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「106万円の壁」を撤廃する案を厚生労働省が社会保障審議会へ提案し、承認されました。これはパートタイマーやアルバイトで働く多くの主婦層を中心に大きな変化となりますが、そもそも「106万円の壁ってなに?」「撤廃されると何が変わるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、106万円の壁の基本から撤廃後の影響、今からできる対策までわかりやすく解説します!
106万円の壁は年収の壁の一種で、年収の壁は他にも複数あります。
2025年の年収の壁の詳細は以下の記事をご参照ください。
2025年の年収の壁を漏れなく解説!110万・123万・150万・160万・200万
Table of Contents
1.そもそも「106万円の壁」とは?
「106万円の壁」とは、パートやアルバイトで働く人が年収106万円を超えると社会保険(健康保険・厚生年金)の加入義務が生じるラインを指します。
以下の5つの条件をすべて満たした場合、従業員本人が厚生年金や健康保険に加入しなければならなくなります。
(1) 106万円の壁の対象となる5つの条件(現行制度)
✓ 年収が106万円以上
✓ 勤務先の従業員数が101人以上 ✓ 勤務時間が週20時間以上 ✓ 雇用期間が2か月を超える見込み ✓ 学生でないこと |
この基準に該当すると、社会保険料が給与から天引きされ、手取り収入が減ることを避けるために、労働時間やシフトを調整する「働き控え」が生じるという現象が起きていました。
(2) なぜ「壁」と呼ばれるのか
「壁」と呼ばれる理由は、この金額を超えると急に社会保険料の負担が発生し、手取り収入が一時的に減ってしまうからです。
【社会保険料負担額と手取り額】
年収 | 社会保険料 | 手取り収入 | 前年比の手取り変化 |
105万円 | 0円 | 105万円 | - |
107万円 | 15万円 | 92万円 | △13万円 |
110万円 | 15.6万円 | 94.4万円 | △10.6万円 |
115万円 | 16.3万円 | 98.7万円 | △6.3万円 |
120万円 | 17万円 | 103万円 | △2万円 |
125万円 | 17.7万円 | 107.3万円 | +2.3万円 |
年収が105万円から2万円増えて107万円になったとたん、手取りが13万円減り、年収125万円でようやく105万円時の手取りを上回ります。
これが「働き損」と呼ばれる理由です。
2.現在起きている問題
この制度により、以下のような問題が発生しています。
(1) 働き控えの問題
多くの方が106万円を超えないよう、わざと働く時間を短くしています。「もっと働きたいけど、手取りが減るのは困る」という声が非常に多いのが現状です。
(2) 人手不足の深刻化
企業も「もっと働いてもらいたけど、従業員の手取りが減るのは申し訳ない」と感じ、結果として人手不足が解消されない状況が続いています。
3.2026年10月から何が変わるのか?撤廃の詳細
2024年12月、厚生労働省は106万円の壁を2026年10月に撤廃する方針を正式に決定しました。
(1) 撤廃の内容
106万円の壁の撤廃を含む、社会保険制度の変更点については下表の通りです。
【制度変更の比較表】
現在の制度 | 2026年10月以降 | |
適用基準 | 月収8.8万円以上 | 月収に関係なく |
労働時間 | 週20時間以上 | 週20時間以上 |
企業規模 | 101人以上 | 全企業 |
対象者数 | 約200万人 | 約500万人 |
つまり、月収がいくらでも、週20時間以上働けば社会保険に加入する必要がでてきます。
この変更により、社会保険の対象となる者は約500万人となり、現在の2.5倍ほどに増加する見込みです。
(2) なぜ撤廃しようとしているのか?撤廃の背景や効果
撤廃の背景は以下の通りです。
①働き控えの解消
「壁」を無くすことで、働きたい人が自由に働けるようになり、労働力不足の解消にもつながります。
②公平性の確保
現在の制度では、たとえば同じ時間・同じ内容で働いていても、「年収が106万円を超えるかどうか」で社会保険加入の有無が分かれることがあります。
また、加入義務のある条件(従業員数101人以上の会社など)を満たすかどうかで変わるため、勤務先や状況によって不公平が生じているという批判もあります。
こうした不平等をなくして、どこで働いても同じルールになるようにしたいというのが背景です。
③年金制度の安定化
社会保険に加入する人が増えると、健康保険料・年金保険料を多くの人から集められるようになります。
これは「今の高齢者に支払う年金の財源」にもなっているため、制度そのものの支えになります。
日本は少子高齢化が進んでいる為、年金受給者は増加、支える若い世代は減少というバランスの悪化が起きています。
パートや短時間労働の人にも社会保険に加入してもらうことで、年金制度を持続可能にする狙いがあります。
また、撤廃後の背景や撤廃後の効果は下表の通りです。
【撤廃の背景と撤廃後の効果】
背景 | 内容 | 期待される効果 |
働き控えの解消 | 壁を気にせず働けるようになる | 労働力の確保、収入アップ |
公平性の確保 | 同じ働き方に同じ保険適用 | 労働者間の不公平解消 |
年金制度の安定化 | 加入者を増やして支え手を確保 | 社会保障制度の持続 |
4.撤廃されたらどうなる?働き方への影響は?
