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家事按分の対象範囲や合理的な基準について詳しく解説!

近年、フリーランス(個人事業主)で働く人が増えています。フリーランスの場合、自宅の一部を事業で使うことが多く、その場合には事業用の経費と生活費にまたがる支払いがあることが通常です。この支払いについて、少しでも事業用の経費として必要経費に計上することができれば節税につながります。

そこで、今回は家事按分について、「その概要」や「対象範囲」、「合理的基準」「ポイント」などを解説します。

なお、実践的な節税対策については、以下のサイトをご参照ください。
当事務所について – 保田会計事務所|税務・コンサル・会計・その他経営に関わる全てを総合的にサポート

 

家事按分の概要

フリーランスなどの個人事業主は、事務所兼自宅にあるものなどを事業と生活で兼用することがよくあります。こういったケースでは、事業用の経費と生活費の両方に該当する「家事関連費」と呼ばれる支払いが生じます
この家事関連費については、事業用の経費と生活費のそれぞれに適切に按分し、事業用の経費を必要経費として計上することができ、この按分のことを「家事按分」と呼んでいます。

家事按分は合理的な基準で行う必要があり、仮に税務調査において、按分が不適切と判断された場合には、必要経費の計上が過大として、追加の税金が発生することから注意が必要です。

例えば、不適切な家事按分とされるのは、次のような事例です。

✓自宅家賃の90%を事業用の経費とする(自宅のうち事務所スペースが僅少の場合)

✓車両費の100%を事業用の経費とする

✓生活費を事業用の経費とする  ← そもそも家事按分の対象外

 

家事按分の対象範囲や合理的基準など

ここでは、「家事按分の対象となる支払い」と「合理的な基準」、「計算例」を具体的に確認します。

(1)家事按分の対象となる支払い

家事按分の対象となる支払いには、例えば次のようなものが挙げられます。

持ち家:自宅の減価償却費、住宅ローンの金利、修繕費、固定資産税

借家:家賃、管理費、更新料

その他賃貸:倉庫や会議スペースのレンタル、駐車場

水道光熱費:水道代、電気代、ガス代

通信費:電話代、インターネット使用料

車両費:車の減価償却費、ガソリン代、オイル交換代、車検費用、保険料、自動車税、車庫証明手数料

備品:PC、プリンター、携帯、冷蔵庫、修理代

図書費:新聞雑誌、情報サイト利用料、研修会費、セミナー参加費

飲食費:取引先の接待、打ち合わせ費用

 

(2)家事按分の合理的な基準

家事按分については、明確な按分基準はないため、合理的で客観的な基準を設けて、正しく按分計算をしていれば必要経費として認められます。

この合理的な基準には、例えば次のようなものが挙げられます。

✓持ち家・借家関連:事業として使用している面積の割合や部屋数

✓水道光熱費:業務時間とそれ以外の在宅時間の割合

✓通信費:電話時間に占める取引先との時間の割合、業務時間とそれ以外の在宅時間の割合

✓車両費:使用日数の割合、走行距離

 

(3)自宅兼事務所の家賃の計算例

<事例>

✓自宅兼事務所の家賃:20万円
✓按分基準:事業として使用している面積の割合を採用
✓事業での使用面積:40㎡、共有面積:20㎡、生活での使用面積:40㎡

 

<計算例>

✓家事按分割合:40㎡ / ( 40㎡ + 20㎡ + 40㎡ ) = 40%
✓必要経費:20万円 × 40% = 80,000円

上記の家事按分割合は、事業として使用している面積を総面積で除して算定していますが、総面積から共有面積を除いて算定する方法もあり得ます

後者の方法によると、家事按分割合は50%(=40㎡/(40㎡+40㎡)と大きくなります。ただし、税務リスクがあることから注意が必要です。

 

