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法人保険を活用した事業承継対策(株価対策、相続対策、退職金準備)

円滑な事業承継のために、役員退職金と共によく使われる方法が「法人保険」の活用です。

そこで、今回は法人保険を活用した事業承継対策について、目的ごとの「具体的な効果」や「活用方法の流れ」、「適合する保険の種類」、また法人保険の「デメリット」や「留意点」などを解説します。

なお、個人契約の生命保険を活用した事業承継対策については、以下の記事をご参照ください。
個人契約の生命保険を活用した事業承継対策(相続対策)

 

事業承継対策に法人保険を活用する目的

まず、はじめに事業承継対策に法人保険を活用する目的を確認します。
法人保険は主に次の3つを目的として活用されています。

株価の引き下げ
相続対策(遺留分対策・納税対策)
退職金の準備

以下においては、これらの目的ごとに、「具体的な効果」や「活用方法の流れ」、「適合する保険の種類」などを確認します。

 

株価の引き下げを目的とする法人保険

株価の引き下げを目的とする法人保険の「具体的な効果」や「活用方法の流れ」、「適合する保険の種類」は次の通りです。

(1)具体的な効果

事業承継にあたっては、オーナーが保有する株式の全部または大部分を後継者に承継することが一般的です。この株式の承継時に自社株の株価が高い場合には、贈与税や相続税の負担がかなり重くなることから、自社株の株価を引き下げた上で株式の承継を行い、贈与税や相続税の負担を軽減します。

①純資産価額の引き下げ

純資産価額方式における保険積立金は、解約返戻金の額で評価します。そのため、「低解約返戻金型の保険」を活用することで、純資産価額による株価を引き下げることができます。

例えば、「低解約返戻金型の保険」では、1億円の保険料を積み立てた場合でも、当初3年間の解約返戻金は3,000万円しかないというタイプのものもあります。

②類似業種比準価額の引き下げ

また、損金性のある法人保険を活用すれば、類似業種比準価額による株価も引き下げることができます。

しかし、2019年に通達が改正され、法人保険の損金に大きく制限がかかっています。そのため、通達改正以前は、類似業種比準価額を引き下げる方法として、役員退職金と共によく使われていた方法ですが、通達改正後の有効性は低下ています。

 

(2)活用方法の流れ

①法人保険に加入
法人契約の低解約返戻金型の生命保険(被保険者はオーナー、保険金受取人は会社)に加入します。②自社株の承継(贈与)
解約返戻金が保険積立金より大幅に低い時期、つまり自社株の株価が下がっているうちにオーナーから後継者に自社株を承継(贈与)します。③解約返戻金を受け取ります
自社株の承継後、解約返戻金の額が大きくなるタイミングで保険を解約し、解約返戻金を受け取ります。

 

(3)株価の引き下げに適合する保険の種類

純資産価額と類似業種比準価額の引き下げに適合する保険は次の通りです。

①純資産価額の引き下げに適合する保険

純資産価額の引き下げに適合する保険は、解約返戻金の額が低い「低解約返戻金型定期保険」になります。

低解約返戻金型定期保険の特徴は次の通りです。

✓解約返戻金の額が、ピークまでの間は少なく設定されています。

✓例えば、1億円の保険料を積み立てた場合、当初3年間の解約返戻金は3,000万円しかないというタイプのもの等があります。

✓通常の定期保険よりも保険料が安く設定されており、また、低解約返戻金型終身保険よりも保険料が安く設定されています。

 

②類似業種比準価額の引き下げに適合する保険

類似業種比準価額の引き下げに適合する保険は、保険期間が長い「長期平準定期保険」または、保険金額が段階的に増えていく「逓増定期保険」になります。

長期平準定期保険の特徴は次の通りです。

✓保険期間は100歳満了のものが一般的で、ほとんど終身保険と変わりません。

✓終身保険と比べて保険料が若干安く設定されています。

✓解約返戻率のピークが20〜30年程度の期間に設定されていることが多く、保険期間の満期にむけて、下降線をたどり、最終的にはゼロになります。

✓損金性があります(2019年7月8日以降に契約した保険については、全額損金となるのは最高解約返戻率が50%以下のもののみとなっています)。

 

逓増(ていぞう)定期保険の特徴は次の通りです。

✓死亡保険金額が一定ではなく、加入時から段階的に増えていく定期保険です。

✓保険金額が増える仕組みであるため、保険料の変動はありませんが、一般的な定期保険よりも保険料は高く設定されています。

✓解約返戻率のピークは10年前後に設定されていることが多く、保険期間の満期にむけて、下降線をたどり、最終的にはゼロになります。

✓損金性あります(2019年7月8日以降に契約した保険については、全額損金となるのは最高解約返戻率が50%以下のもののみとなっています)。

 

相続対策(遺留分対策・納税対策)を目的とする法人保険

相続対策(遺留分対策・納税対策)を目的とする法人保険の「具体的な効果」や「活用方法の流れ」、「適合する保険の種類」は次の通りです。

(1)具体的な効果

一般的な法人契約の生命保険の場合、オーナーに相続が発生すると、保険金を会社が受け取ることになります。そこで、会社は後継者が相続する株式の一部を自己株式として買い取る(金庫株)ことで、後継者に必要な資金を受け渡すことができます。

これによって、後継者は後継者以外の相続人からの遺留分侵害額請求へ対応することができ(遺留分対策)、さらに相続税を納税するための資金も確保することができます(納税対策)。

また、会社が受け取った保険金を原資に死亡退職金を支払う場合には、相続人の納税対策となる上に、非課税枠(500万円×法定相続人の数)を利用することもできます。

 

