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中小企業経営力強化資金(2020年4月の制度変更後)とは?

創業時に受けられる公的融資制度の一つに「中小企業経営力強化資金」があります。
2020年4月の制度変更前は、2,000万円までの無担保無保証や低金利での融資など、創業期の会社にとって、かなりお勧めの融資制度でしたが、制度変更により、この中小企業経営力強化資金の魅力は激減しています。
それでも、創業2期以上の場合には活用を検討すべき制度ではありますので、今回は中小企業経営力強化資金の概要やメリット・デメリットなどを解説させていただきます。

なお、創業融資について、ご相談されたい方は、以下のサイトもご参照ください。
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中小企業経営力強化資金とは?

中小企業経営力強化資金とは、日本政策金融公庫の国民生活事業および中小企業事業の中で実施され、起業・創業したばかりの会社でも使える融資制度です。
2020年4月の制度変更前は、創業2期以内であっても、一定の条件を満たすと、2,000万円まで無担保・無保証、かつ、低金利で融資を受けることができ、創業期の会社にとっては、かなりお勧めの融資制度でした

 

 

2020年4月の制度変更により中小企業経営力強化資金の従来のメリットは激減

2020年4月の制度変更により、無担保・無保証枠が新創業融資制度と同じ1,000万円までと下がっただけでなく、優遇されていた金利も基準金利とされてしまいました。
そのため、制度変更後に中小企業経営力強化資金を選ぶメリットは激減してしまい、創業2期以内の会社においては、同じ日本政策金融公庫の新創業融資制度を選ぶことが一般的となっています。

新創業融資の詳細については、以下の記事をご参照ください。
創業時に使える新創業融資制度とは?

また、公庫融資が使えない場合には、地方自治体が窓口の制度融資を使うこともあります。制度融資については、以下の記事をご参照ください。
制度融資を分かりやすく解説(公庫融資との比較)

 

中小企業経営力強化資金の主な条件

(1)利用できる者

新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方のうち、次のいずれの条件も満たすことができる方
①「中小企業の会計に関する基本要領」もしくは「中小企業の会計に関する指針」を適用している、または適用する予定である
②自ら事業計画書の策定を行い、認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている

 

(2)融資限度額

融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)となっています。

 

(3)返済期間

設備資金は20年以内となっていますが、実務的には10年以内です。
運転資金は7年以内となっています。
また、これらの返済期間のうち2年以内の範囲で据置期間が設定できますが、実際には長くて1年以内、平均して3ヶ月以内となることが一般的です。

 

(4)金利

特別利率A(令和4年5月2日現在で担保不要の場合は1.61~2.4%)

 

 

中小企業経営力強化資金のメリット

中小企業経営力強化資金の主なメリットは次の通りです。

(1)自己資金要件がない

形式上は、自己資金の要件がありません。
同じ日本政策金融公庫の新創業融資の場合には、「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」が必要となりますが、この要件がないのです。
ただし、これはあくまでも形式上の要件であり、実際の審査においては、自己資金の額によって、融資金額が影響を受けます。

なお、自己資金として認められるお金の範囲については、以下の記事もご参照ください。
創業融資の自己資金として認められるお金とは?

(2)創業直後から利用できる

起業・創業して間もない会社であっても、すぐに利用することができます。

 

 

中小企業経営力強化資金のデメリット

中小企業経営力強化資金の主なデメリットは次の通りです。

(1)認定支援機関による支援が必須

中小企業等支援の専門家として国が認定した認定支援機関の支援を受ける必要があり、会社が単独で申し込むことができません。

 

(2)事業計画進捗報告義務がある

最低でも2事業年度は、融資申込時に提出した事業計画と実績値の予実を報告する義務があります。
これに対応しない場合には、原則として一括返済を求められてしまうことから注意が必要です。

 

(3)市場の創出・開拓が必要

「市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む。)を行う」ことが条件になっており、例えばフランチャイズでは利用できないことが多いです。

 

(4)金利の下げ幅が小さい

同じ日本政策金融公庫の新創業融資では、申込者の属性により金利のディスカウントが効く場合がありますが、中小企業経営力強化資金の場合には、その下げ幅が小さく、金利が公庫の他の融資制度に比べて高くなる可能性があります。

