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創業時のキャッシュフローを改善する方法

起業や創業して、間もない間は手元の資金が少なく、また売上を計上しても売掛金の回収まで時間がかかることも多いことから、資金が不足(ショート)しないように注意が必要です。
今回の記事では、起業した会社で資金難にならないために、キャッシュフローを改善するための15の方法を「入金面」「支払面」「その他」の3つの観点で解説します。
なお、創業融資を受けていない場合には、創業融資の検討も有効な手立ての1つになります。

創業・起業・会社設立支援については、以下のサイトをご参照ください。
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創業期は「キャッシュフロー」を重視

起業・創業して間もない時期は、資金の流れを見る「キャッシュフロー」を重視すべきです。たとえ会社の業績が黒字であっても、手許のキャッシュがショートすれば「黒字倒産」につながる可能性もあるからです。
そのため、創業期の経営は、キャッシュアウトを抑え、キャッシュインを早くすることが基本となります。
その基本を踏まえ、具体的にキャッシュフローを改善するための「15の方法」を「入金面」「支払面」「その他」の3つの観点で以下に説明します。

 

①資金調達で余裕資金の確保(入金面)

融資や補助金等の支援制度を活用した資金調達により余剰資金を確保します。起業時は融資を受けやすく、また起業して間もなくの間は想定外の出費もあることから、ある程度多めに資金を確保しておくことをお勧めします。

資金調達については、以下の記事もご参照ください。
創業時に使える資金調達方法を網羅的に解説(融資・出資・補助金・助成金)

 

②スマホ決済の導入(入金面)

クレジットカード決済の場合には、入金が翌々月になるケースが多いです。一方で、スマホ決済(楽天Pay、PayPay、LINE Pay、square、AirPay等)なら最短で翌営業日に入金されるサービスもあります。

 

③売上の前払いや長期契約の一括前払いの促進(入金面)

売上代金が先に入金されると余裕資金が生まれます。そのため、売上代金の回収はなるべく早くするように、売上の前払いや長期にわたる契約は一括前払い契約として締結するように取り組みを進めます。
場合によっては、ある程度の値引きなどのインセンティブをつけてでも、前払い・一括払いの契約とします。少なくとも、納品後の一括支払いは避けて、分割支払いや着手金の交渉も行うことも検討します。

 

④売掛金の回収は厳しく管理(入金面)

支払期限を超えた売掛金は、時間が経てば経つほど回収が難しくなることから、売掛金は、回収遅れや回収漏れがないように管理します。
そのため、請求と入金の突き合わせなど細かくチェックを行い、債権管理を徹底していく必要があります。万が一、期限を超えた場合には、すぐに督促できる体制を作っておきます。
なお、クラウド会計やネットバンキングを活用することで、タイムリーに預金残高が分かり、債権管理にも利用できます。

 

⑤ファクタリングサービスの活用(入金面)

すぐには入金されない売掛金を「ファクタリング会社」に売却することで、早期に現金化することができます。
なお、取引先からの売掛金が支払われなかった場合の「償還請求権」がファクタリング会社にあるか否かで手数料が変わってきます。

 

⑥支払いはなるべく後払いに(支払面)

回収とは逆に、支払いの場合はできるだけ後払いにします。起業して間もない会社(スタートアップベンチャー)は信用力が低いため、地道な交渉で支払期間をなるべく長くしてもらいます。
ただし、支払いの遅延が少しでもあると、会社としての信用を失うため、支払遅延がないように注意が必要です。

 

⑦クレジットカードの活用(支払面)

クレジットカードの支払いは翌月ないし翌々月になるため、現金支払いに比べると、1ヶ月以上キャッシュアウトを後倒しにできます。
また、取引をデジタル化でき、会計ソフトとの連動で経理処理の効率化も望めます。
なお、会社設立直後の場合には、法人カードが作れない場合もあることから、その場合には、経営者個人のクレジットカードで立替することも検討できます。

クレジットカードに関する活用方法は以下の記事をご参照ください。
税金をクレジットカードで支払ってお得にポイント還元

 

⑧給与支払日を翌月払いに設定(支払面)

従業員の理解が得られる場合には、給与支給日を遅めに設定すると余裕資金が生まれます。特に人件費の割合が高い業種では検討すべきです。
例えば、当月末払いか翌月末払いかでは、1ヶ月分の人件費のキャッシュが違ってきます。
ただし、月末締めの翌月末払いは入社時に2か月間給与支払いがないこととなり、採用に影響を及ぼす可能性もあります。そのため、翌月払いとする場合であっても、できれば翌月20日までの日に給与支払日を設定することをお勧めします。

 

⑨ボーナス制度の導入(支払面)

