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暦年贈与とは?メリット・デメリットや選択した方がいいケースを解説!

これまで、相続対策として生前贈与を活用する場合には、「暦年贈与」を使うことがほとんどで、「相続時精算課税制度による贈与」はあまり使われてきませんでした。

ただし、「資産移転の時期の選択により中立的な税制」の構築を目的とした、令和5年度税制改正により、「暦年贈与」は相続財産に加算する期間が延長(改悪)される一方で、「相続時精算課税による贈与」は基礎控除が創設(改善)されることとなりました。

そのため、これから、相続対策として生前贈与を活用する場合には、「暦年贈与」と「相続時精算課税制度による贈与」のどちらが有利かしっかりとシミュレーションを行うことが重要となります。

そこで今回は、暦年贈与に関して、「制度の基本」や「メリット・デメリット」、「選択した方がいいケース・選択しない方がいいケース」などを解説します。

なお、相続時精算課税制度に関しては、以下の記事をご参照ください。

相続時精算課税制度とは?メリット・デメリットや選択した方がいいケースを解説!

 

暦年贈与の基本

個人から財産をもらった人には、原則として贈与税がかせられます。

贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、財産をもらった人(受贈者)は贈与をした方(贈与者)ごとにそれぞれの課税方法を選択することができます。

ここでは、この2つの方法のうち、「暦年課税」を使った贈与である「暦年贈与」について、「制度概要」や「対象者」、「贈与税の計算」などを確認します。

 

(1)暦年贈与の制度概要

「暦年贈与」とは、受贈者が1年間(暦年)に贈与を受けた額から110万円の基礎控除を控除した残りの金額に対して贈与税がかかる贈与方法のことを言います。

つまり、受贈者1人について、1年間の贈与額が110万円以下であれば無税で、贈与者から財産を承継させることができます。
この暦年贈与を活用することで、少しずつ相続財産を減らしていくこともできるため、相続税対策として、広く使われています。

また、暦年贈与では、贈与する価額が増えるほどより高い税率で課税される累進課税が採用されていることから、不動産などの評価額が大きくなりやすい財産を贈与する場合には、贈与税が多額となる可能性があるため、注意が必要です。

 

(2)暦年贈与の対象者

暦年贈与が使える人は、相続時精算課税のように一定の者に限定されていないことから、誰でも使うことができます

なお、実務上は、初年度に届出が必要となる「相続時精算課税制度」を選択しなかった贈与については、全て暦年贈与を選択したものとして取り扱います

また、誰から誰に対する贈与であるかによって、贈与税の計算が異なりますが、その点は後述します。

 

(3)暦年贈与の贈与税の計算

暦年贈与では、贈与する価額が増えるほどより高い税率で課税される累進課税が採用されています。

具体的には、次の計算式で算定します。

贈与税額 = ( 贈与財産の価額 - 基礎控除110万円 ) × 税率 − 控除額

 

暦年贈与は、「特例贈与」とそれ以外の「一般贈与」に分けられます。両者は、税率の区分で10%〜55%の8段階であることに変わりはありませんが、適用税率が異なります。

特例贈与の方が税率の上がり方が少し緩やかで、基礎控除後の課税価格(上記計算式の括弧部分)が300万円超〜4,500万円以下の場合、特例贈与の方が適用される税率などが低くなり、結果として、贈与税の負担が少なくなります。

 

「特例贈与」と「一般贈与」の詳細は以下の通りです。

①特例贈与

特例贈与には、直系尊属(父母や祖父母など)から、18歳以上(贈与を受けた年の1月1日時点)の直系卑属(子や孫など)に対する贈与が該当します。具体的には、親から18歳以上の子、祖父母から18歳以上の孫といった親族内の贈与です。

特例贈与の速算表は下表の通りです。

 

<特例贈与の速算表>

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

 

②一般贈与

一般贈与には、特例贈与以外の贈与が全て該当します。

一般贈与の速算表は下表の通りです。

 

<一般贈与の速算表>

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

 

 

