確定申告は、申告書を提出すれば終わりではありません。期限までに納税を終えて、はじめ確定申告の完了となります。
この納税の方法としては、従来は納付書を使用して、金融機関や税務署で現金で納付する方法が一般的でしたが、現在では、キャッシュレスで税金を納付する方法がその便利さから、かなり普及してきています。
ただし、キャッシュレス納付にはいくつかの方法があることから、いざキャッシュレス納付を始めようと思っても、実際にどの方法を利用すればいいのかご自身で判断することはかなり難しいです。
そこで今回は、キャッシュレス納付に分類される各方法の「概要」や「メリット」、「注意点」、「手続き」、「ケース別のお勧めの方法」などを詳しく解説します。
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キャッシュレス納付とは
キャッシュレス納付とは、税金を⾦融機関や税務署等の窓⼝に赴くことなく、自宅やオフィスから非対面で納付することができる納税方法です。
キャッシュレス納付全般に共通するメリットとしては、次のような点が挙げられます。
✓手許現金の準備が不要
✓金融機関や税務署に赴くことが不要 ✓窓口等で税金を納付する手間を省くことができる ✓非対面のため、金融機関や税務署の営業時間を気にしなくていい(利用時間は決まっているものもあります) |
上記のような、利便性が評判となり、「金融機関や税務署の窓口で納付書を使って現金納付する従来の方法」に代わって、キャッシュレス納付はかなり普及してきています。
納税方法の種類
キャッシュレス納付には、現在大きく分けて、5つの方法(振替納税、ダイレクト納付、インターネットバンキングによる納付、クレジットカード納付、スマホアプリ納付)があります。
これに、QRコードによるコンビニ納付と納付書による窓口納付を加えた7つの納税方法から、利用者は任意の方法を選んで税金を納付することになります。
それぞれの納税方法ごとの主な特徴は下表の通りです。
納税方法の種類 | キャッシュレス | 利用できる税目 | 具体的な方法 |
(1)振替納税 | 〇 | 所得税、消費税
※ 個人のみ |
一定の日に口座振替で納付 |
(2)ダイレクト納付 | 〇
(いわゆる電子納税) |
全ての税目 | 即時又は指定日に口座振替で納付 |
(3)インターネットバンキングによる納付
※ 登録方式と入力方式がある |
〇
(いわゆる電子納税) |
登録方式:全ての税目
入力方式:所得税、消費税など6つの税目のみ(贈与税、相続税、源泉所得税は利用できない) |
インターネットバンキングやATMから納付 |
(4)クレジットカード納付 | 〇 | 全ての税目 | 「国税お支払サイト」からクレジットカードで納付 |
(5)スマホアプリ納付 | 〇 | 全ての税目 | 「国税スマートフォン決済専用サイト」からPay払いで納付 |
(6)QRコードによるコンビニ納付 | × | 全ての税目 | 国税庁のQRコード作成システム等から作成したQRコードを使って、コンビニで現金納付 |
(7)納付書による窓口納付 | × | 全ての税目 | 金融機関又は所轄税務署の窓口で納付書を使って現金納付 |
上記の納税方法のうち、キャッシュレス納付に分類される各方法について、具体的な「概要」や、「メリット」、「注意点」、「手続き」などを以下で確認します。
(1)振替納税
振替納税とは、個人では一番よく使われているキャッシュレス納付の1つです。
口座振替依頼書を税務署に提出するだけで、決められた日に自分の口座から自動的に引き落としによって税金の納付をすることができます。
①振替納税のメリット
振替納税における固有のメリットは、次の通りです。
✓一度手続きをしておけば、翌年以降も自動で口座振替ができる
✓所得税などの納付を1カ月ほど遅らせることができる ※ |
※ 例えば、令和5年分の所得税や消費税についての口座振替日は次のように決められています。
申告所得税 | 消費税等 | |
納付期限 | 令和6年3月15日 | 令和6年4月1日 |
振替日 | 令和6年4月23日 | 令和6年4月30日 |
②振替納税の注意点
振替納税の主な注意点は、次の通りです。
✓利用できる税目が、所得税や個人事業者の消費税等に限られており、贈与税や相続税には利用できない
✓残高不足の場合、振替納税ができず、延滞税が発生する ✓振替納税を利用する税金の振替日は毎年曜日などで変わる ✓領収証書は発行されない |
③振替納税の手続き
振替納税を利用するための事前準備や納付時の手続きは、次の通りです。
✓新たに振替納税を利用する場合には、納付期限までに「預貯金口座振替依頼書」をオンライン(e-Tax)で提出するか、書面で税務署又は利用する金融機関に提出する
