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税務調査と聞くと、多くの方が「一体どこまで調べられるのか」と不安に感じることでしょう。
特に法人経営者や個人事業主にとっては、調査対象の範囲や年数、反面調査の有無などは実務上の大きな関心事です。
本記事では、税務調査の範囲を具体的に解説し、適切な対応策を提示します。正しい理解と準備で、調査を円滑に乗り越えましょう。
税務調査はどこまで調べるのか?
税務調査は、申告内容が正しいかどうかを確認するために行われます。対象は、売上・経費・資産・負債など、申告に影響する「すべての事業関連情報」です。
調査官は「形式」ではなく「実質」に重きを置き、必要であればプライベート領域にも踏み込んで調査を行います。
Table of Contents
(1)調査対象の範囲は“事業関連のすべて”
① 帳簿・領収書・契約書などの紙資料が基本対象
税務調査の中心は、紙ベースの会計資料です。以下のような書類は法人・個人共通で調査対象となります。
- 総勘定元帳・仕訳帳などの帳簿類
- 領収書・請求書・納品書
- 業務委託契約書、売買契約書、賃貸借契約書
- 税理士が作成した決算書・申告書の控え
これらの書類に不備・矛盾・未保存があると、「仮装・隠ぺい」の疑いで重加算税の対象になることがあります。原則として7年間の保存義務があるため、古い資料も準備しておきましょう。
② 通帳・クレジット明細・レジデータも調査される
帳簿に記載された数字の裏付け資料も、必ず調査されます。具体的には以下の通りです。
- 銀行通帳(事業用・個人口座問わず)
- クレジットカード明細(経費の支払い記録)
- レジの売上データ・電子マネー取引履歴
特に最近は、個人名義の口座やクレカで事業支出をしている場合も多く、名義だけでは判断されません。「誰が管理し、誰が使っているか」が重視されます。
③ 税務調査でパソコン内データも確認されることがある
デジタル化が進んだ今、調査官はパソコンやクラウド上のデータも積極的にチェックします。
対象となる主なデータは以下の通りです。
- 会計ソフト(弥生、freee、マネーフォワードなど)の仕訳記録
- ExcelやCSVで保存された売上管理表、経費精算データ
- 電子帳簿保存法に基づくPDF請求書、スキャン領収書
また、メッセージアプリやメール内容から「実態」を探る調査もあり、税務署は“証拠隠滅”に非常に敏感です。
(2)プライベートと事業の境界もチェックされる
税務調査では、「これは事業と関係あるのか?」という線引きも重要なチェックポイントです。
① 自宅兼事務所のケースでは生活スペースまで見られることも
自宅の一部を事業に使っている場合、以下のような点が確認されます。
- 仕事スペースと居住スペースの分離がなされているか
- 家賃や水道光熱費の按分割合が妥当か
- 自宅住所での仕入れや契約が多すぎないか
場合によっては、写真撮影や図面提出を求められることもあります。
② 家族名義の口座も“実質支配”があれば対象に
形式上は家族名義であっても、以下のような場合には調査対象とされます。
- 配偶者名義の口座に売上が入金されている
- 子ども名義のカードで事業経費が支払われている
- 家族に資金移動しているが、指示・管理は本人が行っている
これは、「実質支配基準」と呼ばれ、脱税の温床となりやすい行為として特に注意されています。
税務調査は過去何年までさかのぼるのか?
