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個人で所有しているアパートやマンションを他人に貸し、賃貸収入を得ている場合には不動産所得として扱われ、所得税がかかります。また、自分が亡くなったときには、相続財産である不動産に対して相続税が課税されてしまいます。
一方で、法人化によって不動産管理会社を設立すれば、給与所得として受け取れるようになり、家族や親族にも役員報酬を支払うことができます。さらに相続時には不動産ではなく会社の自社株が相続税財産となることで、相続財産を減らすことができるメリットもあります。
そこで、本記事では、不動産オーナーの法人化に関して、「メリット・デメリット」、「法人化すべきタイミング」、「法人化する前の検討ポイント」等を分かりやすく解説します。
Table of Contents
1.不動産オーナーにおける法人化とは?
「不動産オーナーの法人化」とは、不動産オーナーが代表となって株式会社などの不動産資産管理会社を設立し、法人として不動産投資を行うことです。
賃貸アパートやマンションを所有している不動産オーナーは、この「不動産オーナーの法人化」を選択し、個人事業主として不動産を管理するのではなく、不動産管理会社で不動産を管理することがあります。
不動産管理会社を設立し、オーナーが社長や役員に就任すれば、不動産経営によって得られた収入を給与所得として受け取ることができます。その結果、給与所得控除が利用できるなど節税に繋がる可能性があります。
他にも、不動産オーナーが法人化して不動産管理会社を設立するメリットがいくつかありますので、次の章で詳しく確認します。
2.不動産オーナーにおける法人化のメリット
不動産オーナーが法人化して不動産管理会社を設立すれば、主に税金面で以下のメリットを享受することができます。
(1) 所得税の節税につながる
個人で不動産経営をしていた場合、賃貸収入は不動産所得に分類された上で、所得税がかかります。所得税は累進課税制度を採用しているため、所得が多ければ多いほど税率が高くなり、住民税を加えた最高税率は55%(所得税率45%+住民税率10%)となります。
それに対して、不動産管理会社を設立し法人化すれば、法人税が課税されるようになり最高税率は33.58%(実効税率)に抑えられます。
このように同じ賃貸収入であっても、所得税の最高税率よりも法人税の最高税率の方が低く設定されているため、不動産収入が多い人ほど法人化による節税効果が高くなります。
(2) 相続税の節税につながる
不動産管理会社を設立して、個人が所有していた不動産を会社の所有にすると、相続税の節税につながる可能性があります。
不動産管理会社の代表者が亡くなって相続が発生した場合には、会社が所有している不動産ではなく、代表者が所有していた自社株に対して相続税がかかります。
不動産そのものよりも不動産管理会社の自社株の方が、相続税財産としての評価額が低くなることが多いため、結果として相続税の節税につながる可能性が高いです。
(3) 経費として計上できる範囲が広がる
個人事業主として不動産経営をするよりも、不動産管理会社を設立して法人化した方が経費として計上できる範囲が広がります。
具体的には、不動産オーナーが法人化した場合には、次のような支出が経費として認められるようになります。
✓家族への役員報酬や給与
✓退職金の積み立て ✓代表者や役員の生命保険料 |
法人化をして上記を経費として計上すれば、それだけ利益が少なくなり、支払う税金を抑えることができます。
(4) 損失繰越期間が最長10年間に延びる
不動産経営で赤字が発生したときの損失の繰越期間は、個人事業主よりも法人の方が長くなります。
個人事業主と法人の損失繰越期間は、それぞれ以下の通りです。
✓個人事業主:3年間
✓法人:10年間 |
損失繰越期間内であれば、黒字になった年に過去の赤字分と相殺することができ、税金を節税することが可能です。
3.不動産オーナーにおける法人化のデメリット
上記のように不動産管理会社を設立するのには、税金面で様々なメリットがあります。
その一方で、不動産オーナーの法人化にはデメリットもあり、全てのケースでおすすめできるわけではありません。
ここでは、不動産オーナーが法人化するデメリット等を詳しく解説します。
(1) 会社設立の費用と労力がかかる
個人事業主が事業を始める際には、開業届を提出するだけで手続きが完了しますが、会社設立時には設立登記や定款認証など手間がかかる手続きが必要となります。
設立登記・定款認証は自分で行った場合でも、株式会社であれば20万円ほど、合同会社であれば6万円ほどかかりますし、手続きが複雑で手間もかかります。
また、不動産管理会社を廃業する場合にも解散登記等が必要であり、数万円の費用が追加でかかります。