✓振替日を確認し、振替日の前日までに預貯金口座に残高を入金しておく ✓振替日に口座振替で納付される |
振替納税の詳細は、以下の国税庁サイトをご参照ください。
G-2-1 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付|国税庁 (nta.go.jp)
(2)ダイレクト納付
ダイレクト納付とは、顧問税理士が関与している場合によく使われているキャッシュレス納付(電子納税)の1つです。
事前に税務署に届出をしておくことで、e-Taxを利用して電子申告を行った後に、届出をした自分の口座から振替によって、税金の納付をすることができます。
①ダイレクト納付のメリット
ダイレクト納付における固有のメリットは、次の通りです。
✓納付手続が簡単(電子申告等の後、簡単な操作で納付手続が完了)
✓インターネットバンキングの契約が不要 ✓即時又は期日を指定して納付することが可能 ✓税理士が納税者に代わって納付手続を行うことが可能 ✓税理士が納税者に代わって電子申告した「納付情報登録依頼」を利用する場合は、電子証明書やICカードリーダーが不要 |
②ダイレクト納付の注意点
ダイレクト納付の主な注意点は、次の通りです。
✓利用届出書を提出してから、利用可能となるまで書面提出であれば1か月程度(e-Taxによる提出は各金融機関による)かかる
✓紙面による提出の場合には、金融機関届印の押印が必要 ✓領収証書は発行されない ✓ネット銀行は利用できない可能性が高い(令和6年1月時点では、GMOあおぞらネット銀行のみ対応) |
③ダイレクト納付の手続き
ダイレクト納付を利用するための事前準備や納付時の手続きは、次の通りです。
✓ダイレクト納付を利用する場合には、事前に税務署へe-Taxの利用開始手続を行った上で、「ダイレクト納付利用届出書」を税務署に提出する
✓即時納付の場合には登録までに、期日を指定して納付する場合にはその前日までに預貯金口座に残高を入金しておく ✓即時又は指定日に口座振替で納付される |
なお、個人については、「ダイレクト納付利用届出書」をe-Taxソフト(Web版)やe-Tax(SP版)からオンライン(e-Tax)で提出することができますが、この場合には、電子証明書だけでなく金融機関届印も不要となります。
ダイレクト納付のための、具体的な操作方法等は以下の記事をご参照ください。
記事
また、ダイレクト納付の詳細は以下の国税庁サイトをご参照ください。
G-2-2 ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)の手続|国税庁 (nta.go.jp)
(3)インターネットバンキングによる納付
インターネットバンキングによる納付とは、キャッシュレス納付(電子納税)の1つです。
事前に税務署へe-Taxの利用開始手続を行った上で、納付情報を登録又は入力することで、インターネットバンキングやATMから、税金の納付をすることができます。
①インターネットバンキングによる納付のメリット
インターネットバンキングによる納付における固有のメリットは、次の通りです。
✓納付手続が簡単(電子申告の場合、受信通知からインターネットバンキングへログインして、納付手続が完了)
✓金融機関届印を押印する書類の提出は不要 ✓税理士が納税者に代わって電子申告した「納付情報登録依頼」を利用する場合や、「入力方式」を使用する場合などにおいては、電子証明書やICカードリーダーが不要 |
②インターネットバンキングによる納付の注意点
インターネットバンキングによる納付の主な注意点は、次の通りです。
✓インターネットバンキングの契約が必要
✓ご利用の金融機関がPay-easy(ペイジー)に対応していることが必要 ✓ダイレクト納付と比べると少し手数が増える ✓インターネットバンキングやATM等を利用するための手数料がかかる場合がある ✓領収証書は発行されない |
③インターネットバンキングによる納付の手続き
インターネットバンキングによる納付を利用するための事前準備や納付時の手続きは、次の通りです。
✓インターネットバンキングによる納付を利用する場合には、あらかじめインターネットバンキング口座またはモバイルバンキング口座を開設した上で、事前に税務署へe-Taxの利用開始手続を行う
✓預貯金口座に残高を入金しておく ✓インターネットバンキングで納付を行う |
インターネットバンキングによる納付のための、具体的な操作方法等は以下の記事をご参照ください。
電子納税の1つである「インターネットバンキングによる納付方法(登録方式)」を画像付きで詳しく解説!