税務調査では、「どこまで過去にさかのぼって調べられるのか」が非常に重要なポイントです。調査対象期間は原則3年ですが、ケースによっては5年〜7年と延長される場合があります。
(1)原則3年、例外で5年・7年まで延長される
① 通常調査の対象は直近3年間
税務署が実施する税務調査の対象期間は、「直近3年分」であることが多いです。国税通則法 第70条第1項では、5年間の調査が可能とされていますが、調査にかかる日数を考慮して、「直近3年分」の実務が定着しています。
調査通知書には「令和◯年分〜◯年分について調査する」と明記され、その期間が調査対象になります。
例:令和7年に調査が行われた場合
対象は通常、令和4年・令和5年・令和6年分となります。
なお、初めから、調査期間が「直近5年分」と通知される場合には、税務署がすでに何らかの情報を掴んできている確率が高いです。
② 記帳不備・重加算税対象では5年・7年が調査される
「例外的な事由」がある場合、調査期間は5年に延長されます。また、偽りその他不正の行為が認められた場合には、さらに7年に延長されることがあります。
- 帳簿書類の不備や保存義務違反→5年
- 仮装・隠ぺいなどの意図的行為(重加算税対象)→7年
これは国税通則法 第70条第3項・第4項に基づいており、税務署側が「悪質」と判断した場合に適用されます。重加算税は最大で「本税+40%」の課税となることがあります。
また、故意に経費を水増ししたり、売上を除外したりすると、7年遡及+重加算税のリスクが現実のものになります。
(2)事前通知された年数がすべてとは限らない
税務署からの調査通知に記載された年数=最終的な調査範囲とは限りません。現場でのやり取りによって、調査対象期間が広がることがあるからです。
① 現場での質問検査権の行使で延長される場合がある
調査官は「質問検査権」(国税通則法第74条の2)に基づき、次のような行動を取ることができます。
- 調査途中で「他の年も同様の取引があるか」を確認
- 資料提出を求めた結果、さらに前の年に疑義が発覚
このような場合、調査開始後に対象年数が追加されることがあります。
例:令和5年分〜令和7年分で通知されたが、調査官が令和4年の売上計上漏れの痕跡を発見し、追加調査対象に。
② 調査官が疑義を持った取引が“過去に波及”する可能性あり
調査中に「同じミスを過去にも繰り返しているのでは?」と疑われると、そのルーツを探る目的で過去にさかのぼって調査が波及することもあります。
- 領収書の改ざんパターンが複数年にわたって発見された
- 売上除外の同じ形式が前年や前々年にも存在
このような場合、調査は当初想定より大幅に長期化・広範化する可能性があるため、慎重な対応が必要です。
反面調査とは?
税務調査の一環として行われる「反面調査」は、本人(納税者)以外の第三者に対して実施される調査方法です。
本人に対する調査だけでは申告の正確性を判断できない場合や、故意の隠ぺいが疑われる場合に使われる手法で、特に事業者にとっては大きなリスクを伴います。
(1)反面調査とは第三者への聞き取り・資料照会すること
① 取引先や顧客に調査が及ぶ
反面調査は、事業者が申告した売上・仕入・契約内容の真偽を確かめるために、税務署が取引先や顧客に直接連絡し、聞き取りや資料提出を求める調査です。
例
- 仕入先に対して「この会社にいつ、いくら納品したか」を確認
- 顧客に対して「代金支払いの有無や金額」を照会
- 下請け業者に「発注内容・金額・支払い時期」の確認
税務署はこれらを、本人の帳簿と照らし合わせて「整合性」を見ます。本人が帳簿を提出しない、または不明瞭な場合に反面調査の必要性が高まります。
② 銀行・不動産会社など金融機関に調査が及ぶ
反面調査は、取引先や顧客に限りません。次のような機関にも広がることがあります。
- 銀行や信用金庫:口座情報・資金移動の確認
- カード会社・リース会社:支払履歴・契約内容
- 不動産会社:家賃支払・物件取得時の取引実態
- 会計ソフトのクラウド運営会社:ログイン履歴・保存記録など
これらの情報が本人の申告内容と不一致の場合、申告漏れや架空計上の疑いが強まる可能性があります。
(2)反面調査による信用低下のリスク
① 調査が取引先に知られることで信頼を損なうおそれがある
反面調査が実施されると、調査対象の企業にとって以下のような信用リスクが発生します。
- 「あの会社は税務調査を受けている」と知られる
- 「経理がずさんなのでは?」という印象を与える
- 「自社にも波及するのでは」と警戒され、今後の取引に影響
特にBtoB取引が中心の法人にとって、信用毀損は売上や資金調達に直結する深刻な問題です。
