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よくある質問

【無申告】調査前に期限後申告するのはありか?加算税の取扱いを解説!

税務調査の通知を受けた無申告のお客様から、「税務調査前に期限後申告書を提出することで税金の負担を少なくしたい」と問い合わせを受けることがあります。

このこと自体はあながち間違っておらず、実際に税務調査前の期限後申告を行うことで加算税を減らすことができます。ただし、無申告における税務調査前の申告には、デメリットもあり、そこまで浸透していません。

そこで今回は、税務調査に関して、「調査前に期限後申告を行う場合の加算税の取扱い」や「調査前の期限後申告によるメリット・デメリット」、「調査前の期限後申告がお勧めできるケース」などを分かりやすく解説します。

 

なお、税務調査前に修正申告書を提出することによる加算税の取扱い等については、以下の記事もご参照ください。
税務調査前に修正申告書を提出するのはありか?加算税の取扱いを解説!

 

無申告者に税務調査が入る場合の流れ

税務調査は無申告者のもとにも当然にようにやって来ます。

無申告者に税務調査が入る場合、一般的な流れは次のようになります。

✓ある日突然に税務調査の連絡があり、調査日を調整される

✓税務調査当日に厳しい調査を受ける

✓調べられた所得状況等に基づき、期限後申告書を提出する

✓本税に加え、無申告加算税を賦課される

 

このように通常は、税務調査を終えてから、期限後申告書を提出することとなります。

ただし、税務調査前に期限後申告を行うことも禁止されているわけではありません。むしろ、税務調査前に期限後申告を行うことで加算税を軽減することができます。

 

なお、無申告者の税務調査については、以下に記事もご参照ください。
税務調査は無申告でも来る?最大で50%の重加算税!

 

 

税務調査前に期限後申告を行う場合の加算税の取扱い

上述の通り、税務調査前に期限後申告を行うことで、無申告加算税を軽減することができます。

そこで、まずは、「無申告加算税の概要」と「期限後申告の提出時期による加算税率の違い」を確認します。

(1) 無申告加算税の概要

「無申告加算税」とは、申告期限までに必要な確定申告を行わなかった場合に科される”罰金(ペナルティ)”です。

そのため、申告期限までに納税だけを済ませても、実際に申告書を提出していなければ、無申告加算税はかかります。

また、この無申告加算税は、申告期限を過ぎた後のどの時期に確定申告(期限後申告)を行うかによって、加算税率が変わることに特徴があります。

 

(2)期限後申告の提出時期による加算税率の違い

期限後申告の提出時期の違いによって、加算税率は下表のように定められています。

<期限後申告の提出時期による加算税率>

期限後申告等の提出時期 無申告加算税率
①法定申告期限から調査通知前 5%
②調査通知以後から調査による更正等予知前まで 10%(50万円以下の部分)
15%(50万円を超える部分)
③調査による更正等予知以後 15%(50万円以下の部分)
20%(50万円を超える部分)

出典:国税庁サイト_加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし

 

上記表を税務調査の流れに合わせたものは以下の通りです。

<税務調査の流れと加算税率>

 

このように、「調査通知」が行われる前であれば、加算税は5%で済むことから、上記①の調査通知前までに自主的に期限後申告をすることが、一番望ましい形です

また、「調査通知」が行われた後であっても、「更正等を予知」するまでの加算税は、5%の軽減があります。そのため、「調査通知」が行われてしまった場であっても、上記②の「更正等を予知」するまでに自主的に期限後申告をすることも検討の余地があります。

以下において、「調査通知」や「事前通知」、「更正等を予知」とは具体的に何を指すのかを確認しておきます。

 

「調査通知」

納税者または税理士に「実地調査を行う旨」、「調査の対象となる税目」、「調査の対象となる期間」が伝えられること。
なお、「調査通知」は「事前通知」より前に行われることが多いですが、同時に行われることもあります。

 

「事前通知」

納税者または税理士に「調査を開始する日時」、「調査を行う場所」、「調査の目的」、「調査の対象となる税目」、「調査の対象となる期間」、「調査の対象となる帳簿書類その他の物件」、「その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項」が伝えられること。

 