暦年贈与のメリット

暦年贈与には、以下の通り、主に5つのメリットがあります。

 

(1)110万円以下の贈与で税負担なく相続財産を減らすことができる

暦年贈与では、基礎控除額の110万円以下であれば、贈与税は課税されません。

そのため暦年贈与を上手に活用することで、贈与税を負担することなく相続財産を減らすことができ、より多くの財産を次世代に残すことができます

また、贈与税を支払う場合であっても、贈与する財産の価額をコントールすることで、相続時に適用が予想される税率より低い税率での贈与も可能となります。

 

なお、基礎控除額の110万円は、受贈者(贈与を受ける者)ごとにあることから、受贈者が複数いれば、無税で減らすことができる相続財産の額は増えることとなります。

例えば、子供が3人いる場合には、3人それぞれに110万円ずつ贈与することで、贈与税の課税がされることなく、合計330万円の相続財産を減らすことができます。

 

(2)相続税の納税対策となる

相続財産を取得した相続人は、原則として相続税を現預金で納付する必要があります。

そのため、遺産分割の関係等で、相続する財産に現預金が少ないことが予想でき、また相続人自身も現預金をあまり持っていないケースでは、生前に暦年贈与によって現金を渡しておくことで、相続後の納税資金を準備しておくことが可能となります

 

(3)財産を渡したい相手(受贈者)を自由に選ぶことができる

相続時精算課税制度と異なり、暦年贈与の場合には受贈者となれるものは限定されておらず、誰でもなることができます

そのため、配偶者や子どもなどの法定相続人だけでなく、孫やお世話になった人など法定相続人以外の人であっても、贈与者が財産を渡したい相手を自由に選ぶことが可能です。

 

(4)遺産分割対策

相続人が複数いる場合には、遺産分割対策として、遺産分割の内容を生前に決めておくことで、スムーズな相続が可能となります。

この遺産分割対策の1つとして、暦年贈与があり、暦年贈与を活用することで、生前に自身の意思に基づく財産分割が実現できます

例えば、孫は原則として、遺産分割協議に参加できませんが、暦年贈与を活用すれば、生前に財産を渡すことができます。
ただし、特定の推定相続人のみに贈与を行う場合には、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があることから、注意が必要です。

 

(5)早期に財産を移転できる

子供や孫などの財産を必要としている現役世代に、より早い時期に財産を移転させることができます。

相続が発生すると財産を移転することはできますが、相続はいつ発生するか分からないため、現役世代が財産を必要としているタイミングで、タイムリーに財産を移転できる点が暦年贈与のメリットとなります。

 

 

暦年贈与のデメリット

暦年贈与には、以下の通り、主に3つのデメリットがあります。

 

(1)相続開始前7年以内の贈与は生前贈与加算として相続税の対象となる

贈与者の相続開始前7年以内(令和5年度税制改正前は3年)に受けた贈与財産は、生前贈与加算により相続財産に含まれ、相続税の対象となります

そのため、110 万円以下の暦年贈与を行い、税負担なく(無税で)、相続財産を減らすことができると安心していた場合であっても、相続税が発生することがあることから注意が必要です。

なお、令和5年度の税制改正において、生前贈与加算の対象期間が「相続開始前 3 年以内」から「相続開始前 7 年以内」に延長されることとなっています。具体的には、2027 年以降に1年ずつ加算の対象期間が延長され、2031 年以降から加算の対象期間が 7 年となります。

 

(2)定期贈与とみなされると贈与税がかかる

贈与の額が年間 110 万円以下であっても、それが毎年同じ時期に行われていると、定期贈与とみなされる可能性があります。

定期贈与とは、毎年一定の時期に決まった金額を贈与する方法ですが、定期贈与することを合意した日に贈与総額を一括で贈与したものとして贈与税を計算することとなります。

例えば、1,000万円を100万円ずつ10 年にわたって贈与することを合意した定期贈与では、毎年の贈与額が 110 万円以下であっても、贈与総額の 1,000 万円に対して贈与税が発生します

