会社員の節税対策として、人気のある「ふるさと納税」が2023年10月に改悪されることが公表されました。
2019年には、高額な返礼品や地場産品でない返礼品が問題となり、「返礼品は寄付金額の3割以下として、返礼品は地場産品とする」といったルールが既に導入されていますが、今後はこれらのルールがさらに厳しくなります。
そこで今回は、ふるさと納税に関して、「制度概要」や「改悪される内容」、「影響と対策」などを分かりやすく解説します。
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ふるさと納税とは?
ふるさと納税とは、応援したい地方自治体に寄付をすると、寄付した分から2,000円を差し引いた金額(限度額を超えない場合)が所得税や住民税から控除でき、さらにはお肉やお米などの地域の特産品が返礼品としてもらえる制度です。
ふるさと納税の仕組みとしては、翌年の住民税を前払いしている形となるため、直接的な節税効果はありませんが、寄付額の3割程度の返礼品がもらえることから、かなりお得な制度です。
例えば、寄付金の控除限度額を超えない範囲で30万円を寄付した場合には、所得税や住民税が29.8万円(=30万円-2千円)減額でき、さらに9万円ほど(30万円×30%)ほどの返礼品がもらえます。
つまり、この例では、 たった2千円の負担で9万円ほどの返礼品がもらえることとなり、実質的な節税対策として広く活用されています。
ふるさと納税が2023年10月より改悪される
2023年6月に総務省は、ふるさと納税のルールの見直し(告示の改正)を2023年10月に実施することを公表しました。
このルール見直しの趣旨は、「ふるさと納税制度の本来の趣旨(地域貢献等)に沿った運用の適正化」とされていますが、基本的にルールは厳しくなる方向で変更されることから、ふるさと納税を返礼品目的で活用していた人にとっては、制度が改悪されることとなります。
ふるさと納税のルール見直しに関する詳細は、以下の総務省広報サイトをご参照ください。
ふるさと納税の次期指定に向けた見直し
改悪される内容とは?
ふるさと納税制度の改悪とされるルールの変更点は、次の2つです。
(1)経費ルールの変更
(2)地場産基準の変更 |
詳細は以下で確認します。
(1)経費ルールの変更
経費ルールについては、以下の通り、変更される「5割ルール」と現状維持される「3割ルール」があり、それぞれのルールを守る必要があります。
①変更される「5割ルール」
ふるさと納税の実施において、地方自治体側では、寄附金の受領書発行や送料、住民税控除に関する地方自治体同士の情報共有にかかる費用、ワンストップ特例制度などの諸経費が発生します。
「5割ルール」とは、返礼品の本体価格に経費をプラスして寄付額の5割以下にしなければならないというルールです。
変更されるのは、この経費の取り扱いで、経費の範囲に、以下の「隠れ経費」と言われていた費用が追加されます。
✓ワンストップの特例事務の費用
✓寄附金受領証の発行+発送費用 ✓その他の付随費用 |
一部の地方自治体では、これらの費用を加味すると、経費が5割を超える場合もあるとされています。そのため、このルール変更によって、寄付額の増加が見込まれたり、返礼品の品質に影響が出たりする可能性があると言われています。
②現状維持される「3割ルール」
「3割ルール」とは、返礼品は寄付額の3割以下にしなければならないというルールです。
このルールは以前のままで、特に変更はありません。
(2)地場産基準の変更
返礼品は、その地方自治体の地場産業活性化を促すため、基本的には地場産品に限られていたものの、熟成肉などの加工や製造の一部を自治体内で行ってる場合であっても、これまでは返礼品の対象となっていました。
変更されるのは、この地場産基準で、今後は次のような取り扱いとなります。
✓熟成肉・精米の返礼品は、原材料が同一都道府県産のみとする
✓他地域産の品と地元産の品をセットにする場合には、地元産の品が全体価格の7割以上とする |
このルール変更によって、今後、次のようなものは、返礼品から除外されることとなります。
✓他地域の米を取り寄せて地元で精米したもの
✓海外や他地域から取り寄せた原料を地元で加工してハンバーグにしたもの ✓地元の品と他地域の品のセット商品で、他地域の品が多いもの |
ふるさと納税の改悪による影響
ふるさと納税の改悪による影響として、次の3点が考えられます。
(1)寄付金額が上がる
(2)返礼品の質が下がる又は量が減る (3)返礼品のラインナップが減る |
上記のような影響により、結果的に返礼品の還元率が下がることが懸念されています。
詳細は以下で確認します。
(1)寄付金額が上がる
地方自治体は変更後の経費の範囲内でも「5割ルール」を守る必要があるため、経費削減によっても経費の割合を5割以下にできない場合には、寄付額自体を上げることで、何とかルールをクリアするように調整を図ることが考えられます。
(2)返礼品の質が下がる又は量が減る
上記(1)のように、地方自治体は「5割ルール」を守る必要がありますが、経費には返礼品の費用も含まれていることから、返礼品の費用を抑えて、何とかルールをクリアするように調整を図ることが考えられます。
その場合には、返礼品の質が落ちたり量が減ったりすると考えられます。
(3)返礼品のラインナップが減る
これまで返礼品として人気だった返礼品が、厳しくなる地場産基準をクリアすることができない場合、地方自治体は返礼品としての提供自体ができなくなることが考えられます。
ふるさと納税の改悪前に寄付したほうがいい?
2023年6月27日時点で見直しされるルールが総務省から公表されましたが、具体的な返礼品や寄付金額がどうなるかについて、地方自治体等からの発表は確認できていません。
一方で、地方紙などの情報によると、返礼品や寄付金に影響はでないように調整の目途が立っている地方自治体もあるようです。
ただし、ふるさと納税の改悪によって、実際にどのような影響がでてくるかについては、2023年10月になるまで分からない可能性が非常に高いです。
そのため、あらかじめ欲しい返戻品が決まっている場合には、返礼品や寄付金額に変更がある可能性を考慮して、保守的に9月末までに寄付を行うことをお勧めします。
個人の節税に関するその他の記事
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まとめ
以上今回は、ふるさと納税に関して、「制度概要」や「改悪される内容」、「影響と対策」などを分かりやすく解説いたしました。
ふるさと納税制度の改悪によって、具体的な返礼品や寄付金額がどうなるかについては、はっきりと分からない状況です。
ただし、あらかじめ欲しい返戻品が決まっている場合には、返礼品や寄付金額に変更がある可能性を考慮して、9月末までに寄付を行うことをお勧めします。
なお、ふるさと納税制度は、多くの寄付を獲得したい地方自治体間での過度な競争や問題が起きる度に法律が改正されており、国(総務省)と地方自治体との「いたちごっこ」となっています。
そのため、忙しい会社員や個人事業主が「ふるさと納税制度」の上手な活用方法を全て理解することは難しいことも考えられます。
そのような場合には、会社員や個人事業主(フリーランスなど)の節税対策を得意としている「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループにお気軽にご相談ください。