また、インターネットバンキングによる納付の詳細は、以下の国税庁サイトをご参照ください。
G-2-3 インターネットバンキング等からの納付手続|国税庁 (nta.go.jp)
(4)クレジットカード納付
クレジットカード納付とは、キャッシュレス納付の1つです。
事前の届出等は不要で、インターネット上でのクレジットカード支払の機能を利用して、「国税お支払サイト」から税金の納付をすることができます。
①クレジットカード納付のメリット
クレジットカード納付における固有のメリットは、次の通りです。
✓クレジットカードのポイントが貯まる
✓支払回数を複数回にすることやリボ払いを選択することで、税金の分割払いができる ✓納付手続が簡単(電子申告の場合、受信通知から「国税お支払サイト」へアクセスして、納付手続が完了) ✓電子証明書やICカードリーダーが不要 |
なお、クレジットカード納付のメリット等に関しては、以下の記事もご参考になさってください。
税金をクレジットカードで支払ってお得にポイント還元 – 保田会計事務所|税務・コンサル・会計・その他経営に関わる全てを総合的にサポート (yg-tax.net)
②クレジットカード納付の注意点
クレジットカード納付の主な注意点は、次の通りです。
✓決済手数料がかかる(下表を参照)
✓ダイレクト納付と比べると少し手数が増える ✓地方税の場合、地方自治体によってクレジットカード納付への対応にかなり差がある ✓領収証書は発行されない |
<決済手数料>
納付税額 | 決済手数料(税込) |
1円~10,000円 | 83円 |
10,001円~20,000円 | 167円 |
20,001円~30,000円 | 250円 |
30,001円~40,000円 | 334円 |
40,001円~50,000円 | 418円 |
以降も同様に10,000円を超えるごとに決済手数料が加算 |
③クレジットカード納付の手続き
クレジットカード納付を利用するための事前準備や納付時の手続きは、次の通りです。
✓クレジットカード納付を利用する場合には、事前の届出等は不要
✓税務署へ納付する税目や金額の分かるもの(確定申告書等)と、利用するクレジットカードを準備する ✓専用サイト(国税クレジットお支払サイト)へアクセスして、納付を行う |
なお、e-Taxを利用して電子申告の送信をした後に、メッセージボックスに格納される受信通知から「国税クレジットカードお支払サイト」にアクセスすることで、税金の種類(税目)や課税期間、申告区分(確定申告など)及び納付税額の情報がe-Taxから引き継がれるため、これらの入力作業を省くことができます。
ただし、e-Taxを利用するためには、事前に税務署へe-Taxの利用開始手続を行うことが必要です。
詳細は以下の国税庁サイトをご参照ください。
G-2-4 クレジットカード納付の手続|国税庁 (nta.go.jp)
(5)スマホアプリ納付
スマホアプリ納付とは、キャッシュレス納付の1つです。
事前の届出等は不要で、「国税スマートフォン決済専用サイト」からPay払い(例えば、PayPay、d払い、auPAY、LINE Pay、メルペイ、Amazon Pay、Rakuten Payなど)を利用して税金の納付をすることができます。
①スマホアプリ納付のメリット
スマホアプリ納付における固有のメリットは、次の通りです。
✓ポイントが貯まるPay払いがある(例えば、au PAYでは0.5%)
✓納付手続が簡単(電子申告の場合、受信通知から納税用QRコードを表示し、スマートフォンで読み取り、「国税決済専用サイト」へアクセスして、納付手続が完了) ✓クレジットカード納付のような決済手数料がかからない ✓電子証明書やICカードリーダーが不要 |
②スマホアプリ納付の注意点
スマホアプリ納付の主な注意点は、次の通りです。
✓ポイントが貯まらないPay払いもあるため確認が必要
✓ダイレクト納付と比べると少し手数が増える ✓地方税の場合、地方自治体によってスマホアプリ納付への対応にはかなり差がある ✓領収証書は発行されない ✓納付できる金額は30万円以下 |
③スマホアプリ納付の手続き
スマホアプリ納付を利用するための事前準備や納付時の手続きは、次の通りです。
✓スマホアプリ納付を利用する場合には、事前の届出等は不要
