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令和4年度(2022年度)の人材開発支援助成金を分かりやすく解説

起業して間もない会社でも使いやすい助成金に「人材開発支援助成金」があります。
この記事では、令和3年度(2021年度)補正予算で決定した令和4年度(2022年度)の「人材開発支援助成金」とその中でも特に「特定訓練コース」と「一般訓練コース」に注目して、各制度やコースの概要について、分かりやすく解説します。

なお、補助金・助成金のコンサルティングについては、以下のサイトもご参照ください。
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人材開発支援助成金とは

「人材開発支援助成金」は、企業で働く労働者の職業能力開発を促進することを目的として、職業に関連する専門的な知識や技術を習得するために計画的に行う職業訓練や人材開発制度の導入などの取り組みを実施した事業主に対して助成金を支給する厚生労働省の制度です。

この人材開発支援助成金の対象は、「Off-The-Job Training(OFF-JT)」「On the Job Training(OJT)」の2つです。
また、目的によって次の7つのコースが設定されています。

特定訓練コース:労働者に効果の高い特定の教育訓練10時間以上の実施

一般訓練コース:職業に関する知識や技術を習得するために20時間以上のOFF-JT

教育訓練休暇付与コース:教育訓練休暇制度を導入し、労働者が教育訓練などを受講するために必要な教育訓練休暇の付与

特別育成訓練コース:有期契約労働者に対して正社員への転換や処遇の改善を目的とした計画に沿った訓練の実施

建設労働者認定訓練コース:認定職業訓練または指導員訓練のうち建設関連訓練の実施

建設労働者技能実習コース:建設関連訓練で若年者等の育成と熟練技能の向上などキャリアに応じた技能実習の実施

障害者職業能力開発コース:障害者の労働者に対する職業能力開発訓練事業の実施

この中でも、使いやすい「特定訓練コース」と「一般訓練コース」について、今回は説明します。

人材開発支援助成金は年度途中であっても制度が変更さることがありますので、最新の情報は以下の厚生労働省のWebサイトをご参照ください。
厚生労働省_人材開発支援助成金

 

 

人材開発支援助成金の「特定訓練コース」とは

人材開発支援助成金の「特定訓練コース」とは、職業能力開発促進センターなどが行っている特定の訓練を受けることで支給される助成コースです。

助成金の支給額は「訓練中の賃金に対する助成か経費に対する助成か」、「対象になる企業が中小企業か大企業か」、また、「生産性の向上が認められるかどうか」によって異なりますが、1 人当たりの経費助成は最大で50万円、賃金助成は最大で153万円(960円×1,600H)を受け取ることができます(詳細は下記の4.を参照)。

ただし、訓練実施計画の作成から助成金の支給までには半年、長ければ1年ほどの時間を要するため、周到な準備が必要となります。

 

 

人材開発支援助成金の「一般訓練コース」とは

人材開発支援助成金の「一般訓練コース」とは、職務に関連した知識・技能を習得させるための20 時間以上のOFF-JT訓練(特定訓練コースに該当する訓練を除く)を行った場合に支給される助成コースです。

助成金の支給額は「訓練中の賃金に対する賃金助成か経費に対する経費助成か」、「対象になる企業が中小企業か大企業か」、また、「生産性の向上が認められるかどうか」によって異なりますが、1 人当たりの経費助成は最大で20万円、賃金助成は最大で76万円(480円×1,600H)を受け取ることができます(詳細は下記の4.を参照)。

ただし、「特定訓練コース」と同様に、訓練実施計画の作成から助成金の支給までには半年、長ければ1年ほどの時間を要するため、周到な準備が必要となります。

 

 

「特定訓練コース」と「一般訓練コース」の助成金額

コースごとの助成額・助成率は次の通りです。

<中小企業の助成額>

支給対象となる訓練 経費助成 賃金助成
(1人1時間)※2
OJT実施助成
(1訓練あたり)
特定訓練コース OFF-JT 45%(60%) 760円(960円)
OJT 20万円(25万円)
一般訓練コース OFF-JT 30%(45%) 380円(480円)

※1 ( )内は生産性要件(訓練開始日が属する会計期間の前年とその3年後の生産性を比べて6%以上増加)達成の場合
※2 1,200 時間が限度時間となります。ただし認定職業訓練、専門実践教育訓練については1,600 時間が限度時間

 

<大企業の助成額>

支給対象となる訓練 経費助成 賃金助成
(1人1時間)※2
OJT実施助成
(1訓練あたり)
特定訓練コース OFF-JT 30%(45%) 380円(480円)
OJT 11万円(14万円)
一般訓練コース OFF-JT 30%(45%) 380円(480円)

※1 ( )内は生産性要件(訓練開始日が属する会計期間の前年とその3年後の生産性を比べて6%以上増加)達成の場合
※2 1,200 時間が限度時間となります。ただし認定職業訓練、専門実践教育訓練については1,600 時間が限度時間

 

<経費助成限度額 (1 人当たり)>

支給対象となる訓練 会社規模 20時間以上
100時間未満
100時間以上
200時間未満
200時間以上
特定訓練コース 中小企業 15万円 30万円 50万円
大企業 10万円 20万円 30万円
一般訓練コース 中小企業

・大企業

7万円 15万円 20万円

 

<中小企業の範囲>

業種 資本金の額・出資の総額 常用雇用する労働者数
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

 

 