(2) 法人を維持するための費用がかかる
不動産管理会社を設立して、法人化すると会社設立の費用だけでなく、維持費用もかかります。
具体的には、次のような費用が、法人の維持費用としてかかります。
✓役員報酬や給与に関する社会保険料
✓税理士などの専門家費用 |
法人の場合、役員・従業員が1人以上いれば、原則として社会保険の加入義務が生じるため、不動産オーナーの1人会社であっても社会保険料がかかってしまいます。
また、税理士と顧問契約を結ぶと、月額1~5万円程度の費用がかかります。不動産管理会社の決算・申告は、個人事業の決算・申告と比べるとかなり複雑となるため、顧問税理士がいない状況はなるべく避けた方が無難です。
(3) 赤字でも法人住民税がかかる
法人住民税には「法人税割」と「均等割」がありますが、「均等割」はどのような法人にも平等に負担を求められるため、赤字で法人税を納めていない法人でも、均等割が年7万円以上かかります。
個人事業主は、赤字の年には原則として住民税は課税されないため、注意が必要です。
(4) 5年超保有した不動産を譲渡した場合の税率が高くなる
不動産管理会社が所有している不動産を売却したときには、売却益に対して法人税等が課税されます。
一方で、個人事業主が不動産を売却した際には、売却益に対して譲渡所得税が事業所得や給与所得などの所得と分離して課税(分離課税)されます。
法人税等の実効税率は最高で33.58%ですが、長期譲渡(5年超保有した不動産の譲渡)の譲渡所得税の税率は20.315%のため、不動産売却のみを比較した場合、個人よりも法人の税率の方が高くなります。
なお、短期譲渡(5年以内保有した不動産の譲渡)の場合には、個人の譲渡所得税の税率は39.63%となるため、逆に法人の税率の方が低くなります。
なお、不動産の譲渡所得税については、以下の記事の「3.代物弁済で債務者側が負担する税金 (2)譲渡所得税」の部分もご参考になさってください。
代物弁済と税金の関係とは?税負担から非課税要件まで詳しく解説
(5) 不動産取得税と登記費用がかかる
不動産オーナーが法人化して、不動産の所有権を不動産管理会社に移す際には、不動産管理会社側に不動産取得税と登記費用がかかります。所有している不動産の評価額が高ければ高いほど、不動産取得税や登記費用も高額になるため注意が必要です。
不動産取得税の税率は、原則4%ですが、2027年3月31日までは軽減税率が適用されており、3%となっています。また、2027年3月31日までに取得した宅地に関しては、課税標準を2分の1にする特例(固定資産税評価額×1/2)もあります。
登記費用(登録免許税)の税率は、原則2%ですが、2026年3月31日までに取得した土地については、軽減税率が適用されており、1.5%となります。
4.不動産オーナーが法人化すべきタイミングとは
上記のように不動産オーナーの法人化にはメリットだけでなく、デメリットもあるため、全ての不動産オーナーに法人化がおすすめできるわけではありません。
ここでは、不動産オーナーが法人化を検討すべきタイミングを解説します。
なお、一般の会社における法人化すべきタイミングについては、以下の記事をご参照ください。
(1) 不動産所得が600万円を超えるとき
不動産オーナーが法人化すべきタイミングとしては、個人事業主の所得税率等が法人税の実効税率23.17%(所得800万円超は33.58%)より高くなったときが考えらえます。
このタイミングで法人化することで、個人と法人の税率の差を利用した節税効果を得ることができます。
所得税率等とは下表の税率の合計になります。
課税所得金額 | 所得税率 | 住民税率 | 合計 |
195万円以下 | 5% | 10% | 15% |
195万円超~330万円以下 | 10% | 10% | 20% |
330万円超~695万円以下 | 20% | 10% | 30% |
695万円超~900万円以下 | 23% | 10% | 33% |
900万円超~1,800万円以下 | 33% | 10% | 43% |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | 10% | 50% |
4,000万円超 | 45% | 10% | 55% |
上記の表からは、所得金額が330万円を越えた場合には、法人化の検討をすべきと言えます。ただし、実際には法人化することで、不動産取得税と登記費用がかかり、また税理士等の外部専門家に対する費用の増加等もあるため、所得金額600万円あたりが法人化すべきタイミングの1つと言われています。
(2) 不動産の相続対策をしたいとき
所有している不動産の相続対策をしたいときにも、不動産オーナーが法人化を検討すべきタイミングの1つです。