✓税務署へ納付する税目や金額の分かるもの(確定申告書等)と、スマートフォンを準備する ✓Pay払いのアカウン卜登録及び残高にチャージを行う ✓国税専用サイトへアクセスして、納付を行う |
なお、e-Taxを利用して電子申告の送信をした後に、メッセージボックスに格納される受信通知から「国税スマートフォン決済専用サイト」にアクセスすることで、税金の種類(税目)や課税期間、申告区分(確定申告など)及び納付税額の情報がe-Taxから引き継がれるため、これらの入力作業を省くことができます。
ただし、e-Taxを利用するためには、事前に税務署へe-Taxの利用開始手続を行うことが必要です。
スマホアプリ納付の詳細は、以下の国税庁サイトをご参照ください。
G-2-5 スマホアプリ納付の手続|国税庁 (nta.go.jp)
ケース別のお勧めのキャッシュレス納付の方法
最後にキャッシュレス納付がどのような人にお勧めできるのかについて、基本的な考え方や具体的なケース4つを確認します。
(1)キャッシュレス納付がどのような人にお勧めできるのか基本的な考え方
キャッシュレス納付がどのような人にお勧めできるのかについて、基本的な考え方は次の通りです。
✓振替納税が利用できる人(法人は不可)は、開始手続きが簡便な振替納税がお勧め
✓振替納税が利用できない人は、ダイレクト納税がお勧め ✓振替納税が利用できない人で、ダイレクト納税の開始手続きが面倒な場合には、インターネット納付かクレジットカード納付がお勧め ✓クレジットカードのポイントを貯めたい方はクレジットカード納付がお勧め ✓スマホアプリ納付は納付できる金額が30万円以下でポイントが貯まらないPay払いもあるため、あまりお勧めしない |
上記を踏まえ、具体的なケース別のお勧めのキャッシュレス納付の方法は以下の通りです。
(2)【ケース①】個人事業主の場合
個人の所得税と消費税に利用できる振替納税が基本で、クレジットカードのポイントを貯めたい方はクレジットカード納付がお勧めです。
(3)【ケース②】贈与税がスポットで発生する場合
贈与税は振替納税が利用できず、また、スポットの場合には、ダイレクト納税の開始手続きが少し面倒に感じます。
そのため、贈与税にも利用できるインターネット納付かクレジットカード納付が基本で、特にクレジットカードのポイントを貯めたい方はクレジットカード納付がお勧めです。
(4)【ケース③】贈与税が毎年継続的に発生する場合
贈与税は振替納税が利用できません。
そのため、贈与税にも利用できるダイレクト納税が基本です。ただし、ダイレクト納税の開始手続きが面倒な場合にはインターネット納付かクレジットカード納付がお勧めで、特にクレジットカードのポイントを貯めたい方はクレジットカード納付がお勧めです。
(5)【ケース④】法人の場合
法人は振替納税が利用できません。
そのため、法人でも利用できるダイレクト納税が基本です。ただし、ダイレクト納税の開始手続きが面倒な場合にはインターネット納付かクレジットカード納付がお勧めで、特にクレジットカードのポイントを貯めたい方はクレジットカード納付がお勧めです。
まとめ
以上今回は、キャッシュレス納付に分類される各方法の「概要」や「メリット」、「注意点」、「手続き」、「ケース別のお勧めの方法」などを詳しく解説させていただきました。
キャッシュレス納付とは、税金を⾦融機関や税務署等の窓⼝に赴くことなく、自宅やオフィスから非対面で納付することができる納税方法です。
このキャッシュレス納付には、5つ(振替納税、ダイレクト納付、インターネットバンキングによる納付、クレジットカード納付、スマホアプリ納付)も方法があることから、いざキャッシュレス納付を始めようと思っても、実際にどの方法を利用すればいいのかご自身で判断することは難しいです。
そのため、上記の「ケース別のお勧めのキャッシュレス納付の方法」をご覧いただき、自分にあった方法をご選択下さい。
「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループでは、ペーパレス化の推進もあり、クライアントのキャッシュレス納付の普及に力を入れています。
そのため、キャッシュレス納付や電子納税について、少しでもご興味がある方は、お気軽に以下の弊所サイトから、フォーム入力やLINEでご連絡ください。