税務調査の対象となるのは、申告書を提出している会社や個人事業主に限られません。申告書を提出していない「無申告」であっても、当然に税務調査の対象となります。
そこで今回は、無申告について、「税務署にばれるのか?」や「調査の溯り期間」、「追徴される税金」などを解説します。
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Toggle無申告は税務署にばれるのか?
税務調査の対象となるのは、申告書を提出している会社や個人事業主に限られません。申告書を提出していない「無申告」であっても、当然に税務調査の対象となります。
税務署に無申告が見つかる主な理由は次の通りです。
(1)支払調書
(2)資料せん (3)反面調査 (4)知人からのタレコミ |
税務署はこれら以外にも、様々な方法を使って情報を収集しており、無申告は見つかる可能性が高いと言えます。
以下において、主な理由の詳細を確認します。
(1)支払調書
支払調書は、一定の要件を満たした場合に、毎年税務署への提出が義務付けられている資料です。
この支払調書には、一定の取引について、支払金額や支払先、取引内容などが記載されることから、税務署は支払調書を確認することで「誰に対して、どういった内容で、いくら支払ったのか」が分かります。
支払調書には、例えば、次のようなものがあり、これらに該当する取引を行った場合で、取引先が支払調書を税務署に提出している場合には、無申告が税務署に把握される可能性があります。
①報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
作家への原稿料、画家への画料、講演料、外交員への報酬、ホステスやコンパニオン等への報酬 ②不動産の使用料等の支払調書、不動産の譲り受けの対価の支払調書 事務所の家賃や権利金、更新料、礼金、不動産譲り受けの対価 ③金地金等の譲渡の対価の支払調書 金地金やプラチナ地金の譲渡など |
(2)資料せん
資料せんとは、税務署が任意で提出を呼びかけている情報収集のための資料で、税務調査や統計などに使われています。
ここには、一定金額以上の次のような項目の記載を要求されます。
✓売上、仕入
✓外注費、接待交際費、広告宣伝費 ✓支払リベート、建築工事費 など |
この資料せんから収集した情報により、無申告が税務署に把握される可能性があります。
(3)反面調査
反面調査とは「調査対象者の取引先や取引先銀行に対して実施される税務調査」を言います。
この反面調査の目的は「調査対象者の申告内容が正しいことを確認すること」で、取引先に直接ヒアリングを行ったり、取引先の帳簿・書類を調査したりします。
例えば、取引先に税務調査があり、その税務調査の過程で反面調査先に選ばれた場合には、無申告が税務署に把握される可能性があります。
(4)知人からのタレコミ
知人からのタレコミで無申告が発覚するケースがあります。
生活が派手になると、恨みや妬みの対象となりやすく、元従業員や元愛人から無申告をタレこまれることも多いです。
無申告調査の溯りは5年が基本(不正は7年)
無申告で税務調査があった場合には、原則は5年間溯って(遡及)調査されることになります。
さらに、悪質な不正行為と判断された場合(他人や架空の名義を使用している場合や、故意に帳簿を破棄している場合など)には、7年間も溯って調査されます。
無申告で追徴される税金は
個人に対して、無申告の税務調査が行われると5年間(最大7年間)の税金だけでなく、ペナルティとしての加算税・延滞税といった付帯税も追加で徴収されることになります。
さらに、個人の場合には、所得金額を修正することで、国民健康保険などにも影響がでます。
追徴される主な税金等は、次の通りです。
✓所得税(会社の場合には法人税)
✓消費税(2年前の売上が1千万円を超える場合など) ✓個人事業税 ✓住民税 ✓附帯税(加算税や延滞税) ✓国民健康保険の保険料 |
これらを合算すると、一括で納めることができないほど高い税額等になる可能性があります。
なお、税務署は無申告を把握していてもすぐには税務調査を行わないことが多いです。なぜなら、無申告の税務調査では、上述の通り、5年間も溯ることができるため、すぐに税務調査するよりも、後から数年分をまとめて調査した方が効率的・効果的な税務調査ができ、税金の追徴にもつながると考えられているからです。
そのため、2年・3年ほど無申告の状態で、税務署から連絡がないからと言っても安心はできません。
すでに税務署に無申告がバレている可能性を考え、すぐに無申告を是正することをお勧めします。
以下においては、ペナルティである付帯税(加算税や延滞税)の税率や割合を確認します。
これらの金額が本来の税金に上乗せされて追徴されることが、追徴税額が大きくなる要因となります。
(1)無申告加算税は最大50%
加算税率は下表の通りです。表を見れば分かるとおり、無申告加算税は、一般的な税務調査における過少申告加算税(申告誤りなどの罰金)と比べると、高い加算税率が課されます。さらに悪質と判定された場合で、何度も無申告を繰り返している場合の重加算税は50%にもなります。
種類 | 内容 | 加算税率 |
過少申告加算税 | 期限内申告はしたものの、正しい税額よりも少ない金額で申告していた場合(申告誤りなど) | ①調査通知前の自主的な修正申告:0%
②調査通知後、更正を予知してされたものでない修正申告:5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%) ③税務調査の指摘による修正申告:10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%) |
無申告加算税 | 申告期限までに申告しなかった場合 | ①調査通知前の自主的に期限後申告:5%
②調査通知後、税務調査までの期限後申告:10%(50万円を超える部分は15%) ③税務調査の指摘による期限後申告:15%(50万円を超える部分は20%) ④上記③で5年以内にも期限後申告がある場合:25%(50万円を超える部分は30%) |
重加算税 | 本来の税額より少ない金額で申告した場合 (意図的な事実の隠蔽や仮装など) |
①修正申告にかかる重加算税:35%
②無申告(期限後申告)にかかる重加算税:40% ③上記①で5年以内にも修正申告がある場合:45% ④上記②で5年以内にも期限後申告がある場合:50% |
なお、加算税については、以下の記事もご参考になさってください。
税務調査前に修正申告をする場合の加算税の取扱いはこちら:
税務調査前に修正申告書を提出するのはありか?加算税の取扱いを解説!