ボーナス(賞与)は経営者からすると給与の前借りの側面があります。そのため、年間の支払給与総額が同じ場合には、ボーナス制度を導入することで余剰資金が生まれます。さらに可能であれば、賞与支給日を1年間でキャッシュが潤沢な時期に設定することも検討します。
また、業績に連動したボーナス制度に設計することで経営リスクもヘッジできます。出来るだけ、従業員のモチベーションアップに繋がるような魅力的なボーナス制度を設計することが重要です。

 

⑩経費削減の徹底

日々の業務や生産の中でのコスト削減努力は経営の基本であり、これは起業して間もない会社に限られません。
無駄なキャッシュはできるだけ払わないように、例えば、相見積もりや価格比較サイト等で相場の調査を行うことで、調達コストの引き下げが可能となります。

 

⑪在庫量の圧縮

商品仕入や製造等で在庫を持つ業種の場合には、在庫量を減らすことによって、キャッシュフローは改善します。在庫は現金が商品に変換されたものと捉えれば、在庫が売れずに残っている状態は、いわば現金が使えない状態で眠っていることと同じになります。
在庫量をチェックする指標として、以下の算定式で計算する「在庫回転率」があります。この「在庫回転率」とは、在庫が一定の期間に何回入れ替わったかを表す経営指標で、数字が大きいほど、在庫が早く入れ替わっている、つまり商品が効率よく販売されていて在庫量が少ないことを示しています。

在庫回転率(回) = 1年間の売上原価合計(円)  ÷ 1年間の平均の在庫額合計(円)

在庫回転率について、2007年の経済産業省の調査によると、小売業における年間の回転率は、小売業全体では11.4回、中小企業は9.5回、大企業は13.5回、また、製造業における年間の回転率は、製造業全体で11.1回、中小企業が12.6回、大企業が10.5回とされています。
これらを参考に在庫回転率等の指標をチェックしながら、事業の成長スピードに合わせて、少しずつ在庫を増やしたり、逆に過剰になったときは在庫は減らすように調整しつつ、キャッシュに余裕が持てる適正な在庫量とすることが必要です。

 

⑫使えない在庫や遊休資産の売却

起業して間もない会社にはあまり存在しませんが、売れない・使えない在庫や生産等に使っていない遊休資産は売却することで、キャッシュフローは改善されます。売却できない場合には廃棄も含めて検討します。一時的に損失が発生し利益を悪化させますが、在庫の保管コストや遊休資産の維持管理コストが削減できます。

 

⑬初期費用削減のためリースを活用

リースは購入のようにまとまった初期費用(初期投資)が不要で、その後の出費も一定額に抑えられるため、起業して間もない時期にはキャッシュフロー改善に有効な手段となります。
また、金融機関からの融資を設備や物件の購入に使わなくてすむので、借入枠をいざというときに備えてとっておくことができます。
ただし、一般的には、借りたお金で一括購入した方がリースよりも支払総額は少なくすむことが多いので、創業融資で設備資金を借りることができる場合等は購入の方がいい場合もあります。

※カーリースはリース会社が車を大量購入するので車両値引きが大きくお得なことが多いです。保田会計グループでも、オリックス(カーリース)の営業担当者を紹介することが可能です

なお、節税対策で活用できるオペレーティングリースについては、以下の記事をご参照ください。
節税最終手段の航空機リース(オペレーティングリース)とは

 

⑭消費税の免除

消費税の納税義務を免除してもらうことができれば、キャッシュフローは改善します。
新設法人(資本金が1,000万円未満)については、最初の上半期の売上が1,000万円以下もしくは給与が1,000万円以下であれば、消費税の納税義務が免除となります
ただし、あえて課税事業者を選択したほうがいいケースもありますので、事前に税理士等の専門家にご相談することをお勧めします。

 

⑮資金繰り表の作成

資金繰り表とは、一定期間における「現金収入」と「現金支出」を示す表であり、現金収支の動きを可視化したり、現金過不足の実態など把握するためのものです。
この資金繰り表を日次や月次で作成することで、キャッシュフローを日ごろから意識することになり、その結果、キャッシュフローが改善されることが多いです。
また、資金不足になることが予め予測できるため、新たに借入を行ったり、支払いを延期するなどの事前の対策が可能となり、黒字倒産を防ぐことができます。

 

まとめ

以上、今回は起業時・創業時のキャッシュフローを改善するための15の方法を「入金面」「支払面」「その他」の3つの観点で解説させていただきました。
起業・創業して間もない会社にとって、とくに「キャッシュフロー」は最も重要な要素の一つですので、この記事を参考に少しでも「キャッシュフロー改善」に取り組んでいただければ幸いです。
なお、「創業融資」を受けていない場合には、起業・創業時に必要な資金としてだけでなく、「将来」の融資にもつながる「創業融資」を改めて検討してみてはいかがでしょうか。

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