(4)水道光熱費の計算例

<事例>

✓水道光熱費:10万円
✓按分基準:1日の業務時間とそれ以外の在宅時間の割合を採用
✓自宅での業務時間:8時間、それ以外の在宅時間:14時間、外出時間:2時間

 

<計算例>

✓家事按分割合:8時間 / ( 8時間 + 14時間 ) = 36%
✓必要経費:10万円 × 36% = 36,000円

 

必要経費とできる3つのポイント

家事按分の際に、事業関連費として確実に必要経費としたい場合のポイントは、次の3点です。

業務に直接関連するものであること

務遂行上、必要性があること

③業務用の金額を明確に区別できること

上記3つのうち全てを満たす必要はなく、あくまでも総合的に勘案して、必要経費に認められるか否かを判断することになります。

税務署の調査では、上記①の「業務に直接関連」している費用かが争点になるケースが多いです。
この「業務に直接関連」という点について、明確な判断基準は国税庁から公表されていませんが、例えば、次のような判断基準などで、個々の取引の実質をもって総合的に判断されることとなります。

<直接性の判断基準>

業務の特定・・・事業活動で支出した経費がどの業務(売上)に対応するか

支出の目的・・・経費がどのような目的で支出されたか

支出の有益性・・・経費の支出によって業務にどのような効果があったか

 

青色申告・白色申告における家事按分の違い

確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらであっても、家事按分の適用はありますが、取り扱いが異なる部分があることから、その違いを確認します。

(1)青色申告のケース

青色申告の家事按分は、業務遂行上必要と合理的に認められればすべての経費を計上することができます(所令96①二)。

そのため、後述する白色申告のケースと比較すると青色申告のケースの方が、経費として認められる範囲は広いと言えます。

 

(2)白色申告のケース

白色申告の家事按分においては、次の要件を満たした場合にのみ家事按分が認められます(所令96①一、所基通45-1、所基通45-2)。

✓業務に関連する割合が「50%超」、または「明確に区分できるもの」

そのため、例えば、家賃や水道光熱費、通信費などを業務で少し使っているだけでは、必要経費としては認められません。原則として、業務割合が50%超である必要がありますので、注意が必要です。

白色申告の場合の家事按分の取扱いは、以下の国税庁サイトを参照ください。
国税庁「法令解釈通達/事関連費(第1号関係)45-2 業務の遂行上必要な部分」

 

なお、個人事業者で節税に興味がある方は、以下の「白色申告・青色申告」に関する記事や「青色事業専従者給与」に関する記事もご参照ください。

「白色+雑所得」と「青色+事業所得」のどちらが有利かに関する記事はこちら:
「白色+雑所得」と「青色+事業所得」はどちらが有利か?(シュミレーションも)

青色事業専従者給与を活用した節税対策に関する記事はこちら:
青色事業専従者給与を活用した節税対策とは?

 

まとめ

以上、今回は家事按分について、「その概要」や「対象範囲」、「合理的基準」「ポイント」などを解説いたしました。

事業用の経費と生活費の両方に該当する家事関連費は、適切に家事按分することによって、事業用の経費のみを必要経費として計上することができます。

家事按分の対象となる支払いには、例えば、自宅の減価償却費や家賃、水道光熱費、通信費、車両費などが挙げられます。
これらの支払いを、「事業として使用している面積の割合」や「業務時間とそれ以外の在宅時間の割合」など合理的な基準で按分します。

また、必要経費とするためには、①業務に直接関連するものであること、②業務遂行上、必要性があること、③業務用の金額を明確に区別できることなどを満たすことがポイントです。

必要経費にできる家事按分の範囲は青色申告の方が白色申告に比べてかなり有利となることから、保田会計グループでは青色申告をお勧めしています。

法人の青色申告のメリットについては、以下の記事をご参照ください。
【会社設立後の提出書類③】青色申告承認申請の概要と書き方(記入例あり)

 

「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループでは、個人事業主の申告業務も積極的にお受けしておりますので、ご興味等ございましたら、お気軽にお問合せください。