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簡易課税の事業区分を業種別に詳しく解説!!

簡易課税制度は、基準期間(会社は前々事業年度、個人事業者は前々年)の課税売上高が5,000万円以下の中小事業者の納税事務負担を軽減するために設けられた制度で、実際に支払った消費税額に関係なく、収入の消費税額に業種ごとに決められた「みなし仕入率(50%~90%)」を乗じて納税額を算定します。

このように簡易課税制度では、「どの業種」に該当するかによって、「みなし仕入率」が大きく異なってくることから、事業区分の選択は非常に重要となります。

そのため今回は、簡易課税にかかる「みなし仕入率」の内容と、実務上迷いやすい具体的な事例について、業種別に詳しく解説します。

なお、消費税の簡易課税の概要については、以下の記事をご覧ください。
消費税の簡易課税を上手に活用して節税できる!

 

業種ごとの「みなし仕入率」

「みなし仕入率」とは、業種別の利益率をベースに国が定めた一定の割合を言います。
簡易課税の適用を受ける場合には、事業区分(業種)に合わせた「みなし仕入率」を用いることになります。

事業区分は6段階に分けられており、それぞれの事業区分ごとのみなし仕入率は以下の通りです。

なお、消費税の課税区分などの基礎知識については、以下の記事をご参照ください。
消費税の課税区分の判定(誤りやすい事例)

 

事業区分 みなし仕入率 該当事業
第1種事業 90% 卸売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)
第2種事業 80% ・小売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する第1種事業以外のもの)
・農業、林業、漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)
第3種事業 70% ・農業、林業、漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)
・鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含む)
・電気業、ガス業、熱供給業および水道業※第1種事業、第2種事業に該当するものおよび加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除く
第4種事業 60% 第1~3種・4種・5種事業以外の事業(例:飲食店業など)

※第3種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第4種事業に該当する

第5種事業 50% ・運輸通信業、金融業、保険業、サービス業

※飲食店業に該当する事業を除く
※第1種事業から第3種事業までの事業に該当する事業を除く

第6種事業 40% 不動産業

出典:No.6509 簡易課税制度の事業区分|国税庁 (nta.go.jp)

 

例えば、建設業を営む会社が簡易課税制度を適用している場合、みなし仕入率は70%となります。

この場合、事業者は収入にかかる消費税の金額を把握することができれば、支出にかかる消費税は「収入にかかる消費税×70%」で簡単に計算ができ、消費税の納税額を算出することができます。

 

 

事業区分判定のポイント

事業区分判定のポイントは、次の通りです。

(1)事業区分の基本的な考え方

事業区分の基本的な考え方は次の通りです。

✓商品を加工することなく、そのまま販売する場合は、第1種・第2種事業(卸売業、小売業)。

✓第3種、第5種、第6種事業については、概ね「日本標準産業分類」の大区分を基礎として判断します。中区分、小区分に詳細な分類記載がありますので、これらも参照して決定します。

✓事業者が行う事業が第1種事業から第6種事業までのいずれに該当するかの判定は、原則として、その事業者が行う課税資産の譲渡等ごとに行います。

本体付随事業(段ボール、副産物、加工屑の売却等)は、本体と同じ事業区分に該当するものとして取り扱われます。

 

その他、事業区分の判定に迷う場合には、国税庁質疑応答事例サイトの「簡易課税制度№1~№16」のうち、以下の「日本標準産業分類からみた事業区分№3~№9」も参考に決定します。

 

<日本標準産業分類の事業区分>

A~D:
日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-A農業、林業、B漁業、C鉱業、採石業、砂利採取業、D建設業)|国税庁 (nta.go.jp)

E:
日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-E製造業)|国税庁 (nta.go.jp)

F~H:
日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-F電気・ガス・熱供給・水道業、G情報通信業、H運輸業、郵便業)|国税庁 (nta.go.jp)

I:
日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-I卸売業、小売業)|国税庁 (nta.go.jp)

J~M:
日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-J金融業、保険業、K不動産業、物品賃貸業、L学術研究、専門・技術サービス業、M宿泊業、飲食サービス業)|国税庁 (nta.go.jp)

N:
日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-N生活関連サービス業、娯楽業)|国税庁 (nta.go.jp)

