労働保険に関して、「一元適用事業と二元適用事業」や「年度更新」についての「よくある質問」に対する回答・解説をまとめましたので、ご参考になさってください。
Table of Contents
一元適用事業と二元適用事業の違いとは?
ここでは、「一元適用事業と二元適用事業の定義」や、「該当する業種」、「申告・納付方法」、「労働保険の手続き」などを確認します。
(1)「一元適用事業」と「二元適用事業」とは?
労働保険(労災保険と雇用保険)には、「一元適用事業」と「二元適用事業」があります。
労災保険と雇用保険を一元的に(1つにまとめて)申告・納付する事業を「一元適用事業」と呼び、労災保険と雇用保険を二元的に(それぞれ別個に)申告・納付する事業を「二元適用事業」と呼びます。
(2)「該当する業種」や「申告・納付方法」などの違い
一元適用事業と二元適用事業に関して、「該当する業種」や「申告・納付方法」などの違いは下表の通りです。
一元適用事業 | 二元適用事業 | |
該当業種 | ✓右記以外の事業
なお、ほとんどの事業は、一元適用事業に該当します。 |
✓都道府県及び市町村の行う事業 ✓都道府県に準ずるもの及び市町村に準ずるものの行う事業 ✓港湾運送の事業 ✓農林水産の事業 ✓建設の事業 ※ |
申告・納付方法 | 労災保険と雇用保険を一元的に(1つにまとめて)申告・納付 | 労災保険と雇用保険を二元的に(それぞれ別個に)申告・納付 |
※ 建設の事業についての詳細は、以下の「(4)「二元適用事業」の建設の事業とは?」をご参照ください。
(3)労働保険の手続きにおける順番等の違い
労働保険の手続きは、いずれも保険関係が成立した日の翌日から10日以内に行うことになっています。
一元適用事業・二元適用事業、いずれの場合も、所轄の「労働基準監督署」と「ハローワーク(公共事業安定所)」の両方で手続きを行います。
労働保険の手続きにおける、順番等の違いは下表の通りです。
一元適用事業 | 二元適用事業 | |
保険関係成立届 | <労災保険と雇用保険>
所轄の労働基準監督署 |
<労災保険>
所轄の労働基準監督署 <雇用保険> 所轄のハローワーク |
概算保険料申告書 | <労災保険と雇用保険>
以下のいずれか |
<労災保険>
以下のいずれか <雇用保険> 以下のいずれか |
保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書 | <労災保険と雇用保険>
日本銀行(代理店、歳入代理店(全国の銀行・信用金庫の本店又は支店、郵便局)でも可) |
<労災保険と雇用保険>
日本銀行(代理店、歳入代理店(全国の銀行・信用金庫の本店又は支店、郵便局)でも可) ※ 労災保険と雇用保険をそれぞれ別に提出 |
雇用保険適用事業所設置届 | <労災保険>
所轄のハローワーク |
<労災保険>
所轄のハローワーク |
雇用保険被保険者資格取得届 | <労災保険>
所轄のハローワーク |
<労災保険>
所轄のハローワーク |
提出の順番 | 以下の順番を遵守
①労働基準監督署 |
以下の順番は問われない
①労働基準監督署 |
出典:厚生労働省_労働保険の成立手続 (mhlw.go.jp)
(4)「二元適用事業」の建設の事業とは?
