連帯債務型は、住宅ローン控除を両者で受けられるメリットがあることについては、以下の記事で取り上げましたが、実は連帯債務型を取扱っている民間の金融機関は、あまり多くありません。
【住宅ローン控除②】連帯債務型と連帯保証型の住宅ローンを詳しく解説!!(持分割合や贈与についても)
ただし、独立行政法人である住宅金融支援機構の住宅ローン「フラット35」は、連帯債務型で契約を申し込むことができ、かつ、多くの民間の金融機関が提携先商品として取り扱っています。
そこで今回は、このフラット35について、「その概要」や「特徴・要件」、「メリット・デメリット」、「向いている人」などを解説します。
Table of Contents
フラット35とは?
まずは、フラット35の概要と特徴を確認します。
(1)フラット35の概要
フラット35は、勤務形態や職業、勤続年数などに制限が少なく、より幅広い人が利用できる、住宅購入者や新築する人向けの住宅ローンです。
また、他の金融機関で借りた住宅ローンの借り換えや、一部のリフォーム、増改築を行う人も利用することができます。
フラット35では、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して融資を行います。母体となる住宅金融支援機構は、国土交通省と財務省が所管していた住宅金融公庫の業務を引き継いだ、独立行政法人になります。
この住宅金融支援機構では、質の高い住宅の取得を支援するメニューや、地方公共団体と連携したメニューなど、多彩なメニューをそろえて住まいづくりを支援しています。
(2)フラット35の特徴
フラット35は、民間の金融機関が行う住宅ローンに比べると、勤務形態や職業、勤続年数などに制限が少なく、幅広い人が利用できる住宅ローンです。
その他の主な特徴としては、次の通りです。
①返済期間は最長35年
返済期間は最長35年で、最短は15年となります。ただし、申込本人や連帯債務者が満60歳以上の場合は10年となります。
20年以下を選択した場合には、原則、返済途中で借入期間を21年以上に変更することはできません。
②融資限度額は8000万円
融資限度額は8000万円で、100万円以上で融資限度額以内であれば、建設費または購入価額まで融資を受けられます。
この建設費および購入価額には、一般的に「諸費用」といわれる登記費用や、仲介手数料といったものまで含めることができます。
③保証人が不要
住宅ローンでは連帯保証人が必要になることがありますが、フラット35では連帯保証人は不要です。
さらに、保証会社へ保証料を払う必要もありません。
④団体信用生命保険に加入できなくても利用できる
フラット35は、健康上の理由から団体信用生命保険(団信)への加入が難しい人でも、利用できます。
団信とは、ローン返済中に借り入れている本人が死亡したり、重篤な症状に陥ったりした際に、ローンの残金を代わりに保険会社が支払う制度です。
借入時に健康状態に問題があった場合には、この団信に加入できないことがあります。
民間の金融機関では、住宅ローンの利用には「団信への加入が必須」とする場合が多く、健康上の理由で団信に加入できない人は、結果として、住宅ローンを組むことが難しいです。
一方で、フラット35では、原則として団信の加入は必要ですが、健康上の理由で団信に加入できなかった人でも利用することができます。
⑤連帯債務型を取り扱っている
民間の金融機関では、連帯債務型を取扱っているところはあまり多くありませんが、フラット35では、連帯債務型(収入合算)を選択することができます。
なお、連帯債務型で契約を申し込むことができるのは、次の要件をすべて満たす人が連帯債務者となる場合です。
✓申込者本人の親、子、配偶者など(直系親族または配偶者、婚約者や内縁関係でも可)
✓原則として、申込者本人と同居している ✓申込時の年齢が70歳未満である |
⑥連帯債務者でも団体信用生命保険に加入できる
民間の金融機関においては、原則として連帯債務者は団体信用生命保険(団信)へ加入できません。
これに対して、フラット35では、夫婦の連帯債務者等は団信に加入することができます。この場合には夫婦どちらが亡くなったとしても、住宅ローンを完済することができます。
なお、連帯債務者とは住宅を共有することになりますが、共有で住宅を購入する場合のメリット・デメリットについては、以下の記事もご参照ください。
【住宅ローン控除⑥】持分割合や共有不動産のメリット・デメリットを解説!