O~R:
日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-O教育、学習支援業、P医療・福祉、Q複合サービス事業、Rサービス業(他に分類されないもの))|国税庁 (nta.go.jp)

 

(2)第1種事業のポイント

他から仕入れた商品を、加工することなく(品質または形状を変更しないで)、他の事業者に販売する事業は、基本的に卸売業(第1種事業)に該当します。

また、業務用に消費される商品の販売(業務用小売)であっても事業者に対する販売であることが帳簿、書類等で明らかであれば卸売業に該当することになります。

 

(3)第2種事業のポイント

他から仕入れた商品を、加工することなく(品質または形状を変更しないで)、消費者に販売する事業は、基本的に小売業(第2種事業)に該当します。

また、食料品小売店が他から購入した食料品を、その小売店舗において、仕入商品に軽微な加工をして販売する場合で、加工前の食料品の販売店舗において一般的に行われると認められるもので、当該加工後の商品が当該加工前の商品と同一の店舗において販売されるものについては、加工後の商品の販売についても小売業に該当するものとして差し支えないとされています。

 

(4)第3種事業のポイント

第3種事業は、おおむね日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定します。材料・商品等を「加工して」販売する事業は、基本的に第3種事業に該当します。

また、次の事業は、第3種事業に該当するものとして取り扱われます。

✓自己の計算において原材料等を購入し、これをあらかじめ指示した条件に従って下請加工させて完成品とする、いわゆる製造問屋
✓自己が請け負った建設工事の全部を下請に施工させる建設工事の元請
✓天然水を採取して瓶詰等して人の飲用に販売する事業
✓新聞・書籍等の発行、出版を行う事業

 

(5)第4種事業のポイント

飲食店業は第4種事業に該当します。

また、事業者が自己において使用していた固定資産(建物・車両等)の譲渡を行う事業は、第4種事業に該当するものとして取り扱われます。

 

(6)第5種事業のポイント

第5種事業も、第1種事業から第3種事業以外の事業とされる事業を対象として、おおむね日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定します。

なお、日本標準産業分類の大分類の区分が運輸通信業、金融・保険業、サービス業に該当するものは、「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業」であっても、第5種事業に該当するものとして取り扱われます。

また、サービス業から除かれる「飲食店業に該当するもの」とは、例えば次のようなものをいいます。

✓ホテル内にある宴会場、レストラン、バー等のように、そのホテルの宿泊者以外の者でも利用でき、その場で料金の精算をすることもできるようになっている施設での飲食物の提供

✓宿泊者に対する飲食物の提供で、宿泊サービスとセットの夕食等の提供時に宿泊者の注文に応じて行う特別料理、飲料等の提供や客室内に冷蔵庫を設置して行う飲料等の提供のように、料金体系上も宿泊に係る料金と区分されており、料金の精算時に宿泊料と区分して領収されるもの(例えば、「1泊2食付で1万円」というように、食事代込みで宿泊料金が定められている場合は、その料金の全額が第5種事業に該当するものとして取り扱われます)

 

(7)第6種事業のポイント

第6種事業は、日本標準産業分類の大分類の区分が不動産業に該当するものをいいます。

 

 

事業区分の判定フローチャート

ここでは、国税庁サイトの簡易課税にかかる「事業区分の判定フローチャート」を確認します。

国税庁サイトに次のような簡易課税にかかる事業区分の判定フローチャートも公表されており、このフローチャートへの当てはめによって、事業区分の判定が比較的簡単かつ正確に行うことができます。

<事業区分フローチャート>

出典:令和4年分 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き 個人事業者用(簡易課税用)|国税庁 (nta.go.jp)

 

 

 判断に迷いやすい具体的な事例

(1)製造業・建設業(主に第3種)

事業の内容 事業区分 判定理由
✓製品の製造販売
✓建設の請負工事・改修工事
✓上記付随事業(加工屑・副産物等の売却)
材料を購入 第3種 製造
材料が無償支給 第4種 役務の提供
製品の修理 第5種 修理はサービス
製品の取付けに係る手数料 第5種 手数料はサービス
建設物の解体工事、足場の組み立て 第4種 役務の提供

 

 

(2) 飲食店業(第4種)、食品業(主に第1種 0r 第2種)