税務調査でやってはいけないNG対応
税務調査は、単なる“チェック”ではありません。納税者の対応次第で、調査官の印象・調査の深度・追徴リスクが大きく変わります。特に注意すべきなのが「隠す」「ごまかす」「油断する」行為です。
調査官はプロです。安易な言動や帳簿操作は、かえって「疑念」を深める原因となります。
(1)証拠隠し・虚偽申告
① 故意と認定されれば7年分さかのぼり+重加算税35%以上
税務署は、悪質な申告ミスを「仮装・隠ぺい」と判断した場合、重加算税(本税の35〜40%)を課します。
加えて、調査対象期間も通常の3年から最長7年まで延長されます。
よくある仮装・隠ぺいの例:
- 架空経費の計上(実際は支払っていない外注費など)
- 売上除外(現金売上を帳簿に載せない)
- 二重帳簿やレシート改ざんの作成
- 名義だけ別人の資産で税逃れ
重加算税のインパクト例:
- 500万円の申告漏れ → 本税+過少申告加算税15% → 575万円
- 仮装・隠ぺいと判断 → 本税+重加算税40% → 700万円
重加算税は金額だけでなく、将来的に税務署から「要注意人物」とマークされるきっかけにもなります。
② 国税庁のデジタル調査でデータ隠しもバレる可能性
現在、国税庁は「電子帳簿保存法」「電子取引制度」に対応したデジタルフォレンジック調査(電子データ解析)を進めています。
対象となるのは以下の通りです。
- 会計ソフト・クラウドサービスのログ履歴
- メール・チャット・LINE・Slackなどの通信履歴
- Dropbox、Googleドライブ等のクラウド保存データ
- 削除されたファイルの復元ログ(証拠保全)
つまり、「データを消したから大丈夫」「メールは見られないだろう」という感覚は通用しません。
(2)不用意な発言
① 面談時の「雑談」にも注意(録音・メモ化される)
調査の現場では、調査官との会話が形式的な質問だけでなく、雑談のような雰囲気で行われることもあります。
しかしその会話も、税務署にとっては「証拠」です。
- 「あの経費は本当はプライベートなんですよね」
- 「この売上はまだ帳簿に載せてなかったかも」
- 「知り合いの名義を借りただけです」
これらの一言が、後の申告否認・加算税適用の根拠とされることがあります。調査官はメモ・録音を残すことが多いため、軽率な発言には厳重注意が必要です。
② 同席者は専門家(税理士・弁護士)にするべき理由
調査の現場で最も重要なのは、「誰が受け答えをするか」です。
納税者がひとりで対応すると以下のようなリスクがあります。
- 不安から余計な発言をしてしまう
- 調査官の質問の意図を誤解して回答する
- 税法の専門用語に対応できず、説明が曖昧になる
税理士や弁護士が同席していれば不利な発言を避け、法的知識に基づいた交渉・反論が可能です。
また、税務署も、専門家がいることで対応を慎重に進める傾向があるため、結果的に調査の範囲や態度が変わることもあります。
税務調査と専門家の役割
税務調査は、ある日突然始まるものではありません。通常は事前に「調査通知」が届きます。この通知を受け取った段階で、迅速に専門家と連携するかどうかで、その後の調査の難易度とリスクは大きく変わります。
ここでは、税理士や弁護士が果たす具体的な役割を解説します。
(1)税務調査の事前通知時に専門家に相談するとどうなる?
① 調査の目的・狙いを見抜いてくれる
税務署から届く「調査実施通知書」は形式的な書類に見えるかもしれませんが、実は税務署の“狙い”が含まれているヒントの宝庫です。
専門家は通知書の以下の内容から「何を見に来るのか」「どの点に注意が必要か」「反面調査や深掘りに発展するリスクの有無」といったことを読み解きます。
- 対象期間や税目(所得税・法人税、消費税、源泉所得税など)
- 調査官の部署(資料調査課→重点的な高額調査が多い)
- 過去の申告内容や、税務署の把握している資料との不一致可能性
② 書類の整備と受け答え準備で調査短縮が可能
税務調査は、準備の程度により「1日で終わる」こともあれば「1か月以上続く」こともあります。
専門家と一緒に行うべき事前準備の例:
- 帳簿、領収書、契約書、通帳などの証憑を時系列・論点別に整理
- 経理処理の方針(家事按分・役員報酬・経費区分など)を明確にする
- 想定質問リストと、合理的な受け答えスクリプトの作成
- 取引先・仕入先の実態把握(反面調査対策)
専門家が同席し、整然とした対応をすれば、調査官に「しっかり管理されている」と印象づけ、調査期間の短縮・対象範囲の縮小が可能になります。
(2)調査時・終了後に専門家がいるとどんな支援がある?