「二元適用事業」における建設の事業について、具体的な事業の種類は下表の通りです。
事業の種類 | 事業の種類の細目 |
31 水力発電施設 | 3101 水力発電施設新設事業 水力発電施設の新設に関する建設事業及びこれに附帯して当該事業現場内において行われる事業(発電所又は変電所の家屋の建築事業、水力発電施設新設事業現場に至るまでの工事用資材の運送のための道路、鉄道又は軌道の建設事業、建設工事用機械以外の機械若しくは鉄管の組立て又はすえ付けの事業、送電線路の建設事業及び水力発電施設 新設事業現場外における索道の建設事業を除く。) |
31 隧道等新設事業 | 3102 高えん堤新設事業 基礎地盤から堤頂までの高さ20メートル以上のえん堤(フイルダムを除く。)の新設に関する建設事業及びこれに附帯して当該事業現場内において行われる事業(高えん堤新設事業現場に至るまでの工事用資材の運送のための道路、鉄道又は軌道の建設事業、建設工事用機械以外の機械の組立て又はすえ付けの事業及び高えん堤新設事業現場外における索道の建設事業を除く。) 3103 隧(ずい)道新設事業 隧道の新設に関する建設事業、隧道の内面巻替えの事業及びこれらに附帯して当該事業現場内において行われる事業(隧道新設事業の態様をもつて行われる道路、鉄道、軌道、水路、煙道、建築物等の建設事業(推進工法による管の埋設の事業を除く。)を含み、内面巻立て後の隧道内において路面ほ装、砂利散布又は軌条の敷設を行う事業及び内面巻立て後の隧道内における建築物の建設事業を除く。) |
32 道路新設事業 | 3201 道路の新設に関する建設事業及びこれに附帯して行われる事業 |
33 ほ装工事業 | 3301 道路、広場、プラツトホーム等のほ装事業 3302 砂利散布の事業 3303 広場の展圧又は芝張りの事業 |
34 鉄道又は軌道新設事業 | 次に掲げる事業及びこれに附帯して行われる事業(建設工事用機械以外の機械の組立て又はすえ付けの事業を除く。) 3401 開さく式地下鉄道の新設に関する建設事業 3402 その他の鉄道又は軌道の新設に関する建設事業 |
35 建築事業(38 既設建築物設備工事業を除く) |
次に掲げる事業及びこれに附帯して行われる事業(建設工事用機械以外の機械の組立て又はすえ付けの事業を除く。) 3501 鉄骨造り又は鉄骨鉄筋若しくは鉄筋コンクリート造りの家屋の建設事業(3103 隧道新設事業の態様をもつて行われるものを除く。) 3502 木造、れんが造り、石造り、ブロツク造り等の家屋の建設事業 3503 橋りよう建設事業 イ 一般橋りようの建設事業 ロ 道路又は鉄道の鉄骨鉄筋若しくは鉄筋コンクリート造りの高架橋の建設事業 ハ 跨線道路橋の建設事業 ニ さん橋の建設事業 3504 建築物の新設に伴う設備工事業(3507 建築物の新設に伴う電気の設備工事業及び3715 さく井事業を除く。) イ 電話の設備工事業 ロ 給水、給湯等の設備工事業 ハ 衛生、消火等の設備工事業 ニ 暖房、冷房、換気、乾燥、温湿度調整等の設備工事業 ホ 工作物の塗装工事業 ヘ その他の設備工事業 3507 建築物の新設に伴う電気の設備工事 3508 送電線路又は配電線路の建設(埋設を除く。)の事業 3505 工作物の解体(一部分を解体するもの又は当該工作物に使用されている資材の大部分を再度使用することを前提に解体するものに限る。)、移動、取りはずし又は撤去の事業 3506 その他の建築事業 イ 野球場、競技場等の鉄骨造り又は鉄骨鉄筋若しくは鉄筋コンクリート造りのスタンドの建設事業 ロ たい雪覆い、雪止め柵、落石覆い、落石防止柵等の建設事業 ハ 鉄塔又は跨線橋(跨線道路橋を除く。)の建設事業 ニ 煙突、煙道、風洞等の建設事業(3103 隧道新設事業の態様をもつて行われるものを除く。) ホ やぐら、鳥居、広告塔、タンク等の建設事業 へ 門、塀、柵、庭園等の建設事業 ト 炉の建設事業 チ 通信線路又は鉄管の建設(埋設を除く。)の事業 リ 信号機の建設事業 ヌ その他の各種建築事 |
38 既設建築物設備工事業 |
3801 既設建築物の内部において主として行われる次に掲げる事業及びこれに附帯して行われる事業(建設工事用機械以外の機械の組立て又はすえ付けの事業、3802 既設建築物の内部において主として行われる電気の設備工事業及び3715 さく井事業 を除く。) イ 電話の設備工事業 ロ 給水、給湯等の設備工事業 ハ 衛生、消火等の設備工事業 ニ 暖房、冷房、換気、乾燥、温湿度調整等の設備工事業 ホ 工作物の塗装工事業 へ その他の設備工事業 3802 既設建築物の内部において主として行われる電気の設備工事業 3803 既設建築物における建具の取付け、床張りその他の内装工事業 |