無申告で税務調査前に期限後申告をする場合の加算税の取扱いはこちら:
【無申告】調査前に期限後申告するのはありか?加算税の取扱いを解説!
(2)延滞税は9%程度
無申告の場合、法定納期限の翌日から完納する日まで延滞税がかかります。延滞税の割合は、下表の通り、納期限の翌日から2か月間と同期間の経過後で税率が異なります。
種類 | 内容 | 延滞税割合 |
延滞税 | 税金を法定納付期限までに納めていなかった場合
(修正申告等により遅れた場合にも発生します) |
<納期限の翌日から2か月間>
令和4年:2.4% 令和3年:2.5% <納期限の翌日から2か月経過後> 令和4年:8.7% 令和3年:8.8% |
なお、延滞税の割合は「銀行の新規の短期貸出約定平均金利」を基に毎年変わるため、令和3年・4年以外の年は、下記の国税庁サイトで延滞税の割合をご確認ください。
国税庁サイト_延滞税の割合
個人の確定申告が必要な場合とは
無申告で税務調査があった場合の追徴税額は大きな負担となるため、なるべく早期に無申告を是正することをお勧めします。
ここでは、個人において確定申告が必要な方を確認します。
給与所得者 | ・給与の年間収入金額が2,000万円を超える人 ・1ヵ所から給与の支払いを受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人 ・2ヵ所以上から給与の支払いを受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人 ・同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人 ・源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人 ・退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人 |
公的年金等に係る雑所得がある方 | ・公的年金等に係る雑所得の金額から所得控除を差し引くと、残額がある人
→ただし、公的年金等の収入金額が400万円以下で、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合には、確定申告は必要ありません。詳細は以下の記事もご参考になさってください。 |
退職所得がある方 | 外国企業から受け取った退職金など、源泉徴収されないものがある人 |
その他 | 各種の所得(収入から経費を差し引いた額)の合計額が基礎控除の48万円を超える人 |
上記表のいずれかに該当するにも関わらず、確定申告をしていない場合には、できるだけ早く過去に遡って、申告することをお勧めします。
税務調査が来るかもしれない不安を抱えたまま日々を過ごすことで、本業等に集中できない上に、精神衛生上もあまり良くありません。
自主的に無申告を是正し、確定申告を行うことで、本来の提出期限を過ぎての期限後申告となるものの、自主的に申告したということで上述の通り、ペナルティは大幅に軽減されます。
無申告の相談は税理士がお勧め
税務署でも無料の税務相談や帳簿・申告書の作成補助等をしてもらえますが、あまりお勧めはできません。なぜなら、税務署での相談は無料であるものの、節税等のアドバイスを聞くことができないからです。
また、税務署の指導を仰ぎながら申告した場合であっても、経費項目が漏れたり、経費にする金額が減ったりして、かえって税金が高くなってしまうことがあります。
そのため、多少の手数料を支払ってでも、節税のアドバイスをしてくれる税理士に依頼した方が、結果としてコストが安くなるケースが多いです。
まとめ
以上、今回は、無申告について、「税務署にばれるのか?」や「調査の溯り期間」、「追徴される税金」などを解説いたしました。
税務署は、支払調書、資料せん、反面調査、知人からのタレコミ等、様々な方法を使って情報を収集しており、無申告は見つかる可能性が高いです。
また、無申告の税務調査が行われると5年間(最大7年間)の税金だけでなく、ペナルティとしての加算税・延滞税といった付帯税も追加で徴収され、一括では払えないような、大きな負担となることがあります。
そのため、自主的に無申告を是正し、確定申告を行うことをお勧めします。
また、船橋税務調査相談センターでは、無申告を解消して、これからは真面目に申告をしたいと言う方を積極的に支援しています。
初回相談は無料となっていますので、無申告が続いている方で、少しでも不安のある方は、以下のサイトからお気軽にお問合せください。
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