 

 

中小企業経営力強化資金制度を活用する場面

2020年4月の制度変更後の中小企業経営力強化資金は、上記の通り、メリットよりデメリットの多い制度となっていますが、新創業融資制度が使えない創業2期以上の場合には、まだまだ活用する場面があると考えられます。

 

 

中小企業経営力強化資金の流れ

中小企業経営力強化資金による融資を受けるための全体の流れは次の通りです。

(1)認定支援機関の選定・相談

中小企業経営力強化資金を利用するためには、まず認定支援機関を選定し、事業計画の内容について相談した上で、指導または助言を受ける必要があります。
相談の際には、あらかじめ中小企業経営力強化資金制度を利用したい旨を伝えておくとその後の手続きがスムーズとなります。

 

(2)必要書類の準備・作成

事業計画書等の作成について認定支援機関からの指導や助言を受ける必要があります。具体的にどの書類についてどの程度の作成やサポートをお願いするかについては、認定支援機関と協議が必要です。
融資申し込みの際の必要書類は次の通りです。

・借入申込証
・事業計画書(中小企業経営力強化資金用の事業計画書フォーマット)
・代表者の身分証明書
・履歴事項全部証明書(法人の場合)
・過去2年分の源泉徴収票または確定申告書(個人の場合)
・過去2年分の決算書(法人の場合)
・すでに借入金がある場合は償還表など
・営業所の賃貸契約書
・事業で使用している通帳コピー
・印鑑証明書
・家賃や水道光熱費、その他ローンの支払い状況がわかる資料
・設備購入の場合には見積書

 

(3)書類を日本政策公庫に提出

準備した必要書類を日本政策金融公庫へ提出します。
書類の提出方法には「支店に持参する」、「郵送する」、「インターネットで申しこむ」の3つの方法がありますが、公庫の支店によっては持参が制限されていることもあるため、申込先の支店に事前に確認が必要です。

 

(4)融資面談の実施・審査

はじめての融資申込みの場合には、日本政策金融公庫の担当者との面談が必要となります。
また、すでに融資をうけている方であっても、申込額が大きい場合や、以前の計画の内容と大場な変更がある場合などには、再度の面談が行われることもあります。
面談は、通常は申込先の支店で行われます。この際に認定支援機関の同席を希望する場合には、事前に日本政策金融公庫の了解を得る必要があります。
面談終了後に、書類の内容や面談の結果にもとづき、審査が行われます。
なお、審査の一環として必要に応じ、事務所などの現地調査が行われることがあります。

 

(5)融資決定・契約・実行

審査の結果については、本人に文書や電話により連絡がされます。
審査を通過した場合には、おおよそ1週間〜10日以内に日本政策金融公庫の支店において、融資に関する金銭消費貸借の契約の締結をします。
さらにその後、1週間前後の期間内に申込人が指定した法人口座へ融資額が振り込まれます。
インターネット銀行の法人口座は使えないので、注意が必要です。

なお、法人口座をどの金融機関で開設すべきかについては、以下の記事もご参照ください。
法人口座はどこで開設?

 

 

まとめ

以上、今回は中小企業経営力強化資金の概要やメリット・デメリットなだについて解説させていただきました。

中小企業経営力強化資金は、以前は、申込みの条件が厳しい代わりに、「2,000万円までの無担保無保証枠がある」「金利が1%以上低くなる」などの優遇があったため、とくに創業者の方にとっては魅力的な制度でした。
ただし、2020年4月の制度改正により、これらの優遇はなくなったにもかかわらず、厳しい要件だけが残るという残念な制度となってしまっています。

そのため、これからこの制度を使って融資を受けるメリットはないどころか、かえってデメリットの多い制度となってしまっているため、もし、創業者の方で無担保無保証の制度を希望する場合には、新規開業資金などに新創業融資制度をあわせて利用することをお勧めします。

創業時に受けられる公的融資制度に少しでも興味がございましたら、創業融資に強い「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループにお気軽にご相談ください。