36 機械装置の組立て又はすえ付けの事業 |
次に掲げる事業及びこれに附帯して行われる事業 3601 各種機械装置の組立て又はすえ付けの事業 3602 索道建設事業 |
37 その他の建設事業 |
次に掲げる事業及びこれに附帯して行われる事業 3701 えん堤の建設事業(3102 高えん堤新設事業を除く。) 3702 隧道の改修、復旧若しくは維持の事業又は推進工法による管の埋設の事業(3103 内面巻替えの事業を除く。) 3703 道路の改修、復旧又は維持の事業 3704 鉄道又は軌道の改修、復旧又は維持の事業 3705 河川又はその附属物の改修、復旧又は維持の事業 3706 運河若しくは水路又はこれらの附属物の建設事業 3707 貯水池、鉱毒沈澱池、プール等の建設事業 3708 水門、樋門等の建設事業 3709 砂防設備(植林のみによるものを除く。)の建設事業 3710 海岸又は港湾における防波堤、岸壁、船だまり場等の建設事業 3711 湖沼、河川又は海面の浚 渫、干拓又は埋立ての事業 3712 開墾、耕地整理又は敷地若しくは広場の造成の事業(一貫して行う3719 造園の事業を含む。) 3719 造園の事業 3713 地下に構築する各種タンクの建設事業 3714 鉄管、コンクリート管、ケーブル、鋼材等の埋設の事業 3715 さく井事業 3716 工作物の解体事業 3717 沈没物の引揚げ事業 3718 その他の各種建設事 |
年度更新のよくある質問(Q&A)
ここからは、以下の厚生労働省サイトにある「労働保険年度更新申告書の書き方」に記載のある「年度更新よくある質問」を一部加筆修正したものを確認します。
厚生労働省_労働保険年度更新申告書の書き方
Q1.年度更新に必要な様式はホームページからダウンロードできますか?
A1.一部の様式は厚生労働省ホームページからダウンロードできます。それ以外の様式は電子申請をご利用いただくか、最寄りの労働基準監督署又は労働局で入手してください。
また、下記のURL又は「労働保険関係各種様式」で検索することでも入手可能です。
厚生労働省__労働保険関係各種様式
Q2.第2種特別加入保険料(一人親方等)の申告に関する用紙は、ホームページからダウンロードできますか?
A2.「特別加入保険料算定基礎額特例計算対象者内訳」は厚生労働省ホームページから(URLはQ1の回答に記載しているものと同じです。)、従来、管轄の労働局より送付されていた用紙及び記入要領がある場合は事業場を管轄する都道府県労働局のホームページから、それぞれダウンロードできます。
Q3.保険料(一般拠出金)の計算をしたら小数点以下が発生しました。切り捨てですか、切り上げですか?
A3.切り捨てになります。
Q4.令和4年度概算保険料だけでは40万円に満たないのですが、令和3年度確定保険料の不足額と合計すると40万円以上となります。この場合、延納はできますか?
A4.延納することはできません。(概算保険料のみで40万円以上の場合が延納可能となります。)
Q5.事業場の所在地を移転[事業場の名称を変更]しましたが、申告書の㉘(事業)、㉙(事業主)の欄には新旧どちらを記入したらいいですか? また、領収済通知書(納付書)に印書されているものは訂正していいですか?
A5.申告書の㉘(事業)、㉙(事業主)の欄には移転先の新しい所在地[変更後の新しい名称]を記入します。
また、領収済通知書(納付書)については訂正せずそのまま使用します。
なお、変更があった場合は労働基準監督署へ「労働保険名称、所在地等変更届」、公共職業安定所(ハローワーク)へ「雇用保険事業主事業所各種変更届」をそれぞれ提出することとなります。
Q6.申告書を間違えて記入してしまいました。どうしたらいいですか?
A6.領収済通知書(納付書)以外であれば訂正できます(Q7参照)ので、訂正後の数字(文字)がわかるように書き直します。なお、訂正印は不要です。
Q7.領収済通知書(納付書)の納付額を間違えて記入してしまいました。どうしたらいいですか?
A7.訂正された領収済通知書(納付書)を使用することはできませんので、必ず新しいものを使用します。
領収済通知書(納付書)は最寄りの労働基準監督署、労働局に用意してあります。
(他の都道府県の領収済通知書(納付書)は使用できませんので注意が必要です。)
Q8.申告書と領収済通知書(納付書)を切り離してしまいました。どうしたらいいですか?
A8.申告書のみを管轄の労働基準監督署又は労働局にご提出いただき(郵送でも可)、領収済通知書(納付書)は、お近くの金融機関で納付に使用します。
Q9.申告・納付は日本銀行でしかできませんか?
