労働基準監督署、または所轄の都道府県労働局、金融機関(日本国内の銀行、信用金庫、郵便局など)のいずれかへ「労働保険概算保険料申告書」を提出する必要があります。

この申告書は紙の場合、複写式となっており、上部は申告書部分で2枚綴り、下部は納付者部分で3枚綴りとなっています。

「労働保険概算保険料申告書」を所轄の労働基準監督署、または所轄の都道府県労働局に提出すると、納付書部分と事業所控えが返却されます。

なお、STEP3の「保険関係成立届」と「労働保険概算保険料申告書」を併せて、所轄の労働基準監督署へ提出する方法が、納付書のチェックもしてもらえ、郵送回数も少なくなることから、お勧めの方法です。

 

STEP5:概算保険料の納付

申告書の提出と同時に保険料(労働関係成立時から3月までの分)の納付が必要となります。
所轄の労働基準監督署、または所轄の都道府県労働局から返却された納付書をもって、金融機関の窓口で納付ができます。

なお、STEP4で労働保険概算保険料申告書を金融機関に提出する場合には、提出と同時に納付を行うこととなります。

 

STEP6:「労働保険の保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書」の提出

口座振替を希望する場合には、「労働保険の保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書」を口座開設している金融機関の窓口に提出します。

なお、STEP5の納付と併せて手続きをすること効率的に手続きを進めることができます。

 

STEP7:「雇用保険適用事業所設置届」及び「雇用保険被保険者資格取得届」の提出

STEP3で、労働基準監督署から「労働保険番号」を受け取った後に所轄の公共職業安定所(ハローワーク)へ「雇用保険適用事業所設置届」及び「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する必要があります。

「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」は、「保険関係成立届」と同じように事業所を設置した日の翌日から起算して10日以内という提出期限がありますが、「労働保険番号」を受けた後に提出することが必要なため、実務においては10日を過ぎることもあります。

とは言え、なるべく早くに提出ができるよう、準備を事前に進めておくことが重要です。

 

 

雇用保険適用事業所設置届とは?

事業主は労働者を1人でも雇用した場合、強制的に雇用保険に加入する義務が生じます。そして、雇用保険に加入する義務が生じて雇用保険適用事業所となった場合には、その旨をハローワークへ届出をする必要があります。

この雇用保険適用事業所となった場合にハローワークへ届出するための書類が「雇用保険適用事業所設置届」になります。

 

 

雇用保険適用事業所設置届の書き方・添付書類

ここでは、所轄のハローワークへ提出する「雇用保険適用事業所設置届」の書き方や添付書類等を確認します。

(1)「雇用保険適用事業所設置届」の記載イメージ

所轄のハローワークに提出する「雇用保険適用事業所設置届」の記載イメージは以下の通りです。

<表面>

<裏面>

 

(2)「雇用保険適用事業所設置届」の記載ポイント

所轄のハローワークに提出する「雇用保険適用事業所設置届」の記載ポイントは以下の通りです。

申請先:

所轄のハローワーク(公共職業安定所)の名前を記入します。

 

年月日:

届出日を記入します。

 

1.法人番号:

法人番号(13桁)を記入します。法人番号は国税庁の以下のサイトで調べることができます。
国税庁法人番号公表サイト (nta.go.jp)

なお、個人事業主の場合は記入不要です。

 

2.事業所の名称(カタカナ):

事業所の名称をカタカナと「-」の記号のみで記入します。また、数字は使用せず、カタカナの濁点及び半濁点は、1文字として取り扱います。

 

3.事業所の名称(漢字):

事業所の名称を漢字、カタカナ、ひらがな、英数字で記入します。
会社の場合は、会社名の正式名称(株式会社であれば、「株式会社」をつける)を記入し、個人事業主の場合は屋号のほか事業主の氏名を記入します。

 

4.郵便番号:

郵便番号を記入します。

 

5.事業所の所在地(漢字):

事業所の所在地を漢字、カタカナ、ひらがな、英数字で記入します。
具体的には、1行目に特別区名、市名、郡名、町村名を記入し、2行目に丁目、番地を記入し、3行目は該当がある場合に、ビル名、マンション名等を記入します。

 1行目に都道府県名を記入しないように注意が必要です。

 

6.事業所の電話番号:

電話番号を記入します。

 

7.設置年月日:

雇用保険の適用事業になった年月日(原則は労働者を初めて雇い入れた日)を記入します。

なお、元号はコード番号で記入し、年・月・日が1桁の場合はそれぞれ10の位の部分に「0」を付加して2桁で記入します。
Ex) 令和5年4月10日 → 5-050410