(2)活用方法の流れ

①法人保険に加入
法人契約の生命保険(被保険者はオーナー、保険金受取人は会社)に加入します。②相続が発生
相続が発生したことで、保険金を会社が受け取ります。③自社株の承継(相続)
後継者が自社株を承継(相続)します。

④会社による自己株式の買い取り
会社は後継者が相続する株式の一部を自己株式として買い取る(金庫株)ことで、後継者に必要な資金を受け渡します。

 

(3)相続対策(遺留分対策・納税対策)に適合する保険の種類

相続対策(遺留分対策・納税対策)を目的とする法人保険には、保険期間が長い保険が適合します。
保険期間が長い保険には、終身保険や長期平準定期保険があります。

終身保険の特徴は次の通りです。

✓損金性はなく、保険料の全額を資産計上することになります。

✓資産運用の側面があります(支払保険料より相続時に多くのお金が戻ってくる)。

✓解約をしない限り保障期間は死ぬまで続きます。

✓オーナーが高齢で亡くなった場合も必ず死亡保険金が支払われます。

✓保険料は一定で、加入した年齢が低いほど安くなりますが、定期保険よりは高めに設定されています。

✓解約返戻金がありますが、解約の時期によって払込金より多くなる(利益)ことも、少なくなる(損失)こともあります。

 

長期平準定期保険の特徴は上述の内容をご確認ください。

 

退職金の準備を目的とする法人保険

退職金の準備を目的とする法人保険の「具体的な効果」や「活用方法の流れ」、「適合する保険の種類」は次の通りです。

(1)具体的な効果

事業承継対策に役員退職金を活用する場合に、その役員退職金の原資を生命保険で準備することができます。想定していた退職前に万が一相続が起きてしまった場合の保障を担保しながら、払った保険料と同額以上の解約返戻金を得られるところがメリットとなります。

 

(2)活用方法の流れ

①法人保険に加入
退任予定時に解約返戻金が高い保険に加入します。②オーナーに役員退職金を支給
解約返戻金が100%を超える時期を見越して、退職金を支給します。③自社株の承継(贈与)
自社株の株価が下がる「役員退職金を支給した翌事業年度の1年間のうち」にオーナーから後継者に自社株を承継(贈与)します。

④解約返戻金を受け取ります
役員退職金の株価引き下げ効果にマイナスにならないよう、自社株の承継を待って、保険を解約し、解約返戻金を受け取ります。

 

(3)適合する保険の種類

退職金の準備を目的とする法人保険には、解約返戻金がある保険が適合します。

解約返戻金がある保険には、「長期平準定期保険」や「逓増定期保険」、「終身保険」があります。
それぞれの保険の特徴は上述の通りです。

 

法人保険を活用するデメリット

法人保険を活用するデメリットとしては。主に次の2つが挙げられます。

①保険契約期間中は保険料を支払わなくてはならないため、高額な保険に加入した場合には、保険料の支払いが会社のキャッシュフローを圧迫してしまうリスクがあります。

②また、解約返戻率がピークを迎える前に保険契約を解約せざるを得なくなった場合には、受け取る返戻金が少なくなり、損失が発生してしまうリスクがあります。

 

事業承継で法人保険を活用する場合の留意点

最後に、事業承継で法人保険を活用する場合の3つの留意点を確認します。

(1)将来のキャッシュフローを予測

事業承継前に資金不足によって保険契約を解約しなくてもいいように、保険契約の締結にあたっては、将来のキャッシュフロー予測を行った上で、無理のない範囲内で契約することが重要です。

 

(2)事業承継計画やタックスプランニング

自社株の株価の大幅な引き下げを狙って、役員退職金を支給した場合であっても、同時期に保険解約で利益が計上される場合には、株価の引き下げ効果が小さくなってしまいます

また、損金性のある保険については、出口で受け取る保険金や解約返戻金は利益となります。この利益に退職金支払や弔慰金支払などを相殺する予定であったとしてもタイミングがずれると、想定外の納税が発生する場合があります。

そのため、事業承継計画の策定やタックスプランニングを行うことが重要です。

なお、事業承継税制の特例承継計画にご興味のある方は、以下の記事もご参照ください。
特例承継計画の作成支援のご案内(ゼロ円で事業承継)

 

(3)2019年の通達改正

上述の通り、2019年の通達改正により、法人保険の損金に大きく制限がかかりました。そのため、通達改正後は、類似業種比準価額を引き下げる方法として、法人保険の有効性は低下しています。

なお、変額保険(投資信託などの仕組みを取り入れ、運用実績に応じて満期保険金などの額が変動する保険)の一部には、4割損金を計上しつつ解約返戻率も100%を超える実績のあるものもあり、通達改正後に注目されている保険の一つです。

 

まとめ

以上、今回は法人保険を活用した事業承継対策について、目的ごとの「具体的な効果」や「活用方法の流れ」、「適合する保険の種類」、また法人保険の「デメリット」や「留意点」などを解説させていただきました。

法人保険の活用は「株価の引き下げ」や「相続対策(遺留分対策・納税対策)」、「退職金の準備」を目的として行われます。
また、事業承継の活用で使われる法人保険には、「終身保険」、「長期平準定期保険」、「逓増定期保険」、「低解約返戻金型定期保険」などがあります。

さらに、事業承継で法人保険を活用する場合の留意点として、「将来のキャッシュフローを予測」や「事業承継計画やタックスプランニング」、「2019年の通達改正」などがあることから、法人保険を事業承継対策に活用する場合には、保険を締結する前に事業承継に強い専門家に一度ご相談されることをお勧めします。

「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループでは、法人保険を事業承継に活用した事例がいくつもありますので、ご興味等ございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。
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