「更正等を予知」

判例においては、「端緒把握説」や「不適正事項発見説」がありますが、国税庁の事務運営指針などでは、「調査着手説」を採用していると言われています。

※「更正等を予知」するとは具体的にいつ時点を指すのかが重要となりますが、本記事では、保守的に「税務調査時点(最初の臨場日)」を指すと考えています。

 

 

税務調査前に期限後申告を行うメリット

税務調査前に自主的に期限後申告を提出する場合のメリットとして、次の事項が挙げられます。

(1)加算税が軽減できる

(2)重加算税と7年遡及を回避できる可能性が高くなる

(3)税務調査に対するストレスが軽減される

 

詳細は以下で確認します。

 

(1)加算税が軽減できる

税務調査前までに期限後申告を行うことで、無申告加算税を軽減することができます。

具体的には、調査通知後から税務調査前であれば10%(50万円を超える部分は15%)、税務調査後であれば15%(50万円を超える部分は20%)もかかってしまう加算税が、調査通知前であれば5%で済みます

 

(2)重加算税と7年遡及を回避できる可能性が高くなる

無申告は重加算税の対象とされることは少ないですが、申告しなかったことについて、「隠ぺい又は仮装の行為」が認められると重加算税(税率:40%または50%)の対象となります。また、「偽りその他不正の行為」があると、税務調査は最大で7年間も遡及されてしまいます。

厳密には「隠ぺい又は仮装の行為」と「偽りその他不正の行為」は異なるものですが、「隠ぺい又は仮装の行為」が認められると、重加算税の対象となるだけでなく、7年遡及もセットで付いてくることがほとんどです。

そのため、税務調査において、「隠ぺい又は仮装の行為」が認められると、税負担はかなり大きなものとなります

 

ここで、国税通則法68条2項(重加算税)には、「期限後申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く」と規定されています。

また、上述の通り、法定申告期限後から税務調査前までに自主的に申告書を提出した場合には、原則として、更正等を予知していない期限後申告として取り扱われます(調査着手説)。

そのため、税務調査前に期限後申告書を提出した場合には、結果的に重加算税の対象とならない可能性が高いと考えられます

なお、この場合には、期限後申告書が税務調査の対象となります。そのため、自主的に行った期限後申告の内容が否認されるリスクは残ります。

例えば、事業として儲け(所得)があることを認識していたにも関わらず、多忙のため無申告の状態がしばらく続いていた状態で、税務署から調査通知を受け、急いで、税務調査前に自主的に期限後申告書を提出した場合には、重加算税と7年遡及を回避できることが多いです。

 

(3)税務調査に対するストレスが軽減される

無申告でどれくらいの納税負担となるのか分からないままで税務調査を迎えることになると、調査当日はもとより、調査通知を受けてから税務調査当日までの期間もかなりのストレスで寝られない日々が続く人もいると聞きます。

事前に自主的に期限後申告を行い、納税額を確定させることで、この嫌なストレスを軽減することができます。

 

 

税務調査前に期限後申告を行う場合のデメリット

一方で、税務調査前に自主的に期限後申告を提出する場合のデメリットとしては、次の事項が挙げられます。

(1)基本的に提出する年数は5年になる

(2)税務調査が厳しくなる可能性がある

 

詳細は以下で確認します。

 

(1)税務調査が厳しくなる可能性がある

調査通知後から調査日までの間に期限後申告を提出することは、税務署側からすると、信義則違反的な印象があり、あまりいい反応はされません。

調査官によっては、指摘できなくなった分を取り戻すかのように、期限後申告書の調査において、かなり細かな点まで粗探しをされる可能性があります。

 

(2)遡及年数は5年となる

税務調査の遡及年数について、法律上は5年と規定されています。

ただし、通常の税務調査では、過去3年分を調査対象期間とする調査が行われ、その中で見つかった申告誤りなどが4・5年前にも同じようにあると推測される内容である場合には、調査対象期間が過去5年分まで延長されるという運用が行われています。

そのため、過去3年分に税務上の問題が少なく、追徴額も少額になる見込みの調査事案では、遡及年数3年で終了することが多いです。

 