不動産オーナーの法人化により、所有している不動産を法人に移転させることで、個人の相続財産を圧縮することができます。また、所得を家族間で分配できることから、将来的な相続財産を圧縮する効果もあります。
なお、相続対策に関しては、以下のブログに掲載している各記事もご覧ください。
ブログ – 相続・贈与 | 江東区の税理士|税務会計事務所【保田会計事務所】
(3) 不動産投資を始めるとき
不動産投資を始めるのであれば、経費はかかるものの最初から法人化した方がよいケースがあります。例えば、最初から法人として事業の実績や融資の実績を作っていくことで、後々、投資を拡大していくときに金融機関からよい条件で融資を受けられるようになります。
(4) 所有から5年以内の物件を売却するとき
上述の通り、所有から5年以内に不動産を売却する場合には、法人の方が税率を低く抑えることができます。
そのため、所有から短い期間でのキャピタルゲイン(値上がり益)の獲得を狙う場合には、最初から法人化しておいた方がメリットは大きくなります。
5.法人化する前の検討ポイント
不動産オーナーの法人化の前には以下のポイントに注意し、法人化によるメリットがデメリットを上回るかどうかを確認することが重要です。
(1) 課税所得の総額を確認する
不動産所得が600万円を超えるあたりが、法人化による節税のメリットを得られる目安ですが、副業で不動産投資している場合には、本業での稼ぎもあります。
そのため、不動産所得と本業での所得とを合算し、課税所得の総額がいくらになるのかを確認することが重要です。また、法人化による節税シミュレーションを実施することも法人化成功のポイントです。
(2) 売却時期を想定し、売却益・税金を試算する
売却時期を想定し、その時期までの減価償却を考慮した上で、売却益をシミュレーションします。そして、その売却益にかかる譲渡所得税と法人税等を比較することが重要です。
特に、所有から5年以内に不動産を売却する場合には、法人の税率の方が低くなることから、売却時期が5年以内か5年超かの想定は慎重にする必要があります。
なお、法人の場合には減価償却をするかどうか自由に決めることができますが、シミュレーション上は減価償却を行ったと仮定することが一般的です。
(3) 不動産取得税と登記費用を試算
不動産オーナーが法人化して、不動産の所有権を不動産管理会社に移す際には、不動産取得税と登記費用がかかります。そのため、不動産オーナーの法人化による、所得税の節税効果と、不動産取得税と登記費用の発生コストとを比較することが重要です。
所有している不動産の評価額が高ければ高いほど、不動産取得税や登記費用も高額になるため注意が必要です。
なお、不動産取得税と登記費用の課税標準は、固定資産税評価額となるため、固定資産税評価証明書があれば、不動産取得税と登記費用の試算はあまり難しくはありません。
6.まとめ
以上今回は、不動産オーナーの法人化に関して、「メリット・デメリット」、「法人化すべきタイミング」、「法人化する前の検討ポイント」等を分かりやすく解説しました。
不動産オーナーの法人化は、所得税や相続税の節税対策として非常に有効な手段です。法人化によって得られる主なメリットには、法人税の実効税率の方が所得税よりも低いため税負担を軽減できること、相続時に不動産ではなく自社株が相続財産となることで評価額を抑えられる可能性があること、さらには経費の範囲が広がることでさらなる節税効果が期待できることなどが挙げられます。
一方で、法人化には設立や維持にかかる費用、赤字でも法人住民税が課される点、不動産の譲渡税率が不利になる場合がある点など、注意すべきデメリットも存在します。特に、不動産の所有権を法人に移転する際には、不動産取得税や登記費用といった初期コストが大きな負担となるケースもあるため、十分な試算が欠かせません。
法人化すべきタイミングの目安としては、不動産所得が600万円を超えたときや、相続対策を検討しているとき、あるいは不動産投資を拡大したいときなどが挙げられます。また、売却を予定している物件が所有から5年以内であれば、法人として保有していた方が税率面で有利になる場合もあります。
不動産オーナーの法人化は、「やった方が良い」という単純な判断ではなく、「自分の状況に合っているかどうか」を見極めることが最も重要です。
法人化に関して不安がある方は、税理士などの専門家にシミュレーションを依頼し、節税効果とコストのバランスを客観的に把握した上で判断されることをおすすめします。
「江東区・中央区(日本橋)・千葉県(船橋)」を拠点とする保田会計グループでは、「不動産オーナーの法人化サポート」に力を入れておりますので、ご興味等ございましたら、お気軽にご連絡ください。