<飲食店業>

事業の内容 事業区分 判定理由
店内での飲食・宅配(店内酒等自販機販売含む) 第4種 宅配は、店内飲食の延長
テイクアウト  第3種 商品を作って販売
お土産品の販売 第2種 商品を加工することなく消費者に販売

 宅配ピザ・移動販売のような、店内の飲食スペースがない宅配専門業、テイクアウト専門業は第3種事業となります。

 

<食品業>

事業の内容 事業区分
軽微な加工(切る、つぶす、乾かすなど)をする場合 第1種 or 第2種
上記以外の加工(煮る、焼くなど)をする場合
(例えば、惣菜販売など)
第3種

 

(3)ホテル・宿泊業(主に第5種)

事業の内容 事業区分 判定理由
宿泊代 第5種 サービス提供
レストラン・ルームサービス・客室内冷蔵庫 第4種 ルームサービス等もレストランと同様に飲食店業
お土産品販売・自販機収入 第2種 商品を加工することなく消費者に販売

 

(4)医療業(主に第5種)

事業の内容 事業区分 判定理由
通常の自由診療収入 第5種 サービス提供
中古医療機器の売却収入 第4種 事業用固定資産の売却
歯ブラシ・健康食品・福祉用具の販売 第2種 商品を加工することなく消費者に販売

 

(5)不動産業(主に第6種)

事業の内容 事業区分 判定理由
 

他から購入した不動産
(棚卸資産)の販売

 

販売先が事業者 第1種 商品を加工することなく販売
販売先が消費者 第2種
自己が建設した建売住宅の販売 第3種 建設業
リフォーム・原状回復工事 第3種 建設業
不動産の賃貸・管理・不動産取引仲介(住宅貸付は非課税) 第6種 不動産業

 

(7)自動車業(主に第1種 0r 第2種)

事業の内容 事業区分 判定理由
 

✓車・中古車の販売
タイヤ・オイルだけの商品販売
(工賃は無償)

販売先が事業者 第1種 商品を加工することなく販売
販売先が消費者 第2種
塗装・板金・部品の取替 第5種 サービス提供(判例あり)
自動車の整備(部品交換代も含む) 第5種 サービス提供
タイヤ・オイル交換等の工賃(区分している場合) 第5種 サービス提供
車検等の代行手数料 第5種 サービス提供

 販売代金と工賃が区分されていない場合には、販売代金を含むその全額が第5種事業となります。

 

複数の事業を営んでいる場合

ここでは、複数の事業を営んでいる場合の取扱いを簡単に確認します。

利益を追求する事業者においては、事業戦略として、単一事業のみを営んでいるケースもあれば、複数事業を営んでいるケースもあります。

単一事業のみ営んでいるケースの簡易課税適用による消費税額は次のように計算します。

消費税の納付税額 = 収入の消費税額 - ( 収入の消費税額 × みなし仕入率 )

 

一方で、複数事業を営んでいるケースの簡易課税適用による消費税額は、原則として、事業区分ごとに消費税額を計算します。

ただし、1種類の事業の課税売上高が全体の75%以上を占める場合には、その1種類のみなし仕入率のみで、単一事業と同様に計算できる特例があります。

詳細は以下の記事をご参照下さい。
複数事業を営む場合の簡易課税の計算について具体例で解説!

 

まとめ

以上今回は、簡易課税にかかる「みなし仕入率」の内容と、実務上迷いやすい具体的な事例について、詳しく解説させていただきました。

簡易課税の適用を受ける場合には、事業区分(業種)に合わせた「みなし仕入率」を用いることになります。この事業区分は6つあり、みなし仕入率は次の通り、40%~90%の6段階があります。

・第1種事業:90%
・第2種事業:80%
・第3種事業:70%
・第4種事業:60%
・第5種事業:50%
・第6種事業:40%

上記の「どの事業」に該当するかによって、「みなし仕入率」は大きく異なります。

そのため、誤った判定に気が付かず、消費税の確定申告を行っている場合には、税務調査により修正申告の対象となることや、何年も税金を過大(ムダ)に支払っていることも起こり得ます。

事業区分の選択は非常に重要となることから、できるだけ税理士などの専門家へ相談されることをお勧めします。

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