これまでは、株式会社の設立に際して、定款の認証が必要となることから、通常は公証役場に訪問して公証人との対面で定款認証を受けていました。この訪問の手間を省くため、テレビ電話方式による定款認証制度が従来からありましたが、発起人の電子署名が必須で、なかなか普及していませんでした。
このテレビ電話方式による定款認証制度が、令和2年5月11日より要件が緩和され、電子署名ができる定款作成代理人に発起人等が紙の委任状で定款作成を委任する方法によっても利用が認められ、使い勝手がかなり向上しています。
そこで、今回はテレビ電話方式による定款認証制度について、「制度の概要」や「利用できる場合」、「流れ」などを解説します。
なお、当事務所の概要は以下のサイトをご参照ください。
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Table of Contents
テレビ電話方式による電子定款の認証制度の概要
テレビ電話方式による電子定款の認証の制度とは、テレビ電話を利用して発起人等又は定款作成代理人が公証役場に赴くことなく電子定款の認証を得られる制度です。
この制度は平成31年3月29日から始まっていましたが、従来は、発起人等が定款又は委任状に電子署名することが必須になっていたことから、発起人等が電子署名できない場合にはテレビ電話方式による電子定款の認証はできませんでした。
これが、令和2年5月11日からは、発起人等が電子署名できない場合であっても、電子署名ができる定款作成代理人に発起人が紙の委任状で定款作成を委任すれば、テレビ電話方式による電子定款の認証ができることになりました。
ただし、この場合、発起人の委任状及び印鑑証明書等が事前に公証人に郵送され、テレビ電話を利用する時点で公証人が原本を確認できることが必要です。
なお、法人の印鑑証明書の取得方法を確認したい方は、以下の記事もご参照ください。
法人の印鑑証明書の6つの取得方法を詳しく解説!!
テレビ電話方式による電子定款認証を利用できる場合
具体的にテレビ電話方式による電子定款の認証が利用できるのは、次のような場合です。
(1)発起人等が電子定款に電子署名し、かつ、発起人がオンライン申請する場合
(2)発起人等が代理人に定款作成を委任し、定款作成代理人が定款に電子署名してオンラインで認証申請する場合(定款作成代理人が認証の嘱託人となります。)で、次のいずれかの場合 ①発起人等自らが電磁的記録である委任状に電子署名する方式(従来の方法) |
紙の委任状に印鑑登録証明書の印を押捺する方式
一番使い勝手がいいのは、上記(2)②の「紙の委任状に印鑑登録証明書の印を押捺する方式」になります。
ただし、この方式を用いる場合には、「紙の委任状」及び「印鑑登録証明書(発起人が法人の場合には、代表者印の印鑑証明書及び当該法人の履歴事項全部証明書)」の原本を予め公証人に郵送する必要があることから、注意が必要です。
テレビ電話方式による電子定款認証の流れ
テレビ電話で電子定款認証を受けるための流れは、次の通りです。
(1)定款案の作成
通常の定款認証と同様に、まずは定款案を作成します。
(2)管轄の公証役場を確認(電話する場合も)
定款認証の公証役場の管轄は細かく分かれていませんが、設立する会社の本店所在地のある都道府県内の公証役場で行う必要があります。
(例)東京で会社を設立:東京にある公証役場、千葉で会社を設立:千葉にある公証役場
公証役場の検索は、以下の日本公証人連合会サイトから行うことができます。
公証人連合会
なお、次の「必要書類のメール」の前に電話する方法が丁寧な対応ですが、電話を省いてメールをしても特段問題になることはありません。
(3)必要書類のメール
定款案を事前にチェックしてもらうために、次の必要書類をメールに添付して送信します。
✓定款案 ✓実質的支配者の申告書 ※1 ✓発起人の顔写真付きの本人確認書類 ✓印鑑証明書 ※2 ✓行政書士事務所の謄本(法人の場合) |
※1 電子署名したものを送付すると、その後の郵送が不要になります。
※2 印鑑証明書は、公証役場によっては不要と言われることもあります。
(4)定款内容のすり合わせ
これは通常の定款認証と同じですが、定款内容のすり合わせを行い確定させます。
(5)認証日の調整
定款内容が確定した後に、認証日を調整します。
なお、公証役場によって、日付調整のための申請フォーマットが決まっているところや電話で受け付けてくれるところ等があります。
(6)認証日までに対応すること
認証日までに、次のような、書類の郵送や手数料の支払等を行います。
①認証手数料の支払い
認証手数料の請求メールを受信後、認証日までに振込を行います。
②認証URLが届く
請求メールと一緒または別で、認証日にアクセスするURLが届きます。
③書類の郵送
認証日までに次の書類が公証人に届いている必要があります。
✓委任状付きの定款(発起人の実印) ✓実質的支配者の申告書(電子署名したものをメールしてる場合には不要) ✓発起人の印鑑証明書 ※ 印鑑証明書は原本還付されますが、1枚の印鑑証明書で登記まで進める場合には、会社設立日から、原本還付で郵送される日数を逆算して、定款認証日を調整しておく必要があります。 |
定款認証に行く場合には、CD-Rを持参してそこにデータを格納してもらいますが、テレビ電話の場合には、ほとんどの公証役場でダウンロードすることとなります。
④PC環境等の整備
テレビ電話を行うために、定款作成代理人において、FacePeer社の提供する「FaceHub」を利用できる環境が必要となります。
そのため、 パソコンを使用する場合には、当該パソコンに、Google Chrome(グーグルクローム)ブラウザを事前にインストールしておくことが必要です。
また、スマートフォン又はタブレットを使用する場合には、FaceHub(フェイスハブ)アプリを事前にインストールしておくことが必要です。
(7)認証日にURLにアクセス
認証日には、送られてきたURLにアクセスして、公証人とテレビ電話を行います。
対面の場合には、復代理委任も可能ですが、テレビ電話定款認証の場合、行政書士等の本人が対応する必要があります。
この際に、会員証と運転免許証の提示を要求されます。
(8)認証された定款をダウンロード
ダウンロードしたデータを空のDVDに格納して、発起人に交付します。
詳細については、以下の日本公証人連合会のサイトの中の「テレビ電話による認証制度」の項目をご確認ください。
公証人連合会
まとめ
以上、今回はテレビ電話方式による定款認証制度について、「制度の概要」や「利用できる場合」、「流れ」などを解説いたしました。
定款の電子認証を行うと4万円分の収入印紙が節税できます。さらに、テレビ電話方式による定款認証制度を活用すると、公証役場へ訪問する手間を省くことができます。
「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする船橋会社設立サポートセンターでは、テレビ電話方式による電子定款の認証制度を使っておりますので、遠隔地の会社設立もスムーズに行うことができます。
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なお、会社設立に関するその他の手続きについては、以下の記事もご参照ください。
会社設立後の税務関係手続・社会保険関係手続