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よくある質問

税務調査前に修正申告書を提出するのはありか?加算税の取扱いを解説!

税務調査の通知を受けたお客様から、「税務調査前に修正申告書を提出することで税金の負担を少なくしたい」と問い合わせを受けることがあります。

このこと自体はあながち間違っておらず、実際に税務調査前の修正申告により加算税を減らすことができます。

ただし、税務調査前に修正申告を行うことは実務上そこまで浸透していません。それは、税務調査前の修正申告にはデメリットもあるからです。

 

そこで今回は、税務調査に関して、「調査前に修正申告を行う場合の加算税の取扱い」や「調査前に修正申告によるメリット・デメリット」、「調査前の修正申告がお勧めできるケース」などを分かりやすく解説します。

 

なお、税務調査前に期限後申告書を提出することによる加算税の取扱い等については、以下の記事もご参照ください。

【無申告】調査前に期限後申告するのはありか?加算税の取扱いを解説!

 

税務調査前に修正申告を行う場合の加算税の取扱い

税務調査前に修正申告書を提出することで、過少申告加算税を軽減することができます。

そこで、ここでは「過少申告加算税の概要」と「税務調査前後での加算税率」を確認します。

なお、所得税の修正申告書の作成方法については、以下の記事をご参照ください。
所得税の修正申告書の作成方法を事例で説明!!

 

(1)過少申告加算税の概要

「過少申告加算税」とは、期限内に申告はしたものの、本来の税額より少ない金額で申告した場合に科される「罰金(ペナルティ)」です。

この罰金は、修正申告を提出する時期がいつかによって、加算税率が変わることに特徴があります。

 

(2)修正申告の提出時期による加算税率の違い

修正申告の提出時期の違いによって、加算税率は下表のように定められています。

 

<修正申告の提出時期による加算税率>

修正申告等の提出時期 過少申告加算税率
①法定申告期限から調査通知前 0%
②調査通知以後から調査による更正等予知前まで 5%(50万円以下の部分)
10%(50万円を超える部分)
③調査による更正等予知以後 10%(50万円以下の部分)
15%(50万円を超える部分)

出典:国税庁サイト-加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし

 

上記表を税務調査の流れに合わせたものは以下の通りです。

<税務調査の流れと加算税率>

 

ここで、「調査通知」や「事前通知」、「更正等を予知」とは何かを確認します。

調査通知 納税者または税理士に「実地調査を行う旨」、「調査の対象となる税目」、「調査の対象となる期間」が伝えられること。
なお、「調査通知」は「事前通知」より前に行われることが多いですが、同時に行われることもあります。
事前通知 納税者または税理士に「調査を開始する日時」、「調査を行う場所」、「調査の目的」、「調査の対象となる税目」、「調査の対象となる期間」、「調査の対象となる帳簿書類その他の物件」、「その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項」が伝えられること。
更正等を予知 判例においては、「端緒把握説」や「不適正事項発見説」がありますが、国税庁の事務運営指針などでは、「調査着手説」を採用していると言われています。

 

「調査通知」が行われる前であれば、加算税は発生しないため、上記①の調査通知前までに自主的に修正申告をすることが、一番望ましい形です。

また、「調査通知」が行われた後には、加算税が発生するものの「更正等を予知」するまでの加算税は軽減されています。そのため、「調査通知」が行われてしまった場合には、上記②の「更正等を予知」するまでに自主的に修正申告をするのか検討を行います。

ここで、「更正等を予知」するとは具体的にいつ時点を指すのかが重要となりますが、本記事では、保守的に「税務調査時点(最初の臨場日)」を指すと考えています。

 

 

税務調査前に修正申告を行うメリット

税務調査前に自主的に修正申告書を提出する場合のメリットとして、次の事項が挙げられます。

(1)加算税がかからない or 軽減できる

(2)重加算税と7年遡及を回避できる可能性が高くなる

(3)税務調査に対するストレスが軽減される

 

詳細は以下で確認します。

 

(1)加算税がかからない or 軽減できる

法定申告期限から調査通知前までに修正申告を提出した場合には、過少申告加算税が全くかかりません。

また、調査通知以後から税務調査(更正等を予知する)前までに修正申告を提出した場合には、過少申告加算税が通常より軽減できます。

 

(2)重加算税と7年遡及を回避できる可能性が高くなる

「隠ぺい又は仮装の行為」が認められると重加算税(税率:35%~45%)の対象となります。また、「偽りその他不正の行為」があると、税務調査は最大で7年間も遡及されてしまいます。

厳密には「隠ぺい又は仮装の行為」と「偽りその他不正の行為」は異なるものですが、通常は、重加算税の対象となると、7年遡及もセットで付いてくることとなり、その結果、税負担はかなり大きなものとなります。

ここで、国税通則法68条(重加算税)には、「修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く」と規定されています。

また、上述の通り、税務調査前に自主的に修正申告書を提出した場合には、原則として、更正等を予知していない修正申告として取り扱われます(調査着手説)。

そのため、税務調査前に修正申告書を提出した場合には、結果的に重加算税の対象とならない可能性が高いと考えられます。なお、この場合には、修正申告書が税務調査の対象となります。

例えば、売上を意図的に除外した確定申告書を提出したものの、調査通知を受けたことで、急いで、税務調査前に正しい売上で自主的に修正申告書を提出した場合には、重加算税と7年遡及を回避できることが多いです。

重加算税については、以下の記事もご参照ください。
税務調査は無申告でも来る?最大で50%の重加算税!