フラット35の要件
フラット35の利用には、契約者本人と、取得する物件のそれぞれに以下のような要件が設けられています。
(1)契約者本人に関する要件
①年齢が70歳未満であること
申し込み時の年齢が満70歳未満であることが必要です。
ただし、実子や孫を後継者として「親子リレー返済」を利用する場合には、満70歳以上でも申し込むことができます。
②日本国籍を有していること
原則、日本国籍を有していることが必要です。
ただし、外国籍の人でも、「永住者」または「特別永住者」の資格があれば利用することができます。
③返済負担率が基準値以下であること
フラット35を利用した場合の返済負担率が基準値以下であることが必要です。
具体的には、全ての借入を含めた年間の合計返済額に対する返済負担率が、額面年収入400万円未満の人で30%以下、400万円以上の人で35%以下であることが要求されています。
④資金使途は居住する住宅に限られる
フラット35は、申込本人またはその親族が居住する住宅を購入するための資金、または、新築するための建設資金としてのみ借りることができます。
(2)取得する物件に関する要件
①住宅金融支援機構が定めた技術水準を満たす住宅であること
建築士資格を持つ専門家が、利用者の住宅が技術基準に適合しているか、検査を行い、基準を満たした場合にのみ利用することができます。
なお、より高い基準を満たした住宅を購入する場合には、一定期間の金利引き下げが受けられる「フラット35S」という制度を利用することもできます。
②床面積が一定の広さ以上であること
具体的には、床面積が一戸建てで70平方メートル以上、共同住宅で30平方メートル以上であることが必要です。
マンションなどの共用住宅の床面積は、専有面積を指し、共用部分は含まれません。
なお、敷地面積の要件はありません。
フラット35のメリット
ここでは、フラット35を利用して住宅を購入した場合の具体的なメリットを確認します。
(1)返済期間中は金利が変わらない
フラット35は、全期間固定金利型の住宅ローンであることから、借入金利が完済まで固定されます。
そのため、毎月の返済額や返済総額が借入時に確定するため、安定した返済プランを立てることができます。
(2)繰り上げ返済手数料がかからない
資金に余裕ができて、前倒しで返済する場合でも「繰り上げ返済手数料」がかかりません。
なお、金融機関窓口による繰り上げ返済は、100万円以上から受け付けしてもらえますが、インターネットサービス「住・My Note」を利用した繰り上げ返済では、10万円という少額の単位で繰り上げ返済を行うことができます。
フラット35のデメリット
フラット35を利用した場合には、メリットだけでなく、デメリットもあります。
ここでは、フラット35を利用して住宅を購入した場合の具体的なデメリットを確認します。
(1)変動金利型より金利が高い
変動金利型のローンは、政策金利を基準に決定される「短期プライムレート」と連動した金利が採用されています。
そのため、現在は非常に低い金利に設定されています。
金利は変動するため、将来的に金利が上がる可能性はあるものの、完済時まで金利が全期間にわたって固定金利の水準を上回らない場合には、変動金利型の方が返済総額は少なくて済みます。
(2)借入割合が大きいと金利が高くなる
フラット35では、購入価額や建設費まで融資を受けることが可能です。ただし、頭金を購入価額の1割以下しか用意できない場合、つまり、購入価額の9割超の金額を借り入れる場合には、金利が高くなってしまいます。
そのため、借入額が住宅購入価格の9割を超える場合には、あらかじめ少し金利が高くなることを想定した返済計画を立てることが重要です。
また、親族からの支援などで頭金を1割以上確保することも有用です。
フラット35を利用するときのポイント
ここでは、フラット35を利用するときの主なポイントを確認します。
(1)住宅やライフプランに合った商品を選ぶ
住宅金融支援機構が提供するフラット35には、購入する住宅やライフプランに合わせて次のような商品があるため、自身のライフプランに合った商品を選ぶことがポイントとなります。
①フラット35S:
特に省エネルギー性、耐震性など質の高い住宅を取得する場合に適用できる住宅ローンです。フラット35よりも一定期間金利が0.25%低くなることが特徴です。