「106万円の壁」が撤廃されたら、働き方や暮らしにどんな影響があるのでしょうか?
(1) 106万円の壁撤廃で起こる手取り額シミュレーション
現在の年収や勤務先の規模によって、受ける影響は大きく異なり、年間15万円以上の手取り減少する人もいれば、変化がない人もいます。
【ケース別影響シミュレーション表】
ケース | 現在の状況 | 撤廃後の変化 | 手取り変化 | 対策の選択肢 |
年収90万円 | 社会保険なし
(週18時間勤務) |
変化なし
(週20時間未満) |
変化なし | 時間増加検討 |
年収105万円 | 社会保険なし
(週20時間勤務) |
社会保険加入
保険料年14万円 |
△14万円 | 時間調整 0r 増加 |
年収110万円
(小規模企業) |
社会保険なし | 社会保険加入
保険料年15.6万円 |
△15.6万円 | 時給交渉が重要 |
年収120万円 | 社会保険加入済 | 変化なし | 変化なし | 労働時間増加検討 |
(2) 社会保険加入のメリット・デメリット
社会保険に入ると手取りが減るとデメリットだけが強調されていますが、長期的に見ると、年金受取額の増加や医療保障の充実、キャリアアップの機械増加などのメリットもあります。
【社会保険加入の短期的影響と長期的影響】
短期的影響(1~3年) | 長期的影響(10年以上) | |
手取り収入 | 年間14万~18万円減少 | 労働時間増加で回復可能 |
年金受取額 | 変化なし | 月2,000円~3,000円増加 |
医療保障 | 傷病手当金等が利用可能 | 継続的な保障充実 |
働き方の自由度 | 106万円を気にせず働ける | キャリアアップ機会増 |
家計への負担 | 保険料負担で圧迫 | 将来保障で安心感向上 |
106万円の壁が撤廃されて、社会保険に加入することになると、基礎年金だけでなく厚生年金を将来に受給できるようになるため、月2,000円~3,000円程度の年金受取額が増加します。
5.今からできる準備と対策
「106万円の壁」が撤廃される前に、次のような今からできる準備と対策をとることが重要です。
(1) 働き方の選択肢を検討
選択肢A:労働時間20時間未満に調整
おすすめの方
✓家事や育児を優先したい ✓配偶者の扶養内で働きたい ✓社会保険料の負担を避けたい |
選択肢B:社会保険加入を前提に労働時間を増やす
おすすめの方
✓将来の年金額を増やしたい ✓医療保険を充実させたい ✓キャリアアップを目指したい |
(2) 家計の見直し・シミュレーション
手取りが減るかもしれないと不安になる方も多いと思いますが、実際には月額数千円~1万円程度の変動にとどまるケースも少なくありません。
それでも生活への影響を最小限にするには、家計全体の見直しが有効です。
また、働き方を増やす場合には、育児や家事とのバランスも考えたライフプランの再構築が必要です。
6.まとめ
「106万円の壁」の撤廃は、パート・アルバイトとして働く多くの方々にとって、働き方や収入、将来の年金にまで影響を与える大きな制度改正です。
これまで年収106万円を超えると社会保険の加入義務が生じ、手取りが減ることから「働き控え」や「働き損」といった課題が生じていました。しかし、2026年10月からは企業規模や年収に関係なく、週20時間以上働けば社会保険に加入する仕組みに変わります。これにより、制度の公平性が高まり、労働意欲を削ぐ「壁」の存在も解消されることが期待されます。
一方で、社会保険料の負担によって短期的に手取り収入が減少するケースもあるため、各家庭での家計見直しや労働時間の再調整、将来を見据えたライフプランの再設計が重要になります。社会保険に加入することで将来的には年金受取額の増加や医療保障の充実といったメリットも得られるため、短期的な損得にとらわれず、長期的な視点で判断することが大切です。
各家庭での働き方や家計状況に応じたシミュレーション等については、複雑な計算なども必要となるため、税理士などの専門家のサポートを活用することをおすすめします。
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