無申告の税務調査において、税務調査前に申告を行う場合、仮に3年分のみで期限後申告書を提出したとすると、調査時に4・5年前も同様の無申告状態でなかったか否か厳しい目でチェックをされ、結果的に4・5年前の分も期限後申告するように指摘を受けることが多いです。
この指摘を受けた後の期限後申告については、加算税が15%(50万円を超える部分は20%)となってしまいます。

そのため、予め5年分の期限後申告書を提出することが一般的です。

この点、税務調査前に自主的に申告を行わない場合には、遡及年数3年で終わるケースもあり得ることから、遡及年数5年はデメリットとなります。

 

 

税務調査前の期限後申告がお勧めできるケースは?

税務調査の通知を受けて、税務調査前の期限後申告を行う場合には、上述のようなメリットとデメリットがいずれもあることから、一概にどちらがいいとは言えません。

ただし、次の2つのケースをいずれも満たす場合には、税務調査前の期限後申告をお勧めします。

(1)無申告期間が3年未満のケース

上述の通り、税務調査の通知を受けて、税務調査前の期限後申告を行う場合、通常の調査対象期間である3年分ではなく、5年分の期限後申告書を提出することがデメリットとなります。

ただし、そもそも無申告期間が3年未満であれば、通常の調査対象期間と異ならないため、このデメリットが生じません。

 

(2)経費の支払証憑がきちんと保管されているケース

現金支払いについては、領収書や請求書等の支払証憑がない場合であっても、経費として認めてもらうことができる可能性があります。

例えば、業種的に通常支払いがある科目(運輸業など車を使う業種の燃料代や車検代等)については、合理的な推定計算で算定した金額を経費として認めてもらえることが多いです。

これは、所得税法や法人税法には、推計課税の規定があるからです。

(消費税法には、推計課税の規定がなく、支払証憑がないと経費として認めてもらうことはかなり難しいため注意が必要です。)

この推計課税は、白色申告が前提とされていますが、青色申告の場合でも認めてもらえる可能性があります。
推定計算の具体的な方法などは決まったものはないため、調査官と交渉して、なるべく有利な結果となる計算方法を採用してもらうことが重要です。

 

この点、経費の支払証憑がきちんと保管されているケースでは、調査官との交渉は不要となるため、税務調査前に期限後申告をする場合のデメリットとなり得ず、税務調査前に期限後申告書を提出しやすい状況となります。

一方で、経費の支払証憑が保管されていないケースでは、調査官との交渉が必要になりますが、税務調査前に期限後申告を行うと、調査官は厳しい姿勢で調査に臨むため、交渉が難しくなり、結果として、不利な結果となる計算方法が採用されてしまうリスクがあります

 

(3)税務調査前に申告するかどうかの判断

上記(1)及び(2)のケースをいずれも満たす場合(無申告期間が3年未満で、経費の支払証憑がきちんと保管されているケース)には、基本的に税務調査が行われる前に期限後申告を行うことをお勧めします。

一方で、上記(1)や(2)のいずれかしか満たさないケースでは、税務調査前に期限後申告を行うかどうか慎重な判断が必要となります。

なお、税務調査の通知を受ける前であれば、時間をかけて、経費を漏れなく計上した上で、自主的に期限後申告を行うことをお勧めします

 

 

まとめ

以上今回は、税務調査に関して、「調査前に期限後申告を行う場合の加算税の取扱い」や「調査前の期限後申告によるメリット・デメリット」、「調査前の期限後申告がお勧めできるケース」などを分かりやすく解説いたしました。

税務調査の通知を受けた無申告のお客様から、「税務調査前に期限後申告書を提出することで税金の負担を少なくしたい」と問い合わせを受けることがあります。

このこと自体は間違っておらず、実際に税務調査前の期限後申告により加算税を減らすことができますが、税務調査前の期限後申告には、メリットだけでなく、デメリットも存在します。

そのため、税務調査の通知を受けて、税務調査前までに期限後申告を行う場合には、それにより生じるメリットとデメリットを比較する等、慎重な検討が必要となります。

なお、税務調査の通知を受ける前であれば、自主的に期限後申告を行うことをお勧めします。

 

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