定期贈与とみなされないためには、贈与の時期を毎年ずらすことや、毎年、贈与契約書を作成するといった工夫が必要となります。

 

(3)遺留分を侵害する可能性がある

遺留分とは、相続人に最低限認められた相続分のことです。
贈与によって、この遺留分を侵害していると認められる場合には、遺留分侵害額の請求を受けるリスクがあります。

遺留分侵害額の請求を受けると、相続の開始 1年前までさかのぼって、贈与を受けた金額のうち遺留分を侵害する部分については、他の相続人に返還をしなければなりません。

ただし、遺留分を侵害することを贈与した側と贈与を受けた側の双方が認識していた場合には、1年以上前の部分についてもさかのぼって返還をしなければならないこともあることから、注意が必要です。

 

 

暦年贈与を選択した方がいいケースとは?

ここでは、暦年贈与のメリット・デメリットを踏まえた上で、暦年贈与を選択した方がいい4つのケースを確認します。

 

(1)相続開始まで時間の余裕がある(7年以上)ケース

令和5年度税制改正により、暦年贈与の生前贈与加算の加算期間が「3年」から「7年」に延長されています。

そのため、暦年贈与を選択した方がいいケースは、贈与者の年齢が若く、相続開始まで時間に余裕があるケースです。
相続開始まで時間の余裕があるケースとは、具体的には、贈与者の相続開始まで7年以上あると想定されるケースを言います。

したがって、贈与者が高齢のケースや、病気のケースでは、暦年贈与の活用はあまり向いていません。

 

(2)孫に財産を渡したいケース

暦年贈与を選択した方がいいケースは、孫に財産を渡したいケースです。

生前贈与加算の対象となるのは、贈与者の相続発生時に財産を相続・遺贈によって取得する者です。
そのため、贈与者の相続発生時に財産を取得する予定がない「孫」に暦年贈与を行なったとしても、生前贈与加算の対象とはされません

なお、次のような「孫」は、贈与者の相続発生時に財産を取得するため、生前贈与加算の対象となることから、注意が必要です。

✓死亡保険金の受取人である孫

✓遺言書で遺贈される孫

✓代襲相続人となる孫

✓養子縁組をした孫

 

(3)贈与財産と相続財産の総額が相続税の基礎控除以下のケース

暦年贈与を選択した方がいいケースは、「贈与する財産」と「贈与者の相続発生時に想定される相続財産」の総額が、相続税の基礎控除以下のケースです。

相続税は、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)以下の場合、課税はされません。

そのため、「贈与する財産」と「贈与者の相続発生時に想定される相続財産」の総額が、相続税の基礎控除以下であれば、仮に生前贈与加算の対象になったとしても、相続税は課税されないため、デメリットに挙げた生前贈与加算を気にすることが不要となります

 

(4)贈与したい相手が多いケース

暦年贈与を選択した方がいいケースは、贈与したい相手が多くいるケースです。

暦年贈与は受贈者ごとに基礎控除110万円を計算することから、贈与したい相手がたくさんいるケースでは、年間で贈与できる金額が多くなり、比較的短期間で多額の贈与が可能となります。

そのため、子どもや孫など贈与したい相手が多いケースにおいて、より効果的に節税をすることができます

 

 

まとめ

以上今回は、暦年贈与に関して、「制度の基本」や「メリット・デメリット」、「選択した方がいいケース・選択しない方がいいケース」などを解説いたしました。

令和5年度の税制改正前までは、相続対策として生前贈与を活用する場合には、基本的に「暦年贈与」を使うことがほとんどでした。ただし、令和6年度以降に相続対策として生前贈与を活用する場合には、「相続時精算課税制度による贈与」を使う方が有利なケースが増えてくると考えられます。

「相続時精算課税による贈与」については、メリットだけでなく、デメリットもあることから、「暦年贈与」のメリット・デメリットと比較検討して、相続対策として、より有利な方を活用することが重要です。

比較検討の際には税理士等の専門家と相談して、しっかりとシミュレーションを行うことをお勧めします。

 

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