「特定訓練コース」「一般訓練コース」の活用を検討すべき事業主とは

人材開発支援助成金の「特定訓練コース」「一般訓練コース」の活用を検討すべき事業主とは、例えば、次のような方になります。

①これから人を雇い入れようと考えている方

②正社員を対象とした人材育成を考えている方

 

 

「特定訓練コース」「一般訓練コース」の対象となる事業主とは

人材開発支援助成金の「特定訓練コース」と「一般訓練コース」の対象となる事業主は、主に次の要件を満たす必要があります。

雇用保険に加入していること

②事業内職業能力開発計画およびこれに基づく年間職業能力開発計画を作成し、その内容を労働者に周知していること

③職業能力開発推進者を選任していること

④訓練期間中の労働者に対して適正な賃金を支払っていること

⑤年間職業能力開発計画の提出日の前日から6か月前の日から支給申請書の提出日までの間に会社都合による退職が発生していないこと

 

 

「特定訓練コース」「一般訓練コース」の手続きの流れ

人材開発支援助成金の「特定訓練コース」と「一般訓練コース」では、訓練をするからと言ってすぐに助成金がもらえるわけではありません。
訓練実施計画の作成から実際に助成金が支給されるまでは、半年ほど長ければ1年ほどの時間を要し、必要となる手続きも慣れていないと大変です。
令和4年度(2022年度)においても、手続きの流れは、以前と大きく変わらないと考えられますので、令和3年の流れを参考に全体の流れを確認します。

①職業能力開発推進者の選任、事業内職業能力開発計画の策定

職業能力開発推進者は、一般的には人事部長や総務部長が担当するケースが多いです。また、計画を立てる段階で、訓練を行う対象者に計画内容を伝えて合意を得ておくことが重要です。

 

②訓練実施計画等の作成・提出

訓練開始の1か月前までに、訓練実施計画等を作成し、管轄の労働局またはハローワークへ直接または郵送で提出し、労働局の確認を取ります。
主な申請書類は次の通りです。

訓練実施計画届、年間職業能力開発計画、訓練別の対象者一覧、訓練の実施内容などの確認書類

 

③訓練の実施

労働局の確認が取れたら、社内周知を行い、計画に沿った訓練を実施します。
就業規則を変える必要はなく、社内イントラなどで労働者がいつでも閲覧できるような状態にします。
なお、訓練の途中で変更が生じた場合には、変更内容を実施する前に「計画変更届」を提出しなくてはなりません。変更届の提出をしないまま、変更した計画による訓練を実施した場合には助成金の支給対象外となってしまいますので、注意が必要です。

 

④訓練の終了・支給申請

訓練計画の実施期間の終了した日の翌日から2か月以内に支給申請書を管轄労働局へ提出します。
主な申請書類は次の通りです。

支給要件確認申立書、支払方法・受取人住所届、支給申請書、賃金助成および実施助成の内訳、経費助成の内訳、OFF-JT実施状況報告書、OJT実施状況報告書など

 

⑤審査を経て支給決定

管轄労働局の審査が行われ、申請手続きや申請書類に不備がなければ、ようやく支給が決定されます。
申請から支給決定までは2ヵ月から6ヵ月ほどかかり、審査を通過すると支給決定の通知書が交付され、ようやく助成金が支給されます。

 

⑥生産性向上助成の支給申請

事後的に生産性要件(訓練開始日が属する会計期間の前年とその3年後の生産性を比べて6%以上増加)を満たした場合には別途申請し、割増し分の差額を追加で受給することができます。
支給申請期限は、訓練開始日が属する会計期間の前年から3年後の会計期間末日の翌日から5か月以内になりますので、該当する場合には申請漏れがないように注意が必要です。

 

 

「特定訓練コース」「一般訓練コース」の申請期間

人材開発支援助成金については、特定の公募期間は定められていません。
そのため、人材開発支援助成金助成金の「特定訓練コース」と「一般訓練コース」は年間を通じて申請ができます

 

 

人材開発支援助成金以外の助成金等

人材開発支援助成金以外にも次の助成金等があります。

①キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者の企業内のキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成する制度を言います。

詳細は以下の記事をご参照ください。
令和4年度(2022年度)のキャリアアップ助成金を分かりやすく解説

 

②各融資制度

助成金の獲得が難しい場合には、小規模事業者持続化補助金やものづくり補助金等も考えられます。
また、助成金や補助金が難しい場合には、融資や出資を受けることも検討できます。

詳細は以下の記事をご参照ください。
創業時に使える資金調達方法を網羅的に解説(融資・出資・補助金・助成金)

特に以下の資金調達方法は、創業時に使い勝手がいい方法です。

新創業融資制度はこちら:
創業時に使える新創業融資制度とは?

地方自治体が窓口となる制度融資はこちら:
制度融資を分かりやすく解説(公庫融資との比較)

 

 

まとめ

以上、今回は令和3年度(2021年度)補正予算で決定した令和4年(2022年)の「人材開発支援助成金」とその中でも特に「特定訓練コース」と「一般訓練コース」に注目して、各制度やコースの概要について解説させていただきました。

この「人材開発支援助成金」は申請自体の難易度はそこまで高くはないですが、訓練計画書の作成や、就業規則や雇用契約書等の整備も必要となる可能性があることから、専門家と念入りに打ち合わせを行い、計画的に申請することをお勧めしています。

「人材開発支援助成金」について、少しでもご興味がございましたら、まずは「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループにお気軽にご相談ください。