役員や従業員が亡くなった場合、葬儀を社葬や遺族との合同葬として執り行うことがあります。
葬儀を社葬や合同葬とすることで、残された遺族の負担を軽減することができるだけでなく、さらにその社葬費用を会社の費用とすることができれば節税も可能となります。
今回は、社葬についての「税務上の取扱い」や「香典の適正額」、「その他の留意点」等を分かりやすく解説します。
この他にも、実践的な節税対策についてご興味のある方は、以下のサイトも是非ご覧ください。
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社葬の法人税法上の規定
まずは、社葬について、法人税法上の取扱いを確認します。
役員や従業員が亡くなり、会社が費用を負担して社葬を行った場合には、社葬を行うことに合理的な理由があり、その負担した金額のうち「通常要すると認められる部分の金額」までは、会社の経費とすることができます(法基通9-7-19)。
この通達のポイントは「社葬を行う合理的な理由」と「通常要すると認められる部分の金額」です。そのため、これらについては、次から詳細を確認します。
また、下記の国税庁タックスアンサーもご参照ください。
No.5389 社葬費用の取扱い|国税庁 (nta.go.jp)
社葬を行う合理的な理由とは
「合理的な理由」としては、亡くなった方の会社に対する貢献度や亡くなった事情等を総合勘案して判断します。
例えば、創業者、役員、勤務中の事故で亡くなった従業員などが亡くなった場合には合理的な理由に該当すると考えられます。
一方で、社長の家族の葬儀を社葬として執り行うことは合理的な理由にならないとはないと考えられます。
通常要すると認められる部分の金額とは
「通常必要と認められる部分の金額」は、社葬などを執り行うために直接必要となる費用をいい、具体的には次のようなものがあります。
・社葬の通知、広告に要する費用 ・受付備品、会計備品の費用 ・僧侶へのお布施 ・葬儀場、駐車場、受付用テントなどの使用料 ・警備員の費用 ・遺骨、遺族、来賓の送迎費用 ・祭壇、祭具の使用料 ・供花、供物、花輪、樒(しきみ)の費用 ・運転手、葬儀委員などへの心付け ・遺族、葬儀委員の飲食代 ・参列者への礼状や粗品代 ・受付備品、会計備品の費用 |
一方で、次のような費用については、ご遺族が負担すべきものとされ、これらの費用を会社が支払ったとしても、社葬費用として会社の経費にすることは通常は認められません。
・密葬の費用 ・仏具、仏壇の費用 ・初七日、四十九日の費用 ・墓地霊園の費用 ・戒名料 ・香典返し等の返礼に要した費用 ・納骨の費用 ・葬儀後の精進落としの費用(詳細は後述) |
なお、相続のスケジュールに関しては、以下の記事をご参照ください。
相続税の計算方法をわかりやすく解説!(スケジュールや相続税がかかる遺産額も)
香典の取扱いなどのその他の留意点
ここでは、その他の気を付けるべき留意点について、確認します。
特に下記⑤の香典については、いくらまで支給していいかなど、よく聞かれる論点でもありますので、私見も交えて具体的な金額に踏み込んで解説します。
①葬儀の主催等
会社経費とするためには、家族葬ではなく、社葬もしくはご遺族との合同葬にする必要がありますので、主催をどうするかご遺族を含め検討する必要があります。
なお、本葬やお別れの会を前提として行われる密葬に係る費用について、会社の経費にすることは通常は認められません。
②僧侶へのお布施
社葬費用には僧侶へのお布施等の領収書がもらいにくいものがあります。これらの費用についても、法人税法上原則として経費に認められますが、なるべく領収書等の書類をもらうようにします。
できれば、領収書は会社負担のお布施(読経料等)と遺族負担の戒名料に分けてもらいます。
領収書などをもらえない場合には、祝儀袋の表(住職名記載)と裏(金額記載)の写しを残しておくことでも問題ありません。
③精進落とし
精進落としは、葬儀後の法要の一環として行われるものであり、基本的には遺族が負担すべき費用として、社葬費用には含まれません。
しかし、参列者の多くが取引先などの会社関係者である場合には、遺族やその親族が飲食されたものを除き、会社の交際費として取扱います。
④受領した香典等
参列者が持参した香典等については、法人の収入としないで遺族の収入とすることができます。
⑤会社が支給する香典
役員や従業員に対して一定の基準に従って支給される香典は、その金額が社会通念上妥当なものと認められる場合には、社葬費用と同様に会社の経費にすることができます。
この場合、福利厚生費等に計上することが一般的で、交際費にする必要はありません。
また、既に退職した役員や従業員に対する香典なども一定の基準に従ったものであれば、交際費等とする必要はありません。
香典の社会通念上妥当とされる金額についても、金額基準はありませんが、一般的に5万円から10万円が相場と言われています。
また、私見ではあるものの、創業者や社長の場合であれば、業務上の死亡の場合は50万円、業務外の死亡の場合は30万円程度までであれば、税務リスクはそこまで高くないと考えられます。
なお、香典の場合には領収書等がなくても経費にすることが可能ですが、その場合には出金伝票や慶弔費精算書などに、支給年月日・相手の名前・関係性・香典金額などを記入して代用することが考えられます。
さらに香典袋の表裏のコピーを残しておくことで、より証明力の強い証憑となります。
⑥社葬規定
社葬規定があることは税務上の経費とするためのの要件にはなっていませんので、必ずしもなくても問題ありませんが、規定を定めておかないと「誰が対象になるのか」「どこまで費用負担するのか」などが不明確になってしまいますので、作成することは税務上だけでなく、管理上も有用となります。
⑦相続税対策
葬儀費用を節税として考えた場合、社葬として会社の経費に計上するのか、個人で負担して相続税の葬式費用とするのか、どちらが税効果が高いのか検討することも必要です。
なお、相続税の計算については、以下の「相続税の無税はいくらまで?」の記事をご参照ください。
相続税の無税はいくらまで?(相続税の早見表つき)
まとめ
以上今回は、社葬や合同葬による節税について、具体的な取り扱いを解説させていただきました。
社葬や合同葬を上手く活用することで、節税できるメリットがある一方で、税務調査があった場合には、調査官の目につきやすい項目になります。
そのため、社葬や合同葬の実施を検討される際には、税務調査に強い国税OBを要する「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループ等の専門家にご相談することをお勧めします。
なお、社葬とは異なりますが、社宅を活用した節税方法については、以下の記事をご参照ください。
社宅を活用した節税方法