 

(3)税務調査に対するストレスが軽減される

不正行為を行った中で税務調査を迎えることになると、調査当日はもとより、調査通知を受けてから税務調査当日までの期間もかなりのストレスで寝られない日々が続く人もいると聞きます。

そのため、事前に自主的に修正申告を行うことで、嫌なストレスを軽減することができます。

 

 

税務調査前に修正申告を行うデメリット

一方で、税務調査前に自主的に修正申告書を提出する場合のデメリットとして、次の事項が挙げられます。

(1)税務調査が厳しくなる可能性がある

(2)遡及年数は5年となる

 

詳細は以下で確認します。

 

(1)税務調査が厳しくなる可能性がある

事前に修正申告を提出することは、税務署側からすると、信義則違反的な印象があり、あまりいい反応はされません。

調査官によっては、指摘できなくなった分を取り戻すかのように、かなり細かな点まで粗探しをされる可能性があります。

 

(2)遡及年数は5年となる

税務調査の遡及年数について、法律上は5年と規定されています。

ただし、通常の税務調査では、過去3年分を調査対象期間とする調査が行われ、その中で見つかった申告誤りなどが4・5年前にも同じようにあると推測される内容である場合には、調査対象期間が過去5年分まで延長されるという運用が行われています。

そのため、過去3年分に税務上の問題が少なく、追徴額も少額になる見込みの調査事案では、遡及年数3年で終了することが多いです。

 

税務調査前に修正申告を行う場合において、仮に3年分のみで修正申告書を提出したとすると、調査時に4・5年前の分も同様に修正申告が必要ではないのかと厳しい目でチェックされ、結果的に4・5年前の分も修正するようにと指摘を受けることが多いです。

そのため、予め5年分の修正申告書を提出することが一般的です。

この点、税務調査前に自主的に修正申告を行わない場合には、遡及年数3年で終わるケースもあり得ることから、遡及年数5年はデメリットとなります。

 

 

税務調査前の修正申告がお勧めできるケースは?

税務調査の通知を受けて、税務調査前の修正申告を行う場合には、上述のようなメリットとデメリットがいずれもあることから、一概にどちらがいいとは言えません。

ただし、個人的には、次の2つのケースをいずれも満たす場合には、税務調査前の修正申告をお勧めしています。

なお、税務調査の通知を受ける前であれば、自主的に修正申告を行うことを強くお勧めします

 

(1)売上除外等の見つかりやすい「隠ぺい行為」「不正行為」をしているケース

売上除外等の「隠ぺい行為」「不正行為」については、調査官と交渉する余地はほとんどなく、重加算税の対象とされ、7年間も遡及されてしまいます。

たまたま、運が良くて、売上除外等が調査官に見つからない場合もあるかもしれませんが、決済が銀行振込である売上除外等は基本的に調査官に発見されてしまいます。

例えば、調査通知後から税務調査前に修正申告を行った場合には、遡及年数5年の加算税率5%(50万円を超える部分は10%)で済む可能性があった案件であっても、通常通りに税務調査を受けて売上除外等が発覚した場合には、遡及年数7年の加算税率35%(加重対象となる場合には45%)となります。

そのため、売上除外等の見つかりやすい不正を行っている場合には、税務調査前の修正申告を検討した方がいいと言えます。

 

(2)経費の支払証憑がきちんと保管されているケース

現金支払いについては、領収書や請求書等の支払証憑がない場合であっても、経費として認めてもらうことができる可能性があります。

例えば、業種的に通常支払いがある科目(運輸業など車を使う業種の燃料代や車検代等)については、合理的な推定計算で算定した金額を経費として認めてもらえることが多いです。

これは、所得税法や法人税法には、推計課税の規定があるからです。

(消費税法には、推計課税の規定がなく、支払証憑がないと経費として認めてもらうことはかなり難しいため注意が必要です。)

この推計課税は、白色申告が前提とされていますが、青色申告の場合でも認めてもらえる可能性があります。

推定計算の具体的な方法などは決まったものはないため、調査官と交渉して、なるべく有利な結果となる計算方法を採用してもらうことが重要です。

 

この点、経費の支払証憑がきちんと保管されているケースでは、調査官との交渉は不要となるため、税務調査前に修正申告をする場合のデメリットとなり得ず、税務調査前に修正申告書を提出しやすい状況となります。

一方で、経費の支払証憑が保管されていないケースでは、調査官との交渉が必要になりますが、税務調査前に修正申告書を提出すると、調査官は厳しい姿勢で調査に臨むため、交渉が難しくなり、結果として、不利な結果となる計算方法が採用されてしまうことがあります

 

(3)税務調査前に修正申告をするかどうかの判断

上記(1)の状況で、かつ(2)の経費の支払証憑がきちんと保管されていれば、基本的に税務調査前の修正申告をお勧めします。

一方で、上記(1)の状況ではあるものの、(2)の経費の支払証憑がきちんと保管されていない場合には、税務調査前に修正申告を行うかどうか慎重な判断が必要となります。

 

 

まとめ

以上今回は、税務調査に関して、「調査前に修正申告を行う場合の加算税の取扱い」や「調査前に修正申告によるメリット・デメリット」、「調査前の修正申告がお勧めできるケース」などを分かりやすく解説させていただきました。

税務調査の通知を受けたお客様から、「税務調査前に修正申告書を提出することで税金の負担を少なくしたい」と問い合わせを受けることがあります。

このこと自体はあながち間違っておらず、実際に税務調査前の修正申告により加算税を減らすことができますが、税務調査前の修正申告には、メリットだけでなく、デメリットも存在します。

そのため、税務調査の通知を受けて、税務調査前までに修正申告を行う場合には、それにより生じるメリットとデメリットを比較する等、慎重な検討が必要となります。

もちろん、税務調査の通知を受ける前であれば、自主的に修正申告を行うことを強くお勧めします。

 

「船橋(千葉県)・江東区・中央区(日本橋)」を拠点とする船橋税務調査センターでは、税務調査前の修正申告についても積極的に対応しています。

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