A9.ネット銀行を除き、ほとんどの金融機関(郵便局を含む)が日本銀行の歳入代理店になっていることから、お近くの金融機関で申告・納付が可能です。
Q10.納付金額がないとき、申告書の提出はどうしたらいいですか?
A10.申告書のみを管轄の労働基準監督署又は労働局に提出します(郵送でも可)。
Q11.申告書の控えに労働基準監督署又は労働局の受付印が必要な場合はどうしたらいいですか?
A11.申告書と領収済通知書(納付書)を切り離して、申告書のみを直接労働基準監督署または労働局に提出します(郵送で提出する場合は、切手を貼付した返信用封筒を同封)。
そして、切り離した領収済通知書(納付書)は、保険料の納付とあわせて金融機関に提出します。
なお、金融機関に申告書を提出した場合には、押印ができないことから注意が必要です。
Q12.確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表は申告書と一緒に提出すればいいですか?
A12.提出の必要はありませんが、申告書の控えと併せて保管します。
Q13.還付額が出るときはどうしたらいいですか?
A13.申告書の提出だけでは還付されないことから、「労働保険料・一般拠出金還付請求書」を管轄の労働基準監督署又は労働局に提出します(年度更新申告書の書き方P33参照)。還付請求には時効があることから、注意が必要です。
Q14.会社の事業内容が大きく変わりました。申告書はどうすればいいですか?
A14.業種の変更があった場合には、「労働保険名称、所在地等変更届」の提出が必要です。
Q15.令和4年3月31日以前に事業を廃止しました。申告書の提出は必要ですか?
A15.申告書の提出は必要です。事業を廃止した日までの確定保険料を申告します(年度更新申告書の書き方P 29参照)。
なお、昨年度中に事業を廃止した場合には、口座振替の対象とならないため注意が必要です。
Q16.令和4年4月以降に事業を廃止することが確定しておりますが、概算保険料の算定基礎額はどのように記入したらいいですか?
A16.廃止する期間までに支払うことが予定される賃金総額の見込額を記入します。また、 廃止後に令和4年度確定保険料の申告が必要となります。
Q17.特別加入者の給付基礎日額を変更したい場合には、いつ手続きを行えばいいですか?
A17.特別加入者の当年度の給付基礎日額を変更する場合には、年度更新期間中に変更申請を行います。ただし、当該期間中に変更申請を行っても、変更申請した日以前に労働災害が発生している場合は、当年度の給付基礎日額の変更は認められません。
なお、翌年度の給付基礎日額については、3月2日から3月31日の間に変更申請することもできます。
Q18.申告内容について、調査を行うことはありますか?
A18.毎年、労働基準監督署又は労働局の職員が調査を行っています。また、調査においては源泉徴収簿等の関係書類を確認することがあります。
なお、申告内容に誤りがあり不足額があると判明した場合には、不足額と併せて不足額の 10%を追徴金として徴収することとなります。
Q19.申告内容について民間事業者から問い合わせがありましたが、そのようなことは起こり得ますか?
A19.申告書の内容について、厚生労働省が外部委託した事業者より照会をさせていただく場合があります。
事業者名については、申告書と同封のリーフレットで確認ができます。
その他の参考記事
労働保険に関しては、以下の記事もご参考になさってください。
労働保険の基本はこちら:
【会社設立後の提出書類⑩】労働保険の基本と保険関係成立届の書き方(記入例あり)
雇用保険の基本はこちら:
【会社設立後の提出書類⑬】雇用保険の基本と雇用保険適用事業所設置届の書き方(記入例あり)
概算保険申告書の概要はこちら:
【会社設立後の提出書類⑪】労働保険の概算保険料申告書の概要と書き方(記入例つき)
年度更新の詳しい解説はこちら:
労働保険料の計算方法(年度更新)や申告・納付を分かりやすく解説!
建設業における労災保険はこちら:
建設業における労災保険を詳しく解説!!
まとめ
「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループの会社設立支援サービスの特徴はワンストップサービスで、経営者の皆様にはなるべく手間をかけさせません。また、面倒な経理業務を引き取るために経理代行サービスも提供しております。
これらの「会社設立支援サービス」や「経理代行サービス」に関して、少しでもご興味がある場合には、会社設立に強い保田会計グループにお気軽にご連絡ください。
お問い合わせ – 保田会計事務所|税務・コンサル・会計・その他経営に関わる全てを総合的にサポート