②フラット20:
借入期間を15年以上20年以下にすることで、金利を下げられる住宅ローンてす。原則として、返済途中で借入期間を21年以上に延長することはできません。
③フラット35リノベ:
中古住宅の取得と、リフォームの費用をまとめて借入できる住宅ローンです。中古住宅の取得と性能向上リフォームをセットにして借入することで、借入金利を一定期間引き下げることができることが特徴です。
④フラット50:
「長期優良住宅」と国に認定された住宅の購入で利用できる住宅ローンです。長期優良住宅は、バリアフリー性や省エネルギー性、耐震性などを国が認定した優良住宅のことです。返済期間を最長50年まで設定できることが特徴です。
⑤その他の商品:
他にも中古購入と性能向上リフォームに特化した商品や、今の住宅を貸し出して次の住宅を取得するための商品など、複数の商品があります。
各商品の特徴を把握した上で、自分に適した商品を選択することが重要です。
(2)月々の返済額は無理がないように
住宅は快適な暮らしの基盤となりますが、住宅を購入したために、苦しい暮らしを強いられるのでは本末転倒です。
家計の収支を踏まえて返済をシミュレーションしたうえで、家計を圧迫しないよう無理がない範囲で返済額を決定します。
無理をした返済額を設定してしまうと、生活費を切り詰める必要が出てくるなど、暮らしの余裕がなくなる可能性があります。
そのため、住宅ローンを利用する場合には、「頭金を増やして借入額自体を抑える」、「返済期間を長くして毎月の返済額を減らす」といった対策をして、家計の収支を踏まえた資金計画とすることが重要です。
フラット35に向いている人
ここでは、フラット35はどのような人に向いているのかを確認します。
(1)自営業の人
勤続年数や年収など、「申し込み者本人」の審査については民間ローンよりも緩いと言われています。
そのため、自営業や転職したばかりの人で、収入が安定せず、住宅ローンの審査に不安がある人に向いています。
(2)変動する金利に不安がある人
現在の金利は低いですが、今後、金利は上がる可能性が高いと言われています。
そのため、今後の金利上昇に不安がある人には、固定金利のフラット35は向いています。
(3)団体信用生命保険(団信)の加入が難しい人
民間の金融機関のローンの場合、団体信用生命保険(団信)の加入は必須です。そのため、健康状態に問題がある人は団信に加入できないことから、結果として住宅ローンが組めないことになります。
フラット35の場合は、団体信用生命保険の加入は任意(原則は加入)のため、健康状態に問題がある人に向いています。
なお、団信に加入したい場合は別途費用が必要となります。
まとめ
以上今回は、フラット35について、「その概要」や「特徴・要件」、「メリット・デメリット」、「向いている人」などを解説いたしました。
連帯債務型の住宅ローンでは、夫婦ともに住宅ローン控除の適用を受けることができるものの、連帯債務型を取扱っている民間の金融機関はあまり多くありません。
そのため、連帯債務型の住宅ローンとして、まず検討すべきなのは、住宅金融支援機構が提供するフラット35です。
フラット35は、勤務形態や職業、勤続年数などに制限が少なく、より幅広い人が利用できる住宅ローンです。
フラット35の主なメリット・デメリットは次の通りです。
・メリット①:返済期間中は金利が変わらない
・メリット②:繰り上げ返済手数料がかからない
・デメリット①:変動金利型より金利が高い
・デメリット②:借入割合が大きいと金利が高くなる
フラット35にもデメリットはあるため、自分に向いている住宅ローンをフラット35以外の商品も含めて、事前にしっかりと検討することが重要です。
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なお、住宅ローン控除に関してご興味がある人については、以下の記事もご参照ください。
住宅ローン控除の制度概要についてはこちら:
【住宅ローン控除①】制度概要や要件、最大控除額、申告手続、留意点などを網羅的に解説!
ペアローンについてはこちら:
【住宅ローン控除③】ペアローンの住宅ローンを詳しく解説!!(収入合算との違いも)
住宅ローン控除を最大限受けられる方法ついては、こちら:
【住宅ローン控除④】控除を最大限受ける方法や連帯債務型の持分割合で損をする場合を解説!