① 修正申告をめぐる交渉
税務調査の結果、誤りが見つかった場合でも、必ずしも即修正申告すべきとは限りません。専門家は、調査官との間に立って、追徴税額や加算税を抑えるための交渉を行います。
- 疑わしい経費処理でも、契約・実態を精査すれば正当と説明できる可能性あり
- 事実認定の齟齬(調査官と納税者側の認識の違い)がある場合、調整が可能
- 過少申告加算税の回避(修正のタイミングにより軽減措置も)
② 不服申立てや再調査請求も視野に入れた対応
調査後、税務署から是認されず、追徴課税処分が出された場合でも「納得できなければ戦う選択肢」があります。
以下の対応には弁護士のサポートが不可欠であり、税理士と連携しながら証拠収集・主張整理を行うことで、納税者の権利を最大限に守ることができます。
- 異議申立て(処分通知後60日以内)
- 再調査の請求(異議却下後)
- 国税不服審判所への審査請求
- 裁判提訴(地方裁判所)
調査されても安心な状態を作るために
税務調査は、「来たときに慌てて対処する」のではなく、「いつ来ても問題ない状態にしておく」ことが最大のリスク回避策です。そのために必要なのは、日常的な整備・管理・専門家との連携です。
以下では、事前に整えておくべき具体的な体制づくりと、安心して調査を受けられる環境の構築方法を解説します。
(1)税務署と正しく向き合う姿勢が最善の防御
税務調査において、税務署の視点は「ミスがあるか」だけでなく、「きちんと納税管理されているか」という姿勢にも向けられています。
① 毎年の帳簿整理・記帳の重要性
帳簿や証憑(領収書・請求書・契約書など)の整備は、税務調査時における最大の“防御壁”です。
以下のような体制が構築されていると、調査官からの信頼度が高まります。
- 日々の取引が正しく記帳されている(仕訳ミスが少ない)
- 領収書と帳簿の突合がスムーズ(保存期間7年)
- 経費分類が明確(事業用と私的利用が区別されている)
- 会計ソフトのデータが整っており、出力や証明が容易
② グレーな処理は“顧問と一緒に精査”が基本
事業を営んでいると、経費処理や売上の計上時期などに「これはグレーかな?」と迷うケースがあります。
よくある例
- プライベート兼用の車両の減価償却割合
- 自宅兼事務所の家賃の按分比率
- 役員報酬の決め方と税務処理
- 業務委託契約が実態のない外注と見なされる可能性
こうした処理を独断で判断すると、意図しない脱税や否認リスクが生じます。
判断に迷う処理は、必ず税理士や弁護士と相談して“根拠のある処理”をすることで、後の調査でも正当性を主張できます。
(2)「無事終了=是認」を目指すための環境作り
「是認」とは、調査の結果、申告内容が正しいと認められる状態を指します。是認で調査が終了すれば、追徴課税や加算税は発生しません。
① 調査対象を“事前に想定”しておくことで慌てない
税務調査では、調査官が着目するポイントにはある程度の傾向があります。
想定しておくべき主な論点:
- 役員報酬・退職金の水準と支給根拠
- 接待交際費や福利厚生費の使途と実態
- 売上除外や期ずれ(収益認識の誤り)
- 外注費 vs 人件費の分類誤り(源泉徴収の有無)
上記のような論点に対して、証拠資料・処理方針・説明スクリプトをあらかじめ整理しておくと、調査本番で慌てずに対応できます。
② 定期的な税務レビューが安全網になる
法人・個人に関係なく、定期的に税理士・弁護士による税務レビューを受ける体制は、最も信頼性の高いリスク予防策です。
- 月次・四半期・年次の帳簿レビュー
- 高額な取引・新規事業に関する税務リスクの洗い出し
- 社内ルールや経理マニュアルの見直し
- 税務署の最近の調査傾向・法改正へのアップデート対応
これにより、問題を「発生してから対応」ではなく、「発生前に防ぐ」ことが可能になります。
まとめ
税務調査は「税務署との対決」ではなく、公正な税務申告の確認です。とはいえ、対応を誤ると、不要な税金・罰金・社会的信用の損失を招くことにもなりかねません。
専門家とともに備えることで、税務調査は恐れるものではなく“管理可能なリスク”になります。早めの準備と、適切なアドバイスを受ける体制を構築しておきましょう。