 

8.労働保険番号:

労働保険の保険関係成立届を労働基準監督署へ提出した時の事業主控えに記載されている労働保険番号を記入します。
この欄を記載するためにも、先に労働基準監督署へ保険関係成立届を提出する必要があります。

 

9.設置区分、10.事業所区分、11.産業分類、12.台帳保存区分

ハローワーク記載欄のため、記入不要です。

 

13.事業主

事業所の住所、事業所の名称、事業主の氏名を記入します。法人の場合、事業主の氏名には、役職(代表取締役など)も記入します。

 

14,事業の概要:

事業の概要には、製造工程や作業内容、製品名や商品名などの事業の内容が具体的に分かるように記入します。

記入例は次の通りです。

食料品・日用品等の販売、生活雑貨・文房具の販売、
金属部品・製品の加工業、WEBサイトの受注制作 など

 

15.事業の開始年月日:

事業の開始年月日を記入します。なお、法人の場合は原則として設立年月日になります。

 

16.事業の廃止年月日:

記入不要です。

 

17.常時使用労働者数:

年度の1日の平均従業員数(=「年間延労働者数」÷「年間の所定労働日数」)の見込みを記入します。

 

18.雇用保険被保険者数:

「一般」には雇用保険被保険者のうち一般被保険者数、高年齢被保険者数及び短期雇用特例被保険者数の合計数を記入し、「日雇」には日雇労働被保険者数を記入します。

 

19.賃金支払関係:

賃金の締切日と賃金の支払日を記入します。

 

20.雇用保険担当課名:

雇用保険の担当課がある場合には、該当の課を記入します。組織として担当課がない場合には、空白とするか、「総務」等を記入しておきます。

 

21.社会保険加入状況:

健康保険、厚生年金、労災保険のうち、加入している保険に〇を付けます。一般的には、3つともに〇が付きます。

 

22.登録印(裏面):

各欄に以下の登録印を押印します。

✓事業所印影:

会社の場合、社印(角印)を押印し、社印がない場合には、事業主印影と同じ代表者印(丸印)を押印します。
なお、個人事業の場合には、事業所印がない場合には、押印をしなくても問題ありません。

✓事業主印影:

会社の場合、実印である代表者印(丸印)を押印します。
なお、個人事業の場合には、事業主の個人の実印を押印します。

 

23.最寄りの駅又はバス停から事業所への道順(裏面):

最寄りの駅又はバス停から事業所への道順を略図で記入します。
実務上は、地図のコピーに事業所の場所を明示する形で対応することが多いです。

 

(3)「雇用保険適用事業所設置届」の添付書類

所轄のハローワークに提出する「雇用保険適用事業所設置届」の添付書類は次の通りです。

✓労働保険の保険関係成立届の事業主控(労働基準監督署受理済みのもの)

✓登記事項証明書(交付日から3か月以内の履歴事項全部証明書)

→ 事業所の所在地が登記されたものと異なる場合には、事業所の所在地が明記されている書類(公共料金の請求書、賃貸借契約書等)が必要となります。

✓労働者名簿

✓賃金台帳(雇入れから届出時まで)

✓出勤簿又はタイムカード(雇入れから現在まで)

✓雇用契約書(有期契約労働者の場合のみ)

 

 

会社設立後に必要となるその他の手続き

会社設立後に必要となる税務関係手続や社会保険関係手続については、以下の記事をご参照ください。
会社設立後の税務関係手続・社会保険関係手続

また、健康保険・厚生年金保険の新規適用届については、以下の記事をご参照ください。
【会社設立後の提出書類⑥】健康保険・厚生年金保険の基本と新規適用届の書き方(記入例あり)

 

 

まとめ

以上今回は、雇用保険の基本を確認した上で、「雇用保険適用事業所設置届」について、その「概要」や「書き方」、「添付書類」などを解説いたしました。

事業主は労働者を1人でも雇用した場合、強制的に雇用保険に加入する義務が生じます。そして、雇用保険に加入する義務が生じて雇用保険適用事業所となった場合には、その旨をハローワークへ届出をする必要があります。

この雇用保険適用事業所となった場合にハローワークへ届出するための書類が「雇用保険適用事業所設置届」になります。

会社設立時や従業員の雇用時には、「雇用保険適用事業所設置届」以外にも様々な書類を複数の役所へ提出する必要があり、それらの提出漏れを防ぐためにも専門家にご依頼させることをお勧めします。

 

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