起業するために「資金(お金)」は最も重要な要素の一つです。
この起業資金が「どれくらい」かかるかを事前に把握しておくことで、起業(会社設立)に向けての自己資金の貯蓄や資金調達すべき額の目標を立てることができ、起業の準備をすることができます。
この記事では、起業資金を4つに分類し、必要な「起業資金の額」や「自己資金の額」について、例示や目安の金額を示しつつ、できるだけ具体的に解説します。
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起業資金の分類
始めに起業するときの必要な資金には、どんなものがあるのかを確認していきます。
起業資金は大きく分けると「設備資金」、「運転資金」、「その他諸費用」に分類されます。さらに、状況によっては、ここに「当面の生活資金」も加えて、必要な起業資金を見積もります。
まずは、これらの起業資金を分類した各項目について、イメージしやすいように一例を挙げてみます。
①「設備資金」:事業を始める際に必要な機械・備品を購入するための資金 ②「運転資金」:最初の仕入れ・オフィスの家賃・光熱費などの継続的に必要となる資金 ③「その他開業費用」:会社設立に係る登記関連費用・事務用品などを購入するための資金 ④「当面の生活資金」:起業家の生活費用3か月から半年分(起業直後は役員報酬を支給できないことも想定) |
なお、③「その他開業費用」となる創業費や開業費の留意点については、以下の記事もご参照ください。
創業費・開業費の留意点を解説!!(源泉徴収や費用化のタイミングは?)
必要な起業資金の額や自己資金の額とは
日本政策金融公庫が発表した「2020年度新規開業実態調査」によると、新しく開業した個人・会社の開業費用の平均額は989万円、開業費用の分布は500万円未満が43.7%と最も高くなっています。
もちろん、事業内容によって必要となる資金の額は異なりますので、起業にいくら資金が必要かという明確な基準はありませんが、一般的には①設備資金と③その他開業費用に、②運転資金と当面の生活資金の3~6ヶ月分を足したものが起業で必要な資金と言われています。
以下においては、①「設備資金」、②「運転資金」、③「その他開業費用」、④「当面の生活資金」について、もう少し具体的にイメージをしていただくために、資金の具体的な例示や目安の金額を説明します。
なお、「2020年度新規開業実態調査」によると、資金金調達額に占める自己資金の割合は平均22.2%、金融機関等からの借入は69.1%となっています。
これは、例えば、1,000万円の起業資金が必要な場合には、一般的に222万円は自己資金で、691万円は金融機関からの借入等で、残額は家族や知人からの借入や出資で賄うことを示しています。
また、公庫の創業融資においては、自己資金は10%以上あれば申請はできますが、審査を有利に通すためには、融資金額の30%~40%の自己資金はあった方がいいとも言われていますので、自己資金準備の一つの目安にしてください。
融資については、以下の記事もご参照ください。
創業時に使える新創業融資制度とは?
①「設備資金」の具体的な例示や目安の金額
次に①「設備資金」の具体的な例示や目安の金額を確認していきます。
・オフィスやテナントの保証金や敷金:オフィスの保証金は賃料の2ヶ月〜12ヶ月分(オフィスやテナントを構えない場合は0円) ・店舗の内外装工事費用:150万~1000万円程度 ・車両購入費:50万円程度~ ・備品の購入費用:5万~100万円程度 ・Webサイト作成費:25万~100万円程度 ・ソフトウェアの購入費:3万~50万円程度 |
②「運転資金」の具体的な例示や目安の金額(変動費・固定費の分類)
次に②「運転資金」の具体的な例示や目安の金額を確認していきます。
・従業員に支払う毎月の給料:平均25万~35万円程度(参考:東京都2021年の最低賃金1,041円/時) ・材料の仕入れ費用:各業種により様々ですが、飲食店の原価率は30%が目安 ・電気・ガス・水道の利用料:3万円程度~ ・毎月の家賃:20万円程度~(バーチャルオフィスの場合は3千円程度~) |
なお、創業計画で運転資金の計画を作るときは、上記の運転資金を「固定費」と「変動費」に分けて作成することが重要です。
売上の額に関係なく継続的に発生する費用である「固定費」には給料や家賃を分類し、売上の額に連動する費用である「変動費」には仕入れや水道光熱費を分類します。
③「その他開業費用」の具体的な例示や目安の金額
次に③「その他開業費用」の具体的な例示や目安の金額を確認していきます。
・株式会社の設立費用21.3万円程度(登録免許税:15万円、定款認証料:3.3万円、設立代行手数料:1万円、会社印鑑作成料:2万円) ・合同会社の設立費用9万円程度(登録免許税:6万円、設立代行手数料:1万円、会社印鑑作成料:2万円) ・名刺やゴム印などの購入費用:3千~2万円程度 ・打ち合わせのための交通費や飲食費:5千~5万円程度 ・チラシ印刷代:1万~5万円程度 |
不動産関連費用(通常の賃貸、レンタルオフィス、バーチャルオフィス)
起業をする場合には、自宅開業や事務所を建設する場合を除き、従来は事務所を借りることが一般的でしたが、来客が少ない会社や従業員のいない会社によっては、レンタルオフィスやバーチャルオフィスを借りるケースも最近では増えてきています。
そこで、以下においては参考情報として、「通常の賃貸物件を借りるケース」、「レンタルオフィスを借りるケース」、「バーチャルオフィスを借りるケース」のそれぞれにおける費用のイメージを確認します。
<不動産屋で物件の賃貸契約をする >
(東京の池袋×20坪の場合)
月の家賃平均:40万円程度 仲介手数料:40万円程度(家賃1か月分) 敷金・保証金:80万円程度(家賃2か月分) 礼金:80万円程度(家賃2か月分) 前払い家賃:40万円程度(家賃1か月分) 計:280万円程度 |
<共用のレンタルオフィスで1部屋を借りる>
(東京の池袋の個室プランで電話番号ありの場合)
入会金:なし~20万円程度 保証金:なし~20万円程度 月額利用料:8万~20万円程度 計:8万~60万円程度 |
<バーチャルオフィスで住所だけ借りる>
(東京・住所を法人登記して電話番号ありの場合)
月額利用料:5千~1.5万円程度 入会金・保証金:なし 電話代行・秘書サービス:+5千~1.5万円程度 計:5千円~3万円程度 |
起業資金はゼロでも開業はできるのか
独立や開業を考えている人の中には、開業時の起業資金(開業資金)がゼロの人もいると思います。
仮に開業資金がゼロであった場合であっても、問題なく開業できるのでしょうか?
答えは事業内容次第ということになりまが、詳細は以下の記事をご参照ください。
開業資金ゼロの人でも起業できるのか?
まとめ
以上、今回は必要な「起業資金の額」や「自己資金の額」について解説させていただきました。
この記事を参考にしつつ、起業(会社設立)を目指す方はある程度、資金に余裕をもって準備を進めることをお勧めします。
また、起業資金の全部を自己資金で賄う必要はなく、「創業融資」を活用することで、起業に向けての準備期間の短縮や創業時の資金繰りに余裕を持つこともできます。
さらに、「創業融資」は創業時に必要な資金を賄うことができるということだけでなく、その融資を受けた実績が「将来」の融資にもつながります。
是非、前向きに「創業融資」について、検討してみてはいかがでしょうか。
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